創文社オンデマンド叢書作品一覧

幕末期薩摩藩の農業と社会 大隅国高山郷士守屋家をめぐって
創文社オンデマンド叢書
丹念な史料読解により、江戸期薩摩藩の農業生産と社会生活の詳細を描き出した労作。
【目次】
1 序論
第一章 西南辺境型藩領国の典型 薩摩藩領国
一 薩摩藩領国の研究について 二 西南日本における藩領国の類型 三 西南辺境型藩領国の特質
第二章 薩摩藩領国における郷士制と地主の類型
一 薩摩藩領国の社会経済史的特質 二 郷士制と地主の諸類型
第三章 大隅国高山郷と守屋家
一 大隅国肝属郡高山郷と高山郷士 二 史料 三 守屋家と守屋舎人 四 守屋家の土地支配
2 守屋家の農業経営と労働組織
第四章 守屋家の農業経営
一 手作地と小作地 二 農事暦 三 稲作 四 畑作
五 守屋家の手作経営の特徴
第五章 守屋家における労働組織
一 手作における労働過程 二 労働過程の月別考察 三 守屋家の労働組織
第六章 守屋家における下人 とくに永代下人
一 家と下人・奉公人 二 下人の類型 三 守屋家と永代下人の関係 四 抱地衆と村落生活 五 抱地衆・墾の番の諸形態
3 守屋家をめぐる社会関係
第七章 守屋家の系譜と神領浮免
一 守屋家の系譜 二 守屋家の出自 三 分家分出の困難 四 検校守屋家 五 守屋家の神領浮免について
第八章 守屋家・伊東家における分家と家産の分与
一 守屋家における分家の過程 二 守屋家における家産の分与 三 伊東家における分家の過程 四 伊東家における遺言書と家産の分与 五 日高佐二郎家と守屋納二郎家・八百右衛門家
第九章 守屋家の「親類中」(親族組織)
一 守屋家の親類中 二 親類中の機能 三 親類中の意義
第十章 社家頭取守屋家と社家中(社家組織)
一 社家頭取としての守屋家 二 社家組織 三 社家の経済生活 四 社家頭取の支配・統制 五 社家頭取と社家の生活諸関係
第十一章 「舎人日帳」より見たる守屋家の年中行事
一 守屋家の年中行事 二 守屋家年中行事の特徴
4 高山郷における諸問題
第十二章 高山郷における給地とその移動
一 蔵入地と給地 二 高山郷における給地の存在形態 三 鹿児島領主の給地支配 四 鹿児島給地の移動
第十三章 高山郷における宗門手札改と一向宗禁制
一 宗門手札改 二 一向宗の禁制
第十四章 幕末期高山郷におけるアジールの痕跡
一 近世以前における寺院アジール 二 薩摩藩における寺入 三 高山郷における寺への走込、召抱の事例 四 寺院アジールの痕跡 社会慣行化
第十五章 幕末期高山郷の諸相
一 二階堂家および二階堂本覚院行徳 二 藩主の巡見、軍役方の廻勤 三 沿岸警備 四 江戸・大坂詰守衛 五 種痘の導入

