文芸(単行本)作品一覧

悪の五輪
文芸(単行本)
1963年、博打をしのぎにしている白壁一家の人見稀郎は、翌年の東京オリンピック公式記録映画監督を降板した黒澤明の後任に中堅監督の錦田をねじ込んで、興行界に打って出るべく動き出す。オリンピック組織委員会には政治家、財界関係者が名を連ねており、あらゆる業種が莫大な利権に群がっていた。日本が劇的に変貌を遂げた昭和の東京五輪をモチーフに、現代エンターテインメント小説の旗手が放つ、長編社会派クライムノベル。
1963年3月21日、翌年の東京オリンピック開催を前に、公式記録映画の監督を務めることになっていた黒澤明が降板した。
博打をしのぎにしている白壁一家の人見稀郎は、親分からの指示を受け、中堅監督の錦田を後任にねじ込んで、興行界に打って出るべく動き出す。
オリンピック組織委員会には政治家、財界関係者が名を連ねており、その下には土建業者や右翼、ヤクザ、さらには警察までもが蠢いており、あらゆる業種が莫大な利権に群がっている。
稀郎は記録映画の監督選定に権限を持つ委員たちの周辺を洗い、金や女を使って言うことを聞かせようとする。
東京が、日本が劇的に変貌を遂げた昭和の東京オリンピックをモチーフに、現代エンターテインメント小説の旗手が放つ、長編社会派クライムノベル。

魔法を召し上がれ
文芸(単行本)
マジシャンはノーと言ってはいけない。
相手が恋人を殺した男でも。
圧巻の超大作!
「ぼくは自分が消える前に、魔法についての話をしよう」
湾岸町のレストランで働くマジシャン・ヒカル。テーブルを巡り、料理を楽しむ客にマジックを披露している。高校時代、突然この世から消えた同級生の少女・美波を彼は忘れられない。ある日現れた、彼女の死にかかわりをもつ男。美波はなぜ死んだのか。時を同じくしてヒカルは、伝説的な老マジシャンからロボットを託される。一人と一体、そして彼らを取り巻く人々の再生の物語。

おじいわんソーヤ
文芸(単行本)
おじいちゃん犬だから、おじいわん。
一緒に時を重ねていく、幸せと、せつなさと。
「昔飼っていた犬に似ている」と人に言われる、懐かしい顔の白い犬、
16歳のソーヤは、10歳でうちに来て、家族になりました。
ツイッターで静かな人気を呼ぶ、 飼い主(@goen0414)の日々の写真と言葉。
イラストレーター髙籏将雄とデザイナー川名潤とのコラボで、小さなフォトブックができました。
忘れていた大事な何かを思い出させてくれる1冊です。
【目次】
おじいわんと散歩/おじいわんにも花/おじいわんとセーター/老犬のかたち/少しずつ老いていくということ/
保護犬を迎えて/ともに暮らす日々、ささやかな幸せ

皇后雅子 妃から后への三十年
文芸(単行本)
皇太子の結婚をめぐって宮内庁が強く要請し、国内メディアが沈黙することを承諾した報道自粛の申し合わせ。それが成ることによって、目的とはまったくちがった、誰も予測していなかったことが起きた。雅子妃決定に至るまでの「事情」とはいったいどのようなものだったのか……。当時朝日新聞の皇室記者として取材の最前線にいた著者が、次の時代を前に歴史の証言として残す「ほんとうの物語」。
2019年4月をもって31年を数えた「平成」は終わり、つぎの時代が始まります。また、新天皇は昨年に結婚25周年の銀婚式を迎えました。皇太子徳仁親王と小和田雅子さんの結婚決定をめぐるストーリーには、いまだ伏せられたままの「事情」があります。それを知ることによって初めて、皇太子と雅子さんの結婚が決まるまでに何があったのかの全容が明らかになります。その「事情」とは、皇太子のお妃選びをめぐって報道機関が取り決めた「報道自粛」に関係しています。当時、宮内庁が強く要請し、国内メディアが議論の末に承諾した報道自粛の申し合わせ。それが成ることによって、目的とはまったくちがった、誰も予測していなかったことが起きました。報道自粛は、はからずも皇太子の結婚そのものに対して「足かせ」となると同時に、幅広いメディアの沈黙につながりました。結果として皇太子の結婚をめぐる世論の形成は阻害され、皇室についてさまざまな議論がなされる環境を損なってしまったのです。まさに「最初のボタンのかけちがい」がその後の東宮家の運命と報道のありかたを決めてしまったといえましょう。
皇太子妃決定に至るまでに宮内庁はどう動いたのか、「お妃選び」の実際はどんなものだったのか、皇太子自身はどう考え、行動したのか……。本書は、皇太子夫妻が、国の象徴であり国民統合の象徴である天皇と皇后になるのを前に、当時朝日新聞の皇室記者として取材の最前線にいた著者が、「ほんとうの物語」を歴史の証言として書き残そうとするものです。

