講談社学術文庫作品一覧

無限  その哲学と数学
無限  その哲学と数学
著:A.W・ムーア,訳:石村 多門
講談社学術文庫
有限な人間の抱える問題とは、それ自身、無限との格闘なのだ!! アキレスと亀のパラドクスから、カント、ヘーゲル、ヴィトゲンシュタインへ。 カントール、レーヴェンハイム-スコーレムの定理、そしてゲーデルの定理…… 古代ギリシアから現代まで、「無限の思想史」を通観する稀代の名編! アリストテレスは、無限は可能的には存在するが、現実的には存在しないと述べた。数学的な無限は認めても形而上学的な無限は認めなかったのだ。カント、ヘーゲルらの哲学的思考、カントールの集合論の衝撃、ゲーデルの定理などを経てヴィトゲンシュタインへ。古代から現代までを通覧し、「無限」と「死」と格闘した人類の思索を跡づける魅惑の名作。 本書は、無限についての本である。しかしまた、有限についての、我々の有限性についての本でもある。無限についての我々の感覚の背後には、我々自身の有限性についての感覚が位置している。我々は、自分が有限であることを知っている。それは、我々の存在が矮小で短命であるといった問題ではない。それよりももっと根本的なことがらが、ここにはある。すなわち、我々が自分で作り出したのではない世界に投げ出されているという事実、我々が自分ではない他のものと向き合っていることに気づかされるという事実が横たわっているのである。――<本書「序文」より> ※本書の原本は、1996年、東京電機大学出版局より刊行されました。
新井白石「読史余論」 現代語訳
新井白石「読史余論」 現代語訳
訳:横井 清
講談社学術文庫
「正徳の治」で名高い大儒学者による歴史研究の代表作。古代天皇制から、武家の発展を経て江戸幕府成立にいたる歴史を九変・五変に時代区分して論じ、徳川政権の正当性を主張する。天皇家や源頼朝、足利幕府への客観的で冷徹な評価、為政者の不徳と失政に対して天命が革まる「易姓革命」への警鐘など、実証的で先駆的な史論の現代語訳。(講談社学術文庫) 江戸期の大知識人による先駆的な歴史研究 天皇家の衰退から秀吉の天下統一への過程を実証的に描き、徳川政権の正当性を主張。 独自の歴史観を読みやすい訳文で。 「正徳の治」で名高い大儒学者による歴史研究の代表作。古代天皇制から、武家の発展を経て江戸幕府成立にいたる歴史を九変・五変に時代区分して論じ、徳川政権の正当性を主張する。天皇家や源頼朝、足利幕府への客観的で冷徹な評価、為政者の不徳と失政に対して天命が革まる「易姓革命」への警鐘など、実証的で先駆的な史論の現代語訳。(解説・藤田覚) おおよそこれらの人びとのふるまいは、どう考えても大臣らしい行いとはいえない。思えば、よくよく恥を知らぬ人びとであった。(中略)世の中がすこしでも平穏になると尊位厚禄にあぐらをかき、武士をまるで奴婢や雑人のようにしか思わず、世間が乱れたときにはこそこそするばかりで、一人として身を投げだして忠功をはげむ者もいなかったのは、公家と僧徒だけ。まことに国家の害毒というのは、こういう連中のことをいうのであろう。だから、天道は、天に代わって功を立てる人に報いるのが道理ゆえ、その後に武家が世を治めたのも、理由のあることだと考える。――<本書第三巻より> ※本書の原本は、1969年、「日本の名著 15『新井白石』」として、中央公論社より刊行されました。本書は、中公バックス版「日本の名著 15」(1983年刊)を底本としました。
電子あり
宗教と権力の政治―「哲学と政治」講義2
宗教と権力の政治―「哲学と政治」講義2
著:佐々木 毅
講談社学術文庫
それぞれに忠誠心を要求し、人間の行動を左右し、激しく衝突してきた「聖」と「俗」との長い抗争は、政治に何をもたらしたのか。「政治とは何か」を考えるシリーズ二冊目の本書は、教皇至上権とトマス・アクィナスの政治論、ルターの宗教改革、マキアヴェッリの権力論、さらに宗教戦争を経て、「政治の解体」が訪れ、中世が終幕をむかえるまでを論じる。(講談社学術文庫) 2003年、講談社刊の同名書籍の学術文庫化。
