文芸(単行本)作品一覧

筋違い半介
文芸(単行本)
大型新人(第68回小説現代新人賞)、堂々の登場!!
「筋のとおった話は虫が好かねえ」旗本の三男に生まれ、先祖も父も「ばか者」だと切り捨て家を出た、岡っ引き・半介の活躍を描く「筋違い半介」。凶作に苦しむ村人を尻目に米をたらふく食らう村役に腹を立てた男7人が、村役一家の娘から婆さんまで、女全員に夜這いをかけて「口数」を増やしてやろうとたくらむ「口増やし」ほか、全7編。選考委員に「これだけの書き手が、今までどこで何をしていたのか」(逢坂剛氏)とまで言わしめた異能の大器、鮮烈なデビュー作!
浅田次郎氏推薦
「おかしくて物悲しい土着的時代小説の誕生です」

竹千代を盗め
文芸(単行本)
時代は変わった。忍術は算術だ!
甲賀忍者の頭領・伴与七郎の武器は、そろばんと銭!!駿府に囚われた松平元康の妻子を奪還せよ。値は400貫文、久しぶりの大仕事だ。
気鋭が放つ、新感覚書き下ろし忍者小説。
駿府までの往復14日、駿府滞在ひと月半。馬、舟、店借賃、関銭、火薬代に鉄砲の損料、さらに先手への酒手。中忍への手当は1人ひと月12貫文。下忍はその半分として……締めて500のところを400貫文。こうして引き受けた大仕事だが、息子を人質として差し出し、仕事を邪魔する不審な者たちが現れ、味方に間者の影も。仕事ははかどらず、危険は増すばかり。これでは、割に合わないではないか!!

プラスティック・ソウル
文芸(単行本)
出世作『インディヴィジュアル・プロジェクション』から名作『シンセミア』、『グランド・フィナーレ』へ至る阿部和重創作の変遷、その転換点上の傑作、20世紀最後に書かれ封印されていた幻の小説、遂に刊行!
終わりは始まりへとむかい、新たな物語を生む、メビウスの環のように。
アシダイチロウ、イダフミコ、ウエダミツオ、エツダシン。彼らが出版社から受けた依頼は、共同創作によりひとつの作品を生み出してほしいというものだった。眩いばかりに鏤(ちりば)められたさまざまな記号、めまぐるしく転換する話者、妄想はやがて狂気へとむかう――。世紀末東京を舞台に描かれた阿部文学の真髄に迫る、幻の小説!
『プラスティック・ソウル』は、僕にとって一種の切断線なんです。――<『阿部和重対談集』より>
※福永信『プラスティック・ソウル』リサイクル 巻末付録として特別収録

みんな大変
文芸(単行本)
ライオンも、チーターも、ヒョウも、ハイエナも、ヌーも、ゾウも、キリンも、トムソンガゼルも……みんなみんな、生きていくのは大変なんだ。
パラパラ・アニメ付き 感動エッセイ
いま、われわれはともすれば、他人を羨んだり、妬んだり、憎むこともある。でもそれは、みな各々のある一瞬を見ているからで、すべてを長い目で見ると、みなそれぞれに大変で、生きるための悩みや苦しさを抱いている。この世に生きることは、みんな大変で、だからこそどこかで、互いに頼られ助けられながら、みんな楽しくて幸せなのである。――<「あとがき」より>

月とアルマジロ
文芸(単行本)
ぼくはいま、何とつながろうとしているんだろう?
アルマジロという奇妙な闖入者の出現からはじまる、夢と日常の狭間の往還。
鮮烈なデビュー作『さよなら アメリカ』、さらなる飛翔、第2作目、待望の刊行!新世代作家が瑞々しい感覚で描き出す物語。
突然あらわれた大学時代の友人、彼の依頼は「アルマジロ」を預かってほしいというものだった。背中にある2本の線、<ニホン>と名づけられたアルマジロとの共同生活が始まった。携帯電話の不調、そして、ぼくとつながった女の子。ひっそりと平坦なはずの日常に混乱が訪れる……。痛烈な問題意識と圧倒的な想像力で作り上げる世界を、透明感あふれる文章で描き出した傑作長編小説。

