講談社学術文庫作品一覧

ヘーゲル「精神現象学」入門
ヘーゲル「精神現象学」入門
著・編:加藤 尚武,著:原崎 道彦,著:伊坂 青司,著:栗原 隆,著:松山 壽一,著:座小田 豊,著:滝口 清栄,著:山崎 純
講談社学術文庫
「意識」から「絶対知」へ ギリシャ以来の壮大な知の体系の再構築に挑んだ、哲学史上最も難解にして重要な著作へのいざない 感覚、知覚、悟性、自己意識、理性、精神。意識は経験をとおして高次に向かい、「絶対知」へと到達する――。近代西洋哲学史上、最も重要にして最も難解とされる大著の核心を、精緻な読解と丁寧な解説で解き明かす。「絶対的な真理」を秘めた神話的な書物という虚妄のベールを剥いで立ち上がる、野心的な哲学像の実現に挑んだヘーゲルの苦闘の跡とは。 非常に難解ではあるが、マルクスやサルトルを魅了し、ハイデガーもけっして無視することができなかった、この哲学史上の名著を、誰でも読めるように、引用と要約と解説を組み合わせて、全体の面白さがわかるようにしたいというねらいだった。さまざまな迷路があり、高台があり、行き止まりのところがあるという、複雑に入り組んだ『精神現象学』という世界の名所案内と地図とを兼ねた書物にしたいと思った。――本書「はしがき」より ※本書の原本は、1996年1月、有斐閣より『ヘーゲル「精神現象学」入門〔新版〕』として刊行されました。
地図から読む歴史
地図から読む歴史
著:足利 健亮
講談社学術文庫
過去の景観の残片は、さまざまな形で地図に姿を留めている。地名や地形、道路、寺社などの位置関係と実地の検分から、そこに生きた人々の「地表経営」とその意図を解明する<歴史地理学>の楽しみ。聖武天皇の都・恭仁京の全貌、信長の城地選定基準、江戸建設と富士山の関係など、通常の歴史学ではアプローチできない日本史の側面に新たな光をあてる。 原本は、『景観から歴史を読む―地図を解く楽しみ』(1998年、日本放送出版協会刊)
電子あり
日本美術全史 世界から見た名作の系譜
日本美術全史 世界から見た名作の系譜
著:田中 英道
講談社学術文庫
20世紀後半以降、日本の美術作品が海外でも紹介されるようになりましたが、その興味はあいかわらず異国趣味によるものであり、特殊なものとして扱われる傾向があります。一般人でも理解できるような「芸術作品」として「普遍的」な価値観をきちんと提出できるならば、批評の対象としての「日本美術」が「世界美術史」の中で正当な位置を占めることができるはずと筆者は考え、あらためて日本美術史を編み直すことに挑戦します。 普遍的な価値とはなんでしょうか? 理想主義、人間主義、そして「気韻生動」(「リズミックな生動感または生動の中のリズム」ローレンス・ピンヨン『極東の絵画』)が、普遍性につながる特徴といえると考えます。また、写実性や真実性もその特徴になりうるでしょう。 上記のような普遍的な価値をもとに、縄文から現代にいたる日本美術の作品を縦横に論じ、新たに編み直していきます。取り上げられた作品数も500点以上。もうひとつの日本美術史がここにあります。
百代の過客 〈続〉 日記にみる日本人
百代の過客 〈続〉 日記にみる日本人
著:ドナルド・キーン,訳:金関 寿夫
講談社学術文庫
