講談社文庫作品一覧

紫陽花の女
講談社文庫
新幹線「ひかり」号で、ふと隣合わせになった、涼子のはかなく冷たい面影は、さすがのプレイボーイの彼の心をとらえて離さなかった。しかし、涼子の前には、黒い雲のように別れた夫が立ちふさがり、最後の別れの晩、涼子は彼の胸の中ではげしく燃えた。そして堪え入った涼子の眼に、紫陽花を濡らす雨のような涙の玉が落ちる――という表題作「紫陽花の女」をはじめ、冷たい横顔の女にふと浮かぶ哀愁の色を繊細な筆で綴る「孤独な嗚咽」「路傍の令嬢」「処女開花」「蜂蜜色の魅惑」「火と氷の女」の6篇をおさめる。傑作短篇集!

冬の椿
講談社文庫
戦火がいよいよ烈しさを加えて来た昭和19年、画学生・笹田香澄は、母とともに鎌倉に疎開して来た。隣家の青年実業家・瀬木龍彦は、香澄の美しさに惹かれ結婚を申し込んで来るが、香澄の心には同じ研究所の画学生・伊吹慎一の面影が焼きついて離れない。しかし伊吹に赤紙が来て、応召の前夜、香澄は伊吹に抱かれた。……何年か後、香澄は財力にものをいわせた求愛の前にくずれ、瀬木の妻となっていた。しかし戦死を伝えられた伊吹が突然生還し、香澄の情熱は再び燃えあがった。ふとした事で知った革染の美と伊吹への恋が、香澄の前に明るく開けて来る……女の恋と情熱を描く長篇!

スカーフェイス4 デストラップ 警視庁特別捜査第三係・淵神律子
講談社文庫
「SRO」「警視庁ゼロ係」シリーズの著者による、警察書下ろし小説最新の第4弾!
「スカーフェイス」と呼ばれる女性刑事、淵神律子が所属するのは警視庁特別捜査第三係。来年に定年退職予定である坂東雄治刑事から相談事が律子に持ち掛けられる。坂東が敬愛する児童養護施設園長から、施設の卒業生・鷺沢鈴音の行方を捜して欲しいという依頼だった。現時点では事件に巻き込まれた確証がなく警察が乗り出せない事案のため、内々に調査を開始する。
一方、少年らに妻子を惨殺された父親が復讐を誓い、狂気をはらんだ行動を開始するーー。強烈なインパクトを残す女性刑事が活躍する人気シリーズ。

ザ・ジョーカー 新装版
講談社文庫
「殺しは仕事にしたことがない。殺しをしなかったとはいわないが」。あらゆるトラブルを請け負う男、ジョーカー。着手金は百万円で唯一の連絡場所は六本木のバー。噂を聞いた男と女が今宵も厄介事を持ち込んでくる。ジョーカーを動かすのはプライドだけ――。著者の人気ハードボイルドシリーズ第1作 。

ガラスの麒麟 新装版
講談社文庫
17歳の女子高生、安藤麻衣子が通り魔に刺殺された。その同級生・直子を娘に持つ野間は、童話雑誌で挿絵などを描くイラストレーターだ。彼がこれから絵を手掛けようとしていた雑誌への応募作『ガラスの麒麟』の、安藤麻衣子は投稿者でもあった。事件の日から娘・直子は、安藤麻衣子が乗り移ったかのようなことを口走ったりして学校へ行かなくなる。心配な野間は安藤麻衣子の葬儀で出会った養護教諭の神野に娘のことを告白する。神野は、直子のことを知り安藤麻衣子のことにも詳しい女性だった。とびぬけて美しく、すべてに恵まれていた麻衣子の何が死を招き寄せたのか。彼女の書いた『ガラスの麒麟』のように、精一杯首を伸ばし背伸びして、だからとても不安定で壊れやすく細やかな少女たち。その心理を温かく描き、六つの物語を通じて真相に近づいていく連作ミステリーの傑作! 日本推理作家協会賞受賞作。

縁
講談社文庫
嫌なことがあったなら、良いことだってきっとある。
見知らぬ人との予期せぬ「つながり」が、あたたかな奇跡を紡ぎ出す!
本屋大賞第2位! 『ひと』の著者が描く傑作群像劇!
!!初版限定 著者コメント入り「縁結び」しおり封入!!
「霧」
真面目に少年サッカーのコーチをしていた室屋だったが、保護者の間で特定の子を贔屓していると噂が立ってしまい――。
「縁」
再会した同級生が息子の志望する会社に勤めていた。友恵は口利きを頼もうとするが……。
嫌な思いをしても、予期せぬ「縁」に救われることもある。人生の機微を描く傑作群像劇!

