講談社文庫作品一覧

杉浦明平著作選(下)
講談社文庫
牧歌的風景のなかで、猟色、夫婦交換、泥棒成金などに象徴される庶民たちのしたたかさ、おおらかさを、洞察力とユーモアで語る、風流滑稽譚「田園組曲」のほか、農学者・佐藤信淵を描いた「椿園記」、蛮社の獄の周辺を観取した「妖怪譚」の歴史小説2篇をあわせて収める。歴史を記録する、ユニークな杉浦文学の精髄。
豊臣秀吉(五) 異本太閤記
講談社文庫
織田家の実権を握った秀吉にとって、残る大敵は柴田勝家だけ。信孝を討つとみせて包囲の網を張った秀吉は、堀秀政から中川清秀の十三番手の圧倒的な陣立てで対峙、勝家を討つが‥‥。〈全六巻〉

江戸の暴れん坊
講談社文庫
鳶太郎は旅に出た。「蛮社の獄」で身辺に危険が迫ったので、崋山・長英らのすすめで、しばらく難を避けようと、家督を弟にゆずり、住みなれた江戸をあとにした。両国の骨つぎ・名倉の門弟を名乗り、股旅姿の身軽なひとり旅……のつもりであった。
高輪の大木戸を出ると、鳶太郎を待ちうけていたのが、年の頃なら19かはたち、ひどくあか抜けのしたお侠な下町っ子・お夏、次いで六郷の渡しで供に加わったのが、度胸と足が自慢の木更津屋佐平。さて、三人旅の行手に次々起こる剣難女難。鮮やかな鳶太郎の秘剣が舞って、胸のすくような、山手文学十八番の娯楽大作!

播磨灘物語(2)
講談社文庫
ぜひ播州に兵を、信長に乞う官兵衛。一方、毛利氏は広島から播州英賀の浦に水軍を上陸させたが、官兵衛は偽装作戦でこれを追い払った。毛利は説客を送って播州勢力へ工作するが‥‥。〈全四巻〉
天正6年、秀吉は再び播州へ。対毛利の軍議を加古川に練る。説いてまわる黒田官兵衛。中国の縦横家に似た遊説家は日本の戦国期彼一人といえる。本巻では、竹中半兵衛が官兵衛とはじめて会う。そして荒木村重の信長への謀叛は、官兵衛を恐怖に陥れる。主家、御着城の小寺氏が村重になびくのではないか、と。〈全四巻〉

鎮魂戦艦大和(下)
講談社文庫
下巻には「戦艦大和ノ最期」と書評等を収録。今のこの平和が一体何によってあがなわれたのか?我々に深い楔を打ちこむ、戦艦大和の最期を描きながら戦争を超え、叙事詩の域にまで達した名著。

いさましいアリのポンス
講談社文庫
激しい戦争反対の意志と、鎮魂の思いをこめた受難の子どもへの励ましである佳品「川とノリオ」。身近の動物たちと子どもたちとの心の触れあいを優しく、かつ鋭い目で見つめた「ツグミ」「セキレイ」など、現代の問題を問いつづけている、いぬいとみこの作品の中から「休火山」「ベーゴマ」など名作13編を収録。
父 吉川英治
講談社文庫
偉なる人である父を、良き文章で長男が活写。著者、故英治の長男。慶大卒、NHK入社、のち、書店経営で現在に至る。本書は父13回忌に書下されたもの。他には書きえず、又、著者にも再びは書けぬ名著。

鎮魂戦艦大和(上)
講談社文庫
我々にとり戦艦大和とは一体何だったのか!還るあてのない特攻出撃に駆り出された戦艦大和。艦と運命を共にした二人の青年の人生の軌跡を辿り、その犠牲の上に成り立つ平和の意味をしずかに問う。

「政治」の原理「運動」の原理
講談社文庫
「人間の重み」を主張し、状況の変革を志す著者が、ベトナム戦争反対運動の中で、形骸化した戦後民主主義を「人民」の民主主義につくり変える運動の過程で、歩き、話し、考えた成果を率直に訴える評論集・第二弾。「原理としての民主主義の復権」「投票者の拒否権」「私のなかの日本人」「福沢諭吉」「折れ目のない歴史」など、1960年代から70年にかけての、「政治」「運動」「文学」にわたる24編。人間の復権をめざして、政治と文学を語る論集。

