文芸(単行本)作品一覧

空から光が降りてくる(上)
文芸(単行本)
マキナニー、『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』で見せた、あの輝きを越える本格長編。
最高のN.Y.ノヴェル
N.Y.の有名出版社の若き編集者ラッセル・キャロウェイは、大学時代の親友ジェフ・ピアースをスター作家に押し上げ、自身も脚光を浴びはじめる。しかし、彗星のごとき名声の上昇が、社の重鎮ハロルド・ストーンの不評を買ってしまう。社での立場に危うさを感じたラッセルは、社主の妹と謀って自社買収へと動き出す……同時代アメリカ小説の頂点を極める最高傑作。

失楽園 愛蔵版
文芸(単行本)
絶体愛の讃歌、記念碑的名作!
究極の愛のかたちを希求する男女の潔さを描き、大反響をまき起こした恋愛文学の金字塔!
『失楽園』の連載を書き終えて、正直な感想は「疲れた」の一語に尽きる。わたしは今回の小説を書きながら恋をしていたが、それは現実と夢と交錯しながらのもので、くわえて過去の恋や、その折々にきいて感じた音楽や情景なども思い起こし、いわゆる圧倒的な恋愛状態に浸って、書き続けるように努めてきた。そのことはまた、毎日の構想を練り、原稿を書く段階になるたびに、自らが久木と凛子になりきることで、これほど深く、主人公にのり移って書いたことはなかった。ともかくいま、わたしは小説が頭や知識でなく、全身で書く格闘技であることを改めて知った。――渡辺淳一

人間になりかけたライオン
文芸(単行本)
ぼくって誰?
自分を見失ってしまった人、新しい出発を目指す人に。
「ぼくを探しに」の著者が贈る、自分探しの旅。
さあ、シェルビーおじさんがとびきり変なライオンのお話をしてあげよう。何しろこんな変なライオンはおじさんも見たことがない……えーと、あれは12月17日の金曜日、シカゴでのことだった。よく覚えている。何しろ、その日は雪がぬかるみはじめて……いや、やはりもっと前から話を始めよう。このライオンがまだ小さかった頃からだ。いいね。

秒速10センチの越冬
文芸(単行本)
おれのくそったれな労働の日々。
粗野で繊細、シニカルで純情。独自の文体で「現在」をとらえる各紙誌絶賛の群像新人賞受賞作。
【選評より】
●『秒速10センチの越冬』を推した。これはいわゆる「フリーター」の生活と労働を描いたものだが、ここには数年前まで跋扈したような軽さがまだ残っていながら、同時にそれが危うくなりホームレスとの境界に近づいているような曖昧な状態がとらえられている。──柄谷行人
●リアリズムの鮮烈さが長所といってよい。「敗北」した自分と他人との「関係」を淡々とけれん味ない文体で語っているけれど、風刺と抵抗の気分が溌刺としていて、ひとつの青春風景を書き抜いていた。──李恢成

夢時計(下)
文芸(単行本)
男と女が出あうとき。いくつかの家族、人のかかわり。夢と夢がぶつかり、物語はいよいよ佳境!
「よくいらっしゃるんですか、こういうところ」
明かりを落とした廊下を歩きながら、美夕は声をひそめて確かめずにはいられなかった。「さあ、何10年ぶりだろう。若かった頃はね」「今でも度々通ってるみたい」「冗談じゃない。お墓の中から亡霊が湧いたようなもんだ」「亡霊とのデートなんて素敵だわ」「素敵なのか、凄まじいのか、ぼくにはわからない……」部屋の暑さがたちまちコートを脱がせ、服を剥ぎとった。その後が生々しい夢の中の出来事だった。――(本文より)

夢時計(上)
文芸(単行本)
夢の時計がまわるとき。現代を生きるわれわれが待ち望んだ迫真の家庭小説!
「バラードの心境だと言われたが、元気そうではないですか」
湯気をあげる鍋を挟んでビールのコップを合わせると、晃作は正面からしげしげと美夕の顔を覗きこんだ。目尻の下に刻まれた微かな皺は彼女がもう野放図に若くはないことを示していたが、かえってそこに30幾年かを過ごした静かな成熟の影が溜められているようで彼は目を離せなかった。「中谷さんにお会いしているからですわ」「少しばかりおかしな初老ですからね」「おかしいのも、初老も、素敵です」――(本文より)

伊勢の闇から
文芸(単行本)
社(やしろ)の杜(もり)深く、信仰の古層に、浮きつ沈みつ。女のさすらい。旅と古典でふちどる古代の神々……。碩学が挑んだ傑作評論。
「たけだけしく残酷な女神たち英雄たち、デメーテルやオデュッセウス、ヴァルキュリアやジークフリートの世界とは全くさま変り、刻薄な何物かの恣意に弄ばれて、よるべなくさまよう、われわれの英雄や巫女たちの、たどたどしい足どり。」(あとがきより)

木霊風説
文芸(単行本)
東国、未だ平らかならず!
平将門出現に揺れる東国の野を風の如く駆け抜け、北へ追われた者たちへの鎮魂と再生の叙情詩(サーガ)。
時代小説大賞受賞作家、渾身の書き下ろし長編。

