変わる家族と介護

マイページに作品情報をお届け!

変わる家族と介護

カワルカゾクトカイゴ

講談社現代新書

著者の春日氏は、30年以上にわたってケアワーカーや保健師の方たちと一緒に仕事をしてきた研究者ですが、この10年近く、家族と介護をめぐる状況が大きく変わったと感じるようになりました。

 たとえば、「高齢の親と同居する、経済力のない中年シングル息子/娘」の世帯が急増しています。介護と仕事の両立に悩む中年シングルの娘も増えています。高齢者夫婦の世帯で、夫が妻の介護や家事を担うストレスから、極端な場合は高齢者虐待に陥るケースも増えています。夫方の両親より妻方の両親を優先する夫婦も増えました。子が親を世話するという価値観が崩れ、二世帯同居でも実質ひとり暮らしという老母のケースもあります。

 著者は、このような状況を、「家族のかたちが大きく変わったことによって、家族に<セーフティネット>の役目を担わせるかたちでつくられている日本の福祉制度のあり方が限界に達し、人々が重大な困難に陥ったとき、どこからも救い手がなく、孤立し、ときには命までも脅かされようとしている」ということではないか、と考えています。

 本書はそのような「極端に聞こえるかもしれないが、けっして他人事ではない」ぬきさしならない家族と介護の問題の数々を、エッセイのかたちで語り、要所でデータなど解説を加えた本です。深刻なケースに対しても、著者の共感のこもった眼差しはあたたかく、個々の家族や、社会の制度について、どうしたらよいかを模索しながら語ります。誰にとっても大切で切実なテーマである家族について、考えるヒントになれば幸いです。


  • 前巻
  • 次巻

目次

第1章  親に依存する同居中年シングルたち
「親ものんき」と思われて/このままギリギリまで行ってしまうと思う/息子に本音を言いにくい…
第2章  介護を担うシングル息子の孤立と孤独
介護する息子に話を聞いて/ある50代前半の息子の例/閉ざされる仕事への道…
第3章  シングル息子の介護と「金縛り」
仕事を続けながら介護するHさん/兄に対する態度と違う/娘が頼る親の年金…
第4章  娘家族・息子家族と親の関係はどう変わったか
いまどきの学生の結婚観/自分の親を優先したい理由/親の考えは娘にどう影響しているか…
第5章  夫が妻を介護するとき
「夫に介護してほしい」/仲が良くない夫婦間の介護/介護する夫の2つのタイプ…
第6章  希望はあるか―同居家庭内ひとり暮らしの孤独を超えて
息子夫婦との関係が突然壊れて/生き抜く力を支えるもの/人生90年時代に…
コラム1 中年シングル増大社会
コラム2 家族介護の担い手はどう変化してきたか
コラム3 公的介護保険制度の何がいま問題か

書誌情報

紙版

発売日

2010年12月17日

ISBN

9784062880824

判型

新書

価格

定価:792円(本体720円)

通巻番号

2082

ページ数

208ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介

関連シリーズ

BACK
NEXT