ひとりぼっちの監視哨
講談社文庫
南海の島の監視哨で、たった一人の勤務を続ける上等兵と、脱走兵との心の触れ合いを描いた、表題作。一軍医の敵国人に対する、隔てなき人間的真情が部隊を救った「救援隊、湖畔を行く」など、7編を収録。人と人との暖かいつながりに視点を置いて、ユーモラスな事象を描き、その底に兵隊の深い哀しみを沈潜させた、戦場小説集。

執念夫婦添い節
講談社文庫
漫談家の昇仙にくどかれて夫婦になった福子は、妊娠できない体質だったうえに、女盛りに卵巣を摘出し、ますます夫からの情が薄れていく。そして昇仙は妾をかこい、帰宅するのは月に数回。だが、たまたま帰ったときに、脳溢血で倒れてしまう。福子は、ひもかわまがいとなった昇仙の一物を口にふくみ、ようやく彼が亭主になったという実感を味わうーーという表題作ほか、純情にして猥褻な女と男を描いた傑作5篇。

風塵(下)
講談社文庫
武田勝頼の弟・仁科五郎盛信の名を譲りうけた山猫は、戦場を駆けめぐり、城を攻め、名を挙げていった。本能寺の変で信長が倒れたとき、山猫に尾張の太守となる機会が到来した。信長の姪・茶々を嫁にむかえる夢がかなう時だ……。戦国の世に生まれ落ち、その非情な運命と闘い、人生を切り拓いてゆく男の戦国ロマン。
豊臣秀吉(四) 異本太閤記
講談社文庫

さよなら子どもの時間
講談社文庫
大家族なのに、家ではいつもひとりぼっちの健。ところが、健が風邪をひいた1週間、毎晩、両親はじめ家族のものが、それぞれとっておきの話をしてくれることになり、健は失われた子どもの時間をまとめてかえされた気になる……。オムニバス形式のファンタジックでリリカルな力作。他に中編「海のおくりもの」を収録。

証言・現代音楽の歩み
講談社文庫
かつての極端な貧困を克服して、現代日本の音楽はどのように、世界的水準を獲得するまでに至ったのか。創造こそ芸術の生命とする立場に立ちつつ、時には嘆き時には悲憤慷慨しながら、自ら関わってきた同時代の音楽の足どりと達成を、内側から証言する。資料としての価値も高い記録的回想の書。詳細年表を付す。

夢声自伝(下)昭和篇(2)
講談社文庫
東京を動けず、空襲にさらされた暗い戦時下に比べ、戦後は、のどかな生活をよみがえらせた。そして、放送の急激な進歩。テレビや民放の登場。得がたいタレントとして、夢声は引っぱりだこになり、多忙をきわめる。他方では海外旅行をし、家族にめぐまれる幸せな人生だった。飄飄たる筆致で70年を語った爽やかな自伝。<全3巻>

杉浦明平著作選(上)
講談社文庫
渥美半島・福江湾のノリ養殖に関して、利権にむらがるブローカー、漁業ボスのあさましい行動。それはやがて不正を生んで、素朴な漁民たちの目を覚まさせた。戦後の民衆運動の典型を、重い視点と深いユーモアで描いた名作「ノリソダ騒動記」のほかに「町会議員一年生」を併録。知性と野性が結実する杉浦文学の秀作選。

風塵(上)
講談社文庫
天正10年、織田信長は60余州制覇の駒を進めていた。野望渦まくこの戦国乱世に生み落とされた孤児……山猫。信長の姪・茶々に想いをかけ、一国一城の主となって、茶々を嫁にするという大きな夢に命の炎を燃やす男……山猫。非情な運命に弄ばれながら、逞しく人生を切り拓いてゆく男を痛快に描く、戦国ロマン。

播磨灘物語(1)
講談社文庫
黒田官兵衛、この戦国末期が生んだ商人的思考の持主。それは既に彼の家系に根づく。官兵衛二十二歳、播州御着城にて一番家老。洗礼名シメオン。のち、如水。本巻は入念に官兵衛の人となりをたどり、播州の小天地で、広大な世界に想いをはせていた一紳士が、愈々織田信長の岐阜へ旅立つあたり迄に関って進む。〈全四巻〉

若い川の流れ
講談社文庫
川崎専務から頼まれて専務邸に大きな包みを届けた健助は、その娘・ふさ子に出会った。専務にユーモアのある見合いをさせられたことに気づいた二人は、お互いに好意をもつが前後多難――痛快明朗編。映画化、テレビドラマ化もされた。