講談社文芸文庫作品一覧

ふらんす人
講談社文芸文庫
馴染みのカフェーのギャルソン、とびきり安い下宿屋の夫婦、内気な下宿人達から、著名な詩人、学者、俳優、政治家達まで。こよなく人生と文学を愛した著者が、若き日、留学先のパリの街と人々の生活に溶け込んで見聞した“忘れ得ぬ人々”のエピソードと、卓見溢れる文学論とで構成。広汎な学識、鋭敏、繊細な感性が、人と文学を見事に捉える。親愛の情に貫かれた、優れた“フランス人”論。

万徳幽霊奇譚・詐欺師
講談社文芸文庫
初期作品の「鴉の死」、長篇『火山島』をはじめとして常に“幻のふるさと”韓国・済州島の地を描くことにより己れの“存在の危機”を表現し続ける在日の作家金石範。深い谷間の奥の観音寺に住みついた1人の飯炊き小坊主の世の常識を超えた仏心の“聖性”を描く「万徳幽霊奇譚」と架空スパイ事件の“主謀者”とされた若者の悲劇「詐欺師」。痛烈な諷刺と独特のユーモアの“稀有なる人間像”の創出。

女の日記
講談社文芸文庫
尾崎士郎、東郷青児、北原武夫、梶井基次郎、三好達治、小林秀雄、青山二郎ほか、著者が愛してやまなかった人々との思い出、自分のこと、周囲のことなどを、起伏多い人生の軌跡に重ね、端麗、強靱な文体と円熟した瑞々しい感性で軽快に綴る。『女の日記』『親しい仲』『恋は愉しいか』などから、新たに編み直した名品44篇。第一級のエッセイ群。
尾崎士郎、東郷青児、北原武夫、梶井基次郎、三好達治、小林秀雄、青山二郎ほか、著者が愛してやまなかった人々との思い出、自分のこと、周囲のことなどを、起伏多い人生の軌跡に重ね、端麗、強靱な文体と円熟した瑞々しい感性で軽快に綴る。『女の日記』『親しい仲』『恋は愉しいか』等から、新たに編み直した名品44篇。第一級のエッセイ群。

随筆 八十八
講談社文芸文庫
“身体ごと芸術家なるべし”洋の東西の絵画・美術の枠を超え、芸術の常識に立ち向かい、真の“感動”を追求する著者が、好きな書画、友人の思い出、自己の写生道、独学の精神を説く画文一致の豊潤な世界。88歳の“祝い”に、最新エッセイ25篇と本多秋五との対談、絵画・書・篆刻等の図版を加え、中川一政が刻する、気魄漲る芸術境の1冊。

兵隊宿
講談社文芸文庫
乗船直前、自分の家に泊った3人の出征将校の姿に、未知の大人たちの世界を知り微妙に変わる少年の心の襞。川端康成文学賞受賞「兵隊宿」と、「少年の島」「流線的」「緋鯉」「虚無僧」ほか共通の主人公による9つの短篇群。『往還の記』『式子内親王・永福門院』等、日本の古典を材に優れた評論を持つ著者の『儀式』『鶴』に続く代表的名篇。

月の宴
講談社文芸文庫
雪の残る屋根の向うに、赤くきらきら光る新月の背後から、80年の人生の重みをかけた一齣一齣は現われ、身内に鮮烈な記憶をよび起す。「雪景色の上の新月」ほか「月の宴」「親子の旅」「『たけくらべ』解釈への一つの疑問」「中野重治」「芥川龍之介」など、激しい体験をくぐりぬけた著者が、折々に出会った文学者・知己との思い出を静謐に語る、エッセイ49篇。波乱の人生、折々の思い出……。読売文学賞受賞作品。