ノワールをまとう女
講談社文庫
企業の炎上鎮火を請け負う裏仕事人の西澤奈美は、筋力トレーニングを日課とし、冷蔵庫にはビールと栄養ゼリー。
音楽はオールディーズをこよなく愛し、話し相手はAIのユキエ。
そして、ファッションはいつも黒ずくめ。
大手医薬品メーカーに仕掛けられたデモを鎮めるべく、市民団体に潜入した奈美。
だが、そこでリーダーから紹介された同士とは、リアルな恋人の雪江だった。
新ヒロイン誕生!
第65回江戸川乱歩賞受賞作。

希望のステージ
講談社文庫
舞台に立たせてあげることが、寄り添うこと──市民会館で出演者の医療サポートをする女医の姿を、現役の医師が描く感動の医療小説!
ある医療事故をきっかけに都心の大病院を飛び出した女医・菜々子は、兄が経営する東京近郊の個人病院で働き始める。それから間もなく、中学時代の同級生に誘われ地元の市民会館で、ステージに立つ出演者たちの医療サポートを請け負うことになってしまう……。
──命を削ってでも市民会館の舞台に立とうとする患者たちは、末期癌であったり、白血病であったり、歩行困難者であったりとさまざま。現役の医者が身近な設定で、現代の超高齢社会と高度医療のありようを直視する連作短編集。
文庫化に際し『ステージ・ドクター菜々子が熱くなる瞬間』より改題。

青春の門 第九部 漂流篇
講談社文庫
シベリア横断を足の骨折で断念し、謎の日本人医師(ドクトル)・古謝克己の家で療養することになった伊吹信介。KGBの影に怯えながらも、ドクトルと恋人のタチアナの厳しい指導で現代史やロシア語を学び、新しい生き方に目覚める。歌手として自分らしい歌を探し求めて作詞を試みる牧織江。彼女の存在感に惹かれて担当することにした伝説のディレクター・高円寺竜三は名門レコード会社の内紛に巻き込まれていく。新会社独立に暗躍するフィクサー役の新聞記者・筑紫次郎の真の狙いとは?

私はあなたの瞳の林檎
講談社文庫
ずっとずっと好きで仕方がない、僕の初恋の女の子。でも僕の告白はいつだって笑ってかわされる。この気持ちをどうしたらちゃんと、分かってもらえるのだろうか。表題作をはじめ、思春期のあの頃、誰もが直面したあの壁に、恋のパワーで挑む甘酸っぱすぎる作品集。

本屋の新井
講談社文庫
本は日用品。だから今でも売ってます。オススメです!と言いふらしたい本に出会えると本屋の仕事は楽しいのです。
ときに芥川賞・直木賞よりも売れる「新井賞」を独自に設立した型破り書店員が綴る「本屋の裏側」。その仕事を知れば、本屋を覗き、並んだ本を手に取り、本を買うのがさらに楽しく、愛おしくなる!
文庫になりました。
3年経っても相変わらず
「本屋の新井」です。
本は日用品です。
売れない時代に売れたら、喜びもひとしお。
工夫の成果が見えるのも、売れない時代ならでは。
だから今日も、愛を込めてPOPを書きます。
誰に頼まれていなくても、たとえ1銭も出なくても、
読んでおもしろかった本についてしたためずにはいられないのです、書店員という生き物は。

雨やどり 駕籠屋春秋 新三と太十
講談社文庫
駕籠舁きたちの心意気に涙が止まらない。
優しく爽やかな江戸の人情
これぞ、岡本さとるの真骨頂!
文庫書下ろし
おそのという女が川へ身投げするのを防いだ駕籠舁き・太十。自分のせいで何人もの人が死んだと嘆く彼女は、無実の罪を着せられていたらしい。口封じを狙う凶賊から彼女を守るため、太十は相棒の新三と暗躍するが、普段は冷静な太十の心は乱れるばかり。彼に一体何が。正義が胸を打つ第三弾。
<第三巻のお客>
一 不死身の男
喧嘩無敵の父と優男の息子。家族のもめ事に新三と太十が巻き込まれる。
二 帰ってきた男
ほら吹き親爺が駕籠に乗り込む。それが大事件の始まりだった!
三 雨やどり
“駕籠留”の面々が言葉を失う身投げ女の悲しき過去とは?

