講談社学術文庫作品一覧

「私」の秘密――私はなぜ〈いま・ここ〉にいないのか
講談社学術文庫
「私とは何か」と問う者こそが、「私というあり方」をする者である。過去と現在、両立しえない二つの時間をつなぐ能力こそが、「私」である。時間論と身体論の邂逅によって「私」という不可思議な存在の謎に迫り、「私というあり方」は解き明かされてゆく。既存の哲学の焼き直しでなく、自身のことばで考え抜かれたまったく新しい自我論が立ち上がる! (講談社学術文庫)
「私」とはなにか
時間論・身体論との出会いが解き明かす不可思議な存在の謎
「私とは何か」と問う者こそが、「私というあり方」をする者である。過去と現在、両立しえない二つの時間をつなぐ能力こそが、「私」である。時間論と身体論の邂逅によって「私」という不可思議な存在の謎に迫り、「私というあり方」は解き明かされてゆく。既存の哲学の焼き直しでなく、自身のことばで考え抜かれたまったく新しい自我論が立ち上がる!
まったく新しい自我論の誕生
あなたは、この本のページを捲っているその右手がなぜあなたの右手であるのか、考えたことがありますか? しっかりと身体を支えているその両足がなぜあなたの両足であるのか、この文字を追っているその眼がなぜあなたの眼であるのか、考えたことがありますか? 本書はこういう問いに答えるものです。――<本書「原本あとがき」より>
※本書の原本は、2002年11月、小社より講談社選書メチエ『「私」の秘密――哲学的自我論への誘い』として刊行されました。

政治のことば――意味の歴史をめぐって
講談社学術文庫
マツリゴト、ヲサム、イキホヒ、シロシメス……。
権利、権力、自由と統治……。
日本人は政治にかんして、なにを、どのようにとらえ、どう意識してきたのか。
古代から近代まで、日本語として日常的に使われてきた「政治のことば」の用例を追いかけ、
日本政治の深層に潜む意識とその構造を暴き出す。
日本語から考えてみる、日本の政治のそもそもの話。
隣接分野に大きな影響を与えた先駆的研究、復刊。
【本書の内容】
はじめに
■第1部 古代政治の語彙
1 ヲサム
2 カトル、ウナガス
3 マツリゴトとタテマツリモノ
4 シル、シラス、シロシメス
5 イキホヒと勢・威・徳・権
■第二部 国家意識と世界像をめぐって
一 蕃国と小国
二 〈辺土小国〉の日本
1 道元の抵抗
2 普遍への道
3 辺土の凡夫
4 凡夫の救済
5 辺地の往生
6 辺土の神聖化
7 大国と小国
8 神国観の形成
9 本地垂迹
■第三部 近世都市意識の言語
都市社会の成立
■第四部 近代政治の語彙
一 「権利」「権力」について
二 統 治
1 govern・支配・統治
2 近代語「統治」の成立
3 天皇「統治」の意味
4 日本国憲法と「統治」
あとがき
文庫版あとがき
解説 (保立道久)

知の百家言
講談社学術文庫
有史以来、フィロソフィー(知を愛すること)は人類とともにあった。先人たちの「知を愛する」営為の結晶である言葉を選び出し、その含蓄を引き出して、紹介する。<教養>としての哲学ではなく、激動の時代を生き抜くために、生きることに渇きを感じる強烈な好奇心に、思い考えること=生きることと直結するような「哲学」を提示する珠玉のエッセー集。(講談社学術文庫)
古今東西の「人類の英知」から厳選された哲学の言葉を、<好奇心><ドラマ><リズム>に溢れるエッセーで熟読玩味する
有史以来、フィロソフィー(知を愛すること)は人類とともにあった。先人たちの「知を愛する」営為の結晶である言葉を選び出し、その含蓄を引き出して、紹介する。<教養>としての哲学ではなく、激動の時代を生き抜くために、生きることに渇きを感じる強烈な好奇心に、思い考えること=生きることと直結するような「哲学」を提示する珠玉のエッセー集。
「人々が時の流れのあまりに速やかなことに罪を着せて、時の逃れ去るのを嘆くのは、見当違いだ」(レオナルド・ダ・ヴィンチ)
「自然科学においても、探究の対象はもはや自然自体ではなく、人間に問いかけられた自然である」(ハイゼンベルク)
「幸福であるとは、なんのおそれもなしに自己を眺めうる、ということである」(ベンヤミン)
「われわれの憎むものが否定されたり、他の禍(わざわい)を被ったりするのを想像して生じるよろこびは、必ず心の悲しみを伴っている」(スピノザ)
※本書は、1999年に朝日新聞社から刊行された『人類知抄 百家言』を文庫化にあたり改題したものです。

