文芸(単行本)作品一覧

蜘蛛の巣アンテナ
文芸(単行本)
作家の心のアンテナが受信した興味尽きない話題の数々を、いま、読者に向けて発信する第1エッセイ集。
著者にとっての第1随筆集となる本書は、手紙という形式を意識した文章ばかりを収録することにした。日々に郵便ポストに届けられる郵便物の多くは、情報や案内を伝えるばかりの派手な体裁のダイレクトメールの類で占められているが、そこに簡素な白封筒の私信を見出したときの気の弾みと心温かさは、いまだに何物にも代え難いものがある。
……著者は読者の日常に、ささやかでもかくの如き私信のような喜びを与える文章であれ、と願いながらこれらの随筆を綴ったつもりである。──(「あとがき」より)

「アボジ」を踏む
文芸(単行本)
第24回川端康成文学賞に輝く表題作。
戦争、国境、漂泊、死。全体小説の風格をそなえる7つの佳篇。著者40年の歳月をかけた短篇集。
(私は)途方もなく長い作品ばかり書いている作家だと思われているらしくて、……(『「アボジ」を踏む』を)「川端康成文学賞」の受賞作に選んでくれた水上勉氏をはじめとする審査委員諸氏も、ご自分たちで選んでおいてくれながら、「小田氏は大長篇作家だと思っていたので、おどろいた」と異口同音に「選評」のなかで述べていた。──(「あとがき」より)

定年ゴジラ
文芸(単行本)
父の伝えた、幸せのかたちとは?
開発から30年。年老いたニュータウンで、日本をささえてきた男たちが、いっせいに長い休暇を迎え始めた。
息子が父に贈る、元気の出る長編小説。
“父”の話を書きたかった。我が家では2年前に実父が、去年義父が、それぞれ定年を迎えた。お手本となったか反面教師だったかはともかく、戦後の日本を支えてきた“父”の世代は、「これが俺たちの考える幸せというものだ」と確かに子供たちに伝えてくれた。僕たちは、はたして子供に伝えるべき幸せのかたちを持っているのだろうか──。重松清

戦後批評論
文芸(単行本)
戦後文芸批評を解体する。「廃墟」に「生まれ出ずる」ものは何か
服部達、吉本隆明、江藤淳、秋山駿、磯田光一、保田與重郎、柄谷行人、加藤典洋氏らの戦後批評空間を“状況”の中に再構築する。

無制限
文芸(単行本)
江戸川乱歩賞受賞第1作。受賞作『左手に告げるなかれ』をしのぐ迫真のサスペンス。
失踪した夫をさがす理由は、一刻も早く離婚したいから。風変わりなパチンコ常連客たちの協力を得て、必死の捜索がはじまった!
離婚成立直前に夫が失踪した!新しい恋人との結婚を夢見る妃美子は離婚届にサインさせるために夫捜しをはじめ、彼があるパチンコ店に頻繁に出入りしているとの情報を得る。さらに足取りを追ううち、パチンコ業界と警察との癒着、裏ロムによる不正、強盗事件など、裏の世界をかいま見、夫がパチンコ業界で悪事をはたらいているのではないかと疑念を抱くが……。

戦国絶唱
文芸(単行本)
歴史にひそむ生命(いのち)の声!
史料から立ちのぼる人間の存在感!気鋭の国語学者がみつめる断罪直前の女、すべり抜けた男らの赤裸な像。

真・天狼星ゾディアック(3)
文芸(単行本)
天狼星シリーズの決定版、佳境へ!伊集院大介、シリウスと接近遭遇!運命の幕は開き、悪の王子がついに目覚める。
ヴァンパイア事件に揺れる東京に現れた、もうひとりの殺人狂。謎のバンド「ゾディアック」のライブに潜入を試みる滝沢稔……。そして、伊集院大介が最も恐れる竜崎晶の潜在能力とは?人々の不安と期待のなか、晶の初舞台は、ついにその幕を開ける──。