遣欧米使節、鷗外、漱石、子規、蘆花、荷風 有名無名の人々が見た近代日本の光と陰 幕末から明治へ――「若い時代」を生きた日本人のこころ 西洋との鮮烈な邂逅で幕を開けた日本の近代。遣欧米使節、諭吉、鷗外、漱石、植木枝盛、子規、啄木、蘆花、荷風――。有名無名の人々が遺した三十二篇の日記に描かれる、幕末・明治という日本の「若い時代」に現出したさまざまな異文化体験。そこに浮かび上がってくる、日本人の心性と日本人像、そして近代日本の光と陰。日記にみる日本人論・近代篇。 私が取り上げた日記の中で、私の関心を最も惹いたものは、日記作者その人の声にほかならなかった。私はいつも、なにか心からの声に、耳を傾けようと努めた。表現された感情のいかんにかかわらず、単に熟達した文体ではなく、なにかはっきりと、個性的な音色のようなものを聞こうとした。私はまた、文学史家が誰一人注目することのない日記の中にさえ、それを読む今日の読者が、何百年も昔に生きたその作者に突然一種の親近感を抱くような、なにか感動的な瞬間がないかと探し求めた。――本書「序」より ※本書は、1988年に朝日新聞社より刊行された同名書籍の上下巻を合本にしたものです。なお、初出は、1986年10月13日から1987年10月29日にかけての朝日新聞での連載です。
インフレとデフレ
インフレとデフレ
著:岩田 規久男
講談社学術文庫
世界恐慌、ドイツ・ハイパーインフレ、昭和恐慌、リーマン・ショック……。 本書は歴史的検討に基づいて二つの悪夢、インフレとデフレの発生メカニズムを解明し、そのコントロール法を考える。 インフレ目標政策とは何か?  1990年代以降の経済理論の新知見と長期化する日本デフレを踏まえて新章を書き下ろし。 格好の経済学入門にして提言の書。
電子あり
青春の終焉
青春の終焉
著:三浦 雅士
講談社学術文庫
かつて人生の核心は青春にほかならなかった! 三島由紀夫、夏目漱石、小林秀雄、ドストエフスキー、太宰治らから滝沢馬琴に遡り、村上龍、村上春樹へ。 近代日本の文学と思想を、鮮やかに解析する! 小林秀雄は、なぜ、青春にこだわらなければならなかったのか。秀逸な小林論でありながらそこにとどまらず、近代日本の文学・思想を博捜し、さらには江戸時代までさかのぼってスリリングに展開する画期的文芸評論。「日本近代文学は青春という病の軌跡にほかならない。その視点に立ってひとつの歴史が語られなければならないと考えた」著者の会心作。 これが、小林秀雄と中原中也が強いこだわりを見せた青春という言葉の沿革である。新しく生み出された言葉が、人の生き方を支配するまでにいたったのだ。さらに文学をまで支配するにいたった。それこそが日本近代文学の実質であるとさえ考えられるにいたったのである。しかし、(略)学生反乱の年として知られる1968年、おそらくその最後の輝き、爆発するような輝きを残して、この言葉は消えていった。なぜか。――<本書「はしがき」より>
西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史
西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史
著:阿部 謹也
講談社学術文庫
エッダ、サガに登場する粗野でたくましい死者のイメージは、中世後期の『黄金伝説』『奇跡をめぐる対話』では、生者に助けを求める哀れな姿となる。その背景には何があったのか? キリスト教と「贖罪規定書」そして告解の浸透……。「真実の告白が、権力による個人形成の核心となる」(M・フーコー)過程を探り、西欧的精神構造の根源を解き明かす。(講談社学術文庫) ミシェル・フーコーは、ヨーロッパにおける「個人」と「権力」の関係についてこう述べています。 「個人としての人間は、長いこと、他の人間たちに基準を求め、また他者との絆を顕示することで(家族・忠誠・庇護などの関係がそれだが)、自己の存在を確認してきた。ところが、彼が自分自身について語りか得るかあるいは語ることを余儀なくされている真実の言説によって、他人が彼を認証することになった。真実の告白は、権力による個人の形成という手続きの核心に登場してきたのである」 ヨーロッパにおいて12~13世紀にかけて、大きな変化が起こりました。