文芸(単行本)作品一覧

大江戸釣客伝 下
文芸(単行本)
人間の愚かさ、気高さを釣りの世界で描く
釣り船禁止令で絵師朝湖は三宅島へ島流しとなり、江戸で支援の秘策が練られる。赤穂浪士の討ち入りがあり、江戸の町が大地震による火災にやられ、周辺は津波に襲われるなか、釣り人たちの運命は!?
そもそも釣りは人の道にあらず、外道の道なり。この道に生き、この道に死して悔なし。
なまこの新造が、あれほど釣りにのめり込んだというのも、その心のどこかには哀しみのようなものがあったのではないか。自分の握るこの竿は、人が生きてゆくための杖である。人は淋しい。人は愚かだ。その淋しさや、哀しさや、愚かさの深さに応じて人は釣りにゆくのであろう。――<本文より>
第46回吉川英治文学賞受賞

大江戸釣客伝 上
文芸(単行本)
生類憐みの令で釣り人はどう生きたか
最古の釣り指南書『何羨録(かせんろく)』を著した津軽采女(つがるうねめ)を中心に描く、釣りに憑かれた人々の活躍。元禄の世の釣り勝負の妙、名人の業。絵師朝湖と俳人其角が釣り上げた土左衛門の正体は!?
こうやって、竿を出していれば、陸(おか)でのあれもこれもみんな夢みてえなもんだ。
「釣れぬ釣りも釣りじゃ。釣れぬからといって、じたばたせずともよい……」海に向かって、口の中に入れておいた小石をひとつずつ落とすように、采女はつぶやいた。釣れぬ釣りは、自分との対話である。糸を下ろしているのは、海の底ではなく、自分の心の底だ。――<本文より>
第46回吉川英治文学賞受賞

呉越春秋 湖底の城 第二巻
文芸(単行本)
戦うために生きるのではない。生きるために戦うのだ。
奸臣・費無極(ひむきょく)が、父と兄を処刑する前夜、伍子胥(ごししょ)は、楚の都に潜入する。希望はあるのか。
楚は内憂外患に激動する。待望の第二巻!
楚の人、伍子胥は、呉との国境近くの邑・棠を治める兄・伍尚(ごしょう)を助け、配下に逸材を得る。ある日、呉の大船団二万五千が江水をさかのぼり、楚はこれを迎え撃つ。いったんは勝利を収めたが逆襲を受けて楚は敗北した。翌年、楚王は、太子建の妃として迎えるはずだった秦の公女を王妃とする。太子は楚都から遠ざけられ、伍子胥の父・伍奢(ごしゃ)は太子に仕えていたため王宮に召還され拘留される。すべて佞臣・費無極の奸計によるものであった。
「なんじしか仇討ちをする者はいないではないか。われが死んでも、伍氏の家名をなんじが保てばよい。なんじの才知は、われにまさる。なんじによって伍氏の家名は天下に知られることになろう」と伍尚は微笑をまじえていった。子胥は落涙した。

風を断つ
文芸(単行本)
夫婦になったおさとは、ちょっと変わった女。三四郎は突然「実家に帰る」と告げられる。おさといわく、ずっと一緒にいると飽きがくるので、通い婚にしたいのだとか。困惑する三四郎をよそに、お江戸を、日本を揺るがす大発明が持ち込まれ――。(講談社文庫)
火薬を使わず人を殺すあっしの銃が一万両になるんでやすよ
浪人・由比三四郎の籠る寺に謎の職人が駆け込む。とんでもない兵器を求めて襲い来る幕府と薩摩の刺客。続々起こる怪事件を、秘剣・氷柱折りが叩っ斬る!!
人情×剣戟×大発明!! 著者真骨頂の痛快時代小説!!
夫婦になったおさとは、ちょっと変わった女。三四郎は突然「実家に帰る」と告げられる。おさといわく、ずっと一緒にいると飽きがくるので、通い婚にしたいのだとか。困惑する三四郎をよそに、お江戸を、日本を揺るがす大発明が持ち込まれ――

KENZAN! vol.15
文芸(単行本)
捕り物、お家騒動、忍、将軍、芝居小屋 時代小説は何でもあり
<新登場!>
上田秀人 梟の系譜
矢野 隆 優しき豪槍
<新連載!>
伊東 潤 叛鬼
田牧大和 縁 濱次お役者双六
●赤井三尋「ジャズと落語とワン公と」
●荒山 徹「男無用――艶めいて候」
●伊東 潤「叛鬼」
●上田秀人「梟の系譜」
●梶よう子「不苦労」
●西條奈加「暁の鏡」
●田牧大和「縁 濱次お役者双六」
●葉室 麟「星火綺譚」
●矢野 隆「優しき豪槍」
●石川英輔「大江戸絵本風土記 日本橋(続)」
●中村彰彦「五稜郭に死せず――幕臣人見寧の生涯」

