文芸(単行本)作品一覧

遠ざかる祖国
文芸(単行本)
欧州を奇妙な噂が駆け抜けた――
日本軍、真珠湾奇襲!?
泥沼化する第二次世界大戦。
中立国ゆえに各国スパイの暗躍の場となったスペイン・マドリードで、枢軸国側と連合国側とに分れ、愛し合ってしまった男と女。
熾烈な諜報の世界を描き尽くす、著者渾身のライフワーク第2弾!
「あなたとは、戦争のない時代に知り合いたかった――」
1941年。ナチス・ドイツの影を濃くしていくスペイン、マドリード。現地で情報収集活動を行う日本人スパイ・北都昭平は、1人の女と再会した。灼熱の太陽の下で激しく愛し合う2人。だが、女は連合国側のスパイでもあった――。

棹歌
文芸(単行本)
愛と哀しみの文学!
文藝賞受賞作家の書下ろし特別作品
新橋に、京都五条楽園に、ファムファタール運命の女に魅せられた青春の憧憬!
私たちは源融(みなもとのとおる)の邸跡に立つ大榎の下から、東の小路を抜け、鴨川の土堤に出た。対岸の街の灯で、ぼっと白く浮ぶ歩道を南へ向かって歩くと、川岸の芦に隠れていた残り鴨の群が何となく従いてくるように見えた。歓楽街の灯は家々の軒に隔てられて届かなかった。だが、岸辺には常に楽園の予感がただよっていた。楽園の火と鴨川の水の2つの情緒の広がりの中を、1本の白道が通っていて、私たちを光明の浄土に導くように思われた。
私たちの行手に、ちらちらと黄色い火が見えた。鬼火が踊っている、と私は思った。10余年の間に、まり子は多くの人を鬼籍に入れて来た筈だった。
「純ちゃん、わたし、これまでずっと逢わないようにしてきたのに、今日だけは逢いたいと思った。どうしてか判る?」
私は黙っていた。
「ここなら、川がきれいだからよ。京都は良いわ。――でも、私はきっといつかは、東京に帰って、東京で死ぬわ……」――(本文から)

アヤワスカ!
文芸(単行本)
騙されても、殺されても、探したかったもうひとつの世界へ。
究極の幻覚をもたらす植物を求め、アマゾン奥地へ。殺人蚊におびえ、インチキシャーマンに偽物をつかまされた末に出会った「脈絡なくフラッシュする極彩色のヴィジョン」とは。――書下ろし南米紀行。
もし君が自分を見失い、生きていることに疑問を持ったら、安直な新興宗教にはまったり、他人に対して刃を振り上げるまえに、アマゾンに来ればいい。アヤワスカは、いつでも誰に対してでも開かれている。(AKIRA)

四両二分の女 物書同心居眠り紋蔵
文芸(単行本)
御白洲に引き出されたとびきりべっぴんの江戸芸者が紋蔵の名を呼んだ。
人気シリーズ“窓ぎわ同心”捕物帳最新刊!
紋蔵が謝金を受け取って家屋敷の落札に便宜をはかったという噂が立った。真相が判明した後、安藤覚左衛門は紋蔵を定廻りに任命する。「名誉回復の恩賞」他7編。

ププタン
文芸(単行本)
吉川英治文学賞作家が新境地のアジア奇譚。
バリ島、上海、シャム、トルコ、満州、エチオピア、チベットと明治から戦前まで個人で旅した冒険心あふれる日本人の姿と迎えた秘境、魔都の心躍る文化交流物語。
バリ島蘇州シャムトルコ……
機関銃など新式兵器で欧米が侵略したアジアに、あの時代の日本人はどう関わっていたのか?
意気込んで海外へ出るものの、強引な西洋と奥深いアジアの文化差異に翻弄される日本人の様は百年前から変わらない――

十三の黒い椅子
文芸(単行本)
極上の悪夢のための指定席
ホラーミステリー・アンソロジーから魔像(ファンタスマゴリア)が浮かび上がる!
技巧の限りを尽くした鬼才の真骨頂。
アンソロジーに仕掛けられた悪夢に満ちた罠
書き下ろしアンソロジーの筆者が、ひとり、またひとり死んでいく。ネット上の掲示板や日記に綴られる不穏な思いが、身も凍らせる陰謀に昇華する。異形の傑作誕生。
1 「椅子と駱駝の物語」
2 「悦楽の椅子」
3 「密室と嘘のロンド」
4 「目を瞠(みは)れ、鎖はその椅子に」
5 「イスタンブールの椅子」
6 「古池」
7 「密室長い椅子の話」
8 「座椅子の中の小人」
9 「チェアー、あるいは永遠の不在」
10 「椅子には顔」
11 「椅子の麗人」
12 「椅子の中の匣(はこ)」
13 13番目はあなたのために空けてある。――

