文芸(単行本)作品一覧

狼叫
文芸(単行本)
驚天動地・疾風迅雷・哀切無情・不眠読破・興奮絶叫
どうしてくれる、このオモシロサ!
川島芳子、伊達順之介のルガーが火を噴く!
今、もっともアブラが乗り切っている冒険小説家が、広大な大地(旧満州)を舞台に繰広げる豪華絢爛たる歴史スペクタクル活劇。
舞台はまさにアノ『夕日と拳銃』。そう’97年われらが樋口の超傑作『頭弾』と同じく、動乱の満州なのだ。アアその時代に自らの心の掟を守り抜き、かかげるのは闘うにふさわしい“大義”という旗。その愛しい奴ら1人1人が陳メの胸を熱く熱く撃ち抜くのだ。この国をこの民を救うために抗日義勇軍の頭目となったモーゼルミリタリーの名手・柴火(さいか)。その好敵手・伊達順之助。義を守り柴火を想う隻眼隻脚の徐舜(じょしゅん)。多情多恨な武当殺人拳の使い手・春蓮(しゅんれん)……etc。赤い夕陽を鮮血で染め上げながら、1人また1人キラ星のごとく現われて流星のごとく消えてゆく。
『狼叫』──この国士無双樋口骨太正統冒険小説こそ、陳メ生を享けて55年待ち続けてきた抜山蓋世(ばつざんがいせい)の1冊なのだ。──内藤陳

愛犬リッキ-と親バカな飼主の物語
文芸(単行本)
はらはら、ドキドキなりふりかまわず冷や汗だらけ必死の子育て記
自分でも、ことリッキーに関しては、「親バカ、かもしれないなあ……」とは思っているけれど、他人から、はっきり、そう指摘されるのは、まったくもって不本意である。「かもしれない……」と自分で思っているのと、他人から「親バカなのだ」と決めつけられるのとでは、気分的に大きな差がある。正直なところ、むかむかする。だから、この本を読んでくださった方々に、私は、あらためて、おたずねしたい。「これをお読みになって、私を、親バカだと思われましたか」と。――「あとがき」より

Twelve Y.O.
文芸(単行本)
第44回江戸川乱歩賞受賞作
12(トゥエルブ)――それは「12歳の子供」と断罪された日本が、隠し持っていた凶暴な牙。
行き場をなくした男たち、女たち、そしてこの国が大人になるための、凄絶な戦いが始まる。
エンターテインメント界を震撼させる才能。
全選考委員を驚嘆せしめた大型新人の登場!
人生の意義を見失い、日々をただ過ごしていただけの自衛官募集員・平貫太郎は、かつての命の恩人・東馬修一に偶然出会ったことから、想像もつかない日本の地下組織の闇に呑み込まれてゆく。
最強のコンピューター・ウイルス「アポトーシス2」と謎の兵器「ウルマ」を使って、米国防総省(ペンタゴン)を相手に、たった1人で脅迫劇を仕掛け続ける電子テロリスト・トゥエルブとは何者か。
彼の最終的な目的は何なのか?
絶望感と閉塞感が渦巻く現代(カオス)を吹き抜ける一大スペクタクル・サスペンス!

果つる底なき
文芸(単行本)
元三菱銀行員の大型新人(35歳)が内幕を抉る新しい金融サスペンスの誕生!
第44回江戸川乱歩賞受賞作!
債権回収を担当していた同僚が死んだ。謎の言葉と、不正の疑惑を残して。彼の妻は、かつて「私」の恋人だった……。先端企業への融資をめぐる大銀行の闇に、私は1人、挑む。
●銀行ミステリーの誕生を宣言する作品だ。(阿刀田高氏)
●銀行業務における情報の処理、銀行マンとしての主人公のプライド、事件、人物の動かし方……受賞作とすることに異存はなかった。(大沢在昌氏)
●緊密で上質なミステリーとして成立していた。(北方謙三氏)
●全く独自の視点で切り込んで来る。新しい分野としか言い様がない。(高橋克彦)
●銀行内部の事情、金の動きは、素人にもわかるように書かれている。(皆川博子氏) ―――選評より

マニアックス
文芸(単行本)
マニアックな恐怖(ホラー)
マニアックな驚愕(サプライズ)
マニアックな蒐集家(マニアックス)たち
平成本格の金字塔、あの『ミステリーズ』の姉妹編

弥勒
文芸(単行本)
直木賞作家、篠田節子が満を持して問う。
この世に「救い」は必要なのか!
仏教美術の保護のため、ヒマラヤの小国に潜入した新聞社員が直面したのは凄絶なる政変だった。

燻り
文芸(単行本)
黒川ハードボイルド最新作品集
関西アンダーグラウンド世界に蠢く男たちのシノギをけずる暗躍!
【くすぶり】
1・うだつが上がらないこと。ツキがないこと。
2・チンピラ。
一攫千金を狙って騙し騙され、燻り続ける執念を描く9編を収録。
「分かった。100や。100万出そ」
「なんとセコい取引や。子供の飴代やないんでっせ」
「300や。それで手を打と」
「ねえ、新井さん、バナナの叩き売りとちがうんやで」
「500。これがいっぱいや」
「もうええ。よう分かった。ディスクの使い途はおれが考える。2度と電話はかけへん」
「くそっ、1千万や」──(「腐れ縁」より)