水戸黄門「漫遊」考
講談社学術文庫
序 章 「水戸黄門」への旅立ち第1章 中国の名裁判官――物語と現実第2章 朝鮮の『春香伝』と暗行御史第3章 北条時頼から水戸黄門まで第4章 英雄伝説と神話第5章 巡遊する王第6章 芸能とスパイ第7章 「黄門漫遊記」の誕生――歌舞伎と講談第8章 明治天皇と水戸黄門第9章 「黄門漫遊記」の発展――映画とテレビ終 章 水戸黄門の仲間たち
高貴な人間が諸国をめぐっては、悪代官をこらしめる。中国の包拯に朝鮮の暗行御使と、黄門様と同類型の物語は、隣国でも庶民の絶大な支持を受けていた――。中世から古代、現代へと、時空を超えた東アジアの歴史の中に「漫遊記」の成立をさぐり、歌舞伎や講談、映画・テレビなど、日本において長く国民的人気を博し続けた謎に迫る、異色の文学研究。

ことばへの道 言語意識の存在論
講談社学術文庫
ことばを通して現実があらわれ、人間があらわれ、共同社会があらわれ、宗教があらわれ、芸術があらわれるという展望がなかったら、ことばを論ずる魅力はおそらく半減することだろう。――著者は「あとがき」でそう断じる。人として存在すること、社会のなかに在ることと、否応なくむすびついた「ことば」とはなにか。繊細でしなやかな哲学的洞察。(講談社学術文庫)
共同性、宗教性、芸術性、規範性……ことばと人間の本質を問い、哲学と詩を往還する、根源的な思索の書!
ことばを通して現実があらわれ、人間があらわれ、共同社会があらわれ、宗教があらわれ、芸術があらわれるという展望がなかったら、ことばを論ずる魅力はおそらく半減することだろう。――著者は「あとがき」でそう断じる。人として存在すること、社会のなかに在ることと、否応なくむすびついた「ことば」とはなにか。繊細でしなやかな哲学的洞察。
……ことばの研究というやや異端の道に足を踏みいれる気になったのは、かえりみて二つの要因があったと思う。一つは、東大闘争の敗北後、哲学アカデミズムとは別の場で研究をつづける決意を固め、ならば主題も方法も従来の定型にとらわれる必要などないし、とらわれないことでかえって自分の場の特質を生かした研究ができるだろうと考えたこと。(略)要因のいま一つとして、一九七〇年頃から――その頃がわたしの三十代のはじまりに当たるのだが――日本語が、全体として軽くなる、というか、上すべりする、というか、そういう印象をもつようになったことがあげられる。――<「新装版への序」より>
※本書の原本『ことばへの道』は1978年、勁草書房より刊行されました。文庫化にあたっては、新装版(1997年刊)を底本としました。

時空のゆがみとブラックホール
講談社学術文庫
いまや誰もが知っている科学用語でありながら、それを説明することは難しい「ブラックホール」。宇宙空間ではなぜ時空がゆがみ、ブラックホールが生じるのか。今日ではその存在は確実なものとなり、理論的研究の段階から観測の対象になりつつある「奇妙な天体」の種類や形成過程と研究史を、アインシュタインの相対論の登場からわかりやすく解説する。
1992年、培風館刊の同名書籍の学術文庫化。