ローマノス・メロードスの賛歌
創文社オンデマンド叢書
本書は東ローマ皇帝ユスティニアヌス大帝(在位527~565)頃に活躍した、ビザンティンの宗教詩人・メロディスト、ローマノスがギリシア語で著わした賛歌(Ρωμανο^υ το^υ Μελωδο^υ υμνι)の翻訳である。東方ビザンティン教会の朝課で歌われた、韻律的説教詩から50篇を訳出。本邦初訳。
【目次】
第一部 旧約のエピソードの賛歌
一 アダムとエバの賛歌
ニ ノアの賛歌
三 アプラハムの犠牲の贅歌
四 イササクに祝福されたヤコプの賛歌
五 ヨセフの賛歌(一) 兄たちに売られたヨセフ
六 ヨセフの誘惑の賛歌(ヨセフの賛歌〔ニ))
七 預言者エリヤの賛歌
八 炉の中の三人の少年たちの賛歌
八付 〔預言者ヨナと〕ニネベの〔回心の〕賛歌
第二部 新約のエピソードの賛歌
第一章 キリストの幼年時代
九 お告げの賛歌
一〇~一三 〔キリスト〕誕生の賛歌(一)~(四) 誕生の詩句
一四 〔主の〕奉献の賛歌
一五 聖幼児〔虐殺〕とエジプトヘの逃亡の賛歌
第二章 キリストの聖役
一六 公現の賛歌(一) イエスの洗礼
一七 公現の賛歌(一) アダムと洗礼者ヨハネ
一八 カナの婚礼の賛歌
一九 サマリアの女の賛歌
二〇 らい病患者の治癒の賛歌
二一 罪深い女の賛歌
二二 悪魔に取りつかれた〔ゲラサの〕男の賛歌
二三 出血症の女の〔回復の〕賛歌
二四 パンの増加の賛歌
二五 生まれつきの盲人の賛歌
二六~二七 ラザロの復活の賛歌(一)~(ニ)
二七付 賛歌「〔キリストは〕皆にお与えになる」の詩節
二八~二九 放蕩息子の賛歌(一)~(二)
三〇 金持ちとラザロの賛歌
三一 十人のおとめの〔たとえの〕賛歌
第三章 枝の主日から復活まで
三二 枝の主日の賛歌
三三 ユダの〔裏切りの〕賛歌
三四 聖ペトロの否認の賛歌
三五 十字架のもとの〔母〕マリアの賛歌
三六 御受難の賛歌
三七 陰府の諸勢力の賛歌
三八 十字架の勝利の賛歌
三九 十字架礼拝の賛歌
四〇 イエスの復活の賛歌(一)香油を持参した婦人
四一~四五 イエスの復活の賛歌(ニ)~(六)
第四章 復活〔後〕から最後の審判まで
四六 トマスの疑い深さの賛歌
四七 使徒たちの伝道の賛歌
四八 昇天の賛歌
第三部 教会生活を取り扱った賛歌
四九 聖霊降臨の賛歌
五〇 最後の審判の賛歌
解説

世界遺産への道標 事例研究・芸術都市フィレンツェの経営政策
創文社オンデマンド叢書
ユネスコ世界遺産は、異文化・異文明相互理解のための格好の手引である。世界遺産を教材に地球益、人類益の共通善を学ぶ最良の入門書。特に、フィレンツェの事例を中心に世界遺産のあり方を考える。
【目次】
序 世界遺産とわれら 稲垣良典
目次構成について 松田義幸
第一部 世界遺産の背景 戦争と平和 いかに考えるか
第一章 被爆七〇年の夏に想う 松田義幸 心の中に平和の砦を築く
1 『文明の衝突』の投げかけた波紋 2 『世界憲法シカゴ草案』と『聖トマス・アクィナスと世界国家』 3 ハッチンス、アドラー、グレート・ブックス 4・5 日本のグレート・ブックス運動の受容過程 6 『ミルワード神父のシェイクスピア物語』開始 7 被爆七〇年、忘れ得ぬ人々
8 モーティマー・J・アドラー著『戦争と平和 いかに考えるか』
第二章 世界遺産のための教養講座 松田義幸 異文化・異文明の相互理解に向けて
1 今道友信先生の『実践美学原論』 2 アーウィン・パノフスキー先生の『ゴシック建築とスコラ学』 3 稲垣義典先生の『問題としての神』 4 渡部昇一先生の『言語と民族の起源について』 5 松浦晃一郎先生の『世界遺産』 6 樺山紘一先生の『ルネサンスの歴史案内』 7 田中英道先生の『ルネサンスの美術案内』
第二部 事例研究・芸術都市フィレンツェの経営政策 美の実践による「世界美化」運動モデル
第三章 フィレンツェ・ルネサンスの形成 世俗世界の現実を写しとった詩人ダンテ
講演1 ルネサンス思想の系譜 今道友信 講演2 ルネサンス時代の諸言語の饗宴 樺山紘一 講演3 ルネサンス美術の伝統と革新 田中英道 討論 永遠の芸術都市フィレンツェ 今道友信/樺山紘一/田中英道/司会・松田善幸
第四章 フィレンツェの芸術資本投資の理念と実際――美術修復の学際研究と先端技術の開発・蓄積
講演1 イタリア・ルネサンスの都市経営史 樺山紘一 講演2 芸術産業都市のモデル「フィレンツェ」 田中英道 講演3 芸術都市フィレンツェの経営政策 松田義幸 鼎談 芸術都市経営の諸相 樺山紘一/田中英道/松田義幸
第三部 ルネサンス世界遺産・心の旅 ヨーロッパ・ルネサンスの旅案内
第五章 ルネサンス研究の自分史―課題と展望 それぞれのルネサンス・ゼミ旅行
講演1 西洋中世史とルネサンスと私 樺山紘一 講演2 イタリア美術史とルネサンスと私 田中英道 講演3 グレート・ブックスとルネサンスと私 松田義幸 附論『柏の葉ルネサンス塾』報告―ダンテフォーラムに学ぶ街づくり 徳山郁夫
第六章 ロゲンドルフ先生の『和魂・洋魂』
文献案内 松田善幸 上智大学クルトゥール・ハイム・サロンの時代
あとがき 松田善幸

