文芸(単行本)作品一覧

大和古寺幻想 飛鳥・白鳳篇
大和古寺幻想 飛鳥・白鳳篇
著:上原 和
文芸(単行本)
大正「古寺巡禮」和辻哲郎、青春の彷徨。 昭和「大和古寺風物誌」亀井勝一郎、青春の悔恨。 今、新たなる美と魂の大和紀行、結実す。 はるかなる莫高窟(ばっこうくつ)壁画に夢を追い、法隆寺白鳳再建を解き明かした美術史の泰斗が、大和の旅人たちに贈るまほろば幻視行。
三国演義(6)
三国演義(6)
訳:安能 務
文芸(単行本)
嗚呼――五丈原に孔明逝く!! 三国絵巻遂に完結 「蜀」が滅び「呉」も降伏。三国が統一された時、「魏」も司馬氏によって「晋」王朝にかわっていた。 「国家の大事を誤ったか!」 と李福が昏絶した孔明の枕許で、声をあげて泣いた。その声で孔明が意識を取り戻す。 「そなたが再び現われるのを待っていたぞ」 と孔明が言った。 「丞相、百年後(没後)の大事を誰に託すべきか、それをお伺いいたします」 「蒋えんがよかろう」 「蒋えんの後は?」 「費いだ」 「費いの後は?」 と李福がさらに聞く。しかし孔明は、答えなかった。嗚呼――すでに息を引き取っていたのである。時に、建興12年(234)秋8月23日であった。天愁地惨、月色無光の夜である。享年54歳であった。――本文より
セレス
セレス
著:南條 竹則
文芸(単行本)
電脳長安の封神演義! 古代ギリシャ語で中国=セレス、仙境。魂をゆさぶる美しき人の誘惑。書下ろし長篇小説の秀作! 塔の天女の圧倒的魅力を描く書下ろし長篇! 『酒仙』で日本ファンタジー文学大賞を受賞した鬼才の飛びきり・書下ろし長篇小説。『封神演義』の世界に挑戦、絶世の美女に魅了されたひとりの男の純愛と冒険。 3人の人工生命は、見たところいずれもうら若い女だった。龍吉公主には劣るものの、艶麗な女人の形をしている。だが、かれらはコンピューター・ウイルスの一種なのだ。時到れば万仙陣の各所に潜伏し、攻め入る敵のプログラムに感染し、これを即座に攪乱する、爆弾型の病原体だ。 マモンのコントロール下にある洞玄部の術によって相手を攻撃するのとは違い、かれらを使うことはネットワークに大きな混乱をもたらすおそれがあるので、教主は今まで使用を控えた。それを使う――元始天尊、見ておれ!――万仙陣より
社長物語
社長物語
著:薄井 ゆうじ
文芸(単行本)
社長とは、なんと悩み多き存在なのか。会社とは、こんなに人間くさい生きものだったのか。 会社がわかれば人間が見えてくる。すべてのビジネスマンに贈る ●1人でも会社はつくれる●社長は失業保険に入れない●銀行は預けるのではなく借りる場所●妻を電話番にしてはいけない●どんな結論も1分で出すべし●社長のボーナスは会社の利益とみなされる●見習いを雇えば重荷になる●本人が辞めたいと言わない限り社員を辞めさせることはできない●社長には元旦生まれが多い……など具体例満載。 イラストレーター森田康一は、共同事務所「鮮酔館」の発起人であり、いまや中心人物でもある。そこではフリーランスのデザイナーやカメラマンが、昼夜の別なく精力的に仕事をこなしている。 フリーには文字通り自由がある反面、様々な限界もある。クレジットカード1枚作るのも、住宅ローンを組むのもたいへんだし、大きな仕事も取りにくい。何より、病気やスランプで無収入になったらどうするか……。 「鮮酔館」を会社組織にしよう。そう決意したときから、森田の人生は大きく変わっていった。
柔らかな頬
柔らかな頬
著:桐野 夏生
文芸(単行本)
