講談社学術文庫作品一覧

天皇の歴史5 天皇と天下人
天皇の歴史5 天皇と天下人
著:藤井 讓治
講談社学術文庫
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康ら「天下人」に、天皇はいかに渡り合ったのか。正親町天皇が発した日本史上初めての「キリシタン禁令」を無視した信長。秀吉の権威を天下に誇示することとなった後陽成天皇の聚楽第行幸。大明国征服の野望を抱いた秀吉の「皇居の北京移転計画」。家康の意向に従わざるを得なかった後陽成の譲位と後水尾天皇の即位。信長上洛から家康の死まで、激動の時代を天下人ではなく天皇を主人公として描き出す。 講談社創業100周年企画として刊行され、高い評価をえたシリーズの学術文庫版、第5巻。 本巻では、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康ら「天下人」と、同時代の天皇たちの虚々実々の駆け引きをたどり、天下統一の過程での天皇の役割を究明する。 正親町天皇が発した日本史上初めての「キリシタン禁令」を無視した信長。秀吉の権威を天下に誇示することとなった後陽成天皇の聚楽第行幸。大明国征服の野望を抱いて朝鮮に出兵した秀吉の無謀な計画「皇居の北京移転」を、後陽成はいかに阻止したのか。そして、新たな幕府を開いた家康の意向に従わざるを得なかった後陽成の譲位と後水尾天皇の即位。さらに、天寿を全うして「神」となった家康の「神号決定」の過程に見られる、新しい時代の「天皇と幕府の関係」とは。 信長上洛から家康の死まで、激動の時代を天下人ではなく天皇を主人公に描き出す。 〔原本:『天皇の歴史05巻 天皇と天下人』講談社 2011年刊〕
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哲学の練習問題
哲学の練習問題
著:河本 英夫
講談社学術文庫
私たちの身体と心には、まだ開発されていない能力が無数にある。しかし、それは「学習」では開発できない。発達をリセットして、能力を形成すること。それは「名詞」ではなく「動詞」の経験であり、そのためには実際にやってみるのが唯一の方法である。本書では、オートポイエーシスの第一人者として知られる著者が、一人でもできるエクササイズを数多く紹介している。これらを実行したその先には、未知の自由が待っている。 後ろ向きに走ることができますか? たぶん、多くの人は全身に「違和感」が生じて、数メートルも走れたら上出来でしょう。 それが難しければ、今度は横歩きしてみましょう。身体の右を前にしても、左を前にしても、身体は同じように動いてくれるでしょうか。 ──本書は、こんなエクササイズを身体だけでなく心や思考にも施して、もっと自由に生きられるようになるための教科書です。 身体にせよ、思考にせよ、私たちにはまだ開発されていない能力が無数にそなわっています。でも、「学習」によっては、それを開発することはできません。大事なのは、能力を作り出すこと。そのために、発達をリセットすること。本書には、それを一人でも実行できる具体的なエクササイズが数多く紹介されています。 経験は「名詞」ではなく「動詞」です。本書を手引きに、触覚とイメージを使ったエクササイズを実行してみれば、今まで知らなかった自由の中にいることが分かるでしょう。それこそが「哲学」の力です。 さあ、未知の自由に向かって一歩を踏み出しましょう! 【本書の内容】 練習問題1 創造性への屈伸運動 練習問題2 浦島太郎の玉手箱の秘密 練習問題3 意味の手前で…… 練習問題4 目盛りを変える、目盛りをなくす 練習問題5 見えないのに知っている、触れている 練習問題6 目はいかにして生まれたか 練習問題7 スチュアート君の指先 練習問題8 寺田寅彦とともに 練習問題9 日常性のほんの一歩先 練習問題10 見えないが自明な行為の手がかり 練習問題∞ レッスンの終わりに
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新版  法然と親鸞の信仰
新版  法然と親鸞の信仰
著:倉田 百三
講談社学術文庫