8~9世紀に起こったカロリング・ルネサンス以降、ゲルマン社会はキリスト教化の動きが顕著になっていきます。そこで登場したのが、「贖罪規定書」です。俗信や魔術など迷信的な世界に生きる民衆の日常生活の細部にいたるまで点検し、個々の行動を裁き、罰を与えるものです。その介入は、「自発的な告解」にもとづくものでした。聖書にもとづく生活モデルに合わないことを罪とし、それに細かく罰を与えたのでした。こうすることで「個人」対「国家権力」が西洋的なあり方で成立していきました。 本書では、「贖罪規定書」以前の死者の国(元気な死者たちが暴れ回る)が、だんだんと弱い死者の国(地獄・煉獄からの助けを求める)へと変化していく様子を、様々な資料から読み解いていくものです。 エッダ、サガ、『奇跡をめぐる対話』、『黄金伝説』そして『贖罪規定書』と様々な資料を渉猟しながら、ヨーロッパの精神構造の根源へと迫ります。
電子あり
仏教誕生
仏教誕生
著:宮元 啓一
講談社学術文庫
釈尊、その思想の本質 説かれたものは「慈悲」と「救済」だったのか? 生成の場面に光を当て、仏教の根源にせまる 古代インドに生まれ、今もアジアの人々の暮らしに根づく仏教。インドの宗教的・思想的土壌にあって他派の思想との対立と融合を経るなかで、どんな革新性をもって仏教は生まれたのか。その生成の場面に光を当て、比較思想研究の手法によって「経験論とニヒリズムに裏打ちされたプラグマティスト」釈尊の思想の本質に迫る。インド思想史研究の意欲作。 紀元前五世紀ごろから紀元後の一千年紀にわたって、思想史上、仏教はほとんどつねに主導的な役割を果たした。仏教は、今日のヒンドゥー教思想の骨格の重要部分を構成している。しかし、その仏教も、孤高にして超絶という態のものではけっしてなく、他派の思想との対立と融合のなかで生成発展していったのである。――本書「はしがき」より ※本書の原本は、1995年、筑摩書房より刊行されました。
伊藤博文と明治国家形成―「宮中」の制度化と立憲制の導入
伊藤博文と明治国家形成―「宮中」の制度化と立憲制の導入
著:坂本 一登
講談社学術文庫
内閣制度を創設し、明治憲法の制定に尽力したことで日本近代史にその名を刻む伊藤博文。しかし立憲制の導入のために伊藤がまずなすべきことは、天皇の権限を明らかにし、「宮中」を制度化することだった。大隈重信・井上毅ら政敵との抗争や、度重なる政治的危機を乗り越えて明治天皇の信頼を得た伊藤の、「真の業績」を論じたサントリー学芸賞受賞作。(講談社学術文庫) 「立憲カリスマ」の真の業績とは 立憲制確立のためには、まず天皇の権限を明確にし、内閣を自立させることが不可欠だった。 内閣制度を創設し、明治憲法の制定に尽力したことで日本近代史にその名を刻む伊藤博文。しかし立憲制の導入のために伊藤がまずなすべきことは、天皇の権限を明らかにし、「宮中」を制度化することだった。大隈重信・井上毅ら政敵との抗争や、度重なる政治的危機を乗り越えて明治天皇の信頼を得た伊藤の、「真の業績」を論じたサントリー学芸賞受賞作。 「宮中」とは、天皇、皇族、宮中派と呼ばれる天皇側近、宮内省関係者などで構成された政治主体を意味し、その「宮中」が、「内閣」から自立した政治意思を持ち、立憲制の導入を中心とした体制の転換にも少なからぬ影響を与えていったのである。  本書の意味する「宮中」の制度化とは、君主権力を制度化して「宮中」の恣意から「政治」を自立させようとする政治的試みであり、それを本書では伊藤の政治指導を通じて明らかにしようとするものである。――(本書「はじめに」より) 1991年、吉川弘文館刊の同名書籍の文庫化
電子あり
雇用、利子、お金の一般理論
雇用、利子、お金の一般理論