私は子供を捨ててもいいと思ったことがある。 5歳の娘が失踪した。夫も愛人も私を救えない。 絶望すら求める地獄をどう生き抜くか。 「現代の神隠し」と言われた謎の別荘地幼児失踪事件。 姦通。 誰にも言えない罪が初めにあった。娘の失踪は母親への罰なのか。4年後、ガン宣告を受けた元刑事が再捜査を申し出る。 34歳、余命半年。死ぬまでに、男の想像力は真実に到達できるか。
御書物同心日記
御書物同心日記
著:出久根 達郎
文芸(単行本)
珍本は権力が集めるもの。将軍家の御文庫は宝の山だった。 丈太郎は三男坊の厄介者だが、本の知識はひけをとらぬ。見込まれて、御書物方同心の跡継ぎとなった。新米同心が出あう事件を、江戸情緒豊かに綴る連作集。 この世に珍本というものがあり、その珍本を、だれよりも多く収集している者は、将軍家以外ない。……その蔵書を管理しているのが、御書物奉行であり、御書物方同心である。すなわち、このどちらかになれば、天下の稀本珍本を手に取って見、指で繰って読むことができる。奉行は、なろうとしてなれないが、同心なら世襲である。――(本文より)
ジェラルドのパ-ティ
ジェラルドのパ-ティ
著:ロバ-ト・ク-ヴァ-,訳:越川 芳明
文芸(単行本)
PPM(ポストモダン・ポルノ・ミステリー)の最高峰 アメリカで一番淫らなパーティへようこそ 今宵、御招待のお客様に用意したのは殺人事件。目も眩むような下品で猥褻なパーティへ、お一人様ご案内。 「ぼくはこの小説をめぐってもっともらしいことをあれこれ「解説」してきたが、大きな問題、大きな謎には触れてこなかった。この小説の1番の難問だ。ミステリーの解説で、殺人の手口や殺人者の名前を教えるのはルール違反である。だから、ぼくもそんなことはしない。というより、できない」――(訳者あとがき)
中野重治
中野重治
著:小田切 秀雄
文芸(単行本)
同時代を生きた著者による中野論の決定版! 中野重治は、わたしの中学生のころから(ということは60余年前から、ということだ)その魅力のとりこになっていて、それは生涯変わることなく、敗戦後にはずいぶん中野論を書いた気がしていたが、さてこんどそれらを集めて読んでみたら、気にいらぬものが多くて、結局、今回のこの書に収めたものだけが残った。……もちろん文学の根源からというのは、もともと中野の文学上の一貫した態度、感覚、思考であり、具体的な形はさまざまであっても、それを貫いたというところにこの作家の生涯がある。――「あとがき」より
忠臣蔵心中
忠臣蔵心中
著:火坂 雅志
文芸(単行本)
かの近松門左衛門と堀部安兵衛は、実の兄弟! たぐい稀れな発想から近松、安兵衛、大石内蔵助さらに釣りの殿様津軽采女らを描き、元禄の世の人間ドラマをみつめた傑作長篇! 本所三ツ目の津軽屋敷にも、八重咲きの枝垂桜が、淡桃色の滝をつらねたように美しく咲き乱れている。小普請組の旗本、津軽采女は、花の向こうに北国のおそい春を思った。 (まだ雪の残る山に真っ白なこぶしの花が咲くと、浅瀬石川でアメマスが釣れだす。雪代で川が乳色に濁り、それがきれいに澄み渡ると、魚の食いが急に荒くなる……) 一瞬、采女の脳裡に、銀鱗をひらめかせる魚の姿がまざまざと浮かんだ。 (ああ、釣りがしたい……) 最後に采女が釣りをしたのはいまから8年もまえ、江戸湾の三枚洲へ釣舟を出した時だった。その日から半年もたたぬ元禄6年8月、綱吉によって“釣りと釣舟の禁止令”が出された。 (つまらぬ世の中じゃ……)──(本文から)
三国演義(5)
三国演義(5)
訳:安能 務
文芸(単行本)