骨の肉・最後の時・砂の檻
講談社文芸文庫
生の深奥を抉る明晰な衝撃。河野文学の中期秀作群ーー初期作品「美少女」「幼児狩り」、芥川賞受賞作「蟹」から、話題の『みらい採り猟奇譚』まで、著者の誠実な文学的展開の中で、中期と呼ぶべき中・短篇群。特に世評高い名篇「骨の肉」ほか、女流文学賞受賞の「最後の時」、更に「砂の檻」ほか4篇収録。男と女の関係、特に子供のいない女・妻と男・夫の関係を描き、抉り出されてくる生の深奥の類例のない明晰な衝撃。

絵空ごと・百鬼の会
講談社文芸文庫
一風変った或る男が、同じ酒場の定連客らと語らって、自分ら好みで理想のサロンをもちたいと、遂には、18世紀英国風の至れり尽せりの洋館を作る仕儀となる。芳醇な酒と程よい会話と。時の流れは静かに開かれてゆく。虚実皮膜の間に夢かの如くに現れる。“至福の体験”の喜びを絶妙な文体で綴った長篇『絵空ごと』。短篇『百鬼の会』。奔放にして優雅、独特の想像力漲る吉田健一の真髄2篇。

俳優修業
講談社文芸文庫
「虚実皮膜」の間を飛翔する花田清輝の精神の冒険ーー東洲斎写楽の役者絵についての精妙な分析にはじまり、「芸」という虚と実の「皮膜」の「遊び」から、「役者」という虚にして虚ならず実にして実ならざる追求者に話を展開し、沢村淀五郎の芸談だとする『四徳斎雑記』を補助線として、独自な精神を奔放に飛行させる、花田清輝の世界。転形期をしたたかに生きる、不撓不屈の諧謔の精神。常に精神の前衛でありつづけた著者の代表的作品。

同時代作家の風貌
講談社文芸文庫
柔軟な感受と平衡感覚溢れる批評により独自の位置を保つ著者が、時代を共に生きた感覚を共有する文学者たち、「堀辰雄/意力の作家」「石川淳/精神の運動の軌跡」「中野重治/限界に挑みつつ」「花田清輝/方法的戦略家」「長谷川四郎/プロレタリアの論理」「原民喜/『夏の花』」等特に語っておかねばならない文学者たちを選んで編集した著者自選による卓見溢れる作家論16篇。

安吾のいる風景・敗荷落日
講談社文芸文庫
昭和34年、荷風散人逝く。享年79歳。時に夷斎石川淳、60歳、「一箇の老人が死んだ」に始まる苛烈極まる追悼文「敗荷落日」を記す。融通無碍の精神と和漢洋に亘る該博な知識とに裏打ちされた奔放自在な想像力、一貫する鋭い反逆精神。「安吾のいる風景」「三好達治」「京伝頓死」「秋成私論」「本居宣長」ほか中期評論エッセイ24篇。

中原中也全詩歌集(下)
講談社文芸文庫
「あばずれ女の亭主が歌った」、とうたった相聞の詩人。「老いたる者をして静謐の裡にあらしめよそは彼等こころゆくまで悔いんためなり」とうたった、〈神〉なるものを求めた祈りの詩人。時を超えて読む者の心に深い感銘を与える夭逝の詩人の刊行詩集『山羊の歌』『在りし日の歌』の2冊の詩集と、未刊詩篇の全てを収録の上、新たに編纂した決定版全詩集。
「あばずれ女の亭主が歌った」、とうたった相聞の詩人。「老いたる者をして静謐の裡にあらしめ よそは彼等こころゆくまで悔いんためなり」とうたった、〈神〉なるものを求めた祈りの詩人。時を超えて読む者の心に深い感銘を与える夭逝の詩人の刊行詩集『山羊の歌』『在りし日の歌』の2冊の詩集と、未刊詩篇の全てを収録の上、新たに編纂した決定版全詩集。

中原中也全詩歌集(上)
講談社文芸文庫
孤独な魂の叫びを2冊の詩集に托して逝った早世の詩人。「汚れつちまつた悲しみに」と詠った早熟老成の詩才。生涯を懸けて己れに徹し、誠実、過激に生きた詩人の刊行詩集『山羊の歌』『在りし日の歌』を全篇収録の上、短歌、俳句、新発見詩篇をも加えた未刊詩篇全270余を詩想、詩法の関連から緩やかに分類し、新たに編纂し、甦った中原中也の全体像を上下2巻に定着した決定版詩集。