悪友の条件
文芸(単行本)
●貴女に贈る豊潤の恋愛小説
親友から悪友へ女2人は共犯者
恋人と別れ、旧友と再会し、陰ある男に引かれていった小夜子が戻る先は……。
友情……という言葉が蘭子の口から出たことに、小夜子はとまどった。友人、親友、悪友、同志……いろいろな言葉をあてはめて、蘭子と話したことがあったが、いまその言葉を向けられると、やはりどう受け止めてよいのか分からなかった。それに、蘭子と自分の関係には、漠然ともてあそんでいた“悪友”という形容が、もっともふさわしいのではなかろうかと、小夜子は思い始めていたのだ。

公主帰還
文芸(単行本)
中国歴史奇譚のおかしみ!
桂花香る臨安は、1人の女の噂で沸騰した。宋代の虚実の間を生きる人物達を描く表題作はじめ、書画博士米ふつを描く「潔癖」、異相の将軍狄青(てきせい)を描く「涅(すみ)」等、異色の秀作7篇!
すずしげな風の通る、亭の中である。風は、かすかな水の匂いを含んでいた。城市(まち)の西に広がる西湖の匂いだった。
「たしかに、柔福(じゅうふく)であったか」
「たしかに、柔福帝姫、いえ公主さまにおわしました」
宦官(かんがん)の黒衣をつけた小柄な人物は、きっぱりといいきった。彼の前には壮年の、こちらはすらりとした長身の男が後ろ手に手を組んでたたずんでいた。公の場ではないから簡素な袍(ほう)を身にまとっているだけだが、常人にはない品が挙措に漂っている。
「それともお上には、臣の言をお疑いでございましょうか。康王さまとお呼びしていた時代からお側近くにお仕えしている、この馮益(ふうえき)めの話を」
強気に出られると、たちまち帝は狼狽の色を見せた……――(本文から)

室の梅
文芸(単行本)
時代小説の新しい旗手か描く人情味あふれる捕物帖
奉行所検屍役・美馬正哲(みましょうてつ)と産婆お杏(きょう)。人の死と生に立ちあう夫婦が難事件を解き明かす!
米屋の仙台屋に押し込みが入った。たまたま難を逃れた手代の美代治は評判の好人物。正哲とお杏は、新春の植木市で美代治から鉢植えの梅の木を買っていた。
近代日本医学の夜明け、華岡青洲の麻酔手術から5年、江戸の検屍役・美馬正哲が妻のお杏と事件解決に乗り出す。――(室の梅)

霞町物語
文芸(単行本)
浅田次郎が初めて書いた、著者自身の感動の物語
会いにいきたい、あの日の君に。
輝かしい青春を、僕らはこの町で生きた。
霧はいよいよ深く、明子(はるこ)の髪を隈取る街灯をぼんぼりのように滲ませていた。
まったく唐突に、祖父の訓(おし)えをひとつ思い出した。その口ぶりを借りれば、「男てぇのは別れのセリフだけァ、惚れたとたんから決めてなきゃならねえ」のだそうだ。──「霞町物語」より

瑠奈子のキッチン
文芸(単行本)
注目の女流作家が贈る、平凡な日常を揺るがす書下ろし新感覚サスペンス!
台所は快楽と陰謀うずまく地下世界への入口だった。
●あなたはイヤなことから顔をそむけていませんか?●
何しろ毎日毎日使うもので、みんなが日ごろ面倒くさいと思っていることを、圧倒的に楽にしてくれる品物です。
楽をしていいんだ。目に見えない先のことは考えなくていいんだ、面倒なことは誰かにまかせておけばいいんだ。そんな発想を後押ししてくれる品物なんです。――本文より

ダブ(エ)ストン街道
文芸(単行本)
キッチュでポップな迷宮譚!
その道を通ってどこか遠くへ
ぼくたちはいつもどこか遠くへ行きたいと思い、けれどもどうやって行けばいいのかわからない。浅暮三文はそんなぼくたちに、その場所への行き方を教えてくれる。それが『ダブ(エ)ストン街道』だ。その街道ではあらゆることが起こり、なによりその街道の向こうには、ぼくたちが知らない世界が広がっている。そして、その『ダブ(エ)ストン街道』に行くには、ただ1冊の本の頁をめくるだけでいいのである。――高橋源一郎
あの、すみません。ちょっと道をお尋ねしたいんですがダブ(エ)ストンって、どっちですか?実は恋人が迷い込んじゃって……。世界中の図書館で調べても、よく分からないんです。どうも謎の土地らしくて。彼女、ひどい夢遊病だから、早くなんとかしないと。え?この本に書いてある?!あ、申し遅れました、私、ケンといいます。後の詳しい事情は本を読んどいてください。それじゃ、サンキュ、グラッチェ、謝々。「今、行くよ、タニヤ!」