明治洋食事始め――とんかつの誕生
講談社学術文庫
明治維新は一二〇〇年におよぶ禁を破る「料理維新」でもあった。近代化の旗のもと推進される西洋料理奨励キャンペーン、一方で庶民は牛鍋・あんパン・ライスカレー・コロッケなどを生み出し、ついに「洋食の王者」とんかつが誕生する。日本が欧米の食文化を受容し、「洋食」が成立するまでの近代食卓六〇年の疾風怒濤を、豊富な資料をもとに活写する。(講談社学術文庫)
明治維新は「料理維新」だった!
あんパン、ライスカレー、コロッケ――そして「洋食の王者」とんかつはいかにして生まれたのか
明治維新は一二〇〇年におよぶ禁を破る「料理維新」でもあった。近代化の旗のもと推進される西洋料理奨励キャンペーン、一方で庶民は牛鍋・あんパン・ライスカレー・コロッケなどを生み出し、ついに「洋食の王者」とんかつが誕生する。日本が欧米の食文化を受容し、「洋食」が成立するまでの近代食卓六〇年の疾風怒濤を、豊富な資料をもとに活写する。
西洋食の多くは、幕末から明治期にかけて導入された。そのわずか百数十年後の今日、私たちは、世界の国々のなかでも、最も多様化された食べ物を享受している。(中略)そこでは、現代日本の多種多彩な食の文化を理解する上で、もっとも興味深い時代が開幕していたのだ。近代化へ脱皮していく明治維新は、「料理維新」と称するのにふさわしい時代でもあった。――<本書「プロローグ」より>
※本書の原本は、2000年3月、小社より講談社選書メチエ『とんかつの誕生――明治洋食事始め』として刊行されました。

世界文化小史
講談社学術文庫
「宇宙戦争」「タイムマシン」などのSF小説で知られるウェルズは、その後半生には世界平和を希求し、国家主義を排した普遍的な世界史叙述に取り組んだ。第一次大戦の惨禍を経て、さらなる大戦争の恐怖を前に執筆された本書は、地球と生命の誕生に始まる人類の歩みを大きな視点で物語る。現代に通じる文明観と、人類への信頼に満ちた、世界史入門の名著。(講談社学術文庫)
初版刊行から90年、今も世界で愛読される名著「SFの父」による一気通読の≪世界史≫
地球の誕生から、20世紀の惨禍まで。世界の危機に直面して執筆された人類史の回顧と将来の展望。
「宇宙戦争」「タイムマシン」などのSF小説で知られるウェルズは、その後半生には世界平和を希求し、国家主義を排した普遍的な世界史叙述に取り組んだ。第一次大戦の惨禍を経て、さらなる大戦争の恐怖を前に執筆された本書は、地球と生命の誕生に始まる人類の歩みを大きな視点で物語る。現代に通じる文明観と、人類への信頼に満ちた、世界史入門の名著。
ウェルズの思想の根底には、常に、「人類は一つだ」という強い信念が秘められており、(中略)そこに流れている一貫した歴史観は、一つの生物種としての人類共通の起源と運命とを、全歴史を通じて一つの過程として把えるという、生物学的歴史観であった。(中略)過去の一切の歴史を、人類の将来のための序曲にすぎないと見たウェルズの希望に満ちた将来への展望は、本書の出版と同時に、広く世人の共感を呼び、その後長く人々に愛読されたのであった。――<本書「解説」より)>
※本書の原本は1971年、角川書店より刊行されました。

訳注「淮南子」
講談社学術文庫
淮南王劉安(前一七九~前一二二)が招致した数千の賓客と方術の士に編纂させた思想書『淮南子』。老荘を中心に、儒家・兵家・法家・墨家思想も取り入れ、紀元前の中国における、知の百科全書である。前漢の武帝に愛秘されたが、その思想性よりも芸文性の高さが評価されていた。魅力的な『淮南子』の全貌を、コンパクトな形で紹介。【電子書籍】『訳注『淮南子』 増補改訂版』は、「人間万事 塞翁が馬」を収録、新解説を追加。
道家、儒家、法家、兵家、墨家の諸子百家思想と、天文・地理・時令・説話の知識を最大限網羅した、古代中国の思想の百科全書!!
淮南王劉安(前一七九~前一二二)が招致した数千の賓客と方術の士に編纂させた思想書『淮南子』。老荘思想を中心に、儒家・兵家・法家・墨家思想も取り入れた紀元前の中国における、知の百科全書である。前漢の武帝に愛秘されたが、実際はその思想性よりも芸文性の高さが評価されていた。魅力溢れる『淮南子』の全貌を、コンパクトな形で紹介する。
本書『淮南子』は、劉安が中国各地より招致した多数の賓客(数千人とも言われる諸子百家)に命じて、書かせ編纂した思想書である。『淮南鴻烈(わいなんこうれつ)』とも称される。……本書の編纂の開始は、景帝が崩御した前一四一年、完成は武帝即位の翌年(前一三九)である。
劉安は、春秋・戦国以来、前漢初期に至るあらゆる諸子百家の多様な思想を打って一丸となし、当時必要とされていた統一国家の理論を構築して、即位したばかりの青年皇帝武帝の政治に影響を与えようとしたのである。――<「始めに」より>
※本書の原本『淮南子 知の百科』は、小社より1989年に刊行されました。文庫化にあたり、全面的に改稿し関係論著目録も大幅に増やしました。
◎【電子書籍】『訳注『淮南子』 増補改訂版』は、「人間万事 塞翁が馬」を収録、新解説を追加。