仲蔵狂乱
文芸(単行本)
第8回時代小説大賞受賞作
存分に舞い狂うてみせてやる……。歌舞伎界の頂点へ駆け登った不世出の名優・中村仲蔵の波乱の生涯。
【選評より】
・半村良氏
「仲蔵狂乱」は時代小説の世界から消えるかと心配された、大きな分野である芸道小説を復活させる力になるはずで、若い読者に対する歌舞伎世界への招待状でもあろう。
・津本陽氏
歌舞伎の社会をまったく知らないまま、興味を失うことなく読み通せたのは、そこに人間社会の競争のすがたが、的確にえがかれていたためであろう。
・村松友視氏
有名な仲蔵を落語のクライマックスに頼らず、その一生を見ようとする作者の心意気は買ってよいと思った。
・尾崎秀樹氏
「仲蔵狂乱」はその仲蔵の生涯を江戸歌舞伎の盛衰の中で刻明に追っている。歌舞伎の専門家だけに、その展開にソツはない。

夜の眼
文芸(単行本)
オスのまなざし、肉の衝動──。老いのとば口に立った男がむさぼる夢。
ハードボイルドの雄・北方謙三恐るべき情事小説!
性に奔放な34歳の愛人。あどけなさの残る20歳の女。“小さな死”という名のオーガズムを求め、2人の女との情事に溺れ、翻弄される中年男。死を意識しながら、死に恐怖する。男が渇望する真のオーガズムとは?

福音について 勇気凛凛ルリの色
文芸(単行本)
新直木賞作家の爆笑・感涙エッセイ、第3弾。
小説には吐き出しきれぬ思いが、本著にはぎっしりと詰まっている。まさに、嵐のごとく。
爆笑、感涙の最新エッセイ!
直木賞受賞直後の貴重な記録「パニックについて」、香港返還に思う「雪辱について」、自らの身の上を嘆く「三たび巨頭について」等、この1年の喜怒哀楽50編。

怠惰の逆説―広津和郎の人生と文学
文芸(単行本)
小説の隣りは、すぐ人生だ。
柳浪・和郎・桃子、広津家3代にわたる文学的血脈をたどり、稀有なる「散文精神」の軌跡を追う力作評伝。
戦後最大の冤罪事件・松川事件裁判を「みだりに悲観もせず、楽観もせず、生き通して行く」という「散文精神」によってたたかい抜いた広津和郎。無精作家を自称し、生来のニヒリズムを抱えながらも、粘り強く人間の現実と対峙しつづけた文学者の生の軌跡を、明治・大正・昭和にわたる広津家3代の作品と新資料の精緻な読解を通してたどる。

花の生涯(下)
文芸(単行本)
歴史と愛の伝説的名作。
桜田門外の変に至る激動の時代を鮮やかに描く巨匠の流麗な文体!
もはや、疑いもなく、暴徒狂士の襲撃であると知った大老は、こうして、駕籠の中にいることの危険を察知した。とは云え、うっかり、飛出すことは、よけい危い。
(馬鹿者──自分を殺して、どうなると云うのだ)
心の底から、憎悪がつき上げてきた。国粋も尊王も口実で、実際は政治的権力に盲目となっている或る男に煽られて、自分を殺しにやって来た愚かな刺客にすぎない。彼は、たまらなくなって、外へ出ようとし、駕籠の戸に手をかけた瞬間、全身を振り廻すような、激烈な衝撃と共に、あらゆる力を失った。──
乱闘の絵巻はそこかしこに、くりひろげられ、さしもの白雪も、殆ど一面朱にそまっていた。──本文より

花の生涯(上)
文芸(単行本)
華麗なる歴史ロマン!井伊直弼、村山たか女、長野主膳。幕末を生きた男と女の激しい愛。
(まだ、明るい。お城があんなに、美しい夕焼にかがやいているうちは……)主馬は、白い天守閣に、落日が7色の焔の様に輝くのを眺めながら、つぶやいた。
──もう暫く、時を消すために、主馬は堤を下りて、廓の中へ入っていった。
暮れかける頃の廓は、一入、色めき立って見える。せまい小路をはさんで、立ち並ぶ娼家の名は、金亀楼、八千代楼、清滝など。いずれも、紅殻格子の奥のふかい、なまめいた色街のつくりである。
主馬には、伊勢で結ばれた妻があるが、この1両年、とかく病がちだ。そのせいというわけでもないが、さっき、堤の上と下で、目と目をかわした窓の女の顔が、無意識のうちに、消えやらぬ……。──本文より