「信仰というものは、生きるために必要な、日々に欠くことの出来ない、実際に役立つものでなくてはならぬ。心の平和のためにも、また身体をいわゆる肉弾となして、実生活にぶっ突かって行く時にもなくてはならない最後の『拠りどころ』でなくてはならぬ」と考える著者が、法然と親鸞の信仰について、情熱をかたむけて説いた名著。法然「一枚起請文」の奥義、歎異抄の全てを語りきった! 「信仰というものは、生きるために必要な、日々に欠くことの出来ない、実際に役立つものでなくてはならぬ。心の平和のためにも、また身体をいわゆる肉弾となして、実生活にぶっ突かって行く時にもなくてはならない最後の『拠りどころ』でなくてはならぬ」と考える著者が、法然と親鸞の信仰について、情熱をかたむけて説いた名著。
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オスマン帝国の解体 文化世界と国民国家
オスマン帝国の解体 文化世界と国民国家
著:鈴木 董
講談社学術文庫
民族・言語・宗教が複雑に入り組み、多様な人々を包み込む中東・バルカン。その地を数世紀の長きにわたり統治したオスマン帝国の政治的アイデンティティ、社会統合、人々の共存システムとはどのようなものだったのか。帝国の形成と繁栄、解体の実像、そして文化世界としてのイスラム世界の伝統を世界史的視点から位置づけ、現代にまでつながる民族紛争の淵源を探る。
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天皇の歴史4 天皇と中世の武家
天皇の歴史4 天皇と中世の武家
著:河内 祥輔,著:新田 一郎
講談社学術文庫
12世紀末、日本史上初めての本格的な内戦、治承・寿永の内乱の結果、新しい武士の政治組織、鎌倉幕府が誕生。政治体制は、それまでの朝廷の単独支配から、明治維新まで続く朝廷・幕府体制へと大きく変化する。父子一系の皇統をめぐる朝廷の動揺と、朝廷再建を図る源頼朝、後醍醐天皇、足利義満の構想など、朝廷・幕府体制の展開を探りながら、古典を鑑として秩序を求めた人々の営為を明らかにする。 講談社創業100周年企画として刊行され、高い評価をえたシリーズの学術文庫版、第4巻。平安時代末期の源平の争乱から、鎌倉時代を経て室町時代後半に至る中世日本における天皇と武家の役割を究明する。中世に重視されたのは、父子一系でつながる一筋の皇統=正統(しょうとう)であり、多くの天皇が自らの皇統を維持しようと院政を目指した。源頼朝も正統の天皇を護るために武家を創り、鎌倉幕府が後鳥羽上皇と戦ったのも朝廷再建のためだった。室町時代、事実上の院政を執った足利義満など、中世の天皇と武家の実像を明らかにする。 〔原本:『天皇の歴史04巻 天皇と中世の武家』講談社 2011年刊〕
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ホモ・ルーデンス 文化のもつ遊びの要素についてのある定義づけの試み
ホモ・ルーデンス 文化のもつ遊びの要素についてのある定義づけの試み
著:ヨハン・ホイジンガ,訳:里見 元一郎
講談社学術文庫
「人間の文化は遊びにおいて、遊びとして、成立し、発展した」。歴史学、民族学、そして言語学を綜合した独自の研究は、人間活動の本質が遊びであり、文化の根源には遊びがあることを看破、さらに功利的行為が遊戯的行為を圧する近代社会の危うさに警鐘を鳴らす。「遊びの相の下に」人類の歴史の再構築を試みた不朽の古典をオランダ語版全集から完訳。
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精霊の王
精霊の王
著:中沢 新一
講談社学術文庫