儒教と道教(名著翻訳叢書)
創文社オンデマンド叢書
20世紀を代表する社会学者のウェーバーによる、儒教と道教をめぐる考察。都市、王、神と社会の関係について考察した興味深い一冊。
【目次】
凡例
第一章 社会学的基礎――その一 都市、君侯、および神
一 貨幣制度
二 都市とギルド
三 近東との比較からみた君侯の行政と神の観念
四 中央君主のカリスマ的司祭的地位
第二章 社会学的基礎――その二 封建的国家と俸禄的国家
一 レーエン制の世襲カリスマ的性格
二 官僚制統一国家の復興
三 中央政府と地方官吏
四 公共の負担――徭役国家と租税国家
五 官吏階級の徴税の一括化
第三章 社会学的基礎――その三 行政と農業制度
一 封建制度と財政制度
二 軍隊制度と王安石の改革の試み
三 国庫的農民保護と、農業に対するその成果
第四章 社会学的基礎――その四 自治、法律、および資本主義
一 資本主義的依存関係の欠如
二 氏族組織
三 村落の自治
四 経済関係の氏族的拘束
五 法の家産性的構造
第五章 読書人身分
一 中国的ヒューマニズムの儀礼偏重主義的、行政技術傾向的性格。平和主義への転化
二 孔子
三 試験制度の発展
四 社会学的な教育類型のうちにおける儒教的教育の地位
五 読書人階級の身分的性格。封建的名誉と学生的名誉
六 君子理想
七 官吏の威信
八 経済政策的見解
九 読書人階級の政敵、スルタン制と宦官
第六章 儒教的生活指針
一 官僚制と教権制
二 自然法と形式的法論理との欠如
三 自然科学的思惟の欠如
四 儒教の本質
五 形而上学の無いことと儒教の内現世的性格
六 『礼節』の中央概念
七 恭順の念(孝)
八 経済心情と、専門家精神の拒否
九 君子理想
十 古典の意味
十一 正統説の史的展開
十二 初期の儒教の悲壮
十三 儒教の平和主義的傾向
第七章 正統と異端(道教)
一 中国における教義と儀礼
二 隠逸と老子
三 道と神秘主義
四 神秘主義の実際的帰結
五 正統と異端との学派対立
六 道教的長寿法
七 道教の教権制
八 中国における仏教の一般的地位
九 呪術の合理的体系化
十 道教の倫理
十一 中国の正統的および異端的倫理の伝統主義的性格
十二 中国における宗派と異端迫害
十三 太平[天国]の乱
十四 発展の結果
第八章 結論――儒教とピューリタニズム
世界宗教の経済倫理 序言
あとがき

共同討議 ドストエフスキーの哲学
創文社オンデマンド叢書
19世紀ロシアの大文豪にして思想家ドストエフスキーの哲学的な意味を、和辻、高坂、唐木、西谷、森の5人が徹底的に読み解いた快著。
【目次】
第一章 ドストエフスキーとその時代 唐木順三
ドストエフスキーの哲学的意味
将来の哲学への示唆
ドストエフスキーの思想的境位
ドストエフスキーの生涯
ドストエフスキーの芸術
ドストエフスキーの思想
『おとなしい女』
ドストエフスキーにおける芸術と哲学の葛藤 リアリティの問題
ドストエフスキーにおける主体的リアリズム
第二章 ドストエフスキーにおける「人間」の問題 西谷啓治
ドストエフスキーの人間観
ドストエフスキーの人間観と人間としてのドストエフスキー
ドストエフスキーの人間理念
ドストエフスキーにおける美の問題
ドストエフスキーの自由観
美と愛の問題
ニーチェとドストエフスキー
悪魔の問題 スタヴローギンの解釈
自由と自殺について
ドストエフスキーと哲学者たち
第三章 ドストエフスキーにおける「革命」の問題 高坂正顕
人間とロシア的なるもの
ロシアと西欧
社会主義と革命
ドストエフスキーと西欧精神
ドストエフスキーと社会主義
スラヴォフィールとインテリゲンチャ
予言者ドストエフスキー
第四章 ドストエフスキーにおける「神」の問題 森 有正
神の問題
罪悪の問題
キリストの問題
信仰の基礎としての共同存在
罪と共同存在
世界悪と復活
ロシア的宗教性の特質
第五章 ドストエフスキーと現代 和辻哲郎
ドストエフスキーの残した問題
倫理の世界と合理主義
倫理と宗教
知性と宗教
絶対の立場と相対の立場
ドストエフスキー受容の問題
ドストエフスキーと新しき哲学
参考文献