偶然の聖地
文芸(単行本)
小説という、旅に出る。
国、ジェンダー、SNS――ボーダーなき時代に、鬼才・宮内悠介が届ける世界地図。本文に300を超える「註」がついた、最新長編小説。
秋のあとに訪れる短い春、旅春。それは、時空がかかる病である――。人間ではなく世界の不具合を治す“世界医”。密室で発見されたミイラ化遺体。カトマンズの日本食店のカツ丼の味。宇宙エレベーターを奏でる巨人。世界一つまらない街はどこか・・・・・・。オーディオ・コメンタリーのように親密な325個の注釈にガイドされながら楽しく巡る、宮内版“すばらしい世界旅行”。“偶然の旅行者”たちはイシュクト山を目指す。合い言葉は、「迷ったら右」!――大森望(書評家)
この小説を体感していると、混沌と秩序って、向こう岸にあるのではなく、隣にあるのではないかと思えてくる。生きる上で生じたバグに体を浸し、誰かと誰かのハブになる。バグとハブもまた、隣にあるのではないか。1ページごとに困惑がやってくる。困惑がやがて快楽に変わる。困惑と快楽、これもまた隣にある。一体どういうことだろう。――武田砂鉄(ライター)

ていん島の記
文芸(単行本)
聖山アマンディをいだき、遥か上空、雲の海に浮かぶ島“ていん”。民は山と川と空の三つの部族に分かれ、互いの領分を守って暮らしていたが、天が荒れて作物は育たず、獣の数も激減。長きにわたる凶作と飢えの末、部族間のいがみ合いは深刻化していた。仲間を飢餓から救うため、封じられし狼神の力を望んだ山人のムウマは、山と川の会合が行われた日、川人のライラとともに、空人の少女が川の聖地に墜落するのを目撃し――。
決して交わるはずのなかった三人が出会うとき、島の運命は大きく変転する!
偽りの平穏に、運命に、抗え。
ベストセラー<僕僕先生>シリーズ著者が、新しい時代の幕開けに放つ、英雄冒険ファンタジーの極み!

友達未遂
文芸(単行本)
「これでみんな共犯者ね」。少女たちは傷つき、悩み、自分たちの道を選び取る。全寮制女子高である星華高等学校は、街から離れた山奥にあり、規律に厳しいことで有名だった。さらに同校には「マザー制度」というものがある。新入生を「チャイルド」、3年生を「マザー」といって寝食を共にしつつルールやマナーを教えるというものだ。伝統と格式のある学園の寮で、不審な事件が次々と起きルームメイト4人が巻き込まれていく。
――書評家 大矢博子氏「すべての世代に薦めたい一冊だ」
四人が悩みを分かち合い助け合うというような、安易な展開ではない。彼女たちは友達ですらない、ただのルームメイトだ。だがそのルームメイトがわずかな綻びや変化を見たとき、彼女たちがそれぞれどんな行動に出たか、どうかじっくり確かめてほしい。自分のことで手一杯だった少女が、きっかけはどうであれ、動機は何であれ、他者に目を向ける――それは「自分だけの世界」から「他者と関わる世界」への転換点なのである。
――書評家 村上貴史氏「ひりひりとした緊張感に支配された物語」
いや素晴らしい。
とにかく素晴らしい。
そう手放しで褒め称えたくなるほどに、『友達未遂』は素晴らしい。
〈ストーリー〉
創立130年の全寮制年女子高である星華高等学校は、街から離れた山奥にあり規律に厳しいことで地元では有名だった。さらに同校には特徴的な「マザー制度」というものがある。3年生を「マザー」、新入生を「チャイルド」といって寝食を共にしつつルールやマナーを教えるというものだ。入学式の3週間前早々に同校にやってきた一之瀬茜は、家庭に居場所がなかった。一人で生きていくことを誓っていた茜はしかし、マザーである緑川桜子にかわいがられ、とまどう。そんな茜の周りである日不審な事件が起きた。茜と桜子、ルームメイトの真琴と千尋の4人は事件をきっかけに自分たちの運命と向き合うことになって・・・・・・。