電子あり
デカルト形而上学の成立
デカルト形而上学の成立
著:村上 勝三
講談社学術文庫
「私はあり、私は実在する」という認識は、「すべての認識のうちで最も確実で最も明証的」である。――近代哲学の父ともいわれるデカルトのこの哲学とは、いったい何なのか。神の存在証明とは? 書簡・小篇から主著『省察』まで、細密に読み解き、デカルトの形而上学が成立した道筋を詳細に辿り、その本質を「観念(イデア)」論としてとらえた画期的力作! (講談社学術文庫) 「私は実在する」とはどういうことか。神が存在するとは? 四つの書簡から、「方法序説」『省察』まで、精緻に読み抜いた「これこそがデカルト」! 「私はあり、私は実在する」という認識は、「すべての認識のうちで最も確実で最も明証的」である。 ――近代哲学の父ともいわれるデカルトのこの哲学とは、いったい何なのか。神の存在証明とは? 書簡・小篇から主著『省察』まで、細密に読み解き、デカルトの形而上学が成立した道筋を詳細に辿り、その本質を「観念(イデア)」論としてとらえた画期的力作! 「私」は間違えたことがある。疑いの道の始まりにはこのことがある。真であるか、偽であるかわからないから疑う。知らないから疑う。知らないと知っているわけではない。疑うことをとおして、疑うことの理由を見出すことをとおして、なぜ知らないのかわかる。「私はあり、私は実在する」。これはどのようにしても、どこからみても疑いえぬ立言である。疑うことは「思うこと」である。疑いつつ疑いえぬとわかる。「私は思うものである」。このことは揺るがない。確実である。しかし、知識として確実であるということとは異なる。――<本書より> ※本書の原本は、1990年、勁草書房より刊行されました。
電子あり
よみがえる古代思想―「哲学と政治」講義1
よみがえる古代思想―「哲学と政治」講義1
著:佐々木 毅
講談社学術文庫
政治について根源的に考えようとする時、人は古代ギリシア・ローマの哲学に立ち戻らざるを得ない。人間と政治の関わりについて、これほど深く、率直に議論された時代は他にないからである。ポリス最大の悪徳「ヒュブリス」とは。プラトンの唱えた「哲人王」とは。ローマの政治家はなぜ哲学を嫌ったのか。政治思想史の第一人者が「政治の本質」を語る。(講談社学術文庫) 2003年、講談社刊の同名書籍の学術文庫化。
電子あり
東方的
東方的
著:中沢 新一
講談社学術文庫
地球をおおいつくそうとするひとつの世界システムに「地域の論理」たちは繊細なたたかいを挑む。閉ざされつつある世界に、新しい超空間への通路を開く。 ボストーク――東の方。人間を乗せた最初の宇宙船の名前である。偉大なる叡智=ソフィアは、科学技術文明と近代資本主義が世界を覆い尽くす時こそが、真実の危機だと告げる。バルトーク、四次元、熊楠、マンダラ、シャーマニズム、製鉄技術、方言、映画とイヨマンテ……。多様なテーマで通底する「無意識」に、豊饒な叡智を探求する。(解説・沼野充義) 『東方的』は、……西欧的な知のあり方の行き詰まりを踏まえて、「東方的」な「ソフィア」(叡智)の方向に新たな可能性を見出そうとした、美しい希望の書物である。(略)その「明確なモチーフ」は……、「第四次元、あるいは日常的なリアリティを超えた高次元の霊的な世界が、われわれが普段住んでいる物質的な世界と接触した時、何が起こるか」ということに帰すのではないかと思う。――<沼野充義「解説」より抜粋> ※本書の原本『東方的』は、せりか書房より1991年に刊行されました。
電子あり
茶経 全訳注
茶経 全訳注
著:布目 潮フウ
講談社学術文庫