柳田國男の代表作に『石神問答』があります。石神=シャグジは四千~五千年前ほど前、この列島に国家が存在しなかった時代へと遡る「古層の神」です。国家が誕生するとこの古層の神は零落してしまいます。しかしながら、この縄文的な精霊は、芸能と技術の専門家たちの世界で、たくましく生き残っていたのです。「宿神(しゅくじん)」という名前で、能や造園といった分野では深く敬愛される存在でした。国家などの秩序を支える神に 柳田國男の代表作に『石神問答』があります。石神=シャグジは四千~五千年前ほど前、この列島に国家が存在しなかった時代へと遡る「古層の神」です。国家が誕生するとこの古層の神は零落してしまいます。しかしながら、この縄文的な精霊は、芸能と技術の専門家たちの世界で、たくましく生き残っていたのです。「宿神(しゅくじん)」という名前で、能や造園といった分野では深く敬愛される存在でした。国家などの秩序を支える神に力をあたえ、秩序の世界に創造をもたらす存在は、中世には「後戸(うしろど)の神」と呼ばれていました。 本書の旅は、蹴鞠の名人・藤原成通の不思議な話から始まります。そして金春禅竹の秘伝書『明宿集』と中世における宿神の奇跡を辿り、縄文的要素の残る諏訪へと向かいます。そこで出会う太古の記憶は不思議な感動を覚えずにはいられません。 そこからさらにユーラシアに散在する宿神的な痕跡をおいかけることで、その人類的な普遍性へといたります。 熱く力強い筆致でわたしたちの前に現出する世界に圧倒されずにはいられません。 本当に世界を動かしている驚くべき力に触れる壮大な人類史を描ききった瞠目の書です。
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宇治拾遺物語 上 全訳注
宇治拾遺物語 上 全訳注
著・訳:高橋 貢,著:増古 和子
講談社学術文庫
鎌倉時代前期に成立した代表的説話集。貴族・僧などの著名人から、下級官人、侍、庶民、子供まで、登場人物が多様で世俗的傾向の強い話を集める。強力譚、報恩譚、聖譚、不思議譚、艶笑譚など世の万般を描く切れ味鋭い話の数々。本巻には「舌切り雀」「瘤取りの話」「芋がゆ」など現代に伝わる物語をはじめ百余話を収録。古本系統「伊達本」を底本として現代語訳、語釈、解説を付す。
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『青色本』を掘り崩す――ウィトゲンシュタインの誤診
『青色本』を掘り崩す――ウィトゲンシュタインの誤診
著:永井 均
講談社学術文庫
「私は他者の痛みを感じることはできない」――このことを出発点として展開されるウィトゲンシュタイン『青色本』の思索を、著者が細部にわたって、詳細に検討。「独我論」とは、いったい何なのか? 哲学的に思考する醍醐味満載の一冊! 『青色本』と名づけられたのは、1933年から1934年にかけての、ケンブリッジでのウィトゲンシュタインの講義録である。 ウィトゲンシュタインの哲学を、『論理哲学論考』を前期、『哲学探究』を後期と分ければ、その中間に位置し、いわば『哲学探究』に向かう時期の講義にあたる。 ここでは、「他者の痛みは、私には感じられない」という、有名な「痛み」についての議論などが展開され、いわゆる「独我論」が主要テーマになっている。 著者・永井均は、この『青色本』の議論に、一文一文、詳細な検討を加え、解読しながら、さらに、著者の哲学を展開していく。 独我論、私的言語、自他の非対称性といった、哲学の永遠の課題に対して、ウィトゲンシュタインと永井均という、ふたりの哲学者の思考がクロスしながら展開する、きわめてスリリングな一冊といえよう。 さながら、ウィトゲンシュタインvs.永井均という様相を呈しているのである。
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天皇の歴史3 天皇と摂政・関白
天皇の歴史3 天皇と摂政・関白
著:佐々木 恵介
講談社学術文庫
9世紀後半、幼帝清和天皇の外祖父・藤原良房が摂政になり、息子・基経が関白の地位を得て、その後200年におよぶ摂関政治の時代が始まった。醍醐・村上天皇の「延喜・天暦の治」と将門・純友の乱、そして道長の栄華。藤原氏が王権をめぐる姻戚関係を支配するなかで、天皇のみがなしえたこととは何か。「摂関家による政治の私物化」という従来の捉え方を超えて、天皇が「生身の権力者」から「制度」へと変貌していく時代を描く。 講談社創業100周年記念企画として刊行され、高い評価を得た全集がついに学術文庫化。第3巻は、9世紀半ばの文徳天皇から、11世紀半ばの後冷泉天皇まで、16人の天皇の時代を取り上げる。「摂関政治の時代」として知られる200年間である。 一般に「摂関政治の時代」というと、天皇を抑えつけ、勝手気ままな政治を行っていた摂政・関白や、寝殿造りの邸宅で日々、宴にふけっていた貴族たちをイメージするだろう。