比較社会経済史(歴史学叢書) イスラム・ビザンツ・西ヨーロッパ
創文社オンデマンド叢書
オリエント社会経済史の知的巨人が、イスラムの「イクター制」を手掛かりに、霧のごとき概念群の罠から、「封建制」を救い出すべく、硬直化した歴史解釈を打破し新たなる展望を切り開く比較史研究。イスラム・ビザンツ・西ヨーロッパ社会に、〈同一地点への合流現象〉を見出し、大胆なモデル構築を試みる斬新な着想。カーエンの三論文と渡辺金一の「解説」。
【目次】
凡例
《封建制》という言葉の使用についての若干の考察
新刊書〔プートリュッシュ著『領主制と封建制』〕をめぐって
オリエント社会経済史の構想
西ヨーロッパから出発する《封建制》の比較史研究
同一地点への合流現象を示す諸社会を同時に、同等にとりあげる比較史研究
比較に際しての諸指標
土地制度 人的関係 公権力の私的分割 軍人層 要素と全体
社会のタイプに即した、歴史的概念の限定的使用の必要性
比較のシェーマ フィーフ・プロノイア・イクター
商品経済の契機
ムクターの従属性とヴァサルの従属性観念上の差違と事実上の同一性
君主・臣下関係のヒエラルキー的タイプと直属的タイプ
ムクター、ヴァサルの都市居住
同一地点への合流現象を示すイスラム世界と西ヨーロッパ
西洋封建制の「独自性」の意味
封建制論争と関わって
九ー一三世紀におけるイクターの発展 中世の諸社会の比較史のために
テーマ イクターの発展のさまざまな路線
アラブ征服時代 十分の一税(ウシュル)納入義務を負った原初イクター(カティーア)
一〇世紀初頭「税収」イククー(イクター・アルイスティグラール)の出現
托身の普及とイクター保有との相互補強作用
ブワイフ朝軍人体制の確立(一〇世紀第二、四半期)ハラージュ地からの、兵士へのイクター・アルイスティグラールの大幅な分与 イクター・ウィラーヤ(「行政」イクター)の出現 セルジューク朝のイククー・アルイスティグラール
セルジューク朝のイククー・アルイスティグラール朝末期 イクターの封土への接近 イクター・ヒエラルキーの成立
セルジューク朝以外の諸王朝のもとでのイクターの発展
アイユーブ朝エジプト イブラ(評価価値)に基づく「財政」イクター
結語
イスラム世界、西ヨーロッパで等しくみられた二重の歴史的過程(イクターの封建化、国家機能の封建化)
ビザンツ・プロノイアの発展との平行性
ビザンツ、イスラム世界の商品経済的背景 イクター・システムの不安定性と、封建的世襲貴族の未発達
奴隷制商品経済の契機イスラム社会の都市的性格
〔解説〕同一地点への合流現象を示す諸社会の比較史研究(渡辺金一)
訳者あとがき(加藤 博)

存在と知 アウグスティヌス研究
創文社オンデマンド叢書
哲学するとは「わたし」について考えることである、という問題意識はアウグスティヌスに始まる。新たな視点から考察することにより、アウグスティヌスの西洋哲学史上における決定的な意義を明らかにする。
古代から中世への転換期にギリシアに始まる哲学に何が起こったのか。近世哲学はギリシア哲学から何を受け継いだのか。これらの問題を考えるとき、アウグスティヌスの果たした役割は計り知れなく大きい。地中海世界にキリスト教西欧が誕生しつつあった時代、アウグスティヌスは、ひとりの人間として世界を見、自分を考えた。本書は「幸福とは何か」という古代世界に共通な問題関心から解き起こし、「存在」や「知識」に関わる哲学の基本概念を、アウグスティヌスがどのように捉え直し変貌させていったのかを、プロティノスの思想を踏まえて明らかにする。
【目次】
まえがき
目的と意志
第一章 生の目的
第二章 幸福への意志
知の確実性
第三章 認識の確実性
第四章 ことばと真理
第五章 信ずることと知ること
存在と知
第六章 知の永遠性と魂の不死
第七章 精神の実体性
内在と超越
第八章 観念としてのイデア
第九章 内在としての存在
あとがき
引用文献