エンド オブ スカイ
文芸(単行本)
天(そら)の涯(はて)に希望はあるか。
23世紀、人々はごく一般的になったゲノム編集技術によって老いや病から緩やかに遠ざかりつつあった。ただ、ひとつ、”霧の病(ダークフォグ)”と呼ばれる原因不明の突然死をのぞいて。世界最高峰の頭脳が集まる香港島で、遺伝子工学の権威、ヒナコ・神崎博士は、海から現れたひとりの少年と出会った・・・・・・。
完璧な世界(パーフェクト・ワールド)で、滅びのカウントダウンが始まる。

落梅の賦
文芸(単行本)
「俺は、武田を食うぞ」戦国最強を誇った甲斐武田家の落日。家を滅ぼす二人の裏切り者が出る。一人は、武田信玄の腹違いの弟、武田六郎信友。そして、一族衆筆頭、穴山梅雪。「武田の海」を任された二人は、なぜ悲劇の引き金を引いたのか――。歴史小説界で、いま最も注目される「ヒストリーテラー」武川佑の第二作長編。
「俺は、武田を食うぞ」
戦国最強を誇った甲斐武田家の落日。
家を滅ぼす二人の裏切り者が出る。
一人は、武田信玄の腹違いの弟、武田六郎信友。
そして、一族衆筆頭、穴山梅雪。
「武田の海」を任された二人は、なぜ悲劇の引き金を引いたのか――。
歴史小説界で、いま最も注目される「ヒストリーテラー」武川佑の第二作長編。

掌篇歳時記 春夏
文芸(単行本)
麋角解(さわしかのつのおつる)、東風解凍(とうふうこおりをとく)、桃始笑(ももはじめてわらう)――あまりにも美しい、四季を彩る“季節の名前”。
古来伝わる「二十四節気(にじゅうしせっき)七十二候(しちじゅうにこう)」に導かれ、手練れの十二人がつむぐ匂やかな小説集。
二十四節気、七十二候
萌え出ずる春、青々と爽やかな夏、紅葉に染まる秋、しんと静まった冬――。四つの季節をそれぞれ六等分した“二十四節気”は、春の兆しが現れる立春、次第に夏めく立夏、夜が最も長い冬至などを示す。
それをさらに三等分した“七十二候”。暖かな雨が降り注ぎ大地が潤う「土脉潤起(どみゃくうるおいおこる)」、蛍が姿を現し始める「腐草蛍為(ふそうほたるとなる)」など、その時期に起こる出来事をそのまま名前にした。
移ろいゆく季節にここまで細やかに、そして美しい名前をつけた古(いにしえ)の人々。旧暦の魅力を、掌に収まるような十二篇の小さな物語を通して、感じてみませんか。

美しい顔
文芸(単行本)
未曾有の災害に襲われた町。
高校生のサナエは、幼い弟を連れて避難所に身を寄せていた。
混乱の中、押し寄せるマスコミの取材にねじれた高揚感を抱くサナエ。
だがいつまでも目を背け続けるわけにはいかない、いつか訪れなければならない場所があった。
強く、脆く、そして激しく--
喪失の悲しみと絶望の底からの、帰還の旅路。
第61回群像新人文学賞受賞作

余物語
文芸(単行本)
”斧乃木余接とも、思えば長い付き合いになった”
老倉育に児童虐待の専門家に仕立て上げられた阿良々木暦は、家住准教授から相談を持ち掛けられる。
我が子を檻に入れたまま三日も家に帰っていないという。わけあって斧乃木余接と現場に急行した彼が、そこで見たものは。
これぞ現代の怪異! 怪異! 怪異!
【収録作】よつぎバディ/よつぎシャドウ