しかし、こうした「政治を私物化する摂政・関白」という見方は、近代以降の歴史観である。本書では、必ずしも対立するものではなかった「天皇」と「摂関」を、王権を構成する総体としてとらえなおす。 幼帝清和の外祖父、藤原良房から摂関政治は始まった。失脚した菅原道真の怨霊問題、将門・純友の乱、醍醐・村上天皇の「延喜・天暦の治」、そして藤原道長の栄華。王権をめぐる姻戚関係を藤原氏が支配するなかで、天皇のみがなしえたこととは、いったい何か。皇統が錯綜し、政争の続く平安京の内裏を舞台に、天皇が「生身の権力者」から「制度」へと変貌していく過程を描き出す。 〔原本:『天皇の歴史03巻 天皇と摂政・関白』講談社 2011年刊〕
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顔氏家訓
顔氏家訓
訳:林田 愼之助,著:顔之推
講談社学術文庫
6世紀末、王朝の興亡が繰り返された中国六朝時代に、一族流浪の困難を乗り越えて、粱、北斉、北周、隋と4代の王朝に仕え、学問を家業とした名門貴族として生を全うした顔之推。彼が子孫のために書き残した『顔氏家訓』は、家族の在り方から子供の教育法、文章論、養生の方法、仕事に臨む姿勢、死をめぐる態度に至るまで、人生のあらゆる局面に役立つ知恵に満ちている。その英知が分かり易い現代語訳で甦る。
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歴史のかげに美食あり 日本饗宴外交史
歴史のかげに美食あり 日本饗宴外交史
著:黒岩 比佐子
講談社学術文庫
古来、「歴史のかげに女あり」と言われる。妖艶な美女が歴史を動かしてきた例は少なくない。だが、大事件、外交の舞台裏でより重要だったのは、いかに饗宴を準備するか。相手を懐柔するために、明治の主役たちが「おもてなし」のため頭を悩ませた美食とは。史料から明治の世界を生き生きと描き、52歳の若さで惜しまれつつ逝ったノンフィクション・ライター黒岩比佐子が、12品のフルコースで、歴史ファンをご接待! 古来、「歴史のかげに女あり」と言われる。妖艶な美女が歴史を動かしてきた例は少なくない。だが、考えてみれば大事件、外交の舞台裏でより重要だったのは、美女よりも美食ではなかったか。近代日本の運命を左右したステージに饗宴はつきもの。相手を懐柔するためには、美味が必要だった。明治の主役たちは、いかに「おもてなし」に頭を悩ませたか。 黒船来航のペリーは、なれぬ日本料理に閉口した。フランス料理になじめなかった明治天皇の涙ぐましい努力。暗殺された伊藤博文が日本で最後に食べた河豚の味。日露戦争の勝利に外国武官たちからシャンパンシャワーで祝ってもらった児玉源太郎。フランスからミネラルウォーターを取り寄せていた西園寺公望などなど。 史料から明治の世界を生き生きと描き、52歳の若さで惜しまれつつ逝ったノンフィクション・ライター黒岩比佐子が、12品のフルコースで、歴史ファンをご接待! (原本 文春新書『歴史のかげにグルメあり』2008年刊)
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国家の神話
国家の神話
著:エルンスト・カッシーラー,訳:宮田 光雄
講談社学術文庫
『認識問題』、『シンボル形式の哲学』などの大著を完成したエルンスト・カッシーラー(1874-1945年)が、ナチスが台頭し、第2次世界大戦に向かっていく状況の中、最晩年に至ってついに手がけた記念碑的著作。国家という神話は、どのようにして成立し、機能するようになるのか。独自の象徴(シンボル)理論に基づき、古代ギリシアから中世を経て現代にまで及ぶ壮大なスケールで描き出される唯一無二の思想的ドラマ! 本書は、ドイツの碩学エルンスト・カッシーラー(1874-1945年)が最晩年に手がけた記念碑的著作、待望の文庫版である。 新カント派に属して哲学、文学、歴史学を学んだカッシーラーは、現代文明の土台をなす近代科学の構造とその基礎概念の認識批判的な研究『実体概念と関数概念』(1910年)で経歴を開始した。だが、当の現代文明は、程なく第1次世界大戦という破局をもたらす。