日本の宗教哲学
創文社オンデマンド叢書
明治中期以後の日本の宗教哲学の歩みを、代表的な思想家の著作を通して明らかにし、宗教哲学という学問が、わが国においていかに成立し、展開したかをたどり、現代の日本における多様な宗教現象を検証する。
【目次より】
はしがき
序説 宗教哲学の立場
第一章 宗教哲学の成立
第二章 西田幾多郎の宗教哲学
第三章 波多野精一の宗教哲学
第四章 実証的研究の成立と展開
第五章 田辺元の宗教哲学
第六章 西谷啓治の宗教哲学
第七章 回顧と展望 宗教哲学の課題
宗教研究関係著作年表
あとがき

芸術とは何か
創文社オンデマンド叢書
美学者による、芸術の本質をめぐる哲学的思考。人間にとって美とは? 美と芸術の関係とは? 創造と伝統とは? 超越と内在とは?
【目次より】
芸術とは何か
一 美と芸術
二 人間と美
三 芸術と世界観
芸術の内容
芸術の歴史性について
芸術における創造と伝統
芸術制作における内在・超越の問題
あとがき

民衆と教会(歴史学叢書) フランスの初期「神の平和」運動の時代における
創文社オンデマンド叢書
10世紀フランスにブルゴーニュ、アキテーヌ地方から起こった「神の平和」運動は、民衆と教会が連携して真の平和を確立しようとした世界初の宗教的民衆運動である。ドイツ中世史学界を代表する著者が、あらゆる同時代資料と文献を駆使して、その歴史的井意義を社会指摘に把握し、運動の中に結晶化されてくる社会生活全般を浮き彫りにした民衆運動史研究の名著。
【目次】
序
はしがき
第一章 諸前提
A 封建的分裂の時代におけるフランスの教会
封建的分裂 教会聖職者・修道士たちの時代批判 防衛手段としての破門 教会会議の意義
B プルゴーニュおよびアキテーヌにおける農民の状態
農民の経済状態の分化 貨幣経済 荘園の構造 農民の不安定な経済状態 南フランスにおける階級闘争の諸条件
第二章 教会と下級階層との関係
問題提起
“貧者“に対するクリュニー派の立場
修道院荘園の社会的機能
下級階層に対する教会のイデオロギー的感化
この問題に関する従来の研究
小教区の意義
聖遺物礼拝の発展
十世紀の聖遺物礼拝に対する修道院の態度
トゥールニュ
フィジアク
アンズィ=ル=デュク
スヴィーニ
コンク
修道院の民衆に対する働きかけ
異端
南フランスの位置
南フランスにおける聖人の胸像
教会建築
“宜伝文書“としての奇跡物語
教会財産の守護手段としての聖追物
世論の意義
第三章 初期の「神の平和」運動の経過
シャルー
ナルボンヌとル・ビュイ
リモージュ
ポアティエ
ヴェルダン=シュル=ラ=ドゥーブ
エリ
北フランスヘの第一次拡大
アンス
エルヌ
シャルー
リモージュ
ポアティエ
ルドルフ・グラバーの報告
オーセール、ル・ピュイ、ポアティエ
北フランスヘの第二次拡大
絶対的平和の要求
ブールジュ
神の休戦
第四章 民衆運動としての「神の平和」運動
「神の平和」運動に関する従来の研究
問題提起
神の平和の根本規定
“貧者“の保護
経済的動機
カロリング朝の国王罰令との関係
教会が用いた方法
宣督
聖務停止
平和部隊
各教会会議に関する叙述史料
平和教会会議の経過の特色
民衆運動としての平和運動
「神の平和」運動と巡礼運動
平和運動に対する修道院の関心
平和運動と十字軍運動
教会の階級的立場
原注(史料および文献の省略記号)・補注
訳註
訳者あとがき

