文芸(単行本)作品一覧

コイン・トス
文芸(単行本)
ニューヨーク、同時多発テロが切り裂いた男と女。コインの裏表に託した2人の運命は……。
9・11すべてはそこから始まった。
ベストセラー『日本国債』『代行返上』の著者が挑んだ新境地。切ない大人の恋の物語。
作家になるずっと前、人生の一時期を、私は国際金融市場の現場で過ごした。30代という、おそらくは自分がもっとも元気で、強くいられた時代だった。あの世界貿易センタービルは、そんな私の過去の象徴でもあった。2001年9月11日、ニューヨーク時間、午前8時48分……。くずれていくビルの姿を見つめながら、私は呆然としていた。あそこには、いまも仲間たちがいる。いくら叫んでも、ただ無抵抗に、すべてはあっけなく消えていく。その夜から筆はまったく進まなくなった。自分の不甲斐なさに、つくづく嫌気がさし、乗り越えるしかないと思ったとき、目を逸らさずにあの事件と正面から向き合えという声を聞いた気がした。9・11の事件を背景に、物語を書いてみよう。それは、私にとってまさに、答えを天に託して、コインを投げる行為に等しかった。――<あとがきより>

ICO-霧の城-
文芸(単行本)
「ぼくが君を守る。だから手を離さないで」
頭に角の生えた生贄の少年。鋼鉄の檻で眠る囚われの少女。2人が運命を変えることを、「霧の城」は許さない。
構想3年。同名コンピュータゲームに触発されて、宮部みゆきがすべての情熱を注ぎ込んだ、渾身のエンタテインメント!
霧の城が呼んでいる。時は満ちた、生贄を捧げよと。
何十年かに1人生まれる、小さな角の生えた子。頭の角は、生贄であることの、まがうことなき「しるし」。13歳のある日、角は一夜にして伸び、水牛のように姿を現す。それこそが「生贄(ニエ)の刻(とき)」。なぜ霧の城は、角の生えた子を求めるのか。

Chelsea
文芸(単行本)
17歳。将来の希望は「死」。だから、あたしの卒業旅行は樹海です。
ネット掲示板「メビウスゼロ」に書き込みをする<チェルシー>と名乗る少女。その掲示板では、集団自殺旅行『フェアウェル・ツアー』が計画されていた。気怠い毎日に感じるぼんやりとした苛立ち。そして、そこからの逃亡。チェルシー、ポッキー、プリッツ、ハイジの4人は、富士の樹海を目指す。死へと向かっていく少女たち、スリリングな旅の果てにたどり着く場所は――。

螢 火
文芸(単行本)
女一人、すべての汚れをひきうけて、心をこめて染みを抜く。
消せない過去、日々の溜息が、布目にからみつく。
北の街の夕暮れどきに、「ちぎり屋」と「染み抜き屋」の灯がともる。
芸妓から成島屋の御内儀(おかみ)に納まった紫乃が持ち込んだ、男物の紋付羽織。結び雁金の紋所は、かつての恋が、紫乃の心に染みになって残っていると告げているように、つるには思えた。「こういう染みって、素人でも抜けるものですか」紫乃の言葉に、つるの胸の底で赤黒い炎が大きく揺れた。身の裡のほとぼりを鎮めるために、つるは一人、おもんの「ちぎり屋」の暖簾をくぐった。――<「徳壺」より>
他の収録作「星月夜」「十色の虹」「花魁鴨」「螢火」

すきもの
文芸(単行本)
お金なんていらない。欲しいものはセックスだけ。
私の身体をしゃぶりつくす男たちの欲望こそが、私の望む愛。
淫らさの底にある切なさを描く
自分に必要なだけの充分な快感を与えてくれる男の欲望に、成美は誠意を持って応えようとするだろう。自分にとって男の価値は、生活を守ってくれることや人生を支えてくれることではない。……成美はそれを愛だとは信じられない。欲しいと求められて初めて成美は自分の存在が必要とされていると感じる。――<本文より>

文人の素顔
文芸(単行本)
川端康成、舟橋聖一、江戸川乱歩、野村胡堂、太宰治……。「銭形平次」「走れメロス」、熱海・緑風閣から名作が生まれた。
文人墨客が集まる旅館の亭主が残した大正・昭和の文壇交友録。
父、柳原緑風(やなぎわらりょくふう)(本名・康)は、経歴のせいか、はたまた本人の資質のゆえか、多岐にわたる分野の、多くの人々と交友を持った。その人々は、父が所有した東京「緑風荘」、熱海「緑風閣」に現れ、さまざまな貌(かお)を見せていった。懐かしいあの人たちのこと、その時代を、日記、書簡、スクラップ等の膨大な資料から書き残した本書は、彼らに捧げる鎮魂の辞であり、賛歌である。