有名な「出師の表」から孔明の悲憤と蜀漢王朝の慟哭がきこえる 張飛は殺害され劉備も白帝城に没す。三兄弟すでに亡く更に届く趙雲の死。 国王が臨終の床で、世継ぎの後事を託して遺言を残すことが、広い意味で「託孤(たくこ)」と称された。(中略)「託孤」は一種の儀式で、厳格な定めはないが、慣例的な仕きたりがあった。つまり、世継ぎとなる世子(せいし)が臨終の床にいる父親の前で、託孤を受けた「後見人」に平伏して、「師礼」または「父礼」を取ることを誓うのが、一般的な慣わしである。稀にしかないが、特殊な場合には「託孤の鞭(べん)」が後見人に授けられる場合もあった。託孤の鞭とは、跡継ぎの新しい君主が極度の悪業非行をしながら、諫止(かんし)を受けなかった場合に、後見人が打ち据えてもよい鞭(むち)のことである。因みに、現実には託孤の鞭が授けられることは稀であるが、昔の芝居では暴君が登場すると、必ずと言ってよいほど託孤の鞭が飛び出す。──本文より
ピ-タ-・パン探し
ピ-タ-・パン探し
著:阪田 寛夫
文芸(単行本)
戦争への暗い日々を支えたこころの書を訪れ、亡き兄が辿ったこの世の旅路をふりかえる人生への慈しみに満ちた秀作短篇集 ピーター・パンを追いかけて、僕は少年の日へと旅立った 昭和前期、戦争へと転回していく時代のなかで「赤い鳥」の連載童話『私のピーター・パン』と出逢って以来60年、イギリスから東北の山中までピーター・パンを追いかける表題作ほか、忘れ得ぬ書物に人生の記憶を重ねた「大事の小型聖書」「トッテンコーローの話」「71歳のシェイクスピア」、献体というかたちで「神様に肉の体をお返しした」兄の生涯を描く「夏の月」「兄の帰還」「くじらの骨」の7篇を収録。
若冲の目
若冲の目
著:黒川 創
文芸(単行本)
伝説的画人伊藤若冲の謎! 虚空をみつめる江戸の視線。時空を超えた、双幅の傑作長篇「鶏の目」「猫の目」! 伝説的画人が残した絵のなかの迷宮。 若冲が描く鶏や、魚や、昆虫の目。それは人間の目から遠い。これらは、人がお互いの目に読みとるような、情緒的なものを感じさせない。どれも、どこかを見ているが、どこも見ていない。むしろ、絵のなかの世界にない場所、空虚な穴のようなところに向かっている。葉の病斑の空洞に、それは似ている。それは、見る者の視線を、吸いよせる。(本文「鶏の目」から)
涙、らんかんたり
涙、らんかんたり
著:阿井 景子
文芸(単行本)
なぜ滅びゆく婚家に殉じたのか? 悲運の夫を愛し、信じ、天目山に散った北条の女(むすめ)・咲姫がたどる波乱の生涯。 新しい武田勝頼像に迫る書下ろし歴史小説 勝頼夫人については、韮崎(にらさき)の武田八幡に奉納した彼女の願文から人間像をつくりあげた。 願文には、勝頼に対する一途な愛が溢れている。それゆえ勝頼と生死を共にしたのであろうが、歴史の上では珍らしい。(中略) 恐らく勝頼も、甲相同盟が破綻したとき、正室に戻るように勧めたと思われる。 だが彼女は自分の意志で勝頼のもとに止まった。(中略)夫に殉じるのが彼女の意志であり、希(ねが)いであった。――「あとがきに代えて」より
大江戸生活体験事情
大江戸生活体験事情
著:石川 英輔,著:田中 優子
文芸(単行本)
やってみました、江戸の暮らし 今の百分の一しかエネルギーを消費しない生活とは? 火打ち石、暦、行灯、着物……。江戸時代の生活道具を試した2年間のレポート。図版多数を駆使して誘う〈体験江戸学〉。
私の中から出てって
私の中から出てって
著:サンドラ・ヴォ.アン,訳:金綱 三恵子,訳:鈴木 敏弘
文芸(単行本)
