文芸(単行本)作品一覧

逃亡者
逃亡者
著:千野 隆司
文芸(単行本)
妻を犯され、逃げる男の逆襲!並はずれた、大江戸ハードボイルドの秀作! ●ふるいつきたくなる逸品 縄田一男 デビュー以来、並はずれた力量を示し続けてきた千野隆司は、本作で頂点を極めた。どうしても許せない男を殺し、表通りから裏通りへと越境してしまった男の愛憎・慚愧・激怒が、そして更に彼を取り巻く人々の他人(ひと)にはいえぬ重荷を背負った人生が、練達の筆致で刻まれていく。特に、陰翳に富んだ初期の藤原周平作品や多岐川恭のピカレスクもの、海外ではシムノンの諸作等が好きな読者には、ふるいつきたくなるような逸品である。
虚空伝説
虚空伝説
著:高橋 直樹
文芸(単行本)
江戸無法地帯の非情、狂気、暴力。 運命の奇跡が生んだ暗黒のニュー・ヒーロー、矢月繋(やづきつなぐ)登場! 「餓鬼草子」は家康の黒印状を追い、神の殺法でこの世の生き地獄に挑む! ミステリーよりスリリングなものを歴史を舞台にした小説で書けないものかと考えていた。思い至ったのは江戸期の無法地帯だ。「封建時代」の意味をまちがってはいけない。〈封建〉とは地方分権である。中央集権の現代にはない無法地帯が、牙を剥いていたのだ。おまけに驚くほど世相が現代と似通っている。コギャルやチーマーの元祖だっていた。どのようなテーマでもぶちこめるほど、この舞台の奥は深い。この小説の主役、矢月繋にふさわしい舞台でもある。――高橋直樹
凍樹
凍樹
著:斎藤 純
文芸(単行本)
気鋭の書下ろし禁欲的純愛小説 こらえるほどに、愛は深くなる。 美術館学芸員の人妻と年下のミュージシャンとの運命的な出会い。恋愛の至福と芸術の快楽が交錯して豊潤な時間が生まれる。 男の顔がゆっくりと布結子(ふゆこ)に向けられた。布結子は目を伏せ気味にして、笑みを浮かべた。そうしながらも、男をちゃんと観察していた。顔に無駄な肉が付いていない。だからといって、骨ばっているわけでもない。むしろ、柔らかな顔つきだ……。どことなく初々しさが感じられる。青臭さと言ってもいい。……布結子は引きよせられるように男の横顔を見つめた。――本文より
男ともだち
男ともだち
著:海老沢 泰久
文芸(単行本)
清冽な筆致の恋愛小説集 男女の出会いと別れ、相手を愛しく感じる瞬間、思い出がこの上なく貴重に思えるとき―― さりげない日常の暮らしの1シーンを季節の彩りをそえて鮮やかに描き出す直木賞作家久々の短篇小説集!
少年サロメ
少年サロメ
著:野阿 梓
文芸(単行本)
SF界の異才が綴る幻想耽美作品集!! 「私は、お前が好きになったのだ。ヨカナーン、お前が愛おしくてならぬのだ。私は、私は、お前のからだに触れたい、お前の髪の毛にさわりたい、お前の唇に口接(くちづ)けしたいのだ。あぁ、私はお前に恋をしてしまったのだよ、ヨカナーン」 「王子、それは――」 「判っている。お前は預言者だ。聖なる者だ。肉欲を断って、戒律を守る者だ。私の恋する相手ではない、判っているのだ。しかし、しかし、どうしようもないのだ。ヨカナーン、私はお前に恋してしまったのだから」――『少年サロメ』より
幻覚の鯱 天翔の章
幻覚の鯱 天翔の章
著:西村 寿行
文芸(単行本)
『幻覚の鯱・神軍の章』に続く待望の最新刊 仙石文蔵の孫娘・ゼロと十樹吾一が消え、米国のステルス爆撃機、トルコ航空の旅客機までも消失した。「鯱」軍団と醜男の最終決戦はいよいよ秒読みの段階に……。 時空間を支配し、全人類の奴隷化を狙う幻覚鬼・醜男(しこお)。思念力でそれを阻もうとする鯱軍団。キリスト教とイスラム教を相撃たせる世界終末戦争が迫る!