千石の夢 公家武者信平ことはじめ(五)
講談社文庫
大ヒット時代小説シリーズ、始まりの物語第5弾!
千石の石高に達さなれば松姫とともに暮らせない信平。
若き思いと立身栄達がまじりあい、さらなる物語へと結実する!

medium 霊媒探偵城塚翡翠
講談社文庫
死者が視える霊媒・城塚翡翠と、推理作家・香月史郎。心霊と論理を組み合わせ真実を導き出す二人は、世間を騒がす連続死体遺棄事件に立ち向かう。証拠を残さない連続殺人鬼に辿り着けるのはもはや翡翠の持つ超常の力だけ。だがその魔手は彼女へと迫り――。ミステリランキング5冠、最驚かつ最叫の傑作!
★★★★★
ミステリランキング5冠!
★第20回本格ミステリ大賞受賞
★このミステリーがすごい! 1位
★本格ミステリ・ベスト10 1位
★SRの会ミステリベスト10 1位
★2019年ベストブック
さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補!
★★★★★
城塚翡翠。
彼女は、なにを視(み)ていたのだろう……?
すべてが、伏線。

京の怨霊、元出雲 古事記異聞
講談社文庫
橘樹雅は研究テーマ「出雲」を追い、京都を訪れる。
かつて出雲族の集落があったという下鴨神社の周辺には
「怨霊の寺」出雲寺をはじめ、出雲路橋、出雲井於(いのへ)神社など今も出雲だらけ。
糺(ただす)の森で起きた殺人事件を機に「言霊(ことだま)」の力を理解した雅は、
朝廷がまつろわぬ民=出雲族にかけた「呪い」の正体を解き明かす。
。

次の人、どうぞ!
講談社文庫
女性主導の時代が、ついにやってきた!
「不倫ブーム」の着地にさせ方で日本社会の成熟度が分かる!?
小池百合子氏に象徴される、「強い女」の変遷。
人生百年時代を、我々はヨボヨボの身体で生き抜かねばならないのか。
政治から芸能、鉄道から老いの話まで。「平成」が終わり、「令和」の時代が来た今、新しい女性像とは。伝説のロングランエッセイ、ついに最終巻!

生き方がラクになる 60歳からは「小さくする」暮らし
講談社文庫
老後は当然持ち家で、と思っていたら還暦を前に突如夫からの「年齢に合った暮らし方」提案、150平米の持ち家から65平米の賃貸へ。戸惑いつつも家や持ちものを手放してみたら、固定観念や執着からも自由になれた。失敗や反省もありつつ、変化を受け入れて楽しく気持ちのよい毎日を送るためのヒントが満載!
いくつになっても「暮らし」は変わる
「暮らし」を変えると生き方も変わる
「働き方改革」から「ライフスタイル改革」へ!
文庫版あとがき「暮らしを小さくしたからわかったこと」収録
「年齢に合った暮らし方」って?

草々不一
講談社文庫
泣ける。笑える。心がほっこり温まる。
身分としきたりに縛られた暮らしにも、喜怒哀楽、切なくも可笑しい人生の諸相があった。江戸の武家の心を綴る、傑作時代小説短編集。
朝井節、ますますの名調子。
1冊に長編8作分の人生が。
「紛者(まがいもの)」助太刀を頼まれた、浪人者の信次郎。頼まれたら断れないのが武士だが。
「青雲」立身する者とできぬ者。分かれ道を説く上司に悩まされ。
「蓬莱」大身の旗本家へ婿入りしたはいいが、妻から3つの約束をさせられて。
「一汁五菜」刀ではなく包丁で仕える江戸城の料理人が、裏稼ぎに精を出す。
「妻の一分」大石内蔵助の妻、りくにとっての忠臣蔵を、そばで見守った者がいた。
「落猿」藩の外交官である江戸留守居役が、公儀との駆け引きの最中に。
「春天」剣術指南所の娘と二刀流の修行人。剣で心を通わせた二人の行く末は。
「草々不一」漢字を読めない隠居侍が、亡き妻の手紙を読むため手習塾に通い始める。

地球にちりばめられて
講談社文庫
「国」や「言語」の境界が危うくなった現代を照射する、新たな代表作!
留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。
誰もが移民になりえる時代に、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。
「国はもういい。個人が大事。そこをいともたやすく、悲壮感など皆無のままに書かれたのがこの小説である」
――池澤夏樹氏(文庫解説より)

偶然の聖地
講談社文庫
地図になく、検索でも見つからないイシュクト山。
時空がかかった疾患により説明不能なバグが相次ぐ世界で、
「偶然の聖地」を目指す理由(わけ)ありの4組の旅人たち。
秋のあとに訪れる短い春「旅春」、世界を修復(デバック)する「世界医」。
国、ジェンダー、S N S--ボーダーなき時代に鬼才・宮内悠介が描く物語という旅。