著:ジョン.メイナード・ケインズ,訳:山形 浩生,著:ジョン.リチャード・ヒックス,その他:ポール・クルーグマン
講談社学術文庫
この本が、経済学を変え、世界を変えた。 ――正確で明快な新訳で読む社会科学史上の偉業 物が売れない、職がない――なぜ市場は自由放任では機能しなくなることがあるのか。ケインズは自らも通暁する古典派経済学の誤謬と限界を徹底的に見据え、ついに現代経済学の基礎となる本書に至った。現実世界に直面し理論をラディカルに(皮肉とユーモアも効かせて)更新する、科学という営みの理想形。 本書の核心を定式化したヒックスの重要論文『ケインズ氏と「古典派」たち』も採録。 ポール・クルーグマン「イントロダクション」より 経済停滞は、経済繁栄の過剰に対する必然的な罰なのだという発想は根強い。経済がそもそもどうやって停滞するに至ったかではなく、どうやって停滞にとどまるかを分析することで、ケインズは経済の苦悶に何か懲罰的なものがあるという発想を葬り去った。つまり『一般理論』は、知識の豊かな規律あるラディカリズムの成果なんだ。
電子あり
近代日本思想の肖像
近代日本思想の肖像
著:大澤 真幸
講談社学術文庫
日本の近代史においては、文学者や文芸批評家が、思想の中心的な担い手となってきた。もちろん、広く影響力をもった哲学者もいるが、近代日本思想の影響力の中心につねに文学があったのは、なぜなのか。吉本隆明、柄谷行人、三島由紀夫、丸山眞男、埴谷雄高など、文学と哲学が交錯する地点でその思想の特質を再検証する、注目の社会学者の力作論考。(講談社学術文庫) 吉本隆明、柄谷行人、廣松渉、丸山眞男…… 夏目漱石、宮沢賢治、三島由紀夫、村上春樹…… 彼らの思想が交錯するところに日本の近代を見通す快著!! 日本の近代史においては、文学者や文芸批評家が、思想の中心的な担い手となってきた。もちろん、広く影響力をもった哲学者もいるが、近代日本思想の影響力の中心につねに文学があったのは、なぜなのか。吉本隆明、柄谷行人、三島由紀夫、丸山眞男、埴谷雄高など、文学と哲学が交錯する地点でその思想の特質を再検証する、注目の社会学者の力作論考。 ※本書は、2005年、紀伊國屋書店より刊行された『思想のケミストリー』に、『<不気味なもの>の政治学』(新書館、2000年)所収論文二編を追加し、改題し、再編集したものです。
電子あり
生命の劇場
生命の劇場
著:ヤーコプ.フォン・ユクスキュル,訳:入江 重吉,訳:寺井 俊正
講談社学術文庫
ダーウィニズムと機械論的自然観に支配されていた二十世紀初頭、人間中心的な世界観を退けて「その生物が周囲に与える意味の世界」すなわち「環世界」の概念を提唱し、その後の動物行動学や哲学、生命論に影響を及ぼした生物学者の最晩年の著作。対話形式で独自の世界観を展開し、自説への批判とそれへの反論をも明快に語る、今も新鮮な科学の古典。 生物から見た世界=「環世界」とは何か。 20世紀の動物行動学・生態学・生命論の先駆をなした生物学者が語る、音楽的<生のドラマ>の総譜。 ダーウィニズムと機械論的自然観に支配されていた二十世紀初頭、人間中心的な世界観を退けて「その生物が周囲に与える意味の世界」すなわち「環世界」の概念を提唱し、その後の動物行動学や哲学、生命論に影響を及ぼした生物学者の最晩年の著作。対話形式で独自の世界観を展開し、自説への批判とそれへの反論をも明快に語る、今も新鮮な科学の古典。 生命は種子を播く人に似ています。彼は、何千ものゲシュタルトを秘めた種子を、まるで火花の雨のように散布するのです。風に自らを委ねる種子とか、海水中を雲霞のように漂う多種多様なプランクトンの群れを思い浮かべさえすればいいのです。種子を播く人は、彼が散布する何千もの生命の火花はどれもけっしてなくなりはしないことを知っています。というのは、あらゆる生命は一つのものであり、結局は自己自身へ帰ってくるからです。――<本書より> ※本書の原本は、1995年に博品社より刊行されました。