中国唐代、「茶聖」陸羽によって著された世界最古の茶書『茶経』。茶の起源、製茶法から煮たて方や飲み方、さらに茶についての文献、産地による品質まで、茶に関する知識を実践的かつ科学的に網羅する「茶学の百科全書」を、豊富な図版とともに平易に読み解いてゆく。中国喫茶文化研究の泰斗による四十年余にわたる探究を経て完成した喫茶愛好家必携の一冊。(講談社学術文庫) 茶の起源、製茶法から飲茶まで、茶にまつわる諸学を網羅した「茶の百科全書」を完全読解! “茶聖”、甦る 中国唐代、「茶聖」陸羽によって著された世界最古の茶書『茶経』。茶の起源、製茶法から煮たて方や飲み方、さらに茶についての文献、産地による品質まで、茶に関する知識を実践的かつ科学的に網羅する「茶学の百科全書」を、豊富な図版とともに平易に読み解いてゆく。中国喫茶文化研究の泰斗による四十年余にわたる探究を経て完成した喫茶愛好家必携の一冊。 ※本書の原本は、2001年8月、淡交社より『茶経詳解』として刊行されました。
電子あり
日本人の「戦争」――古典と死生の間で
日本人の「戦争」――古典と死生の間で
著:河原 宏
講談社学術文庫
一人の戦中派が書きつづけた、死者と対話。古典と対話。 正成、信長、二・二六、そして「あの戦争」。 日本人にとって戦争とはなんだったのか。 なぜ「あの戦争」はあれほど悲愴な戦いになったのか。 なんのために死んだのか。なにより、なんのためなら死ねると言えたのか。 「戦中派」思想史家は、同年輩の死者たちの中断された問いかけに答えるため、死者と対話し、古典と対話する。痛恨の論考。鎮魂の賦。 【本書の内容】 まえがき 【1】日本人の「戦争」――古典と死生の間で  1 実感と「抽象」  2 「僕は妣の国に往かむと欲ひて……」  3 言霊の戦い――「海行かば」  4 修羅の戦い――「七生報国」  5 信長の戦い――「滅せぬ者のあるべきか」  6 「国民」の戦争    ――「朝日に匂ふ日の本の 国は世界に只一つ」  7 歴史の中の「戦争」――「見るべき程の事は見つ」 【2】「開戦」と「敗戦」選択の社会構造    ――“革命より戦争がまし”と“革命より敗戦がまし”  1 “戦争か平和か”の選択でなく  2 「国体」を支える社会構造  3 二・二六事件の後に  4 農地調整法と企画院事件  5 先制攻撃をうける懸念  6 内戦への懸念  7 革命か敗戦かの選択 【3】天皇・戦争指導層および民衆の戦争責任  1 半世紀後の戦争責任論  2 天皇の戦争責任  3 戦争指導層の戦争責任  4 民衆の戦争責任 【4】日本の「戦争」と帝国主義    ――空腹の帝国主義と飽食の帝国主義  1 帝国主義の昔と今  2 金銭と暴力――シャイロックから帝国主義へ  3 日本の「戦争」――空腹の帝国主義  4 現代の帝国主義と超帝国主義 【終章】特攻・玉砕への鎮魂賦  1 「汝心あらば 伝へてよ玉のごと われ砕けにきと」  2 『戦友』と『同期の桜』  3 鎮魂の賦 初版あとがき 新版のためのあとがき 解説
電子あり
世界人名物語――名前の中のヨーロッパ文化
世界人名物語――名前の中のヨーロッパ文化
著:梅田 修
講談社学術文庫
神々や英雄への憧憬、聖人や名君への賞賛から生まれた名前。歴史と文化に根ざす人々の思いと固有のイメージがこめられている名前の由来と変遷をさぐり、多様な文化の交流と積み重ねの上に成立しているヨーロッパの発想、価値観、社会観を明らかにする。ギリシャ・ローマ神話からハリウッドスターまで、人名で読み解くヨーロッパの文化、歴史、民俗。(講談社学術文庫) 神話、英雄伝説、聖人や名君への憧憬に根ざす系譜と豊かなイメージとは? 名前で読み解く西欧文明の成立と多様性 神々や英雄への憧憬、聖人や名君への賞賛から生まれた名前。歴史と文化に根ざす人々の思いと固有のイメージがこめられている名前の由来と変遷をさぐり、多様な文化の交流と積み重ねの上に成立しているヨーロッパの発想、価値観、社会観を明らかにする。ギリシャ・ローマ神話からハリウッドスターまで、人名で読み解くヨーロッパの文化、歴史、民俗。 ※本書の原本は、1999年1月、小社より刊行されました。
電子あり
幕末外交と開国
幕末外交と開国
著:加藤 祐三
講談社学術文庫