天の方舟
文芸(単行本)
「おいしいですね、ODAは」
女性ながらに開発コンサルタント重役にまで出世、怖いものなしの栄転、大抜擢。光を浴びて輝く黒谷七波を襲う悲劇。そこに救いはあるか。
裁かれざる罪との対峙を圧倒的筆力で描く堂々の傑作長編!!
少しの度胸さえあれば、億の金が簡単に湧いて出る――
政府開発援助、ODAのからくりを知った七波は、みずからその手を汚すことを決意する。脳裡にうかぶのは、金に困る両親の顔だった。「勘弁してくんなせね、七波……お金が足りねえんら」
裏金の濁流。女の覚悟。
きれいごとでない「国際支援」が、ここにある。

化合
文芸(単行本)
筋書きで真犯人は見つからない。
「落ちるな。必ず証拠を見つけ出すから」
何度でも足を運ぶ。それが刑事の誇り。
時は1990年、科学捜査の夜明けを迎えようとしていた。
板橋区内の公園でイベントサークル主宰者が刺殺された。乱れた男女関係、バブル期の借金を取り立てる金融屋、男が執着して通った六本木のキャバクラ嬢……。
スピード解決を目指すエリート検事は容疑者を固めた。検事主導の捜査本部に、若き警視庁捜査一課刑事は抗えるのか。

「生」の日ばかり
文芸(単行本)
「私」とは何か。人間とは何か。人生とは何か。
60年あまり、日々の暮らしの中で、ただ純粋に考えてきた言葉がある。
純粋な探求の軌跡。ライフワーク長篇エッセイ
今日という一日が在る。それは大切なものだ。ということは、分かる。しかし、「一日」とは、果たして何であるのか、と問うと、何も分からなくなってくる。
老いる、とは、子供時代の生を味わい直せ、ということだ。
私の言葉は、問題を創り出すためにあるのだ。理解したり、解釈したり、要するに、現実を水で割って薄めるための言葉ではない。
いい人間は、ときに、「いい気な奴」を、子供として連れて歩いている。――<本文より>

畦と銃
文芸(単行本)
“最強の農夫”、“樹上で叫ぶ少女”、“絆で結ばれた牧童たち”が、破壊された農地、山林、牧場を再生すべく蜂起する!!
2011年大本命、大傑作小説!!
――地図から消えたところで、ミナギの魂は死にはしねえ。
怪童・真藤順丈が呼び醒ます、あまりにも力強く、心強い消滅の物語。
勇気を。
「百姓の百ある業のひとつめ、一は一揆だぜ」
第一次産業の村、ミナギ。この地には拳銃があり、自らの畦を超えて乱暴を働く“あぜやぶり”たちがいた。
「本物のロックは、ずぇぇったいに山を守る!」
第一部では農業、第二部では林業、そして第三部では畜産に命を捧げる“あぜやぶり”たちが、かけがえのないもののために蜂起する。
「生きてる証拠ならいくらでもあげる」
全て壊すという選択は、全て造り直すという選択。
怪童・真藤順丈が圧倒的な才能とセンスで描き尽くした、ハードボイルド第一次産業小説!

1000ヘクトパスカルの主人公
文芸(単行本)
奇跡を。
されど一生を決める2年間。
一人暮らしのアパート、コンビニのアルバイトに軽音サークル。特に不自由はなく、不満も無い。就職活動を前に漠然と不安を感じていたからだろうか、大学三年生の城山義元は、空を見上げていた。「もはや上手い下手の次元ではない。奇跡の産物に思えた」物語の後半で、義元は感謝する。仲間に、片思いの相手に。老婆に、主婦に、すべての縁に感謝する。一〇〇〇ヘクトパスカルの空の下、せいいっぱい生きる人たちを描いた、唯一無二の青春小説。
――無駄なことはない、絶対に。