ソシュールを読む
講談社学術文庫
近代言語学の父、フェルディナン・ド・ソシュール。残された手稿と「一般言語学講義」聴講生のノートから三度の講義内容を復元し、コトバを手がかりに文化や社会の幻想性を解明・告発する、その思想と方法を精緻に読み解く。二〇世紀の諸科学、とりわけ構造主義やポスト構造主義に多大な影響を与えた思想の射程と今日的な可能性が、あざやかに甦る。(講談社学術文庫)
コトバが指す実体はなく、そこには差異しか存在しない。
その差異に意味は生じる――ひらかれてゆくコトバの謎
近代言語学の父、フェルディナン・ド・ソシュール。残された手稿と「一般言語学講義」聴講生のノートから三度の講義内容を復元し、コトバを手がかりに文化や社会の幻想性を解明・告発する、その思想と方法を精緻に読み解く。二〇世紀の諸科学、とりわけ構造主義やポスト構造主義に多大な影響を与えた思想の射程と今日的な可能性が、あざやかに甦る。
そもそもソシュールの文化記号学とは「読み」の営為なのである。そこで読まれるものは自己完結的な作品ではなくテクストであり、或るテクストを読むことが、既成の思考形式を批判し、これをバネとして変形的実践を行いながらもう一つのテクストを生産するという意味でのエピステモロジーでもある。ソシュールにあっては、「読むこと」と「書くこと」と「生きること」との間には柵がない。――<本書「あとがき」より>
※本書の原本は、1983年6月、岩波書店より刊行されました。
![吉田茂=マッカーサー往復書簡集 [1945-1951]](https://dvs-cover.kodansha.co.jp/0000211599/LuBO3LjHTa4DDcbpsK1QQfPEaKMAwfN0FkKx3MtN.jpg)
吉田茂=マッカーサー往復書簡集 [1945-1951]
講談社学術文庫
ジョン・ダワー、激賞!
戦後反動の系譜を明らかにする、第一級資料集!
「この比類ない書簡集は日米の相互関係に関するわれわれの理解をかぎりなく増してくれるでしょう」
――ジョン・W・ダワー(MIT名誉教授)
*
「戦争で負けても外交で勝つ」ことをモットーにした吉田茂は、
マッカーサーとの外交に最大のエネルギーを注いだ。
それが占領下日本における政治のすべてだからであった。
存在さえも隠されていた幾多の書簡は、
占領軍との間で繰り広げられた手に汗にぎる折衝の全容を明らかにする。
何を「護持」したかったのか? いったい何が「保守」できたのか?
孤軍奮闘、臣茂。民主改革、阻むため。
※本書の原本は2000年に法政大学出版局より刊行されました。原本には書簡の英語正文が収録されています。

象形文字入門
講談社学術文庫
ヒエログリフからアルファベット、そして漢字まで
古代エジプト発、文字の始原をめぐる冒険
練習問題「ヒエログリフの読み方」&単語集つき
古代エジプトの文字世界を、ヒエログリフの読み方にはじまり、数々の物語などを交えて、あざやかにレクチャー。さらには未開社会の絵文字と象形文字との比較から文字の起源を問い、アルファベットの誕生や世界の象形文字、日本の文字文化へと思いを馳せる、格好の入門書にして縦横無尽に展開する文字論。ヒエログリフの単語集、解読練習問題付き。
エジプト人は、文字をつくったのが自分たちの祖先だとは思っていなかった。朱鷺(とき)(またはヒヒ)の姿をした知識の神トトが創造したものと信じていた。(中略)トトは文字を発明するとともに、「神々の書記」としておさまっていた。エジプトでは神々も字が読めるとはきまらなかったのである。もちろん言葉や文字を神聖視したり実用以上のものと考えることは、エジプト人にかぎらない。わが国にも「ことだま(言霊)」の思想があり……――<本文より>
※本書の原本は、1962年11月に、中公新書として刊行されました。