この現実を前にして、大戦で争われていた精神的価値に対する態度表明を行う『自由と形式』(1916年)を発表したカッシーラーは、その一方で、大著『認識問題』全4巻(1906-50年)、そして主著『シンボル形式の哲学』全3巻(1923-29年)に取り組んだ。 しかし、世界は再び大戦に向かって突き進んでいく。祖国ドイツでは1933年にナチス政権が誕生し、独裁が強化される。その支配が頂点を迎えつつあった1941年、ついにカッシーラーはそれまで正面から扱うことがなかった「国家」という主題に取り組むことを決意した。 過去の著作で確立された象徴(シンボル)に関する理論に基づきつつ、本書は国家を「神話」として解読していく。その射程は、古代ギリシアから中世を経て、マキアヴェッリ、ロマン主義、ヘーゲルから現代に至る、きわめて広大なものである。独自の理論を構築した哲学者であるとともに第一級の思想史家でもあったカッシーラーにして初めて書き上げることができた本書は、新たな危機に向かっているように見える今日の世界の中で、何度でも精読されなければならない。 政治学・ヨーロッパ思想史の大家が手がけた翻訳が、半世紀以上の時を経て、全面改訂と新たな解説を加えた文庫版として登場。
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天皇の歴史2 聖武天皇と仏都平城京
天皇の歴史2 聖武天皇と仏都平城京
著:吉川 真司
講談社学術文庫
天武天皇崩御後、女性天皇によって護られ、聖武天皇へと継承された天武直系の皇統。皇位継承を実現するために女性太上天皇が担った役割とは何かを説く。即位した聖武を待ち受けていたのは相次ぐ天災、疫病の大流行。国家の危機に苦悩する聖武は仏教に帰依し、平城京は仏都の彩りを濃くしていく。古代社会に仏教がどのように根ざしていったのかを究明するとともに、平城京がいかにして形成され、変遷していったか、その実像を探る。 講談社創業100周年記念企画として刊行され、高い評価を得た全集がついに学術文庫化。第2巻の本書では、飛鳥時代後期から平安時代初期を扱い、聖武天皇を中心に歴代天皇の治世と王都・王宮の変遷を究明する。天武天皇崩御後、持統、元明、元正という女性天皇によって護られ、聖武へと継承された天武直系の皇統。聖武皇女は史上初の女性皇太子となり孝謙として即位。直系皇位継承における女性天皇の役割とは何かを説き、王権の転成をたどる。また、藤原京、平城京、平安京など、変遷する王都がどのように建設されたかを詳述、その実像を探る。本書の中心となる平城京は、八代七人の天皇が統治した「王都」であるとともに、国家安穏をもたらす仏教思想の根拠地「仏都」でもあった。古代社会に仏教がどのように根ざしていったのか。聖武天皇による仏教宣揚と東大寺大仏開眼へと続く苦難の道をたどるとともに、民間布教に心血を注いだ仏教者たちの活動を描き出す。さらに、平安遷都後、平城京跡はどう管理され、利用されたのか。平城の地に立つ寺院はその後どのように法灯を保ったのか。奈良の都の原像を探る。〔原本:『天皇の歴史02巻 聖武天皇と仏都平城京』講談社 2011年刊〕
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興亡の世界史 大清帝国と中華の混迷
興亡の世界史 大清帝国と中華の混迷
著:平野 聡
講談社学術文庫
北東アジアの雄・ヌルハチ率いる満洲人の国家は、長城を越えて漢人を圧倒し、未曾有の大版図を実現した。康熙帝・雍正帝・乾隆帝による最盛期から、アヘン戦争・日清戦争をへて、ラストエンペラー・溥儀、西太后、李鴻章、孫文らが登場する清末まで、栄光と苦闘の270年を描き出す。「中華の文明」ではなくチベット仏教に支えられた、輝ける大帝国が抱え込んだ苦悩とは。「近代東アジア」と「中華民族」はいかに創り出されたか。 講談社創業100周年記念企画「興亡の世界史」の学術文庫版。大好評、第3期の5冊目。満洲の雄・ヌルハチが草創し、辛亥革命に倒れた大帝国の輝きと崩壊をたどる。 現在の中華人民共和国の広大な国土は、大清帝国に由来している。では、この大領域を「北方の異民族」がいかにして手に入れ、維持したのか。また、漢人たちはこの「異民族支配」にどう対応したのか。