俺たちの宝島
文芸(単行本)
感覚を研ぎすませ!前提を疑え!そこは“信じない者”だけがたどりつける楽園――。
ゴミの島で生まれ、感覚だけを頼りに成長した少年たちの冒険が、いま幕を開ける。
「どうしても欲しい物とか、どうしても足りない物があるときは、どうするの?」「どうしても足りない物、というものはない。ない物はなくて、ある物だけがある。そう考えれば、別に困ることはない」「もしも食べ物がなくなったら?」「そのときは、命がないと考える。『ない物』の中に命が加わるだけだ」

サーカス市場
文芸(単行本)
迷い込んだら抜けられないブラックホール
失踪した妻の唯一の手がかりを追って、男はそこへ足を踏み入れた――
江戸川乱歩賞受賞の気鋭が描く、ちょっぴり怖くてミステリアスな街の物語。
焼き肉屋の特別メニュー用に臓器売買が行われている。1杯で3日間酔いが続く特別な酒を飲ませるバーがある。天秤であなたの“裏切り”の重さを量ってくれる質屋がある。いつ始まるのか誰も知らない“死者のためのサーカス”をやっている
堅気の人間は決して近づかない大都市の死角に入り込んだ男と女が巻き込まれる、ふしぎな出来事の数々

40 翼ふたたび
文芸(単行本)
40歳から始めよう。 人生後半、胸を張れ。
人気作家が初めて描く同世代のドラマ。著者、会心の長編小説が誕生!
人生の半分が終わってしまった。それも、いいほうの半分が。
投げやりに始めたプロデュース業で、さまざまな同世代の依頼人に出会い変身する吉松喜一、40歳。生きることの困難と、その先の希望を見つめた感動作!

大江戸妖美伝
文芸(単行本)
狐が「コーン!」
目覚めたところは江戸の家。姿絵の不思議が誘(いざな)う洋介といな吉の長閑(のどか)な江戸暮らし。
“本当の豊かな暮らし”を送る文政年間の江戸を図版入りで描く、大江戸神仙伝シリーズ第7弾。
「あっちこっちへ行きたい」――辰巳芸者いな吉と洋介が歩く江戸の春から初夏。日本橋十軒店の雛市、芝愛宕下大名小路での唄の稽古、根岸の里の佇まい、深川洲崎の潮干狩り、浅草奥山の見世物、水道橋森山の鰻……。文政の江戸へ転時した洋介と、辰巳芸者いな吉の江戸暮らし。図版付き書き下ろし長編。

方法叙説
文芸(単行本)
わたしはここで――この場所で、人生のこの時点で――、わたしのやりかたについて語ってみたいと思う。
批評、詩、小説――松浦寿輝という多様体が、自らの創造の根底を見つめ、その言葉の生まれるパトス、「美の発見の瞬間」に迫るエクリチュール。
奇術師ダイ・ヴァーノンの手が作り出す幻影の中に見るトポロジカルな意匠、体表面を滑りゆく泡の中に生まれる宇宙、夕暮れの不忍池に投げ込んだ石の生み出す波紋とその幼少期の記憶、機中から見下ろした光点と光線とが作り出すパリというイリュミネーション。多様でありながら流変するその意匠の深部を覗き込み、そこに映る創造の根底を描き出した松浦寿輝のエッセンス。

暁けの蛍
文芸(単行本)
書き下ろし室町幻想小説
遊行の僧・一休と申楽能を極めた世阿弥――
2人の半生の記憶と夢が絡みあい、綾織の世界を織りなしていく。
淀川河口に近い渡し場でめぐり会った一休と世阿弥。船を待つ間、2人は半生を語り合う。瀬田の大橋での「野守」、「一節切(ひとよきり)」の笛、風の乙女……記憶と夢は互いに溶け込み合い、重なって、48年に一度、二十三夜にだけ渡ることのできる暁蛍楼へと辿り着く。

盗作(下)
文芸(単行本)
どうして“それ”は起こったか。奇跡なのか、宿命なのか――。
読み終えてまた新たな感動が生まれるあっと驚く壮大なエンディング!
想像を遥かに超えた鮮烈な展開!
どうしてこれが偽りであるはずがあろうか。
こんなにも美しいものが、不正であるわけがないのだ。
もともと平凡であるはずの、平凡であり続けたいと願う彩子を待ち受けていた運命。「オリジナル」と「盗作」という概念に新たな疑問符を投げかける、衝撃のストーリー!