一条の光・天井から降る哀しい音
講談社文芸文庫
脳軟化症の妻は“私”を認識できない。──何度目かに「御主人ですよ」と言われたとき、「そうかもしれない」と低いが、はっきりした声でいった。──50年余連れ添った老夫婦の終焉間近い困窮の日常生活。その哀感極まり浄福感充ちる生命の闘いを簡明に描く所謂“命終3部作”ほか、読売文学賞受賞『一条の光』、平林賞『この世に招かれてきた客』など耕治人の清澄の頂点6篇。

知れざる炎 評伝中原中也
講談社文芸文庫
昭和22年、17歳の著者・秋山駿と『中原中也詩集』との出合い。以後30年、かわることなき中也との交渉を深め、中也の生の意味、中也の精髄、中也の精神の質を探った。群像新人文学賞評論部門を「小林秀雄」で受賞して以来、最近の伊藤整文学賞『人生の検証』まで、常に人生を読み、ひそやかな生を讃えて来た著者の評伝文学の代表的傑作。

シベリヤ物語
講談社文芸文庫
逃亡兵が闇の中で射殺され横たわる「小さな礼拝堂」。凍てつく酷寒の町に1人出されて道路掃除する「掃除人」。シベリヤの捕虜収容所体験をもつ作家の冷静な眼は、己れを凝視し、大仰な言挙げとは無縁の視座から出会った人々、兵士、ロシヤの民衆の生活を淡々と物語る。「舞踏会」「ナスンボ」「勲章」「犬殺し」等11篇により、人間の赤裸に生きる始原の姿を綴る現代戦争文学の名著。

甲乙丙丁(下)
講談社文芸文庫
2人の主人公、津田貞一、田村榊を合わせ鏡のようにして、30年前後から、60年安保後の、69年現在の中野重治の、日本共産党との様々な関係を、痛烈な自己告発を含めて、ねばり強く検証する、野間文芸賞受賞の記念碑的力作。「村の家」「五勺の酒」「萩のもんかきや」などの中・短篇、「むらぎも」「梨の花」などの長篇、そして「中野重治詩集」等、昭和期日本文学を代表する中野重治晩年の長篇。

甲乙丙丁(上)
講談社文芸文庫
64年春、日本統計資料社に勤める津田貞一に、出勤停止、アカハタ配布停止がもたらされる。貞一と、30年代からの交流のある、もう1人の主人公、党中央委員、田村榊は、嘗て参議院議員でもあり、作家である。合法、非合法、半合法、戦前・戦中・戦後を、時代の良心として、精一杯生きぬいた中野重治が、党および人との諸問題を、良心の底をもつき貫いて語った巨大な文学的記念碑。

かくれ里
講談社文芸文庫
世を避けて隠れ忍ぶ村里――かくれ里。吉野・葛城・伊賀・越前・滋賀・美濃などの山河風物を訪ね、美と神秘のチョウ溢(チョウイツ)した深い木立に分け入り、自然が語りかける言葉を聞き、日本の古い歴史、伝承、習俗を伝える。閑寂な山里、村人たちに守られ続ける美術品との邂逅。能・絵画・陶器等に造詣深い筆者が名文で迫る紀行エッセイ。

一個・秋・その他
講談社文芸文庫
野間文芸賞、芸術院賞両賞受賞の短篇集『一個その他』から、世評高い作品集『カレンダーの余白』『青梅雨その他』『雀の卵その他』、そして川端賞受賞の『秋その他』に至る短篇の名手・永井龍男。その晩年の短篇集の中から、「一個」「蜜柑」「杉林そのほか」「冬の日」「青梅雨」「雀の卵」そして名品中の名品「秋」など14篇の短篇の冴えを集成。