クリスマスの天使
文芸(単行本)
この冬、心の暖炉に灯を灯す、クリスマスの“奇跡”
優しく、暖かく、純粋な気持ちを忘れないために、あなたに贈る最高の1冊。
ママが病気で亡くなった。一番大きなショックを受けたのはパパだった。トレードマークの笑顔は消え、得意のギターもやめてしまった。感謝祭もクリスマスも取りやめだ、とパパは言う……。でも、グランマが話してくれた。「人生はいつまでも同じではないわ。いまは信じられないかもしれないけれど、いつか笑える日も必ずやってくる。頭を上げて心を開けば、必ずそういう日がやってくるのよ」

エア・ホスピタル
文芸(単行本)
現役医師がハードに描く書下ろしサスペンス!外科医VS.テロリスト
金持ちだけを患者にする超ハイテク病院が占拠された。素手で闘う男の武器は、最新医療機器だけだった!
外科医・鷹木真二郎は羽田空港で転落事故に遭い、新設のエア・ホスピタルに運びこまれた。通称AHと呼ばれるこの病院は、最高の技術と設備を誇るが、またその診療のあり方から金持ち相手の道楽病院と揶揄されていた。しかし、鷹木の入院直後、何者かに占拠され院内の機能は停止、修羅場と化す……。
鷹木はたった1人で犯人グループに宣戦を布告した。

美男忠臣蔵
文芸(単行本)
全く新しい忠臣蔵
美しく戦った、綱吉・柳沢吉保も大石父子・堀部安兵衛も!幕閣の危機を、意表をつく筆致で描く推理作家協会賞受賞作家の傑作。
「手前の顔に、何かついておりますか」大石は笑った。「いいや、あまりの若さにいささか驚き申しただけ」大石は30代だといっても通るほど、見た目が若い。柳沢吉保が身ひとつでここまで来られたのは無論綱吉の引きがあったに他ならないが、組織のなかで生き残るためには、実績よりも観相の力量が重要である。味方にして役に立つ男か、信用できる男か、あるいは敵にすべきでないから味方にしたほうがいいのか。それぞれ見極めてゆかぬことには足を掬われる。「御事(おこと)は――」つい吉保の口をついて言葉が出た。「いたく晴れ晴れとした顔をしておられる」「やりたいことはすべてやり尽くし申しましたゆえ」――(本文から)

お局さまのひとりごと
文芸(単行本)
NHK人気アナウンサーの素敵な生き方アドバイス!
世間の大波小波を乗り越え浮き世のしがらみを楽しむ達人の極意!
私は結構“派手”なのだ。よく「2キロ先からも広瀬さんが来たとわかる」といわれる。スパンコール〈略〉や、豹やらライオンやらの野生動物の描かれている服など平気で着ているからだ。それもラジオの仕事の時は特に。“何もラジオでそんなにしゃれこまなくたって”といつもいわれるが、姿が見えないからとGパンにTシャツ、化粧なしではまるで家にいるようで、神経が弛緩してしまう。
スタジオはわたしの戦場。一国一城の主としてのぞまなくては。お招きするお客様にも失礼千万、そう思ってひたすら洋服に授業料を払ってきたのだ。〈本文より〉

二宮金次郎
文芸(単行本)
修身の模範か、先見力のある官僚か?
極貧の淵より異例の抜擢をうけ、荒廃した人心と土地を見事に甦らせた農政家の実像に迫る書下ろし長編歴史小説。
二宮金次郎には、どうしても国策に密着したかのごとき、うさん臭さがつきまとう。
私も、二宮金次郎は、好きになれない人物であった。
だが、私の歴史長編のなかに「地方巧者」を重視する系列がある。
地方は町方に対する農村の呼称で、転じて田畑の事、ひいては農政全般を指す。巧者は巧みな人である。言い替えれば、地方巧者は農事の専門家であり、優秀な地方行政官といえよう。
このような目で地方巧者を探すと、江戸時代後期の二宮金次郎の姿がクローズアップされたのである。(「あとがき」より)

失跡
文芸(単行本)
この誘拐の本当の狙いは何なのか。犯人が自ら警察に通報した理由は?10年前に失踪した女性と事件の関係は!?実力派が放つ書き下ろし警察ミステリー。
薬害問題で、製薬会社側の立場に立った雑誌の編集をしている倉沢の娘が誘拐された。犯人は倉沢だけでなく製薬会社側をも脅迫してきた。倉沢には10年前に失踪した恋人がおり、その女性と誘拐事件の関連に疑いを持つ。所轄の下谷(したや)中央署の矢尋(やひろ)・知坂(ちさか)両刑事も独自の捜査を続けていた。