フィレンツェ
講談社学術文庫
文藝春秋より1994年に刊行後、文春文庫として1999年刊行の同名書籍の学術文庫化。

政治の教室
講談社学術文庫
〈ムラの政治〉の地に足つけて、日本型・草の根民主主義のすすめ。
政治はあなたが手作りするもの。無党派層とか言わせない。
日本人に民主主義は可能か? 民主主義はもっともすぐれた政治制度だと唱える本書は、それが、全員一致と連帯責任のムラ政治をつづけてきた日本の伝統とは相反することを認めるところから出発する。
ムラ原理がもたらす破滅とは何か?
民主主義を手づくりするには何からはじめればいいのか?
「可能なこと」の提示と呼びかけにつとめる実践の書。
***
――民主主義の原点は、「公衆」である。「いい大人が大勢集まる」ことが究極、最高の公共性のありかたであり、これ以上はないのだ。この感覚が、腹の底までしみ渡ることが、草の根民主主義にとって、とっても大切だと思う。本書の最後でのべた「草の根グループ」は、まさに「いい大人が大勢集まる」ことだった。これができなければ、民主主義の育ちようがないのも明らかだ。――<本書「あとがき」より>
※本書の原本は、2001年10月に、PHP研究所より刊行されました。

建武政権――後醍醐天皇の時代
講談社学術文庫
北条得宗家の執政体制下、幕府は武士の支持を失い、朝廷は大覚寺統と持明院統の対立と両統迭立(てつりつ)の中にあった鎌倉時代後期に出現した公家一統体制。それは復古反動か、封建王政か? 延喜(えんぎ)・天暦(てんりゃく)の治を理想とする天皇の政権はどのように誕生し、どんな構成と性格を有し、短期間で滅んでいったのか。史料の精緻な読みを通し、後醍醐の夢と挫折を解明する。
混沌の中世に一瞬、開花した公家一統体制 それは復古反動か、封建王政か?
後醍醐の夢と挫折
北条得宗家の執政体制下、幕府は武士の支持を失い、朝廷は大覚寺統と持明院統の対立と両統迭立(てつりつ)の中にあった鎌倉時代後期に出現した公家一統体制。それは復古反動か、封建王政か? 延喜(えんぎ)・天暦(てんりゃく)の治を理想とする天皇の政権はどのように誕生し、どんな構成と性格を有し、短期間で滅んでいったのか。史料の精緻な読みを通し、後醍醐の夢と挫折を解明する。
※本書の原本は、1980年11月、教育社より刊行されました。

暗号 情報セキュリティの技術と歴史
講談社学術文庫
ソーシャル、モバイル、クラウド、スマート……。爆発的発展を遂げる情報化社会は、有史以来、軍事・外交の「秘匿」を担った暗号の役割を、「認証」へと一変させた。情報セキュリティを担う現代暗号の特性とは? 「共通鍵暗号」「公開鍵暗号」「零知識対話証明」の数理も平易に解説。暗号の歴史と倫理、その技術基盤のすべてがわかる格好の入門書。(講談社学術文庫)
軍事・外交の道具からクラウド時代の基盤技術へ
シーザー暗号、エニグマ暗号、紫暗号……を超えて登場した共通鍵暗号・公開鍵暗号の意義と数理の魔術とは?
ソーシャル、モバイル、クラウド、スマート……。爆発的発展を遂げる情報化社会は、有史以来、軍事・外交の「秘匿」を担った暗号の役割を、「認証」へと一変させた。情報セキュリティを担う現代暗号の特性とは? 「共通鍵暗号」「公開鍵暗号」「零知識対話証明」の数理も平易に解説。暗号の歴史と倫理、その技術基盤のすべてがわかる格好の入門書。
一九八〇年代に入ると、科学技術史上、火薬の発明にも匹敵すると言われる公開鍵暗号が利用され始め、「軍事・外交以外の分野でも暗号が役に立つらしい」ということが話題に上るようになった。二〇一〇年前後から、ソーシャル・ネットワーキング・サービスやスマート・フォンが日常生活に溶けこみ、情報環境は大きな変革期に入った。暗号研究の分野でも、暗号化したまま、平文(ひらぶん)に戻さずに加算・乗算や統計処理などを自由に行う方法の研究が活発に行われている。……個人情報や企業の機密情報の流出が深刻な社会的懸案となっている。情報漏洩を防ぐ有効な手段は、公開鍵暗号による本人確認と共通鍵暗号による秘匿である。こうした背景の中で、暗号の重要性が再認識されている。――<「学術文庫版まえがき」より抜粋>
※本書の原本は、弊社より1996年に刊行された『暗号――ポストモダンの情報セキュリティ』です。