ひとたびはポプラに臥す(4)
ひとたびはポプラに臥す(4)
著:宮本 輝
文芸(単行本)
宮本輝がシルクロードを往(ゆ)く 砂漠をわたる風の彼方へ、生と死をみつめる旅はつづく……待望の長篇紀行エッセイ第4弾 「どうして虚しさにひたることがあろう。……虚しさを見、荒涼と寂寥を見、そこでしたたかに生き、恋をし、夫や妻や子を愛し、幸福を求め、働き、ゴビ灘の灼熱の土中に埋葬されていく人々を見ることは、俺の望むところではなかったのか」──宿願の地クチャからカシュガルを経てヤルカンドへ。少年・羅什が死を賭して旅立った砂漠の道に運命の旅はつづく。豊富な写真とともに辿る「宮本輝のシルクロード」
月夜の虹
月夜の虹
著:牛島 秀彦
文芸(単行本)
真珠湾に散ったはずの「軍神」が生きていた! 太平洋の要塞と化したハワイを舞台に、日米戦争の板挟みになった日系市民らに匿われた2人の「軍神」の対照的な生き方、死に方を精緻に描き、「日本人」の根を問い直す渾身の長篇小説。 ●「軍神」と言う言葉を知っていますか。この小説はハワイを舞台に、「生きた軍神」という著者積年のテーマを結実させた渾身の力作です。歴史の頁を逆にめくりながら読むと「人間」の強さ、弱さが、虹のように、はかなく、美しく見えてきます。──松山善三氏(映画監督) ●真珠湾攻撃を仕掛けた「軍神」のなかに2人生存者がいた!?──では彼らはどこに行き、何をやったのか。史実から出発して、大胆な設定で展開する、牛島秀彦氏初の小説。ハワイ独立運動、日系の「勝った組」、スパイ活動を軸にして、日本人とは何者かを考えさせてくれる意欲作。──筑紫哲也氏(ジャーナリスト)
インポテンス
インポテンス
著:永倉 萬治
文芸(単行本)
愛か、ボッキか。 不能になってしまったら、愛は終わりか? インポは男の終結宣言なのか?性的能力を失いかけた男の性のリハビリ遍歴。 涙なくしては読めない切実な問題小説! ●ルビコンの河ならぬシリコンの壁か。──シリコン注入療法 ●家族に隠れてバイブレーターをこっそり使う中年男。どうだ、いかがわしいだろ。──オナニー療法 ●見栄を張って「Mサイズ」にしたのがまずかったかな。──真空ポンプ ●たった1錠で、雄々しいペニスが取り戻せるなら──バイアグラ
三国演義(2)
三国演義(2)
著:安能 務
文芸(単行本)
これぞ本物の三国演義 諸葛孔明登場……役者が出揃った。有能な軍師を欠く劉備が孔明に対してとった有名な「三顧の礼」の真の狙いは?? 「……お世辞を言うわけではないが、お2人と子龍(しりゅう)は不世出の勇将である。だが天下を望むのに、勇将3名では足らず、ましてわれわれには、まともに税金を集めることのできる人材すらいない。玄徳どのが、必死に軍師を得たいと望んでいるのは、言うまでもなく正当である。」 と簡雍(かんよう)は回り回って、ついに話を落とした。関羽と張飛が、いわゆる軍師を小ばかにして、劉備が軍師を招くことに冷やかな反応を示していた非を諭(さと)そうと、簡雍は初めから考えていたのである。──本文より
三国演義(1)
三国演義(1)
著:安能 務
文芸(単行本)
これぞ本物の三国演義 劉備は単なる“仁”と“義”の人ではなかった。物語の歪みを道教の視点から見直す初の試み……これで本当の中国が見えてくる 「三国志」(三国演義)は、小説好きの読者には必読の書である。日本でも吉川英治、柴田錬三郎、北方謙三等の作家が、渾身の力を込めて書いた。また、翻訳もある。私は沢山読んだ。 しかし、今回、安能務氏の『三国演義』を読んで、私は非常に驚き感嘆した。発見、の思いがあった。曹操、劉備等が、まるで現代小説の主人公のように生きて動く。そして、歴史の歩み、というか、事件進行の現実的細部が、まるで眼に見えるように明晰である。作者畢生の大作であろう。──秋山駿(文芸評論家)
少年審判
少年審判
著:小林 道雄
文芸(単行本)
書下ろし問題小説 女子高生強姦事件の驚くべき真相と更なる波紋 「子どもたちが見えなくなった」と嘆く大人側の姿勢にこそ問題が潜んでいるのかもしれない。ある強姦罪の告訴を契機に推理小説のようなタッチで新たな事実が解明され、少年たちの実像が次第に浮かび上がる。少年審判に関わる弁護士、調査官、裁判官の真摯な悩みや試行錯誤の描写もリアルである。 十分その実情を踏まえないままに少年法「改正」が叫ばれる中で、この小説は、何が問題で何を守るべきかを考えるための必読の書である。――古口章
不発弾
不発弾
著:乃南 アサ
文芸(単行本)
新しい都市伝説を描く傑作作品集 退屈な日常がキレる。 怒り、殺意、逆襲……。ひそかに炸裂の瞬間を待つ都会人の心の中の不発弾。 テレビ局には幽霊がいる。自殺したアイドル歌手だとか、ドラマ出演中に急死した俳優、スタジオ内の事故で逝った大道具のスタッフ、あるグループの熱狂的ファンだった少女が病死した後も“おっかけ”を続けているのだとか、実にまことしやかな噂が密かに語り継がれている。(中略)制作局にも、幽霊がいた。この私だ。――「幽霊」より
1999カレンダ-『少年H』が見ていた空と海
1999カレンダ-『少年H』が見ていた空と海
監:妹尾 河童,絵:妹尾 太郎
文芸(単行本)
あなたも「少年H」と同じ四季を体験できる 心が洗われるような空と海。「少年H」が駆けまわった神戸・須磨海岸の、月ごとの美しい表情を描いたイラスト入りカレンダー。1999年度カレンダーの決定版!