推理日記PART8
文芸(単行本)
驕らず、見くびらず、持ち上げず──ミステリーエッセイ堂々の第8弾!
しかし、その個所を、おかしいなと思って通り過ぎた私は、最後になって、ああそうだったのかと、改めて思い知らされたわけである。とにかく、この小説は、一言半句ゆるがせにしないで読む必要がある。技法や文章についてだけ書いたが、作品のテーマ、謎の深みなど、すべてにおいて、1級の作品である。
●推理作家協会賞・短編部門の受賞作
●井沢元彦氏『隠された帝』について
●乃南アサ氏『風紋』
●浅田次郎氏『地下鉄(メトロ)に乗って』と小嵐九八郎氏『刑務所ものがたり』に関する雑談
●藤田宜永氏『じっとこのまま』 ほか

架空取引
文芸(単行本)
これこそまさに男の読むべき小説である
この詐欺は8年前にはめられた事件とそっくりだ――。九州から呼び戻された中年男が、不良債権にあえぐノンバンクに潜む罠に挑む。
現代の勇者とは?大型新人の書下ろしビジネス・サスペンス
現代の勇者の物語
男が男を験(ため)される場は絶海や荒野に、あるいは汚れた街にだけあるわけではない。職場や家庭もまた男の戦場である。むしろそうした身近な戦場でこそ、男の真価は験されるだろう。
大銀行傘下のリース会社を舞台に、1度は敗れた男の自己再生と企業悪への孤独な挑戦を描いた本書は、現代人にとって真の勇気とは何かを教えてくれる。正確で美しい文体とリアルで魅力的な登場人物、これこそまさに男の読むべき小説である。――郷原宏(文芸評論家)

妖都
文芸(単行本)
冥府にいざなう〈死者〉が東京を跋扈する!
ロック歌手の飛び降り自殺を機に頻発する不可解な殺人、自殺、事故。凶念が都市を覆いつくすとき、世界は一変した!
●正真正銘の“怪物”――綾辻行人
一読して震撼、再読して脱帽、いまだに興奮醒めやらず。この傑作のためならば、どんな讃辞も惜しくはないと思う。その文章力、その構成力、その感性、その眼差し……すべてが刮目に値する。断言しよう。津原泰水は、世紀末日本のホラー小説界に出現した正真正銘の“怪物”である。
●微睡(まどろみ)の出血の陶酔――井上雅彦
60年代がジョージ・A・ロメロを遺して往ったように、90年代は津原泰水を得た。彼の言葉は、闇の結晶。人外の戦慄も、深層の魔性も、眩しく煌めき、突き刺さる。あたかも微睡の出血の陶酔。生ける屍(リヴィング・デッド)ともゾンビーとも違う、全く新しい異形。世紀末はその肖像を描きうる、稀なる幻視者と遂に出会えた。
●進化であって変容ではない――小野不由美
これは純粋にホラーを愛する作者によって書かれた、純粋なホラー作品なのだと思う。ホラーという様式を限りなく美しく踏襲しながら、既成の枠を突き抜けて新しいステージに飛翔していった。これは進化であって変容ではない。創造であって破壊ではない。だからこそ、打ちのめされる心地はしても、同時にとても嬉しい。
●本格ホラーの超新星――菊地秀行
ついに本格ホラーの超新星が現われた。ただし、この星は、読者にありきたりな満足と幸福を与えるきら星ではない。お行儀のよい感想などすべて吸引して口には出させず、暗澹とその場に立ちすくませる暗い魔の星だ。津原泰水、良識の呪いを一身に受けることだろう。だからこそ、真のホラーは君を心から歓迎する。

苦い血
文芸(単行本)
祖国を信じられない美女の凄絶な賭け!
母とともに命がけで海を渡り、香港に密入国したアンナ・フォン。生活のために暗い過去を背負った彼女は、自分の人生を取り戻すべく、ある、“賭け”に打って出る。
思わず引き込まれて読んだ。ここには読み手が安心して物語の世界にどっぷりと浸るための、土台の確かさが感じられる。サスペンスの名手、カトリーヌ・アルレーの一連の秀作を思わせるが、この作品には、アルレーが表現し得なかったアジア的力強さがある。繊細さと大胆さを兼ね備えた、頼もしい作家の誕生である。――小池真理子

吉野川
文芸(単行本)
大原文学の原点に佇つ
四国の大河・吉野川の源近い清流の岸に生い立った少女。父母の愛に包まれたその生涯の思いをつづる書下ろし小説
『アブラハムの幕舎』の田沢衿子、『地上を旅する者』の番場かめ、『忍びてゆかな』の津田治子、『今日ある命』の三ヶ島葭子、『ベンガルの憂愁』の岡倉天心、『彼もまた神の愛でし子か』の洲之内徹――愛の苦悩を抱え、負の個性を生き抜いた女と男を、倦むことなく描いてやまない大原文学の情念の原点がここにある。

夜明け前の女たち
文芸(単行本)
幕末、維新時代を動かした男を支え、ひたむきに生きた女たち。 坂本龍馬を愛した寺田屋お登勢、お龍、桂小五郎を支えた幾松……、女たちの愛と勇気が、男たちを歴史に残した! 新しい日本の夜明けは、彼女たちなしでは語れない! この国の夜が明けるのにはまだ時間がかかりますね。でも、夜明けをみちびくのは、わたしたち女性ですよ。――(本文より)