境界
文芸(単行本)
正常なのに狂気。現実なのに幻夢。……ビルの影なのにプテラノドン。日常まっただ中の妄想迷路に嵌(はま)るのは、あなたか、私か?
1998年春、最前衛の大型新人が放つ衝撃作!
「自分の名前を忘れるとか、そういうことは?」その医者は私に聞く。私がほしいのは栄養剤だけなのに。この時代、崩壊への予感の中、日常生活のねじれを、徹底的に、綿密に描く傑作。

真・天狼星ゾディアック(2)
文芸(単行本)
急展開!天狼星シリーズの決定版!カラオケボックスから消えて、切断された男。最後に聴いた邪悪な音楽とは?
世紀末の怪事件「東京ヴァンパイア」の解決へ、ついに伊集院大介が動き出した!殺された中年男性が持っていた謎のCD、渋谷のカラオケボックスで秘かに売買される奇怪な「ゾディアックカード」……。聞き込みを続ける大介に、さらに不吉な知らせが!?

いわめの歯ぎしり
文芸(単行本)
世の中、何だかおかしくないか。
マナーと言わず行儀と言え。1700円のチャーシューメン!?消え行く言葉と地名……。胸のすく痛快辛口エッセイ。
ごまめより、もうちょっと格好がよくて、まもなくこの地球上からいなくなるというような生き物はいないものだろうかと探してみたら、いた。イワメという淡水魚である。並みの辞書には載っていない。アマゴの変種で絶滅危惧種に指定されている。変種、つまりへそ曲がりで間もなく絶滅する種……それが歯ぎしりをしている。

小説の快楽
文芸(単行本)
後藤文学の原点をあかす随筆集。
小説の快楽とは何か?読む=書く。メビウスの帯。現代文学を走り続ける作家の禁煙体験から「千円札小説論」まで。
千円札の表は夏目漱石である。しかし漱石がいかに大文豪であっても、表だけではニセ1000円札である。表と裏があってはじめて本物の1000円札である。小説も同じである。書くことが表だとすれば、読むことは裏である。書くこと/読むことが、表裏一体となってはじめて小説である。これが私の「1000円札小説論」である。私の「小説の快楽」は、この1000円札小説論に基づいている。

二人の死者のためのマズルカ
文芸(単行本)
ノーベル文学賞受賞作家本邦初訳、伝説的名作!
スペイン、ガリシア地方を戦慄させた一族の殺人、愛憎、セックスの魔力!
2人の死者とは、2つの一族のアフォウトとモウチョを指す。両者が死んだ1936年の11月と1940年の1月の2回だけ、盲人のアコーディオン弾きガウデンシオはマズルカ「わが愛しのマリアンヌ」を奏する。最初は喪に服するために、2度目は歓喜の気持を表すために。
舞台を故郷ガリシアにおいたノーベル賞作家の自伝的長編!
小説はラサロ・コデサルの死によって始まる。彼はモロッコの戦争に出征していて、ある日、裸のアデガの姿を頭に描きイチジクの木の下で自慰している最中にモーロ人に襲われ殺される。──その時以来、山の稜線は消え、歴史の波は、ガリシアの山村にも押し寄せる。──「あとがき」から

おんな飛脚人
文芸(単行本)
江戸庶民の人情とほのかな恋。心温まる初の長編時代小説。
大江戸に娘飛脚はただ1人。走れば爽やかな風を呼ぶ。
「今日はなんという吉日だろう。いっぺんに2人も奉公してくれるなんて。しかもさ、韋駄天の化身のような2人じゃないかね」「おまけに名前が十六屋にふさわしいですよ」「十六夜の月にちなんで、円(まる)いのまどかに」とおかみさん。「清く澄んだ清太郎です」本人が名乗った。これも縁というものだろうね」おかみさんが目を細めた。――(本文より)

喜知次
文芸(単行本)
財政難に揺れる東北地方の小藩で、祐筆頭の伜が権力抗争の暗部を見つめながら藩政改革を目指し、自立するまでを描く。
友人の父が暗殺された!抗争渦巻く東北の小藩の若者は理想を信じて改革をめざした。
時代小説大賞受賞第1作
「藤沢周平氏を想起させる」と絶賛された受賞作『霧の橋』に続く感涙の物語。