雨毒
雨毒
著:黒岩 重吾
文芸(単行本)
女という名の不意打ちの毒。 かつて関係のあった女からの手紙によって引き起こされる金銭のトラブルと苦い思い。短篇の名手が描く男女関係の妙味と人生の深淵。 今の私は薬を塗る度に、人生も同じだな、と溜め息をついている。不意打ちのように毒を受ける場合もあるが、最も大事なのは、どう対応するかであろう。まさに男女の関係に当てはまる場合が多い。(本文より)
どうころんでも社会科
どうころんでも社会科
著:清水 義範,絵:西原 理恵子
文芸(単行本)
痛快エッセイ 社会科は暗記ではなくて、人間が躍動するガクモンだ! ご存じ清水ハカセの名講義に、西原セイトのスルドイ突っこみ、冴えわたる。 不朽のロングセラー「理科」シリーズにつづく「社会科」シリーズ第1弾! あなたの「歴史」「地理」を楽しくする、おもしろくてためになる絶好読みもの。
花の下にて春死なむ
花の下にて春死なむ
著:北森 鴻
文芸(単行本)
誰にでも秘密はある。 孤独死した俳人の窓辺の桜は、なぜ季節はずれの花をつけたのか。写真展のポスターは、なぜ一夜にしてすべて剥がされたのか。謎が語りかけるさまざまな生、さまざまな死。 ミステリの醍醐味を満喫させる鬼才の連作短編集
倒錯者
倒錯者
著:勝目 梓
文芸(単行本)
もっと恥ずかしいことをして。 女の小陰唇のピアスをつまんで引っぱる。女は嗚咽(おえつ)をこらえているような声をもらす……。快楽を追求する性の冒険者たち! 「窓ぎわに立ってくれないか」うしろから躯で日佐子を押すようにして、荒木が言う。日佐子はドキリとする。窓のカーテンはすっかり開け放たれて、眩しいほどの日差しがさしこんでいる。向かいのビルの窓に、オフィスらしい眺めが各階に重なって見える。そこで立ち働いている人の姿も小さく見える。 「どうするの、窓ぎわで」 「きみと舐めっこするのさ」 「外から見えちゃうわよ」 「だから面白いんじゃないか。そう思わないか」──(本文より)
予定時間
予定時間
著:林 京子
文芸(単行本)
芥川龍之介のみた漢詩の世界=中国と戦争という極限状況の狭間に、揺るぎない「性根」を求めて 上海租界を舞台に、スパイ事件に巻き込まれ時代に翻弄されながらも人間として、報道人としての矜持を貫き通した男と女の友愛のかたち 自分を探す記憶の旅 外からみるとリタは、男から男を渡り歩く節操のない女に思えた。が、寝起きを共にしてみると、リタは純粋な女だった。1つ部屋に暮しながら、2人の仲には何事も起きなかった。期待する思いはあったが、肩も胸も薄い、体を絞って咳をするリタをみていると、憐れが先に立つ。いつか、回復を待つ気になっていた。 …… そのうちリタの気持は穏やかに、落ち着いたのだろう。わたしたちは、抱きあって眠るようになった。わたしの腕を枕にして眠っていたリタが、ある朝目覚めて、こんなに深い眠りがあったのね、といった。わたしの自惚れだろうか。リタの生涯で、もっとも安らかな時期ではなかったか、と思う。――本文より
桂籠とその他の短篇
桂籠とその他の短篇
著:火坂 雅志
文芸(単行本)
大石内蔵助と荷田春満(かだのあずままろ)の秘められた友情! 異色忠臣蔵の「桂籠」をはじめ、釣と武士道の「釣って候」、羊羹と侍の道を描く「羊羹合戦」等、知られざる侍の美を見据えた秀作集! 私にとって、旅は小説のふるさとなのかもしれない。 「桂籠」のヒントを得たのは、冬の京都を訪れたときである。京都の伏見稲荷の境内で、荷田春満旧宅の案内板を見た。そこには、国学の創始者として知られる荷田春満が、赤穂浪士の討ち入りを手助けしたと書かれていた。まさかと思い、文献を調べているうちに、物語が胸のなかであわあわと膨らんでいった。 ――その後、桂籠は好事家のあいだを転々とし、現在は神戸市の香雪美術館に収まっている。――[あとがきから]