ベルジャエフ 生涯と思想
創文社オンデマンド叢書
ロシアの哲学者ベルジャエフ(1874~1948)は、マルキストであったが、ロシア革命後転向し、反共産主義者となり、十月革命後にパリに亡命した。神秘主義に則って文化や歴史を考察した。その中心的な思想には、「反共産主義」(共産主義がユダヤ教の選民思想に基づいていると批判)、「歴史哲学」(伝統と記憶を重視する)、「進歩主義批判」「人権、国民主権批判」などがその思想の中心にある。特異な思想家の全貌に迫る。
【目次より】
序文
〔I〕生涯
一 幼年時代
おいたちと、家族
幼年学校生活
二 大学生時代
革命運動
ヴォログダ追放期
三 壮年時代
キエフ在住の頃
ペテルブルク在住の頃
破局の予感
革命の嵐の中で
四 亡命時代
〔II〕思想
一 思想概説
思想の要旨
思想の特色
思想の形成
二 社会論
人格と社会
社会批判
イデオロギイ批判
マルキシズムとキリスト教
三 歴史哲学
歴史批判
超歴史
時間論
他歴史観との比較
四 人間論
対象化
自由
悪
倫理
新しさ
不死
人格主義
五 キリスト教思想
キリスト教入信
神人論
「ソボルノスト」
終末論
六 ベルジャエフとロシア思想
ロシア宗教思想〔ホミヤコフ、フョードロフ、ソロヴィヨーフ、シェストフ〕
ロシア社会思想〔虚無主義、無政府主義、社会主義〕
ロシア文学〔トルストイ、ドストエーフスキイ〕
ベルジャエフ著書目録
ベルジャエフに関する著作
あとがき

ロシヤ思想史
創文社オンデマンド叢書
ロシアの哲学者ベルジャエフは、反共に転向した後、神秘主義的哲学者として活躍したパリで、ロシヤの思想の特徴と歴史を纏め上げた。
【目次】
訳者序文
第一章 近代ロシヤ思想の淵源
ロシヤ国民類型の規定。東洋と西洋。第三ローマ・モスクワ。十七世紀の教会分裂。ピョートル大帝の改革。ロシヤ・インテリゲンチャの興隆。
第二章 スラヴ派と西欧派
歴史哲学の問題の決定的重要性。東と西。ロシヤとヨーロッパ。スラヴ派と西欧派。ロシヤ思想の二面性。ロシヤの普遍主義。国家と人民。ロシヤの歴史哲学。など
第三章 人格と社会
人格と世界調和との衝突の問題。ロシヤ思想史におけるヘーゲルの意義。その「現実」との関係。ドストエーフスキイの予言者的熱狂。など
第四章 ロシヤ人間主義
ロシヤには文芸復興的人間主義はなかった。ロシヤ文学の人間味。人間主義の危機。ドストエーフスキイにおける人間主義の弁証法。など
第五章 ロシヤ社会思潮
"ロシヤ思想の社会的色彩。ロシヤには資本主義的発達段階はない。サン・シモンとフーリエの主な影響。「何をなすべきか」。など
第六章 ロシヤ虚無主義
文化の正当性の擁護問題。完全な文化と完全な生活との矛盾。単純化。ロシヤ虚無主義。ラヴロフ。L・トルストイ。文明の不正と神的自然の正しさ。トルストイとルソー。無抵抗の意味。など
第七章 ロシヤ無政府主義
権威と国家。権威に対するロシヤ人の態度。。K・アクサーコフの無政府主義。スラヴ・メシヤ主義。クロポトキン。L・トルストイの宗教的無政府主義。無抵抗主義。ドストエーフスキイにおける無政府主義的要素。など
第八章 ロシヤ思想の宗教的性格
宗教的主題の決定的意義。思惟の全体主義的性格。理解力は精神諸力の調整であり、単に理性ではない。弁神論の問題。西欧合理主義批判。I・キレエーフスキイとホミャコフの哲学思想。ヘーゲル批判。ソフィア論。形而上学者としてのドストエーフスキイ。L・トルストイの宗教哲学。インノケント大主教。ブハレフ。ネスメロフの宗教的人間論。など
第九章 ロシヤ思想の終末論的要素
ロシヤ思想の終末論的予言者的性格。ドストエーフスキイにおける終末論とメシア主義。終末論的予言の条件付の性質に関するフョードロフの天才的観念。ソロヴィヨーフ、ロザノフとフョードロフにおける誕生と死の問題。正教における三つの流れ。など
第十章 二十世紀文化ルネサンス
二十世紀初頭の文化的文芸復興。インテリゲンチャの思想の変化。美意識の変化。哲学的関心。批判的マルクス主義と観念論。メレジュコーフスキイ。ロシヤ象徴主義とロシヤ詩の開花。神秘的なもの心霊学的なものへの関心。など