康熙帝・雍正帝・乾隆帝が統治した清朝の最盛期から、アヘン戦争・日清戦争をへて、ラストエンペラー・溥儀、西太后、李鴻章、孫文らが登場する清末まで、栄光と苦闘の270年を描き出す。 清は「東アジアの帝国」であるより先に、「内陸アジアの帝国」だった。そして、チベットやモンゴル、さらに今日の新疆ウイグル自治区をふくむ「巨大な中国」を支えた理念は、「漢字と儒学」に代表される「中華文明」や「中華思想(華夷思想)」ではなく、チベット仏教だった。 台湾、琉球、朝鮮、そして日本――。清代末期の混乱のなかで「東アジア」の国々は何を共有し、何を争ってきたのか。「万里の長城」「天安門」が象徴する歴史の皮肉とは? 春節に賑わう横浜中華街を皮切りに、旧満洲、承徳、敦煌、ラサ、ソウル、台北など、各地を訪ね歩いた著者・平野氏は「清末の諸課題は、未だに解決されていない」という。 従来の中国史や現代中国論では見落とされがちだった、いまの中国が抱える「最大の矛盾」を解き明かし、「現代中国」を見る眼が変わる一冊。 [原本:『興亡の世界史17 大清帝国と中華の混迷』講談社 2007年刊]
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日本の土偶
日本の土偶
著:江坂 輝彌
講談社学術文庫
土偶はどこから来て、どのように変化したのか。本書では多様な土偶を年代・地域別に体系化し、形態・特徴・出土状況などを300点以上の図版で立体的に解説。さらに髪型から埋葬まで、縄文時代の文化と信仰を探り、海でつながれた周辺地域の調査から土偶の起源を追究する。土偶研究の黎明期を導いた研究者による伝説的名著!(序文 サイモン・ケイナー) 「縄文」は長く、深い。土偶のかたちは時代・地域により大きくちがう。本書は300点以上の図版とともに、形態・特徴・出土状況などを体系的、立体的に解説。さらに縄文時代の文化と信仰を探り、土偶の起源を探究する。 土偶はどこから来て、どのように変化したのか? 土偶研究の第一人者による、伝説的名著! 【目次】 第一章 1 早期  最古の土偶の発見/広がる分布圏/関東地方以西/関東地方 2 前期  東北地方北部/東北地方南部/関東地方/関東地方以西 3 中期  板状土偶/立体的土偶 4 後期  北海道地方/東北地方/関東地方以西 5 晩期  北海道地方/東北地方/関東・中部地方/近畿地方/中国・四国・九州地方 第二章 1 縄文時代の服飾   髪型/髪飾/装身具/衣服/化粧と入墨 2 縄文時代人のいのり  完形土偶の埋納状況/特殊遺構内に埋納された土偶/破砕された土偶 3 土偶の起源  土偶のルーツ/東アジアの土偶/新羅の土偶/朝鮮半島の土偶 4 土偶と関連遺物   土版/岩版/岩偶/土製仮面/動物形土製品/その他
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水滸伝 (五)
水滸伝 (五)
訳:井波 律子
講談社学術文庫
中国武侠小説の最大傑作。明代に成立した「中国四大奇書」の一つ。乱世を舞台に、暴力・知力・胆力を存分に発揮して、好漢百八人が、戦いを繰り広げながら、「梁山泊」へと集結。窃盗、殺人、痛飲、奸計、忠義、友情……。善悪が渾然一体となる物語世界を、読み易く、勢いのある文体で、訳出。この翻訳が最新・最高。本書原本は原形に近く、均整の取れた百回本。最終巻では、「第八十三回」から「第百回」を収録(全5巻)。 いわずと知れた中国武侠小説の最大傑作。明代に成立した「中国四大奇書」の一つでもあります。 北宋末期の不正と汚職が支配する乱世を舞台に、暴力・知力・胆力を思う存分に発揮して、好漢百八人が、そこら中で戦いを繰り広げながら、「梁山泊」へと集結します。その破天荒な侠客たちの痛快な立ち回りのスケールの大きさは、さすが中国小説ならではです。 窃盗、殺人、痛飲、奸計、忠義、友情……。人間の善と悪が渾然一体となって進行する物語世界には、引き込まれずにはいられません。 この魅力満載の世界を躍動感あふれる世界を、よみやすく、勢いのある文体で、新訳しました。「水滸伝」の完訳書はいくつかありますが、この翻訳が最新・最高です。本書原本はもっとも原形に近く、均整の取れた百回本。 なお、この五巻では、「第八十二回」から「第一百回」までを収録しております。全5巻堂々完結!