無能無策な幕府が、黒船の「軍事的圧力」に屈し、不平等条約を強いられたという「日本史の常識」を検証。軍事衝突は起こり得るのか、交渉は何語で行うのか――。ペリー来航から和親条約締結までの一年間を日米の資料から追跡して見えてきたのは、幕府の高い外交能力と、平和的交渉の輝かしい成果だった。日本の近代外交と日米関係の原点を見直す。(講談社学術文庫) 黒船に揺れた1年間を検証 「無能な幕府」説は本当か? 日米双方の資料から、「開国」をめぐる常識を覆す。 日米和親条約は、戦争によらない平和的な交渉の 成果だった! 無能無策な幕府が、黒船の「軍事的圧力」に屈し、不平等条約を強いられたという「日本史の常識」を検証。軍事衝突は起こり得るのか、交渉は何語で行うのか――。ペリー来航から和親条約締結までの一年間を日米の資料から追跡して見えてきたのは、幕府の高い外交能力と、平和的交渉の輝かしい成果だった。日本の近代外交と日米関係の原点を見直す。 日米和親条約は一門の大砲も火を噴かず、平和的な交渉によって結ばれた。これが最重要の論点だと私は考える。(中略)アジア近代史から見れば、日米和親条約のような「交渉条約」は稀有の事例である。「交渉条約」を導いたのは偶然ではない。一定の政治的条件の下、日米双方の当事者による外交努力の成果にほかならない。日本外交史のなかでは、幕府の高い外交能力は特筆されるべきであろう。――<本書「あとがき」より> ※本書の原本は、2004年に筑摩書房より刊行されました。
電子あり
ヒトはなぜ眠るのか
ヒトはなぜ眠るのか
著:井上 昌次郎
講談社学術文庫
進化の過程で睡眠は大きく変化した。肥大した脳は、ノンレム睡眠を要求する。睡眠はなぜ快いのか? 眠りの機能とは? 大脳と睡眠、身体と睡眠の関係、睡眠にまつわる病気、睡眠と冬眠の違い、睡眠を司るホルモン、体内時計の働き、短眠者と長眠者の謎、科学的な快眠の秘訣……。最先端の脳科学で迫る睡眠学入門の決定版。最新の知見と新規文献も充実! (講談社学術文庫) 子供は快眠、老人が不眠なのはなぜか? 病気のときに、よく眠れるのはなぜか? 睡眠学の第一人者による、眠りの不思議と快眠の秘訣! 進化の過程で睡眠は大きく変化した。肥大した脳は、ノンレム睡眠を要求する。睡眠はなぜ快いのか? 眠りの機能とは? 大脳と睡眠、身体と睡眠の関係、睡眠にまつわる病気、睡眠と冬眠の違い、睡眠を司るホルモン、体内時計の働き、短眠者と長眠者の謎、科学的な快眠の秘訣……。最先端の脳科学で迫る睡眠学入門の決定版。最新の知見と新規文献も充実! いま、眠りの学問は急速に進歩し拡大し、「睡眠学」として世間に認知され、睡眠現象や睡眠障害を医学的に扱うだけでなく、睡眠をとおして社会の活動様式全般にも影響をおよぼすようになりました。睡眠に関連する保育・勤労・医療・生活習慣などの諸問題に的確に対処できなければ、国民的・国家的規模でいちじるしい損失をもたらすかもしれないからですね。――<「学術文庫版まえがき」より> ※本書の原本は、1994年に筑摩書房より刊行されました。 講談社学術文庫に収録するにあたり、適宜章末に補遺と文献案内を追加しました。
電子あり
リチャード・ローティ=ポストモダンの魔術師
リチャード・ローティ=ポストモダンの魔術師
著:渡辺 幹雄
講談社学術文庫
分析哲学の学統から頭角を現しながら、ハイデガーを愛好し、「文化系左翼」批判とリベラリズムの擁護を謳う、「稀代のソフィスト」にしてアイロニスト。この知的巨人は、いかなる理路で「基礎」としての哲学の終焉を告げたのか。変幻自在で挑発的な言辞を丹念に腑分けし、その背後にある思考を体系的に読み解く。ローティの真価は、ここに明らかとなる! (講談社学術文庫) 真理は、正義は、存在は、リベラルは、いかに語りうるか―― ローティを体系的に読む本邦最良の一冊! 分析哲学の学統から頭角を現しながら、ハイデガーを愛好し、「文化系左翼」批判とリベラリズムの擁護を謳う、「稀代のソフィスト」にしてアイロニスト。この知的巨人は、いかなる理路で「基礎」としての哲学の終焉を告げたのか。変幻自在で挑発的な言辞を丹念に腑分けし、その背後にある思考を体系的に読み解く。ローティの真価は、ここに明らかとなる! R・ローティという人物を一言で言い表すとすれば、それは現代の、そして稀代のソフィストということになろう。これは単なるメタファーではない。 これほどまでにレトリックの重要性を教えてくれた人物を私は知らない。もしもレトリックというものが、人々の心に訴えかける有効な力であるとすれば、もはや我々は、それを単なるソフィスト的軽薄さとして切り捨てることはできまい。ローティにおいて、それはまさしく、その内実を構成しているのである。――<本書より> ※本書の原本は、1999年に春秋社より刊行されました。