ザ・ベストミステリーズ2011
文芸(単行本)
ミステリ界最高・最強のラインナップ!
日本推理作家協会が選び抜く、2010年に発表された短編推理小説のベスト12!
日本推理作家協会賞短編部門受賞作、深水黎一郎「人間の尊厳と八〇〇メートル」に加え、日本推理作家協会賞長編部門受賞の米澤穂信、吉川英治文学新人賞受賞の辻村深月、直木賞受賞の道尾秀介ら最高、最強のラインナップでお届けする、究極のミステリ・アンソロジー。
本書は、過去一年間に発表された短編ミステリの中から、特に優秀だと判断された作品を収録したものです。選者は日本推理作家協会が依頼したプロの読み手たちで、作品のレベルに関しては自信をもって保証いたします。
時代の流れと共に、新たな書き手が続々と生まれ、ミステリも多様化しています。本書により、読者の皆様にとって良い出会いがあることを確信しております。――日本推理作家協会理事長 東野圭吾
巻末に千街晶之氏による『推理小説・二〇一〇年』、さらに推理小説関係の受賞作を網羅した「受賞リスト」を掲載。
ミステリファン必読必携、完全保存版の一冊!
日本推理作家協会賞短編部門受賞作 「人間の尊厳と八〇〇メートル」――深水黎一郎
「原始人ランナウェイ」――相沢沙呼
「殷帝之宝剣」――秋梨惟喬
「アポロンのナイフ」――有栖川有栖
「義憤」――曽根圭介
「芹葉大学の夢と殺人」――辻村深月
「本部から来た男」――塔山郁
「天の狗」――鳥飼否宇
「死ぬのは誰か」――早見江堂
「棺桶」――平山瑞穂
「橘の寺」――道尾秀介
「満願」――米澤穂信

転転転校生生生
文芸(単行本)
『PowersSelection─新走─』掲載短編が、大好評につき続編書き下ろしで緊急刊行!!
クラスメイトの綾小路さんが、明日には海の向こうへ転校してしまう。
だから今日、彼女に告白すると決めた――決めたのに、なんだこれ!
入学を希望して押し寄せてくる、転校生転校生転校生……これじゃ学校にすら入れない!!
ピンチの「僕」のもとへ小走りで駆けてくるのはクラスで唯一の女友達・内田。
内田が言う、「ガガギギゴッゲ!(私に乗って!)」――!?

刑事のまなざし
文芸(単行本)
笑顔の娘を奪われた男は、刑事の道を選んだ。その視線の先にあるのは過去か未来か――。
●「オムライス」……内縁の夫が焼け死んだ台所の流しの「オムライスの皿」
●「黒い履歴」……クレーンゲームのぬいぐるみ「ももちゃん」
●「ハートレス」……ホームレスに夏目が振舞った手料理「ひっつみ」
●「傷痕」……自傷行為を重ねる女子高生が遭っていた「痴漢被害」
●「プライド」……ボクシングジムでの「スパーリング」真剣勝負
●「休日」……尾行した中学生がコンビニ前でかけた「公衆電話」
●「刑事のまなざし」……夏目の愛娘を十年前に襲った「通り魔事件」
過去と闘う男だから見抜ける真実がある。薬丸岳だからこそ書けるミステリーがある。

八月からの手紙
文芸(単行本)
決して忘れない。絶望を、屈辱を、恩義を、希望を。友を、青空の白球を――。
デビュー10年、構想10年、渾身感動作!
1946年東京。戦後復興。娯楽への欲求。「野球(ベースボール)」に衝き動かされた男たち。
書店員さんも大プッシュ!
圧倒的なスケールで綴られた、まさに“衝撃”の言葉が相応しい物語。国境も人権も勝負をも超えた、人生の悲哀をそのままに体現した野球というスポーツの奥深さが、ものの見事に伝わる。暗黒の時代に太平洋を隔てた二人の男の、眩しくもあり虚しくもある運命的な交流に、激しく胸を揺さぶられ、思わず息をのみこんだ。知られざる歴史の1ページを鮮やかに現代によみがえらせた桁外れの筆力。野球ファンならずとも読んでおくべき作品であると同時に、著者の代表作となることを確信する。――三省堂書店営業本部・内田剛さん

囮物語
文芸(単行本)
100パーセント首尾よく書かれた小説です。――西尾維新
“――嘘つき。神様の癖に”
かつて蛇に巻き憑かれた少女・千石撫子(せんごくなでこ)。阿良々木暦(あららぎこよみ)に想いを寄せつづける彼女の前に現れた、真っ白な“使者”の正体とは……?
<物語>は最終章へと、うねり、絡まり、進化する――
これぞ現代の怪異! 怪異! 怪異!
かみついて、君を感じる罠の中。

不可能
文芸(単行本)
生とは、一瞬のきらめきにすぎないのか?
「現在」が亡霊として揺らめいているだけの、時間のない世界。そこに舞い戻ったのは、咽喉元に二筋の瘢痕を持つ男。――やがて物語は、恍惚の極致へ向かう
「あんただって知ってるはずだろ? あのとき、距離は完全に零になった。あの研ぎ澄まされた硬い冷たい刃は俺の首にたしかに喰い入った。距離どころか、俺の躯は世界に激突した……。いや逆か、世界の方が……。まあ何でもいいや、とにかくそこですべての距離が消えた。どうだい、そう言っていいんじゃないか? それもまた幻想だなんて俗なことだけは、どうか言わないでくれよな」――<本文より>
あの11月25日の意味を、俺たちはまだ問い続けている。