盗作(上)
文芸(単行本)
完璧な創作のはずだった――。とてつもない物語が幕を開ける。
面白さが、どうしよう、止まらない!新ジャンルの超(×100)エンタテインメント!
一気読みの誘惑と快楽!
あの時は本物だった。わたしだけにあの創作の嵐はやってきた。
片田舎の平凡な女子高生・彩子は、ある晩、衝撃的な夢を見た。憑かれたように、その夢の光景をキャンバスに描きあげた彩子の作品は日本中を震撼させるが……。

静かなる凱旋
文芸(単行本)
秋田県鹿角の旧家の当主・青山吉之助は、日露戦争の講和が叫ばれる今、鹿角遺族会会長として遺族を引き連れ上京し、知遇を得た桂太郎と交渉して、講和阻止を申し入れるつもりだ。かつて鹿角が盛岡藩領だった頃、金で武士の株を買った金上侍と蔑まれ、戊辰戦争では奥州の争乱に巻き込まれ、日露戦争では大切な長男を失った。幕末から明治――時代が動き、社会が変わる時期を、壮大なスケールで描いた渾身の書き下ろし長編小説。
おれは生き抜いた!
戊辰戦争から日露戦争の講和まで38年、走りつづけた半生を振り返り、勇士は今、ふるさと秋田鹿角へと還る。幕末から明治を生きた男を、壮大なスケールで描く書き下ろし大河小説。
秋田県鹿角の旧家の当主・青山吉之助は、日露戦争の講和が叫ばれる今、鹿角遺族会会長として遺族を引き連れ上京し、幕末、戊辰戦争のただ中に知遇を得た桂太郎と交渉して、講和阻止を申し入れるつもりだ。かつて鹿角が盛岡藩領だった頃、金で武士の株を買った金上侍と蔑まれ、戊辰戦争では奥州の争乱に巻き込まれ、日露戦争では大切な長男を失った。この38年を振り返ると、吉之助の半生は、戦いの日々であった。幕末から明治――時代が動き、社会が変わる時期を、壮大なスケールで描いた渾身の書き下ろし長編小説。

ミルトンのアベーリャ
文芸(単行本)
律動(ビート)、反復(ループ)、恍惚(トランス)。究極の音楽(トラック)『アベーリャ(ミツバチ)』が響くとき、その針は、人の意識の深部に突き刺さる。
人と人との関わりあう交点に存在する音。瞬間に消える空気の振動=音楽はなぜ人の魂を突き動かすのか。そのパンドラの箱を開けたとき、少年たちに破滅の旋律(メロディー)が響く。音、意識、その可能性を切なく描き出した最高の音楽小説。
貧しい日系ブラジル人移民の子・ミルトン。学校で執拗ないじめを受ける幸太郎と英世。少年たちの閉ざされた心を解放するもの、それは音楽だけだった。やがてミルトンと幸太郎は、自分たちの音楽(トラック)を作りはじめる。ミルトンの意識が頂点をむかえたとき、2人は究極の音楽(トラック)『アベーリャ(abelha)』を編み出す。アベーリャ=ミツバチと名づけられたその音楽(トラック)は、人の意識を変容させるものだった。ふたりのユニット「トランス=ソニック」は世界デビューへとむかうが、アベーリャの毒はミルトンの意識を侵しはじめていた――。