電子あり
「私」の秘密――私はなぜ〈いま・ここ〉にいないのか
「私」の秘密――私はなぜ〈いま・ここ〉にいないのか
著:中島 義道
講談社学術文庫
「私とは何か」と問う者こそが、「私というあり方」をする者である。過去と現在、両立しえない二つの時間をつなぐ能力こそが、「私」である。時間論と身体論の邂逅によって「私」という不可思議な存在の謎に迫り、「私というあり方」は解き明かされてゆく。既存の哲学の焼き直しでなく、自身のことばで考え抜かれたまったく新しい自我論が立ち上がる! (講談社学術文庫) 「私」とはなにか 時間論・身体論との出会いが解き明かす不可思議な存在の謎 「私とは何か」と問う者こそが、「私というあり方」をする者である。過去と現在、両立しえない二つの時間をつなぐ能力こそが、「私」である。時間論と身体論の邂逅によって「私」という不可思議な存在の謎に迫り、「私というあり方」は解き明かされてゆく。既存の哲学の焼き直しでなく、自身のことばで考え抜かれたまったく新しい自我論が立ち上がる! まったく新しい自我論の誕生 あなたは、この本のページを捲っているその右手がなぜあなたの右手であるのか、考えたことがありますか? しっかりと身体を支えているその両足がなぜあなたの両足であるのか、この文字を追っているその眼がなぜあなたの眼であるのか、考えたことがありますか? 本書はこういう問いに答えるものです。――<本書「原本あとがき」より> ※本書の原本は、2002年11月、小社より講談社選書メチエ『「私」の秘密――哲学的自我論への誘い』として刊行されました。
電子あり
政治のことば――意味の歴史をめぐって
政治のことば――意味の歴史をめぐって
著:成沢 光
講談社学術文庫
マツリゴト、ヲサム、イキホヒ、シロシメス……。 権利、権力、自由と統治……。 日本人は政治にかんして、なにを、どのようにとらえ、どう意識してきたのか。 古代から近代まで、日本語として日常的に使われてきた「政治のことば」の用例を追いかけ、 日本政治の深層に潜む意識とその構造を暴き出す。 日本語から考えてみる、日本の政治のそもそもの話。 隣接分野に大きな影響を与えた先駆的研究、復刊。 【本書の内容】 はじめに ■第1部 古代政治の語彙    1 ヲサム    2 カトル、ウナガス    3 マツリゴトとタテマツリモノ    4 シル、シラス、シロシメス    5 イキホヒと勢・威・徳・権 ■第二部 国家意識と世界像をめぐって    一 蕃国と小国    二 〈辺土小国〉の日本        1 道元の抵抗       2 普遍への道       3 辺土の凡夫       4 凡夫の救済       5 辺地の往生       6 辺土の神聖化       7 大国と小国       8 神国観の形成       9 本地垂迹 ■第三部 近世都市意識の言語      都市社会の成立 ■第四部 近代政治の語彙    一 「権利」「権力」について    二 統 治       1 govern・支配・統治       2 近代語「統治」の成立       3 天皇「統治」の意味       4 日本国憲法と「統治」 あとがき 文庫版あとがき 解説 (保立道久)
電子あり
知の百家言
知の百家言
著:中村 雄二郎
講談社学術文庫