進撃の巨人 果てに咲く薔薇 愛蔵版
文芸(単行本)
全米、驚愕……そして感動。アメリカが産んだ『巨人』は、超大型巨人に立ち向かう駐屯兵団、孤高の兵士と貴族の少女の物語。超大型巨人が現れたあの日、人類を守るため奮闘した駐屯兵団がいた。アメリカで産まれた『進撃の巨人』のあの日の物語が、海を渡り日本に凱旋!
全米、驚愕……そして感動。
アメリカが産んだ『巨人』は、超大型巨人に立ち向かう
駐屯兵団、孤高の兵士と貴族の少女の物語。
超大型巨人が現れたあの日、人類を守るため奮闘した駐屯兵団がいた。
巨人の侵攻をも感じぬ壁の最奥、ウォール・シーナの中で安穏と暮らす貴族たち。
そこで育った憲兵団大将の末娘、ロザリー・デュマルクは壁の向こうに思いを馳せていた。
彼女は父の制止を振り切り、巨人との戦いの最前線、トロスト区駐屯兵団へと入団する。
そこで彼女を待ち構えていたのは、ヴェールマン隊長が指揮する堕落した駐屯兵団と、
駐屯兵団最強にして、孤高の兵士ジャックスによる理不尽なまでのしごき、
そして雪の日にのみ現れ兵士を屠る、伝説の奇行種ゴブラーの襲撃だった。
苦難を乗り越え、自らの居場所を手に入れつつあるロザリーだったが、
彼女の前に、人類を絶望の淵へとたたき込む超大型巨人が再び姿を現す……!
アメリカで産まれた『進撃の巨人』のあの日の物語が、海を渡り日本に凱旋!

忘れない味 「食べる」をめぐる27篇
文芸(単行本)
食べることは生きること。日々の暮らしのこと。そして、時空を超えてすべての人をつなげること。
エッセイスト平松洋子が選んだ、小説、エッセイ、詩、俳句、漫画などよりぬきの27篇。
「食」の面白さ・奥深さを探り、個々の作品の魅力を届ける食文学アンソロジーです。
【収録作品】(掲載順)
・佐野洋子「天井からぶら下がっていたそば」
・伊藤比呂美「歪ませないように」
・旦敬介「初めてのフェイジョアーダ」
・野呂邦暢「白桃」
・林芙美子「風琴と魚の町」
・町田康「半ラーメンへの憎悪」
・深沢七郎「カタギの舌で味わう」
・鏑木清方「胡瓜」
・江國香織「すいかの匂い」
・野見山暁治「チャカホイと軍人と女 ――“林芙美子”」
・間村俊一 「ぞろり――食にまつはる十一句」
・堀江敏幸「珈琲と馬鈴薯」
・中島京子「妻が椎茸だったころ」
・益田ミリ 『マリコ、うまくいくよ』より「会社では、なんだか宙ぶらりん」
・吉村昭「白い御飯」
・山崎佳代子「ジェネリカの青い実」
・友川カズキ「眼と舌の転戦」
・平松洋子「黒曜石」
・石牟礼道子『椿の海の記』「第八章 雪河原」より
・美濃部美津子「菊正をこよなく愛した」
・南伸坊「うな重はコマル」
・高橋久美子「仲間」
・川上弘美「少し曇った朝」
・山田太一「食べることの羞恥」
・石垣りん「鬼の食事」
・吉本隆明「梅色吐息」
・ハルノ宵子「最後の晩餐」
食べることは生きること。日々の暮らしのこと。そして、時空を超えてすべての人をつなげること。エッセイスト平松洋子が選んだ、小説、エッセイ、詩、俳句などよりぬきの27篇。「食」の面白さ・奥深さを探り、個々の作品の魅力を届ける食文学アンソロジーです。