キクマの元気!
文芸(単行本)
人気アナウンサー・キクマが贈る心のビタミン剤!元気が湧いてくる言葉たち。
素敵な出会いについて、恋愛のことや仕事の失敗談……。ときには落ち込むこともあるけど、毎日を笑顔で生きていくには?キクマ流・生き方のヒントを教えます。
幸せだなって思うとき、その気持ちを人にも伝えたくなる。その人も幸せになったら、すごくうれしいから。こうして幸せってつながって、広がっていくものなのかもしれない。辛いときも、悲しいときもあるけれど、やっぱり最後は笑顔でいたいから、この本を読んでくれた人にも、幸せが連鎖していったらうれしいな。

笑わせたるっ
文芸(単行本)
街が教師でヤクザが師匠
大阪の売れない若手コンビが珍修業の末に賞金1000万円の漫才コンテストで栄冠を?!
27歳の新人書下ろし
「想像してみい。客は千人や。その千人が、マイクの前に立つ、たった二人の人間に支配されるんや。千人の爆笑や。これがどんだけ気持ちのええことか」 広志は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。千人の爆笑。その快楽。「石丸さんは、それを味わったことがあるんですよね」 尋ねる広志は自然と真剣な眼差しになっていた。頷く石丸の目には、どこか恍惚とした光が宿っていた。「……この世で最高の麻薬や」――<本文より>

バンビの剥製
文芸(単行本)
“バンビの剥製”って何?かわいいけれど、なんだかこわい!
ゆらゆらと続く「日常」という名のループと異物感。そこから逃げ出すには、どうしたらいい??ちょっと不思議!青春小説の新たな到達点。
コミュニケーションのとれない同居人の姉は、ある日突然、マンションを買って出ていった!からっぽの部屋に残されたのは“バンビの剥製”!?結婚?自立?成長?現実の決断に戸惑いながら進んでいく毎日を、独特のリズムで描いた、27歳<ぼく>の物語。

マサコの戦争
文芸(単行本)
国民学校一年生のマサコ。遠くで始まった戦争は、いつのまにか少女の、すべての人々の生活を丸ごと底なし沼に引きずり込んだ。
私は、本書を21世紀を生きる若い人たち、子供たちや、孫たちを戦争に行かせたくないと願っているお母さんやお父さんに、ぜひ読んでいただきたい。戦争にまきこまれたあとでは遅すぎるのである。――著者
私たちは時代の流れの中で、私たちの足もとにせまっていた見えない硝煙、地を這って響いていたにちがいない砲声、芳香の中にまぎれていたきな臭いにおいに、どうして気づかなかったのだろうか。――<「はじめに」より>

野川
文芸(単行本)
すべて過ぎ去り、しかも留まる。
戦後半世紀余の時空を往還し喧噪の彼方へ耳を澄ませば、幽明の境に死者たちはさざめき生者は永遠の相へ静まる。
傑作長篇小説
お互いにいたわり、助けあって、深みへ入って行く。長い道を二人して来た末に、女の眼がうすく開いて、瞼をちらちらと顫わせ、笑みを浮かべて遠のいていく顔つきになりながら、背にまわした腕に力をこめてくる。大勢の交わりを、ここで交わっていた。済んで並んで仰向けになった後から、女の息がもう一度深くなる。遅れて家中に息が満ちるように聞こえた。それも静まってまどろみかけた頃、あたしたち、こうして、死んでいるのね、もうひさしく、と女はつぶやいた。――(本文より)

フリッパント ライフ
文芸(単行本)
やってみたいことはとりあえず全部実行。幸せな退屈より、不幸な刺激を求めて、軽はずみに、はすっぱに、過激に生きる快感エッセイ。うたかたの泡、めくるめく美酒の夜/パーティの法則/恋愛の真実/華のステッカーライフ/ホメオパシーで遂に私が変わる/クリスチャン・トルチュの感覚(センス)/ルシアン・ペラフィネの衝撃/私は超ニューオープンフリーク/美容偏差値/反感覚悟! Dカップの悩み――(目次より)
やってみたいことはとりあえず全部実行
幸せな退屈より、不幸な刺激を求めて 軽はずみに、はすっぱに、過激に生きる快感エッセイ
Flippant=軽薄な;はすっぱな;生意気な
うたかたの泡、めくるめく美酒の夜/パーティの法則/恋愛の真実/華のステッカーライフ/ホメオパシーで遂に私が変わる/クリスチャン・トルチュの感覚(センス)/ルシアン・ペラフィネの衝撃/私は超ニューオープン フリーク/美容偏差値/反感覚悟! Dカップの悩み――(目次より)