海の向こう 104日
文芸(単行本)
推理作家の夫と旅した二度目の世界一周旅行
初めての船旅から3年。船酔いに悩み、乗客のマナーにあれほど怒っていたのに、ナポリ、イースター島という響きに旅心抑えがたく……。
船旅は人生そのものだ。それにしてもいろいろな人生があるものだ。他人と同じ人生なんて、あるわけがない。もう少ししたら、私のではない色々な人生を見に、また、船に乗りたい。自分の生き方の参考になるかもしれないから――。(早坂真紀)

昭和文学史 下巻
文芸(単行本)
ここに完結 日本文学史の金字塔!
あの作家この作品の誕生秘話
文学者の営為はこうして時代の精神を映し出す
【本書の特徴】
1.列伝体を採用、“読み物”文学史
2.作品が未読でもわかる工夫
3.タブー「日本とアジア」を検証
4.女性作家の活躍を通史的に網羅・細述
5.大衆文学を独立して記述
6.最新の資料、研究成果を使用

ヒトのオスは飼わないの?
文芸(単行本)
ネコ6、ヒト2、イヌ1の暮らしって!?
ロシア語通訳の仕事先で出会った新しい家族。
名エッセイストの犬猫+ヒト騒動記。
ロシア語通訳として第一線で活躍しながら、家に帰れば犬1匹、猫6匹に振りまわされる毎日。読売文学賞、講談社エッセイ賞作家の、笑って泣ける最新エッセイ。
その翌年の年頭あいさつは、こうだった。「一昨年の猫2匹に続いて、昨年は仕事先で出会った野良犬1匹、連れ帰ってしまいました……」
これを受け取った恩師が、元旦早々電話してきた。「ネコイヌもいいけれどねえ、君、そんなことより、早くヒトのオスを飼いなさい、ヒトのオスを!!」――本文より

骨董ハンター南方見聞録
文芸(単行本)
南宋青磁の大鉢がニワトリの水入れになっていた!?
30年間骨董を探し続けてきた男の驚愕の体験談
全31品。ぜったい飽きさせません。
・ボールペンで手に入れた香合の逸品(日本に3つ)
・祈祷師の薬入れになっていた葉茶壺(室町末には一城の価値)
・ウイスキー2本と交換した染付大皿(3億円)
出てくる出てくる宝の山。一獲千金をもくろむ海千山千の魅力的な男たちの群れが、博物館級の掘り出し物を求めて東南アジアの奥地をさまよう。人情家の骨董屋主人が、丁々発止の駆け引きの末手に入れた名品と驚くべきエピソードの数々。骨董ハンティングの旅31章、おもしろさ完全保証。
「旦那、骨董は埃も値打ちといいますぜ」

秘剣の黙示
文芸(単行本)
秘伝の裏太刀を教える
「円龍」の剣を究めたその先に、まだ奥義があるのか。
如月流は魔物――若き剣士・如月流七代目練之助は思った。
新感覚書下ろし剣豪小説
【如月流兵法次第】
一、三技――――雪雲 晴風 野転
二、十の太刀――十字返し 十字落とし
三、邪巻――――流水 八包 円龍
相手の太刀を好きにはさせない。それが如月流だ。

夢の工房
文芸(単行本)
〈真保裕一解体全書〉
この1冊で、真保裕一のすごさがわかる!
作家生活10年、仕事と暮らしの周辺を、折々に見つめ直した初エッセイ集。
デビュー作『連鎖』から『防壁』までを熱く語ったロング・インタビュー付。
書下ろし中篇推理小説『盗作・雪夜の操り人形(ギニョール)』特別収録。
――真保裕一のこの10年――
1991年『連鎖』で江戸川乱歩賞受賞
1992年『取引』
1993年『震源』
1994年『盗聴』
1995年『ホワイトアウト』(吉川英治文学新人賞受賞)
1996年『朽ちた樹々の枝の下で』『奪還』(山本周五郎賞・日本推理作家協会賞受賞)
1997年『奇跡の人』『防壁』
1998年『トライアル』『密告』
1999年『ボーダーライン』
2000年『ストロボ』
2001年『黄金の島』『夢の工房』

蟒之記
文芸(単行本)
痛快無比!酒豪小説
江戸の酒豪たちの奇想天外な呑みっぷり!
酒をこよなく愛する醸造学者の新境地!
身上惜しまぬ希代の宴会名人、きょ愁使者抱樽。アルコールの概念がなかった時代のきき酒師、宇田川小三郎。上方から江戸への新酒一番入荷を競う番船競争、正覚坊の亀。大酒合戦で一斗九升五合を呑み干した男、小山の左兵衛。役人尻目に密造酒造りに励む白馬佐助――

釈迦が寝言 下
文芸(単行本)
現代の家族、人間の生と死。
時代を越えた、生きる者の苦悩。
神々の住む国で、人間の在り方を考える。
若き新鋭作家が21世紀に放つ問題作!
〈書下ろし特別作品〉
灰と骨と脂の塊が、川床に落とされる。それはもう亡骸ではない。泣き叫ぶ者もいない。魂が宿っていたのだとすれば、すでに別の世界へ行き、次の転生への準備にはいっている。――(第5章・灰と花嫁)
ネパールの天才技術者アルニコについて書いているとき、ネパール王宮での惨劇が起こった。彼の生きていたモンゴル帝国時代の権力闘争について知れば知るほど、過去の史実と現在進行形の時間が交錯するような、奇妙な感じがした。――(後書き)