世界の涯ての弓
文芸(単行本)
世界のどこかに、必ずあるはずの音楽を求めてチェリストは消えた。木っ端みじんになったチェロだけを残して。友人が何を捜していたのかを知るため、「弓使い」林馨はひとり香港にわたる。そこは「世界の涯ての」植民都市。修養が死に絶えた街なのだという。アーイエと名乗る娘に誘われ、馨は旅立つ。自分を待っている街へ。
筒井康隆氏絶賛!誰もが心に抱く、「自分の居るべき真の場所」をテーマに、悠揚として、駘蕩として、物語は進行する。饒舌もペダントリィも、主人公を導くアニマ的女性も、老賢者たちも、それぞれが結末の感動に奉仕する。一切の娯楽性や怪奇趣味を排除した極北の幻想文学と言うべきだろうか。――筒井康隆

啓太の選択
文芸(単行本)
娘を残してヨーロッパ駐在から戻った啓太を待ち受けていた日本の変貌ぶり。
同期生たちに誘われ山を歩くうちに訪れた至福と覚醒。50半ばを過ぎた男の精神の変容を正面から見据えた純文学待望の収穫。
いまから40年近く前になるが、東北の奥深い山中の村落を訪ねたとき、人々が石笛を吹くのをきいたことがある。小石にあいた小さな窪みに、唇をあてて吹くのである。(中略)音楽というにはあまりに原初的(プリミティブ)な音だった。私は、自分をとらえて離さないこの石笛の音が、いつか1篇の小説をうみ出すにちがいない、と思い続けてきた。――(「あとがき」より)

空っ風
文芸(単行本)
驚異的な力量をもった新人の登場。木枯し紋次郎以降に初めて現れた次世代股旅物の傑作。
幕末の激動期を駆け抜けた清水次郎長一家の喧嘩犬・小政の壮絶な生涯
驚異的な力量をもった新人の登場である。デビュー作『からくり乱れ蝶』、2作目『まやかし草紙』に続く本書『空っ風』は、清水次郎長一家の小政を主人公に、幕末の激動期を駆け抜けた男の生きざまを活写。硬質な詩情が漂う文体で、木枯し紋次郎以降に初めて現われた次世代股旅物の傑作である。――文芸評論家・菊池仁

ひとたびはポプラに臥す(3)
文芸(単行本)
宮本輝がはるかな時を超えて、西域の旅路によみがえる心の風景
待望の長篇紀行エッセイ第3弾“シルクロードを往(ゆ)く”
「いざ行かん、天山南路のクチャへ」──シルクロードを往く旅は、多様な歴史と文化が混交し異域の色彩に満ちたトルファンの街を過ぎ、天山南路をひた走る。西安から3550キロを経て、ついに20年来の念願の地、鳩摩羅什(くまらじゅう)の生地であるかつての亀茲国(きじこく)・現在の新疆ウイグル自治区クチャに辿り着いた著者は、砂漠に消えた故城に佇み自らの使命を思う──豊富な写真とともに辿る「宮本輝のシルクロード」

猫に満ちる日
文芸(単行本)
満ちたりた猫と女のふたり暮らし
男とは暮らせなかった女が猫だけをみつめいとおしみやすらぎの時を共有した7千日
想い深く細緻な筆で描く傑作連作集
深夜、仕事から帰る私を、猫はいつも玄関の扉のところで待っていた。闇の中にひっそりとうずくまっている猫を見るたびに、私の心はしなびた袋から弾力のある柔らかな袋へと回復していく。夜気で冷えた体を抱けば、頬や首に触れる毛の1本1本から、迎えられている情感が広がっていくのだった。私は家に帰るのではなく、猫のいる場所に帰っていたのだ。猫に迎えられ、毛に包まれ、舌で顔中を舐められるために。──本文より

私の戦旅歌とその周辺
文芸(単行本)
苛酷なる戦場にあってなお若き心に感動はあふれる。
昭和14年、騎兵第41聯隊の一員として中国・山西省に出動。果てもない黄土高原の風景、軍馬との交情……。辛々持ち帰った戦中吟の歌稿に、あざやかに蘇る一兵卒の日々。
中国ノ戦場ニ
心優シキ若イ兵隊ノ在リ
若キ兵隊、馬ヲ愛シ吟詠ヲ好ム
黄土ノ風ニ吹カレ旅スル時
万物自ズカラ詩歌トナレリ

ガリバ-・パニック
文芸(単行本)
巨人が出現、日本列島大激震!
思わぬ大事件に、能力と手腕を問われる政治家、官僚はどう危機を切りぬけるのか?現代日本の脆弱さをリアルに鋭く抉る、究極のエンターテインメント小説登場。
嵐が吹き荒れた晩の翌朝、海岸に突如、身長100メートルはあろうかという巨人が現れた。前代未聞の怪事件、自衛隊が出動する大騒ぎとなる。ところが、巨人とコミュニケーションがはかれることが判明した。官僚たちは管轄官庁を押しつけあい、政治家は金儲けにならないかと算盤をはじきはじめる。いったいこの怪物は、どこからやってきて何をしようとしているのか!?