乱歩賞作家 白の謎
文芸(単行本)
凄い! 書下ろし
・鳥羽亮 『死霊の手』
旗本の三男坊、波之助の釣り船に女の土左衛門が流れ着いた。首筋の痣は相対死の名残か……。
・中嶋博行 『検察捜査・特別篇』
県警本部に男が乱入し、横浜地検の岩崎紀美子に「たれ込み」電話がかかってきた。
・福井晴敏 『920を待ちながら』
神業の腕を持つ伝説のスナイパー。防衛庁情報局の男たちは、姿なき彼に追い詰められ――。
・首藤瓜於 『放蕩息子の亀鑑(きかん)』
「冷たいカルテ」を書いた病院長・童子女(うない)の前に現れた不意の訪問客。『脳男』の鬼才が描く「本格」ミステリー。

亡き母や
文芸(単行本)
遠い記憶のなか満開の櫻の下に母がゐる 処女作から六十年 傘寿をこえて ゆかりの人を尋ね 辿り直した母の生涯
風格とおかしみのある自在の筆で描く傑作連作長篇
齢とるにつれ、自分の癇癪持ちで短気な、場合によつて火のついたやうになる性癖が、独自の個性でも何でもなく、単に亡母の遺伝子をそつくり受け継いでゐるだけのことではないかと、段々さう思ふやうになつて来た。とろくさいのが嫌ひ、べとべとするのが嫌ひ、「つめたい」とか「情緒に欠ける」とか、周りの者から時々非難されるけれど、割り切れるものははつきり割り切つて置きたい方で、その点も母と私と似てゐる。――(本文より)

チルドレン
文芸(単行本)
こういう奇跡もあるんじゃないか?
まっとうさの「力」は、まだ有効かもしれない。信じること、優しいこと、怒ること。それが報いられた瞬間の輝き。ばかばかしくて恰好よい、ファニーな「五つの奇跡」の物語。
吉川英治文学新人賞作家、会心の受賞第1作!
短編集のふりをした長編小説です。帯のどこかに“短編集”とあっても信じないでください。
伊坂幸太郎
2005年本屋大賞 入賞作

馬男
文芸(単行本)
愛しているからこんなに切ない
男と女。男と男。女と女。胸を刳る、心に滲みる、深い感動。桃谷方子が貴方を揺さぶる5つの愛の物語。
「覚えていた?」わたしは唇を開いた。唇の端が粘ついている感じがして、言いにくかった。「忘れたことなんかないよ」プリンスホテルを通り過ぎた。公三と何度か泊まったことがある。――(本文「馬男」より)

世直し大明神 おんな飛脚人
文芸(単行本)
安政の大地震に見舞われた江戸の町で、まどかは思いがけない人に出会った
NHK金曜時代劇「人情とどけます」で大人気のむすめ飛脚がまた走る
「折り入って話あり 雲母(きらず)稲荷で暮れ六つ 清」
まどかは、ふふ、と独り笑いした。お稲荷さまでの待ち合わせを告げる手紙を、お稲荷さまで読んでいるからである。――<本文より>

ブルースノウ・ワルツ
文芸(単行本)
「子どものうちは、ただばくぜんと未来は明るい気がしてるけど、大人になればわかるのよ。自分がつまらない人間だってこと」
R-18文学賞読者賞受賞作家の魅惑的なゴチック・ロマンス
「怪しすぎるよ。こんなところに『弟』がいるなんて嘘じゃないの?」父と二人、少女は教会の地下、苔むした石畳を歩んでいく。研究者の父と、社交に忙しい母、二人のメイドとともに館で何不自由なく暮らしていた彼女の前に、野生児の「弟」が出現した…。

人生という旅
文芸(単行本)
貧しかった、いつもお腹をすかせていた。でも、なぜだろう、人があんなに温かかったのは――。
忘れかけていた温もりが、この中にある。
JR車内誌に連載された涙なしでは読めない、58篇の感動エッセイ。
北の大地に移り住み、自分の子をその手で取り上げた両親の思い出。いままでに出会った、思い出深い人たちとの心温まる交流。極貧の中で育った少年期から、作家になろうとあがいた青春期。そして、自分の美学を持って生きることの大切さ。心がホッとする感動が、この中にいっぱい詰まっています。

鬼神伝 神の巻
文芸(単行本)
現代に戻った天童純が、今まで自分の身に起こったことが全部夢だったのではないかと疑い始めたころ、純は六道珍皇寺に現れた小野篁によって平安時代に呼び戻され、再び鬼神たちとともに貴族との戦いに加わることになった。一方貴族は、鬼神たちを封じ込めるために三種の神器を揃えようと、最後の一つ、純の持つ剣を血まなこになって探していた。とてつもない破壊力を持つ「弥勒」を招致しようとする貴族たちとの激しい戦いの中、純は今まで一緒に戦ってきた仲間を失う。素戔嗚尊の血を引く純が、命よりも大切なものがあると気づいたとき……。