蹂躙と陵辱のホラー! あんなにも汚れなかった私が…… 母親が車ごと列車に押し潰され、父親と2人新たな町トロン・ノワールにやってきた15歳の少女。しかし毎日の生活に慣れ始めた矢先、彼女はおぞましい朝を迎える。すごい悪臭、ぬめつくシーツ、汚れたベッドカバー。そしてむき出しの下腹部は、けがらわしい汚泥にまみれていた!7月4日の独立記念日。賑わう町の昏い森に、汚辱の臭いが立ちこめた時、少女と友達のバトンガールは、ついにあれに蹂躙されてしまう。「汚いものが私の中にいる。早く始末しなくては」。刻々と変質する肉体を抱え、絶望に駆られた少女がとった最後の行動とは。 ときに繊細に、ときに過激に揺れ動く少女を、ここまで生々しく描いたホラー小説があっただろうか。 どうしたらいいの?何故いっそのこと私のお腹を破って出てこないのよ。私はあの下衆野郎を殺してやったわ。けど、そいつはまさしく死んでも復讐を忘れはしなかったんだわ!ああ神様、私はまだ15歳なのに、体の中に腐った肉がいる……誰か助けて、お願いだから……──(本文より)
敵手
敵手
著:降籏 学
文芸(単行本)
生涯、頭の上がらない恩人。 愛甲猛、鈴木尚典、松坂大輔ら数々の名選手が尊敬し、甲子園春夏連覇をなしとげた渡辺元智監督。最強軍団を率いる名将には40年にわたるライバルとの知られざる戦いがあった。 感動の書下ろし実録小説 しかし、虚構で肉づけされた物語のなかにも、たったひとつ、揺るぎない真実がある。 横浜高校野球部を史上5校目となる春夏連覇に導き、松坂大輔という怪物を育てたのは紛れもなくこのふたりの指導者だったということだ。そして、高校野球の指導者は、野球が大好きな子供たちの人生を左右するほど責任ある立場に置かれているということ。ふたりは、その使命に殉じようとしている。この真実には、虚構をはさめない。――あとがきより
淋しがり
淋しがり
著:藤堂 志津子
文芸(単行本)
好評・待望の作品集 女たちのはかなくもろい秘密の瞬間 嘘、秘密、裏切り――男をだまし、もてあそぶ女たちにも気を許せば崩れかねない瞬間があった。強がっても、強がっても、ぱっくりあいた心のすきまは埋めきれない……
神の柩
神の柩
著:本岡 類
文芸(単行本)
混迷の現代社会を問う書き下ろし長編サスペンス!生き残るのは非情な神か、驕れる人類か。 世紀末日本に彗星のごとく現れた団体「理性の跳躍」。エリート層を中心に7千名の会員を擁し、膨大な資金力を持つ彼らが主張する強者の理論が人々の心をとらえていく。だが、その陰でひっそりと不可解な死を遂げた男がいた――。
東亰城残影
東亰城残影
著:平山 壽三郎
文芸(単行本)
第9回時代小説大賞受賞作 夫が箱館戦争から生還した夜、妻は大川に身を投げた。江戸から東京へ、混乱の時代をしたたかに生き抜いた男と女を描く感動の長編。
洛陽の姉妹
洛陽の姉妹
著:安西 篤子,装画:深津 真也
文芸(単行本)
男たちが殺し合うなら、女は情を尽くし抜く──。 三国時代が終わり、新たな動乱の世を迎えた。洛陽の都で数10年ぶりの再会を果たした姉妹の上にも、運命は容赦なく襲いかかった……。 表題作ほか「趙氏春秋」「曹操と曹丕」など抒情あふれる中国短編小説集。 明日は都へ入ると思うと、おのずと心が引き締まり、そのために眠れないのだろうかと、春暉(しゅんき)はおのれの心をふり返ってみた。50年、生きてきた間には、幾度も憂い目、辛い目に遭い、人並よりは肝も据わっているつもりだったが、それでもこんどばかりは、いくらか怯(ひる)みを覚えるのだろうか。 もう幾年も、春暉は都にいる妹に、手紙を送り続けてきた。……けれどもただの1度も、返事はなかった。その妹を、春暉は訪ねようとしている。果たして妹に会えるだろうか。──(本文より)