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メタサイコロジー論
メタサイコロジー論
著:ジークムント・フロイト,訳:十川 幸司
講談社学術文庫
『夢解釈』を発表したフロイトは「ドーラ」、「ハンス」、「鼠男」、「狼男」などの症例を経て、改めて精神分析を構築することを志す。1913年に執筆され、『メタサイコロジー序説』という表題の書物にまとめられるはずだった論文は、しかしフロイト自身の手で破棄され、さらなる理論的展開の礎として存在し続けることになった。第一級の分析家による渾身の新訳で「メタサイコロジー論文」を初めて一書の形にまとめた待望の書! 本書は、ジークムント・フロイト(1856-1939年)が1915年に執筆し、『メタサイコロジー序説』という表題で1冊の書物にまとめることを意図していた論文のうち、現存する5篇と草稿1篇を収録したものである。 1900年に『夢解釈』を発表して衝撃を与えたフロイトは、その後、「ドーラ」、「ハンス」、「鼠男」、「狼男」などの症例における臨床経験を経て、包括的な理論の構築を「メタサイコロジー(メタ心理学)」の名の下に企図した。精神分析にとって大きな画期となるはずだった『メタサイコロジー序説』は12篇の論文から成るものとして計画され、フロイトは1915年3月15日から5月4日までに5篇を執筆し、『国際精神分析雑誌』で発表する。それが本書に収録された「欲動と欲動の運命」、「抑圧」、「無意識」、「夢理論へのメタサイコロジー的補足」、「喪とメランコリー」である。 さらにフロイトは、3カ月後の8月9日までに残る7篇をも書き上げた。その爆発的な知的エネルギーには圧倒されるばかりだが、なぜかそれら7篇は公表されず、『メタサイコロジー序説』も幻の書物となる。「意識」、「不安」、「転換ヒステリー」、「強迫神経症」、「投影」、「昇華」、「転移神経症概要」という表題が知られる7篇はフロイト自身の手で破棄されたものと考えられていたが、しかし1983年、書物の掉尾を飾るはずだった第12論文「転移神経症概要」の草稿が発見された。本書にはこれも併せて収録し、1915年のフロイトに起きていた思想劇を最善の形で見ることができるようになっている。 各論文の表題に示されているとおり、ここでなされているのは「欲動」、「抑圧」、「無意識」、「夢」といった精神分析の根幹に関わる概念の再構築にほかならない。書物の形にすることを放棄したことに示されているように、フロイト自身はここからさらなる進展を遂げていくが、その出発点としてこれらの論文が存在していることは否定しようもない。現存するメタサイコロジー論文の日本語訳が1冊の形にまとめられるのは今回が初めてとなる。本書は、フロイトと同様、常にみずからの理論を刷新する第一級の分析家による渾身の訳書である。
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天皇の歴史1 神話から歴史へ
天皇の歴史1 神話から歴史へ
著:大津 透
講談社学術文庫
三輪山の麓、大和に生まれた王権はどのように古代国家を形成したのか。古事記、日本書紀に描かれた神話の解読や考古学の最新成果などから、神武以降の天皇の実像を解明。群臣に擁立された天皇中心の畿内政権が、全国を統一していく過程を検証する。また東アジア情勢の緊張により、大化の改新が引き起こされ、律令国家形成が促進された背景も明らかに。天皇号と日本の国号の誕生も解析し、日本の歴史の原点を究明する。 講談社創業100周年記念企画として刊行され、高い評価を得た全集がついに学術文庫化。江戸時代の光格天皇以来、200年ぶりの譲位と上皇の称号の復活を目前にして、1500年以上にわたり連綿と続く天皇制と日本の歴史の密接な関わりを究明する。第1巻にあたる本書では、戦後の古代史研究を振り返りながら、王権誕生の謎に迫る。3世紀の魏志倭人伝が記録した卑弥呼の邪馬台国とはどこか。古代史ファンなら誰もが関心をもつ問題を最新の研究で解明。三輪山のふもと、ヤマトに生れた王を中心に展開された古代国家統一への歩みを、興味深く読み解く。また風雲急を告げる朝鮮半島など東アジア情勢が、大化の改新を引き起こした背景も解説。天皇号の誕生や大和政権の成立過程、支配の構造を明らかにして、天皇と日本の歴史を問い直す注目の書。〔原本:『天皇の歴史01巻 神話から歴史へ』講談社 2010年刊〕
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皇后考
皇后考
著:原 武史
講談社学術文庫
時代と社会の変容とともに「ありうべき皇后」像はあった――。血脈による正統性が保証された天皇とは異なり、人生の途中で皇室に嫁ぎ、さまざまな葛藤を克服するなかでその存在となる「皇后」。神功皇后や光明皇后ら、過去の偉大な皇后と感応しつつ、近代日本に時空を超えた皇后像を現出させ、さらにはアマテラスに自らを重ね合わせようとする貞明皇后。斬新な視点で天皇制の本質を明らかにし、秘められた扉を開いた記念碑的著作!
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