日本の作家60人 太鼓判! のお取り寄せ
文芸(単行本)
「美味しい」のウラオモテは作家だけが知っている。
「本音の味」「真実の味」は作家に聞け!
~ご馳走お取り寄せ 日常食お取り寄せ 調味料お取り寄せ 飲むお取り寄せ 洋のお取り寄せ スウィーツ&フルーツお取り寄せ ちょっとつまみたい、ちょっと食べたいお取り寄せ~と、食を網羅!
無駄な贅沢はしたくない。でも、本当に何度も取り寄せたくなる、ちょっと誰かに言いたくなる、値段ではない、自慢のお取り寄せは?
それなら、何といっても「うるさい、鋭い、でもよーくわかってる」作家の実際のお取り寄せの品。「あの作家が好きなんだって。その理由はね……」と話したくなるエッセイやインタビューの文章とともに、読み物として、リピート必至の商品カタログとして2倍美味しい“文芸実用書”です。
作家ファンはもちろん、作品を読んでいなくても、作家の世界をのぞき見られる楽しさもあります。
どこから読んでも、いつ読んでも楽しめる気楽かつ知的な本です。
登場作家
浅田次郎、林真理子、角田光代、あさのあつこ、夢枕獏、村山由佳、井上荒野、北方謙三、宮城谷昌光、椎名誠、大沢在昌、森博嗣、有栖川有栖、貴志祐介、高樹のぶ子、津村記久子、
桜庭一樹、辻村深月、松井今朝子、篠田節子、水村美苗、朱川湊人、誉田哲也、安西水丸、睦月影郎、鹿島茂、秋元康、小山薫堂、西條奈加、東郷隆、川上健一、佐藤賢一、堂場瞬一、小手鞠るい、荒山徹、江上剛、三田完、前川麻子、甘糟りり子、池永陽、永嶋恵美、出久根達郎、平山夢明、畠中恵、長野まゆみ、椰月美智子、服部真澄、海道龍一朗、諸田玲子、山本一力、楡周平、山本兼一、近藤史恵、鏑木蓮、杉本章子、逢坂剛、酒井順子、有吉玉青、藤田宜永、新野剛志 の60人!

会話のつづき ロックンローラーへの弔辞
文芸(単行本)
「腹減った、のど渇いた、死にそうだぁ」。「バン!」。男が口で言った銃声に、女はのけぞって言った。「こんな日に死ねて嬉しいぜ、感謝します!!」。列にいた若い男女の会話である。故人に似せた言い回しと原色で着飾ったふたりの悲しみとは程遠いやりとりの方が、ロックンローラーを送る言葉としてはふさわしく思えて、嗚咽混じりの弔辞から目を外し忘れないうちにと走り書きした。
「いま、この時期に、この人(川崎徹)が、この人(忌野清志郎)の死について書いた。非常に目立たない、非常に深い仕事である。タイトルの静かさによって読まれる機会を減じるべきではない」――菊地成孔氏
「腹減った、のど渇いた、死にそうだぁ」
「バン! 」
男が口で言った銃声に、女はのけぞって言った。
「こんな日に死ねて嬉しいぜ、感謝します!! 」
列にいた若い男女の会話である。故人に似せた言い回しと原色で着飾ったふたりの悲しみとは程遠いやりとりの方が、ロックンローラーを送る言葉としてはふさわしく思えて、嗚咽混じりの弔辞から目を外し忘れないうちにと走り書きした。――<本書より>

嫁の遺言
文芸(単行本)
期待を集める新進女性作家が贈る珠玉の七篇
こんな話にいま会いたかった。不器用だけど、あたたかい愛情に溢れ、人間がいっそう愛おしく思えてくる。今年ブレイク間違い無しの新進女性作家による珠玉の七篇

私のいない高校
文芸(単行本)
鬼才が放つあまりにも前衛すぎる学園小説。カナダからの留学生を受け入れた、とある高校での数ヶ月の出来事――。普通すぎるのに普通じゃない、物語という概念を徹底的に排除した、「主人公のいない小説」 (講談社文庫)
『これまで読んだ中で、もっとも不可解な小説』――豊崎由美氏
カナダからの留学生(でも英語が苦手)を受け入れた、とある高校での数ヵ月――。描かれるのは至ってフツウの学園生活のはずなのに、何かが、ヘン……。
“物語”の概念を覆す、本邦初「主人公のいない」青春小説!
わかるのに、わからない。わからないのに、愉しくてたまらない。愉しくてたまらないのに、説明できない。説明できないのに、おすすめしたい。
これまで読んだ中で、もっとも不可解な小説に驚愕&驚喜。「私」のいないヘンテコな小説を書いた青木淳悟は、私の大事な作家になりました。――豊崎由美氏(書評家)