すベての雲は銀の…
文芸(単行本)
壊れた心にやさしく降り積もる物語
誰もが抱える傷なのに、痛くてたまらない――。
恋人の裏切りに心を引き裂かれ、大学生活を捨て信州・菅平にやって来た僕。もう人を愛せない。心も、そして体も――。
終わりのない痛みに閉ざされた僕が出会ったのは、信州の空のような明るさの奥にさまざまな傷を隠し持った人たちだった。
愛し合い、傷つけ合い、やがて赦し合う人々が静かに、せつなく奏でる交響楽。待望の長編小説。

鎖国してはならない
文芸(単行本)
同時代と明日に伝えたいノーベル賞作家の魂のメッセージ
同胞とこの惑星(プラネット)のすべての住人に向けて
「いまこの本を編集して見出すのは、幾つもの主題がしだいに収斂(しゅうれん)してきているということです。それは生涯の終幕にさしかかって、私がこれを人に語りたい、この国の同胞にも、また外国人に向けても、と望む――つまりわれわれの惑星のすべての住人に向けて、ということになりますが――主題が、いまや一行にまとめることすら可能だ、ということです。つまり、日本人は『鎖国してはならない』という一行の日本文に」――大江健三郎

言い難き嘆きもて
文芸(単行本)
この世界を生きるための心の姿勢と希求(ねがい)
生の特別な日々がむすぶエッセイごとの「小さな物語」
「これをいま書いておかなければ、そのような経験や思考があったことすらすぐにも忘れてしまう、つまりこのいまは、生きなかったと同じになるだろう、という思いがあるのです。ここに編集した5年間のエッセイには、そのようなかたちで自己の再認識が表われているはずです。それもエッセイごと「小さな物語」を作るスタイルができあがっているように思います」――大江健三郎

釈迦が寝言 上
文芸(単行本)
歴史と永遠、疾走する想像力。
ネパールを舞台に、日本人一家の性と宗教意識を鋭く問う。
すばる文学賞受賞作家、渾身の力作!
〈書下ろし特別作品〉
いまの日本に住んでいてもリアルなものが全く感じられない。未知の世界へ飛び込み、自分の可能性を確かめたい。辰彦は、こころから旅に出たいと思った。――(第1章・食卓)
寺院に彫られたエロティックな彫刻群。その側を行き交う女性たちの肉づきのよさ……ネパールに女神はあふれている。――(第2章・エロスの神々)
太古の昔、ヒマラヤは海の底にあったという……。泰蔵は何かに祈るのではなくいつも何かを祈ってきたのだった。これまでは何に、誰に祈るのかなど、考えたこともなかった。――(第3章・曼荼羅探し)

永田町にも花を生けよう
文芸(単行本)
いったい、どうして、議員秘書になんて。
華道家元の娘の心を奪った、ワイドショーやドラマで見るより刺激的な、永田町の不思議と魅力。
はじめは2週間だけ仕事を手伝うつもりだったのに……。気がつけば国会議員の母の公設秘書となって、議員会館のなかを走り回っていた。
それまで住み慣れた、いけばなの世界とは、まるで対極の世界に飛び込んだのはなぜなのか。「永田町の常識」から受けたカルチャーショック、小泉首相ほか国会議員たちとの交流など、みずみずしい筆致でつづった書下ろしエッセイ。

ジャンヌ・ダルク暗殺
文芸(単行本)
聖処女ジャンヌをめぐる野望と陰謀のドラマ!フランス救国の乙女ジャンヌ・ダルクの陰で活躍する娼婦ジャンヌ。激動の時代を生きた二人のジャンヌの運命をドラマチックに描く渾身の傑作歴史長篇小説! 平和は、戦いでしか創れない!神の声に従う処女と野望に燃える娼婦、悪をきわめた将軍たちがおりなす熾烈な歴史絵巻。はたして神は、誰を支持するのか。
平和は、戦いでしか創れない!
神の声に従う処女と野望に燃える娼婦、悪をきわめた将軍たちがおりなす熾烈な歴史絵巻。
はたして神は、誰を支持するのか。
外に出たとたんに、丘の向こうで閧(とき)の声が上がった。それを聞くと、ジャンヌは、もう自分を抑えることができなかった。餌をついばむ鶏や家鴨を蹴散らし、羊の群の真ん中を突っ切って、夢中で丘を駆け上がった。
フランス軍は、総くずれであった。思い音を立てて次々と落馬した重騎兵たちは、泥沼となった地面に埋まり、立ち上がろうとしてあがいた。その間を、イングランド軍の歩兵が歩きまわり、斧を振り下ろしては止めを刺していく。様々な形の盾や剣、旗が雨に打たれ、血に染まり、踏みにじられて泥の中に沈んでいた。
(本文より)