バッドビート
文芸(単行本)
この人生(ギャンブル)、ぜってえ勝ちてえ。「ここじゃないどこか」に行きたい幼馴染みのワタルとタカトは、5年前に地元の島にできた総合カジノ施設「レイ・ランド」の恩恵など受けることもなく、ヤクザの下仕事をするチンピラ。兄貴分の「蓮」に振られた「チャンス」=ただの「荷物運び」が一転、気づくと目の前には事切れた3人の遺体が――。ハメられたら、ハメ返す。ノンストップギャンブルミステリー。
この人生(ギャンブル)、ぜってえ勝ちてえ。
「ここじゃないどこか」に行きたい幼馴染みのワタルとタカトは、5年前に地元の島にできた総合カジノ施設「レイ・ランド」の恩恵など受けることもなく、ヤクザの下仕事をするチンピラ。兄貴分の「蓮」に振られた「チャンス」=ただの「荷物運び」が一転、気づくと目の前には事切れた3人の遺体が――。ハメられたら、ハメ返す。ノンストップギャンブルミステリー。

元禄五芒星
文芸(単行本)
「元禄」という、江戸時代のあるひとつのピークにこだわりつづけてきた野口武彦氏が「平成」の終わりを見据えて放つ。将軍綱吉の治世後期、元禄から宝永は経済バブルの崩壊と災害が表裏の時代だった。漠然とした不安と鬱屈が世を覆うとき、人びとはいかに生きたか。美しく死ねた者、なまじ生き残ってしまった者、己が才覚の扱いに悶える者。人生のさまざまな姿が異常なまでにクッキリと浮かび上がった魔術的な時空間を描く五篇。
「元禄」という、江戸時代のあるひとつのピークにこだわりつづけてきた野口武彦氏。その野口氏が「平成」という時代の終わりを見据えて放ったのが本書『元禄五芒星』です。
将軍綱吉の治世後期、元禄から宝永は経済バブルの崩壊と災害が表裏の時代でした。さらに特筆すべきは、この時代は跡継ぎのいない将軍の時代だったということです。「元禄」の出典は『文選』の「建立元勲、以歴顕禄、福之上也」ですが、この時代は赤穂浪士の名を後世に打ち立てとはいえ、それは果たして「福之上也」というべきか。ちなみに「平成」は『史記』の「内平外成」、『書経』の「地平天成」に拠りますが、そのとおりの時代であったか……。漠然とした不安と鬱屈が世を覆い、先の御代は見えないとき、人びとはいかに生きたのか。死を以ての生の燃焼、なまじ生き残ったがための恨み、己が才を活かせるや否や、才覚でのし上がってからの一抹の寂寥。人生のさまざまな姿が異常なまでにクッキリと浮かび上がった魔術的な時空間を描く五篇をお楽しみください。

山海記
文芸(単行本)
東北の大震災後、水辺の災害の歴史と土地の記憶を辿る旅を続ける彼は、その締めくくりとすべく、大震災と同じ年に台風12号による記録的な豪雨に襲われた紀伊半島に向かった。バスの車窓から見える土砂災害の傷跡を眺める彼の胸中には、クラシック好きで自死した友・唐谷のことなど、さまざまな思いが去来する。現代日本における私小説の名手が、地誌と人びとの営みを見つめて紡ぐ、人生後半のたしかで静謐な姿。
東北の大震災後、水辺の災害の歴史と土地の記憶を辿る旅を続ける彼は、その締めくくりとすべく、大震災と同じ年に台風12号による記録的な豪雨に襲われた紀伊半島に向かう。天嶮の地、大和は十津川村へと走るバスの車窓から見える土砂災害の傷跡を眺める彼の胸中には、かつてこの道を進んだであろう天誅組の志士たちの、これまで訪れた地や出会った人、クラシック好きで自死した友・唐谷のことなど、さまざまな思いが去来する。バスはいよいよ十津川村へと入っていき、谷瀬の吊り橋前で休憩停車する。ここで途中下車した彼は吊り橋を渡る。風に揺れる橋の上で彼は、電気工だったころのこと、中学生時代のことなどを心のなかで唐谷に語りかけるのだった。
二年後、小説の彼の足取りを辿るように、病の癒えつつある「私」はふたたび谷瀬の吊り橋の上に立っていた。橋を渡りながら、「私」は宿のおかみさんと話をした北海道の新十津川町のことを思い出し、唐谷への友情にひとつの答えをみつける。
現代日本における私小説の名手が、地誌と人びとの営みを見つめて紡ぐ、人生後半のたしかで静謐な姿。