有史以来、フィロソフィー(知を愛すること)は人類とともにあった。先人たちの「知を愛する」営為の結晶である言葉を選び出し、その含蓄を引き出して、紹介する。<教養>としての哲学ではなく、激動の時代を生き抜くために、生きることに渇きを感じる強烈な好奇心に、思い考えること=生きることと直結するような「哲学」を提示する珠玉のエッセー集。(講談社学術文庫) 古今東西の「人類の英知」から厳選された哲学の言葉を、<好奇心><ドラマ><リズム>に溢れるエッセーで熟読玩味する 有史以来、フィロソフィー(知を愛すること)は人類とともにあった。先人たちの「知を愛する」営為の結晶である言葉を選び出し、その含蓄を引き出して、紹介する。<教養>としての哲学ではなく、激動の時代を生き抜くために、生きることに渇きを感じる強烈な好奇心に、思い考えること=生きることと直結するような「哲学」を提示する珠玉のエッセー集。 「人々が時の流れのあまりに速やかなことに罪を着せて、時の逃れ去るのを嘆くのは、見当違いだ」(レオナルド・ダ・ヴィンチ) 「自然科学においても、探究の対象はもはや自然自体ではなく、人間に問いかけられた自然である」(ハイゼンベルク) 「幸福であるとは、なんのおそれもなしに自己を眺めうる、ということである」(ベンヤミン) 「われわれの憎むものが否定されたり、他の禍(わざわい)を被ったりするのを想像して生じるよろこびは、必ず心の悲しみを伴っている」(スピノザ) ※本書は、1999年に朝日新聞社から刊行された『人類知抄 百家言』を文庫化にあたり改題したものです。
電子あり
水戸黄門「漫遊」考
水戸黄門「漫遊」考
著:金 文京
講談社学術文庫
序 章 「水戸黄門」への旅立ち第1章 中国の名裁判官――物語と現実第2章 朝鮮の『春香伝』と暗行御史第3章 北条時頼から水戸黄門まで第4章 英雄伝説と神話第5章 巡遊する王第6章 芸能とスパイ第7章 「黄門漫遊記」の誕生――歌舞伎と講談第8章 明治天皇と水戸黄門第9章 「黄門漫遊記」の発展――映画とテレビ終 章 水戸黄門の仲間たち 高貴な人間が諸国をめぐっては、悪代官をこらしめる。中国の包拯に朝鮮の暗行御使と、黄門様と同類型の物語は、隣国でも庶民の絶大な支持を受けていた――。中世から古代、現代へと、時空を超えた東アジアの歴史の中に「漫遊記」の成立をさぐり、歌舞伎や講談、映画・テレビなど、日本において長く国民的人気を博し続けた謎に迫る、異色の文学研究。
電子あり
ことばへの道 言語意識の存在論
ことばへの道 言語意識の存在論
著:長谷川 宏
講談社学術文庫
ことばを通して現実があらわれ、人間があらわれ、共同社会があらわれ、宗教があらわれ、芸術があらわれるという展望がなかったら、ことばを論ずる魅力はおそらく半減することだろう。――著者は「あとがき」でそう断じる。人として存在すること、社会のなかに在ることと、否応なくむすびついた「ことば」とはなにか。繊細でしなやかな哲学的洞察。(講談社学術文庫) 共同性、宗教性、芸術性、規範性……ことばと人間の本質を問い、哲学と詩を往還する、根源的な思索の書! ことばを通して現実があらわれ、人間があらわれ、共同社会があらわれ、宗教があらわれ、芸術があらわれるという展望がなかったら、ことばを論ずる魅力はおそらく半減することだろう。――著者は「あとがき」でそう断じる。人として存在すること、社会のなかに在ることと、否応なくむすびついた「ことば」とはなにか。繊細でしなやかな哲学的洞察。 ……ことばの研究というやや異端の道に足を踏みいれる気になったのは、かえりみて二つの要因があったと思う。一つは、東大闘争の敗北後、哲学アカデミズムとは別の場で研究をつづける決意を固め、ならば主題も方法も従来の定型にとらわれる必要などないし、とらわれないことでかえって自分の場の特質を生かした研究ができるだろうと考えたこと。(略)要因のいま一つとして、一九七〇年頃から――その頃がわたしの三十代のはじまりに当たるのだが――日本語が、全体として軽くなる、というか、上すべりする、というか、そういう印象をもつようになったことがあげられる。――<「新装版への序」より> ※本書の原本『ことばへの道』は1978年、勁草書房より刊行されました。文庫化にあたっては、新装版(1997年刊)を底本としました。