存在への問い 哲学の原点に根ざして
創文社オンデマンド叢書
存在するとはいかなることか? 正義、幸福、愛、死、人間存在を徹底的に問い直した哲学的な考察。
【目次】
はしがき
1 哲学と人間存在
2 「ないものから何ものも生じない」
3 フェシスとノモス
4 人間は万物の尺度か
5 「汝自らを知れ」
6 正義の本質
7 正義と幸福
8 死後への希望とその根拠
9 愛に関する最古の哲学
10 プラトンのエロス論と『パイドロス』の主題
11 「学ぶ」ことの可能根拠
12 哲学の使命
あとがき
文献目録

悪の形而上学
創文社オンデマンド叢書
「神の創造したこの世に何故『悪』が存在するのか?」古今東西の文学者、宗教家、哲学者たちは、この難問の解明に挑み続けてきた。本書は、真と善を存在の普遍的な属性と見なし、理性的絶対者が万物の究極的根源であると考える形而上学の立場から、人間の経験の枠を越える決定的な悪の可能性とその存在理由を深く考察し、悪の根本的解決の核心に鋭く迫る問題作。
【目次より】
第二版に際して
はしがき
序論
第一部 予備的考察
一章 問題提起
二章 一般的な疑問
一 哲学的検討の正当性
二 エピクロスのジレンマ
三 神と人間の道徳律
四 積極的な理解の探求
五 神の全能について
六 ありうべき最善の世界
三章 悪の本質と存在理由についての予備的考察 人工的なものの場合
第二部 生物の諸種の悪とその存在理由
四章 動植物の自然的悪
五章 人間の被る自然的悪
六章 他人の不正による不必要な悪
第三部 罪悪とその存在理由
七章 罪悪の本質
八章 罪悪の存在理由
九章 決定的悪の可能性
十章 決定的悪の存在理由
むすび
付録一 戦争という悪について
付録二 決定的悪の解釈と人間観の根本的相違
文献目録

ドイツ文学における東方憧憬
創文社オンデマンド叢書
ゲーテ、ニーチェなどドイツを代表する文学者・思想家が、なぜ東方に憧れをたのか? 東欧みならず、仏教まで、東との邂逅を読み解く。
【目次より】
一 ドイツ文学における「東方的」要素――一つの断層的試論
二 一なるがまま二――ハーテム・ゲーテとズライカ・マリアンネ
三 西と東の出会い――『西東詩集』に関する一つの覚え書き
四 ニーチェと仏教
序章
第一章 ニーチェの哲学
第二章 ニーチェと宗教
第三章 ニーチェと仏教
結章 自然法爾と創造
五 シュレーゲル兄弟のインド研究について
六 わが老いの歌――ゲーテの『ファウスト』をめぐって
あとがき

イタリアのヒューマニズム(名著翻訳叢書)
創文社オンデマンド叢書
本書はルネサンス市民社会に新しい「人間教養」として生まれたヒューマニズム思想を歴史的に究明し、当時の活動生活と瞑想生活をめぐる市民の会話を通して、人間思想の生きた姿を伝えようとする名著である。著者ガレンはこの人間中心の思想を、豊富な資料を通してみごとに浮き彫りにし、現代のメカニズムによって喪失されつつある人間性への反省を強くうながすとともに、従来、美術や文学を介してのみ知らされたルネサンスの人々の人生観、人間思想を明らかにする。
【目次より】
序論
ヒューマニズムと哲学と歴史とプラトニズム 新しい言語文献学の必要 ヒューマニズムの起源 ヒューマニズムと古典的古代
第一章 ヒューマニズムの起源 フランチェスコ・ペトラルカからコルッチオ・サルターティへ
内面生活の分析 自然科学にたいする攻撃 コルッチオ・サルターティ コルッチオ・サルターティにおける意志の優位
第二章 市民生活
サルターティ学派とベルナルディーノ・ダ・シエナ レオナルド・ブルーニ ポッジオ・ブラッチョリーニと地上の富の価値 ヴァッラと道徳科学 ジャンノッツオ・マネッティと人間の尊厳性の問題の始めての提出 レオン・バッティスタ・アルベルティ マッテオ・パルミエーリとプラトニズムへの移行 ポリツィアーノとバルバロの言語文献学 ガラテオとポンターノ 教育学に関する補足
第三章 プラトニズムと人間の価値
「自由」の危機とリヌッチーニの「自由論」対話 クリストフォロ・ランディーノにおける活動生活 マルスィリオ・フィチーノと「博識なる敬虔」の観念 プラトン神学 ピコ・デッラ・ミランドラと反修辞学論争 反占星学論争 プラトン的護教論の補足
第四章 プラトニズムと愛の哲学
フランチェスコ・カッターニ・ダ・ディアッチェートとフィチーノの正統 愛の形而上学 プラトンとアリストテレスの融合 ジャン・フランチェスコ・ピコの懐疑主義
第五章 アリストテリスムと霊魂の問題
ピエトロ・ポムポナッツィ ヤコポ・ザバレッラ アリストテリスムにおける宗教の問題
第六章 論理学、修辞学、詩学
論理学と方法論の問題 ザバレッラとパドヴァ論争 マリオ・ニゾリオ ジロラモ・フラカストロの「ナウゲリウス」
第七章 道徳の探求
アリストテレスの影響と「ニコマコス倫理学」への註解
第八章 自然探究
レオナルド・ダ・ヴィンチ ジロラモ・カルダーノ ジロラモ・フラカストロとデッラ・ポルタ アンドレア・チェザルピーノ ベルナルディーノ・テレジオ
第九章 ジョルダーノ・ブルーノからトマーゾ・カムパネッラへ
宗教改革 ブルーノにおける宗教と哲学 ブルーノの宇宙概念 トマーゾ・カムパネッラにおける新しい問題