逸楽と飽食の古代ローマ―『トリマルキオの饗宴』を読む
講談社学術文庫
『トリマルキオの饗宴』は、古代ローマが生んだ風刺小説の金字塔『サテュリコン』の最も有名な場面である。そこに描かれた山海の珍味と美酒、かしずく少年奴隷たち、黄金の腕輪と銀の尿瓶……解放奴隷の成金富豪が催す饗宴の一部始終を解読。厖大な文献、考古・美術資料を駆使して、繁栄を謳歌するネロ帝時代の社会と、人々の人生観を再構築する。(講談社学術文庫)
風呂につかって、遊び、笑う。
それが人生だ!
ネロ帝時代の大宴会を再現。古代風刺小説の金字塔『サテュリコン』のハイライトシーンを徹底解読。
『トリマルキオの饗宴』は、古代ローマが生んだ風刺小説の金字塔『サテュリコン』の最も有名な場面である。そこに描かれた山海の珍味と美酒、かしずく少年奴隷たち、黄金の腕輪と銀の尿瓶……解放奴隷の成金富豪が催す饗宴の一部始終を解読。厖大な文献、考古・美術資料を駆使して、繁栄を謳歌するネロ帝時代の社会と、人々の人生観を再構築する。
ネロの治世前半は文字どおり平和と繁栄の時代だった。都の住民は市民権をもつ限り、どのように貧しくとも最低限の食糧が皇帝によって保障されていた。市民の最大の関心事は、いかに生きるかというよりもいかに楽しむかであった。したがって、歴代の権力者たちは娯楽施設の整備に余念がなかった。最低限の食糧給付と催し物の提供、つまり「パンとサーカス」こそが皇帝の都における義務であり政策だった。(本書・第一章より)
※本書は、1997年に中央公論社より刊行された『トリマルキオの饗宴―逸楽と飽食のローマ文化』を文庫化にあたり改題したものです。

大いなる小屋 江戸歌舞伎の祝祭空間
講談社学術文庫
櫓、看板、積物、衣裳、橋、桟敷、幕、鼠木戸、船、紋……神と魔が出現する「戯場国(けじょうこく)」を生む美意識と心性を徹底解明する最高・最良の劇場論!
江戸時代と現代の歌舞伎との断絶。その最たるものが、劇場空間と社会的位置づけの違いである。辺境にある「悪所」は噎(む)せ返るほどの祝祭性を発散し、役者と観客は渾然一体となって別天地に酔った。歴史学、民俗学、人類学などの知見も総動員し、江戸時代の芝居小屋を活写再現する。「紙の上に劇場を建てた」(渡辺保)と評された劇場空間論の決定版。
老中水野忠邦は……劇場を指して「大造ノ小屋」と称している……為政者の命名による「大造ノ小屋」とは「物」(建物)としての劇場を指していた。しかし、近世都市民の精神史にあって、この「小屋」は、「物」の大きさをはるかに超える大きな存在であった。彼らは、その独特な空間において役者の肉体が創り出す、目くるめく劇的宇宙を幻想し、憧憬し、体験することにより、これを「偉大なる小屋」に転換せしめた。それは「大いなる小屋」の名で呼ぶことこそもっともふさわしかった。(「芝居小屋論序説」より)
※本書は、1994年に刊行された『大いなる小屋――江戸歌舞伎の祝祭空間』(平凡社ライブラリー)を底本にし、新たに雑誌『歌舞伎 研究と批評』(歌舞伎学会、発売・雄山閣)に収録された対談を付録として追加しました。