貌のない貌 梓凪子の捜査報告書
文芸(単行本)
刑事課強行・盗犯係所属の新人刑事・梓凪子は困惑していた。持ち込まれた案件は畑違いの人探し。依頼主は中国人・宋鈴玉、鈴玉の同行者はなぜか中国領事館職員・王天佑だった。国際政治と人情入り交じる不可解な人探しを続けるうちに、天佑への疑いを深める凪子は、背景を探るために尾行を試みるが――。同時に発生した連続殺人事件にも関与した凪子は、刑事課と警備課の縄張り争いにも巻き込まれることになる。
中国政府の影潜む人探しとシェアハウス殺人を――
追え、どこまででも。
ーーー
元警察官にして日本初の女性白バイ隊員の著者に
島田荘司氏唸る!
「凪子の大格闘と涙を見よ。
こんな筆の女流は今いない」
ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞後第一作
☆☆☆☆
刑事課強行・盗犯係所属の新人刑事・梓凪子は困惑していた。
持ち込まれた案件は畑違いの人探し。依頼主は中国人・宋鈴玉、鈴玉の同行者はなぜか中国領事館職員・王天佑だった。
国際政治と人情入り交じる不可解な人探しを続けるうちに、天佑への疑いを深める凪子は、背景を探るために尾行を試みるが――。
同時に発生した連続殺人事件にも関与した凪子は、刑事課と警備課の縄張り争いにも巻き込まれることになる。
国交問題、民泊、シェアハウス――
暗部を覗き込んだ先に見えてくる真実に、貌はなかった。

暗殺日和はタロットで
文芸(単行本)
占星術界のレジェンド・鏡リュウジ氏が驚嘆するサスペンス誕生! 交通事故で瀕死の重傷を負ったピアニスト星子真琴。心臓移植で一命をとりとめた彼女は、占いで人生を決める孤高の暗殺者・与一と出逢った。与一がタロットで運勢を占うと「オーディションを受けたら、君は死ぬ」という結果に。それでも出場を目指す真琴は、なぜか裏社会の人間たちに命を狙われ……。二人を過酷な運命へと引きずり込む、事件の思わぬ全貌とは?
「タロットを熟知した僕でも伏線の網に絡め取られました。
バイオレントなのに爽快なんて、ちょっとずるい」
――鏡リュウジ氏(心理占星術研究家)、驚嘆!
逆転につぐ逆転、息をもつかせぬサスペンス!
交通事故で瀕死の重傷を負ったピアニスト星子真琴。心臓移植で一命をとりとめた彼女は、占いで人生を決める孤高の暗殺者・与一と出逢った。与一がタロットで運勢を占うと「オーディションを受けたら、君は死ぬ」という結果に。それでもコンクール出場を目指す真琴は、なぜか裏社会の人間たちに命を狙われ……。二人を過酷な運命へと引きずり込む、事件の思わぬ全貌とは?
カードが導く未来は、愛か死か?
悲運のピアニストと孤独な殺し屋のスリリング・ドラマ!

東京笑芸ざんまい わたしの芸能さんぽ
文芸(単行本)
高田文夫の笑芸シリーズ三部作、完結篇! 芸に生きる人間たちを間近で見てきた”生き字引”高田文夫が、エンタメ界のあれやこれやを、洒脱な筆致で書き記した珠玉のエッセイ。お笑い界の歴史街道を、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり寄り道しながら、自由気ままにさんぽします。その道中は、懐かしさ満点のあの芸人がいたり、芸人たちの知られざる素顔が見えたり。この一冊で、東京発全国区の大衆芸能ヒストリーがまるわかり!
高田文夫の笑芸シリーズ三部作、完結篇! 芸に生きる人間たちを間近で見てきた”生き字引”高田文夫が、エンタメ界のあれやこれやを、洒脱な筆致で書き記した珠玉のエッセイ。お笑い界の歴史街道を、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり寄り道しながら、てくてく自由気ままにさんぽします。その道中は、懐かしさ満点のあの芸人がいたり、芸人たちの知られざる素顔が見えたり。この一冊で、東京発全国区の大衆芸能ヒストリーがオールまるわかり!