どうで死ぬ身の一踊り
文芸(単行本)
第134回芥川賞候補作品。
話題沸騰・衝撃の文学!
久世光彦氏評(「週刊新潮」05年9月22日号)
西村賢太という人の「どうで死ぬ身の一踊り」という小説を読んだ。凄い小説だった。私の体の揺れが止まらないのは、この小説の後遺症もあるのかもしれない。……貧困に喘ぎ、同棲している女に暴力を揮(ふる)い、愛想を尽かした女が逃げ出すと、その前に土下座して涙を零(こぼ)して復縁を哀願する――西村のその姿は「根津権現裏」の藤澤清造に瓜二つである。つまり、西村は<現代>の実人生で、藤澤と同一化しようとしているとしか思えない。西村の文学は、身も世もなく悶える文学であり、その魂の姿勢は、いまは忘れ去られた<文芸の核>なのではないかと思われる。……何はともあれ、欺されたと思って読んでもらいたい。あまりに暗くて、惨めで、だから可笑しくて、稲光が目の前に閃く。

青雲遙かに
文芸(単行本)
夢見る頃を過ぎて、青雲の志はいま何処(いずこ)。
全国60余州から俊秀が集まる江戸の学問所。天保年間に仙台藩から出てきた大内俊助は19歳。学問で身を立てるべく大志を抱く。だが、その前途には多難が待ちうけていた。
江戸時代の若者の青春を描いた著者久々の長編小説!
学問で身を立てられないとなると、なにになる?父の跡を継いで百五十石取りの大番士となり、ただ、弁当を遣うためにだけ御城にあがり、非番の日は盆栽をいじったりして毎日を無為にすごす田舎侍になるのか。そんな生活は、江戸での暮らしを知ったいまではもうたえられない。――<本文より>

畏敬の食
文芸(単行本)
味覚ごくらく 美女対談
「最高の酒と料理」を有名女性ゲストと、思う存分味わい語らう、食の対談エッセイ集。食文化のスペシャリスト・小泉武夫がさらなる頂点を極めた1冊!
<Guest>
中江有里/川上弘美/山本容子/草野満代/阿川佐和子/檀ふみ/平野レミ/谷村志穂/江國香織/藤野真紀子/唯川恵
知られざる最高峰の料理を食い尽くせ!
●東方流の鉄板焼きで、ハマグリのコクとうま味がジュルル。
●鴨料理は、鉄板の上でチリチリと焼き、塩をふって食べる。
●真鯊は江戸前が最高。天麩羅はしっぽまで蕩けるようにうまい。
●江戸流の鰻の白焼きは、ねぎを刻んだ薬味との相性が絶妙。
●フグの白子焼きは、口の中でドロリと広がって失神寸前のうま味。
●大吟醸をコピリンコと飲み、鰆の粕漬けと穴子の白焼きをつまむ。
●韓国流どじょう汁の濃厚なうま味に、舌も大脳皮質ものめりこむ。

一日 夢の柵
文芸(単行本)
生々しい奇妙な現実
人が暮らしてゆくという
日常の内奥に差す光と闇を見つめ、生きることの本質と豊穣を描き切る、傑作小説集。
どこかの広場を2階か3階の窓からでも俯瞰した様子の写真を彼は指差した。曇った午後なのか夕暮れ近くか、沈んだ色調の中を幾人もの人が半ば風に化して流れている。足は映るんですよ。言われて初めて気がついた。どの人も靴のあたりだけははっきり形が見えた。身体の無い生温かな足が敷石の上を一斉に歩いている。そうか、足は残るんだ。思わず膝を叩く気分に見舞われた。一歩踏んでから、身体が前に出る間も足はまだ地面についているんです。長身をやおら動かして彼は歩く身振りを大仰に再現してみせた。いかにも靴だけが後ろに残る動作だった。その時、人間はどこに居るんだろうか。どこに居るんでしょう……。――<「一日」より>
第59回野間文芸賞受賞

掘るひと
文芸(単行本)
日常をおおう灰色の倦怠を執拗に描きながら、なぜ物語は底深い静謐な光で読者をいざなうのか?
滋味と陰影に富む9つの短篇