電子あり
時空のゆがみとブラックホール
時空のゆがみとブラックホール
著:江里口 良治
講談社学術文庫
いまや誰もが知っている科学用語でありながら、それを説明することは難しい「ブラックホール」。宇宙空間ではなぜ時空がゆがみ、ブラックホールが生じるのか。今日ではその存在は確実なものとなり、理論的研究の段階から観測の対象になりつつある「奇妙な天体」の種類や形成過程と研究史を、アインシュタインの相対論の登場からわかりやすく解説する。 1992年、培風館刊の同名書籍の学術文庫化。
電子あり
明治洋食事始め――とんかつの誕生
明治洋食事始め――とんかつの誕生
著:岡田 哲
講談社学術文庫
明治維新は一二〇〇年におよぶ禁を破る「料理維新」でもあった。近代化の旗のもと推進される西洋料理奨励キャンペーン、一方で庶民は牛鍋・あんパン・ライスカレー・コロッケなどを生み出し、ついに「洋食の王者」とんかつが誕生する。日本が欧米の食文化を受容し、「洋食」が成立するまでの近代食卓六〇年の疾風怒濤を、豊富な資料をもとに活写する。(講談社学術文庫) 明治維新は「料理維新」だった! あんパン、ライスカレー、コロッケ――そして「洋食の王者」とんかつはいかにして生まれたのか 明治維新は一二〇〇年におよぶ禁を破る「料理維新」でもあった。近代化の旗のもと推進される西洋料理奨励キャンペーン、一方で庶民は牛鍋・あんパン・ライスカレー・コロッケなどを生み出し、ついに「洋食の王者」とんかつが誕生する。日本が欧米の食文化を受容し、「洋食」が成立するまでの近代食卓六〇年の疾風怒濤を、豊富な資料をもとに活写する。 西洋食の多くは、幕末から明治期にかけて導入された。そのわずか百数十年後の今日、私たちは、世界の国々のなかでも、最も多様化された食べ物を享受している。(中略)そこでは、現代日本の多種多彩な食の文化を理解する上で、もっとも興味深い時代が開幕していたのだ。近代化へ脱皮していく明治維新は、「料理維新」と称するのにふさわしい時代でもあった。――<本書「プロローグ」より> ※本書の原本は、2000年3月、小社より講談社選書メチエ『とんかつの誕生――明治洋食事始め』として刊行されました。
電子あり
世界文化小史
世界文化小史
著:ハーバート.ジョージ・ウエルズ,訳:下田 直春
講談社学術文庫
「宇宙戦争」「タイムマシン」などのSF小説で知られるウェルズは、その後半生には世界平和を希求し、国家主義を排した普遍的な世界史叙述に取り組んだ。第一次大戦の惨禍を経て、さらなる大戦争の恐怖を前に執筆された本書は、地球と生命の誕生に始まる人類の歩みを大きな視点で物語る。現代に通じる文明観と、人類への信頼に満ちた、世界史入門の名著。(講談社学術文庫) 初版刊行から90年、今も世界で愛読される名著「SFの父」による一気通読の≪世界史≫ 地球の誕生から、20世紀の惨禍まで。世界の危機に直面して執筆された人類史の回顧と将来の展望。 「宇宙戦争」「タイムマシン」などのSF小説で知られるウェルズは、その後半生には世界平和を希求し、国家主義を排した普遍的な世界史叙述に取り組んだ。第一次大戦の惨禍を経て、さらなる大戦争の恐怖を前に執筆された本書は、地球と生命の誕生に始まる人類の歩みを大きな視点で物語る。現代に通じる文明観と、人類への信頼に満ちた、世界史入門の名著。 ウェルズの思想の根底には、常に、「人類は一つだ」という強い信念が秘められており、(中略)そこに流れている一貫した歴史観は、一つの生物種としての人類共通の起源と運命とを、全歴史を通じて一つの過程として把えるという、生物学的歴史観であった。(中略)過去の一切の歴史を、人類の将来のための序曲にすぎないと見たウェルズの希望に満ちた将来への展望は、本書の出版と同時に、広く世人の共感を呼び、その後長く人々に愛読されたのであった。――<本書「解説」より)> ※本書の原本は1971年、角川書店より刊行されました。
電子あり