愚管抄 全現代語訳
講談社学術文庫
天皇家・摂関家内部の権力抗争が武力衝突に発展し武士の政界進出の端緒となった保元の乱。そこに、乱世の機縁をみた慈円は、神武天皇以来の歴史をたどり、移り変わる世に内在する歴史の「道理」を明らかにしようとする。摂関家に生まれ、仏教界の中心にあって、政治の世界を対象化する眼をもった慈円だからこそ書きえた歴史書の、決定版全現代語訳。(講談社学術文庫)
乱世に「道理」はあるか!? 源平の盛衰、宮廷の動静、天皇の歴代、神仏の世界と人間の世界
史上稀有な歴史書を、読みやすい訳文と、文中の丁寧な訳注で読む!
天皇家・摂関家内部の権力抗争が武力衝突に発展し武士の政界進出の端緒となった保元の乱。そこに、乱世の機縁をみた慈円は、神武天皇以来の歴史をたどり、移り変わる世に内在する歴史の「道理」を明らかにしようとする。摂関家に生まれ、仏教界の中心にあって、政治の世界を対象化する眼をもった慈円だからこそ書きえた歴史書の、決定版全現代語訳。
年のたつにつけ、日のたつにつけて物の道理ばかりを考えつづけ、年老いてふと目ざめがちな夜半のなぐさめにもしているうちに、いよいよわたくしの生涯も終りに近づこうとしている。(略)神々の時代のことはわからないが、人間の天皇の御代となった神武天皇以後、王は百代といわれているのに、すでに残りは少なく八十四代にもなっている中で、保元の乱が起こって以後のこと、また『世継の物語』(『大鏡』)のあとのことを書きついだ人はいない。(略)この乱世のことを案じてばかりいる自分の心を安らかにしたいと思って、この書物を書きしるすのである。――「巻第三」より
※本書の原本は、1971年6月、「日本の名著 9『慈円・北畠親房』」として、中央公論社より刊行されました。本書は、中公バックス版「日本の名著9」(1983年刊)を底本としました。

政治学への道案内
講談社学術文庫
「政治学は何の役に立つ?」
幾度もの改訂を重ねながら読み継がれてきた伝説の「教科書」に著者最後の増補原稿を加え、完全版として待望の復刊。
政治学におけるあらゆる分野の基礎知識を平易に解説する本書は、統治の学から自治の学へととらえなおす視点で貫かれ、
入門書でありながら我々にとっての政治学の実用価値を知らしめる。
復権、市民教養!
【本書の内容】
序 政治学は何の役に立つ?
第1章 政治学
1 歴史・分野・特質
第2章 政 治
1 政治とは何か
2 政治の〈原理〉について
第3章 国家とナショナリズム
1 近代国家の特質
2 日本人であること
3 民族と国民
第4章 国際政治と日本
1 国際社会の政治構造
2 国際法と国際機構
3 第二次大戦後の世界
4 二一世紀の国際社会
第5章 権力と支配
1 政治権力
2 権力の構造化――国家権力の成立
3 権威と支配
4 支配の状況化
第6章 リーダーシップ
1 政治的リーダーシップ
第7章 シンボルとイデオロギー
1 シンボルとイデオロギー
2 やさしい心――政治における「事実」と「イメージ」
第8章 政治意識と政治的人間
1 政治意識とは何か
2 政治的無関心のタイプ
3 政治的人間の論理
4 家庭と政治
第9章 民主主義
1 民主主義――意味と力学
2 民主主義――歴史と類型
第10章 議会主義
1 議会とは何か
2 近代議会主義と国民代表制
第11章 政治運動
1 政治運動への視角
2 大衆運動の論理と構造
3 市民参加の論理と展望
第12章 現代政治
1 現代政治のダイナミクス
2 独裁について
3 全体主義とファシズム
4 現代革命の思想と論理
第13章 日本の政治
0 まえがき
1 日本の政治的風土
2 近代日本の政治
3 戦後日本の政治構造
4 戦後日本の政治過程
5 現代日本の権力構造――政財官複合の形成
第14章 政治理論
1 現代の政治理論
◎文献案内/あとがき/解説(五十嵐暁郎)/索引