電子あり
朝鮮儒教の二千年
朝鮮儒教の二千年
著:姜 在彦
講談社学術文庫
東アジア、精神の古層。 朝鮮=儒教か? あのとき東方礼儀之国で何が起きていたのか? 箕子朝鮮から三国時代、新羅、朝鮮王朝、植民地化に至るまで、 二千年にわたる儒教の展開を跡付ける。 朝鮮における儒教の二千年にもおよぶ展開を丹念に描き出し、朝鮮近代思想史につなげる論考を展開した記念碑的大著。 中国・日本と対比しながら二千年を俯瞰する視角は、朝鮮の独自性と東アジアの普遍性を浮き彫りにする。 儒学を経世実用の学とみなした潮流を確認・追跡し、そうした流れを摘み取ってしまった過程として朝鮮王朝期の党争を描き出す記述は、朝鮮のみならず東アジアにとっての〈近代〉を考える出発点となる。 【本書の内容】 序  章 「儒教」とは何か 第 一 章 孔子以前の「箕子朝鮮」 第 二 章 三国時代の儒教 第 三 章 後期新羅の儒教 第 四 章 高麗王朝の「仏教立国」 第 五 章 成宗の崇儒政策と崔承老 第 六 章 私学十二公徒と国子監 第 七 章 文身の退廃と武臣政権 第 八 章 朱子学の伝播と排仏論 第 九 章 易姓革命――高麗から朝鮮へ 第 十 章 「儒教立国」のブレーンたち 第十一章 教育と科挙、そして王朝実録 第十二章 王朝政治の守成――世宗と世祖 第十三章 士林派の形成と士禍 第十四章 朱子学一辺倒と性理学論争 第十五章 東アジアの動乱と朝鮮 第十六章 「崇明排清」の思想 第十七章 英祖・正祖時代の実学派 第十八章 ウェスタン・インパクトと朝鮮 終  章 王朝の斜陽――鎖国から開国へ あとがき 学術文庫版あとがき 人名索引
電子あり
芭蕉全発句
芭蕉全発句
著:山本 健吉
講談社学術文庫
国文学に通暁し、実作と研究双方のよき理解者たる文芸評論家が、渾身の情熱を注いで正面から俳聖に挑む。全句の訓詁注釈を通して実景、実感、伝記的事実、言葉の意味、詩性――芭蕉の世界に迫り、「軽み」論から「いのち」と「かたち」へ、日本人の魂に根ざす文学的本質へと読者を誘う。今日の俳句・短歌隆盛の礎となった不朽の一冊。(解説・尾形 仂) 言葉の美、深長な意味、軽み―― 俳句の伝統と革新はここに創まる 国文学に通暁し、実作と研究双方のよき理解者たる文芸評論家が、渾身の情熱を注いで正面から俳聖に挑む。全句の訓詁注釈を通して実景、実感、伝記的事実、言葉の意味、詩性――芭蕉の世界に迫り、「軽み」論から「いのち」と「かたち」へ、日本人の魂に根ざす文学的本質へと読者を誘う。今日の俳句・短歌隆盛の礎となった不朽の一冊。(解説・尾形 仂) 定型詩のよき理解者が俳聖の全句を解き明かす 私は大学の講座で、師匠釈迢空(ちょうくう)から、原典の一字一句を如何に深く訓まなければならないかを学んだ。私は低声にささやかれるような訓詁の著述に、中世の倭学者たちや近世の国学者たちの、古典への没頭の中に貫いた耿々(こうこう)の志を見るのである。及ばずながら私も、彼等の志したあとを歩もうとする者に過ぎない。――<本書「まえがき」より> ※本書の原本は1974年、河出書房新社より『芭蕉全發句』上下巻として刊行されました。なお、講談社学術文庫収録にあたっては、1983年に小社より刊行された『山本健吉全集 第六巻』を底本としました。
電子あり
ルネサンスの神秘思想
ルネサンスの神秘思想
著:伊藤 博明
講談社学術文庫