イングランド法とルネサンス(歴史学叢書)
創文社オンデマンド叢書
近代法の二大流派の一つ英米法は、その独自性をいつどのようにして獲得したのか? イングランド独自の法体系をなすコモン・ローは大陸法のローマ法継受を始めとするルネサンスの波を受け、近代的に展開したとするメイトランドの画期的論文を中心に、コモン・ローは中世から近代まで一貫しているとする批判論文2篇を収録し、イングランド法の基本性格を浮き彫りにする。
【目次より】
凡例
F・W・メイトランド「イングランド法とルネサンス」
サー・W・ホウルズワース「新しい法準則 ローマ法の継受」
S・E・ソーン「イングランド法とルネサンス」
訳者あとがき
人名小解説・索引

新しい倫理のために
創文社オンデマンド叢書
善とは、人はどう行動すべきかを示すのが倫理である。宗教は権威を失い、道徳が廃れている現代社会で、新たな倫理を模索するために。
【目次より】
新しい倫理のために 序にかえて
道徳の危機
道徳の本質
道徳と宗教
自由とは何か
政治と倫理
世界政府の倫理
政治的ニヒリズムの克服
無神論的宗教と背徳の倫理
「家」の問題
家族国家観と社会意識
あとがき

訳注『名公書判清明集』戸婚門 南宋代の民事的紛争と判決
創文社オンデマンド叢書
『名公書判清明集』は、南宋の朱熹、真徳秀、呉潜、徐清叟、王伯大、蔡抗など、28人の名公と呼ばれた地方の行政官の訴訟処理の判例集で、12~13世紀の中国の法を知るための最重要史料を読み解く。
【目次より】
書判目次
凡例
解説
第一部 取引法篇
取引法について
名公書判清明集巻之四 戸婚門
名公書判清明集巻之五 戸婚門
名公書判清明集巻之六 戸婚門
名公書判清明集巻之九 戸婚門(前半部)
第二部 家族法篇
家族法について
名公書判清明集巻之七 戸婚門
名公書判清明集巻之八 戸婚門
名公書判清明集巻之九 戸婚門(後半部)
版本対照表
あとがき

夏目漱石
創文社オンデマンド叢書
日本近代文学の巨匠・夏目漱石を、文芸評論家にして、哲学者・思想家の著者唐木順三が、その文学の内奥に迫る渾身の漱石論。特に未完の『明暗』に「則天去私」の思想を探る。同時代の作家、長塚節、鴎外、子規などと比較し、漱石の独自性と時代性を浮き彫りにする。
【目次】
一
漱石概観
まへがき
一 逃避と反抗の時代
二 反省の時代或ひは自己苦悩の時代
三 人生観照の時代
附録 漱石に於ける現実
二
『明暗』論
まへがき
一 『明暗』の成立まで
二 『明暗』の稜端
三 『明暗』の運び
四 余録
三
漱石における「狂」の問題
四
長塚節と漱石
鴎外と漱石
子規と漱石
ケーベルと漱石
五
作品解説
あとがき