千年の「暗黒時代」の後、ルネサンスが花開く。エジプト、ギリシア、古代ヨーロッパの数多の神々が召喚され、<古代神学>が大興隆。ヘルメス、ゾロアスター、ピュタゴラスらの教説の神秘主義的刻印とは? 哲学・思想・宗教的諸説混淆(シンクレティズム)の精神風景を、オカルトも交え描く。15世紀フィレンツェで咲き乱れた神秘思想へのコンパクトで本格的な入門書。(講談社学術文庫) 自然魔術、降神術、占星術、錬金術、数秘術、呪術的音楽、カバラ……。 暗黒の中世を経て、甦った古代の神々と叡智。 もうひとつのルネサンス文化・思想史 千年の「暗黒時代」の後、ルネサンスが花開く。エジプト、ギリシア、古代ヨーロッパの数多の神々が召喚され、<古代神学>が大興隆。ヘルメス、ゾロアスター、ピュタゴラスらの教説の神秘主義的刻印とは? 哲学・思想・宗教的諸説混淆(シンクレティズム)の精神風景を、オカルトも交え描く。15世紀フィレンツェで咲き乱れた神秘思想へのコンパクトで本格的な入門書。 <神々は再生した>。……古典古代のさまざまな宗教的観念(あるいは祭儀さえも)が復活しようとしていたのである。そして、キリスト教の<唯一の神>と異教の<神々>との対話、闘争、講和が、イタリア・ルネサンスの文化と思想を根底で条件づけているのである。……ヘルメス、ゾロアスター、オルフェウス、ピュタゴラスたちの教説は、自然魔術、降神術、占星術、錬金術、数秘術、呪術的音楽など、いわゆるオカルト学的要素や神秘主義的傾向を多く含んでいる。――<「プロローグ」より抜粋> ※本書の原本『神々の再生――ルネサンスの神秘思想」は、1996年東京書籍より刊行されました。
電子あり
藤原行成「権記」全現代語訳(下)
藤原行成「権記」全現代語訳(下)
訳:倉本 一宏
講談社学術文庫
平安中期の能吏・藤原行成が残した日記の現代語訳、上・中巻に続く最終巻。行成は一方では小野道風・藤原佐理と並んで三蹟と称される能書家、また一方では役人として権力中枢の実態や宮廷深奥の動きなどを丹念に記録、その日記は平安の政治体制を知るための第一級史料として大きな価値を持っている。本巻では、一条天皇崩御、三条天皇即位を中心として平安最盛期の宮廷の政治的動きや儀式・行事の実態などが詳細に綴られている。 藤原行成が記した日記『権記』は、昇進の末の極官「権大納言」にちなんでいるが、今に残されているのは鎌倉期に書写された伏見宮本『行成卿記』という写本である。これは現在22巻が伝わっているものの、実際に行成が書き残したのはそれをはるかに上回る量と考えられる。 一条天皇と藤原道長、また中宮定子・彰子や東三条院に近侍し、宮廷の政務・儀式・行事の運営など激務をこなしながら、行成がその顛末・次第を詳細に書き留めたのは、ひとつには儀式書をまとめる基にするためだったとも見られ、実際にさまざまな部類記を整理していた。 一方では小野道風・藤原佐理と並んで三蹟と称される能書家、また一方では役人として権力中枢の実態や宮廷深奥の動きなどを丹念に記録、その日記はいま歴史研究の第一級史料として大きな価値を持っている。 本巻は、一条天皇の崩御、三条天皇の即位式を中心として、平安最盛期の宮廷での政治的動きや儀式次第、行事の実態などが詳細に綴られており、平安の政治体制を知るための大きな手がかりとなる。
電子あり
平泉の世紀―古代と中世の間
平泉の世紀―古代と中世の間
著:高橋 富雄
講談社学術文庫
世界遺産・平泉とは 日本史にとって何だったのか 壮大な国家構想と軍事力。東北地方を縦断する交通網と、中尊寺にみられる仏教哲学。清衡から泰衡にいたる奥州藤原氏の百年間は、京都の政治権力が、やがてその中心を鎌倉に移す「古代から中世への過渡期」にあたっていた。頼朝を恐れさせた「平泉の実力」を、列島全体の歴史的変動の中に位置づける、東北古代史の碩学による「新たな日本史」の構想。 ※本書の原本は、1999年、日本放送出版協会より刊行されました。
倭寇―海の歴史
倭寇―海の歴史
著:田中 健夫
講談社学術文庫
半裸に裸足、大刀を振るって大海を荒らしまわる「荒くれ者の日本人」という倭寇像は、歴史の真実とは掛け離れている。中国人・朝鮮人・ヨーロッパ人も含んだ海民集団は、時の政治・外交に介入し、密貿易を調停し、14~16世紀の国際社会の動向を左右した。陸地中心の歴史観を超え、国境にとらわれない「海の視点」から、その実像を浮き彫りにする。 一般に「倭寇」とよばれているのは14~15世紀の倭寇と16世紀の倭寇であり、本書でもこの二つの時期の倭寇を記述の対象とした。倭寇は東アジアの沿海諸地域を舞台とした海民集団の一大運動であるが、構成員は日本人だけではなく、朝鮮人・中国人・ヨーロッパ人をふくんでいる。日本史上の問題というよりも、東アジア史あるいは世界史の問題といったほうがふさわしい。――<「はじめに」より> ※本書の原本は、1982年に教育社から、1997年にニュートンプレスから刊行されました。
怪物ベンサム 快楽主義者の予言した社会
怪物ベンサム 快楽主義者の予言した社会
著:土屋 恵一郎
講談社学術文庫
功利主義者、パノプチコン創案者。近代批判の中で忘却されたベンサム。しかし、この怪物の構想は現代にも生きている。死刑廃止、動物愛護、都市衛生、同性愛擁護、さらにはチューブによる社会通話システム、冷蔵庫……。人間を快感と欲望の中に配置し、自我の解体をも試みた男。19世紀最大の奇人啓蒙思想家の社会設計図を解読し、その背景を解明する。(講談社学術文庫) 功利主義者、パノプチコン創案者。近代批判の中で忘却されたベンサム。しかし、この怪物の構想は現代にも生きている。死刑廃止、動物愛護、都市衛生、同性愛擁護、さらにはチューブによる社会通話システム、冷蔵庫……。人間を快感と欲望の中に配置し、自我の解体をも試みた男。19世紀最大の奇人啓蒙思想家の社会設計図を解読し、その背景を解明する。 ベンサムというのは徹底して変な人である。……著者が発見したベンサムは近代を切り開いた人物ではなくて、現代の予見者だった。ベンサムは19世紀のロマン主義や歴史主義とはまったく関係がない。19世紀を跳び越して、20世紀と、いや21世紀とさえじかにつながっているのだ。これは大変な創見といわねばならない。 ――<「解説」より> ※本書の原本『ベンサムという男 法と欲望のかたち』は、青土社より1993年刊行されました。
電子あり
権力と支配
権力と支配
著:マックス・ウェーバー,訳:濱嶋 朗
講談社学術文庫
希望はカリスマを生む。だがそれは日常化する。 支配の正当性は、なぜ三つに分類し得るのか。 ウェーバーの著作全体への入口とも言える本書は、支配のあり方を比較するために服従する側の動機から接近する。 服従のあり方から見出される正当性のタイプに基づいた支配の三類型(合法的・伝統的・カリスマ的)にはじまって、一つ一つの概念を緻密に検討する粘り強い論考は、やがて官僚制化の機制までも解き明かし、あらゆる「支配」の本質に迫る。 社会の科学はここからはじまった。 【本書の主な内容】 ■第一部 権力と支配 第一章 正当性の妥当 第二章 官僚制的行政幹部をそなえた合法的支配 第三章 伝統的支配 第四章 カリスマ的支配 第五章 カリスマの日常化 第六章 封建制 第七章 カリスマの没支配的意味転換 第八章 合議制と権力分立 第十章 没支配的団体行政と代議行政 第十一章  代表 第十二章 身分と階級 ■第二部 官僚制 1 官僚制の特徴 2 官僚の地位 3 官僚制化の前提と根拠 4 官僚制機構の永続的性格 5 官僚制化の経済的および社会的帰結 6 官僚制の権力的地位 7 官僚制の発展段階 8 教養と教育の「合理化」 訳註/文庫版あとがき/解説(橋本努)/索引