講談社学術文庫作品一覧

手仕事の日本
講談社学術文庫
名もなき工人が作る民衆の日用品の美、「民藝」。大正時代半ばから二十年近い歳月をかけて日本各地で手仕事の「用の美」を調査・収集した柳宗悦は、自然と歴史、そして伝統によって生み出される美を探求し続けた。著者がみずからの目で見、選び取った正しい美しさとはなにか。日本文化が世界的に注目される現代、今なお多くの示唆に富む日本民藝案内。

徳富蘇峰 終戦後日記 『頑蘇夢物語』
講談社学術文庫
明治・大正・昭和を通じ活躍した言論人、徳富蘇峰が、終戦直後から書き残していた膨大な日記を発掘。戦争中、大日本言論報国会会長として戦意を煽ったと戦犯容疑のため自宅に蟄居しながら綴り、『頑蘇夢物語』と自ら命名した日記には、無条件降伏への憤り、昭和天皇への苦言から東條英機、近衛文麿ら元首相らへの批判と大戦の行方を見誤った悔悟の思いが明かされている。
明治・大正・昭和を通じ活躍した言論人、徳富蘇峰が、終戦直後から書き残していた膨大な日記を発掘。戦争中、大日本言論報国会会長として戦意を煽ったと戦犯容疑のため自宅に蟄居しながら綴り、『頑蘇夢物語』と自ら命名した日記には、無条件降伏への憤り、昭和天皇への苦言から東條英機、近衛文麿ら元首相らへの批判と大戦の行方を見誤った悔悟の思いが明かされている。この日記が戦後60年以上も蘇峰直系の孫、徳富敬太郎氏によって密かに保管され、封印されてきたのはなぜか。それは敗戦の責任について、蘇峰の昭和天皇へのラディカルな批判がこの日記にこめられていたからだ。蘇峰は日露戦争と比較し、「この戦争」には「戦争に一貫したる意思の無きこと」「全く統帥力無きこと」が明白であるとし、「我が大東亜戦争は、誰が主宰したか。それは申すまでもなく、大元帥陛下であることは多言を俟たぬ。しかも恐れながら今上陛下の御親裁と明治天皇の御親裁とは、名においては一であるが、実においては全く別物である」と痛烈に批判。そして単刀直入に「極めて端的に申し上げれば、今上陛下は戦争の上に超然としていましたことが、明治天皇の御実践遊ばされた御先例と異なりたる道を御執り遊ばされたることが、この戦争の中心点を欠いたる主なる原因であった」と結論づけたのである。昭和天皇在位中には公開を憚られた内容が、戦後60年以上を経て明らかにされ、敗戦をめぐる議論を巻き起こした注目の書を改めて世に問う。
原本:『徳富蘇峰 終戦後日記――『頑蘇夢物語』』講談社 2006年

対話のレッスン 日本人のためのコミュニケーション術
講談社学術文庫
「日常会話」や「雑談」は得意でも「対話」は苦手なことが多い日本人。ふだん同じ価値観の仲間とばかり会っているので、異なるコンテクストの相手と議論をしなくて済んでしまう。文化の違う相手と交渉したり共同作業をする経験が、まだ日本人には少ないのだ。さらに携帯電話などの登場で、世代間のギャップが広がる。それではどのようなスキルが必要なのか。豊富な具体例をもとに、新しいコミュニケーションの在り方を真摯に探る。
日本人の多くはなぜコミュニケーション・スキルが身につかないのか。政治家も経営者も、「演説」「日常会話」「雑談」は得意でも「対話」「談話」は苦手なことが多い。
ふだん同じ価値観の仲間とばかり会っていると、異なるコンテクストの相手と議論をしなくて済む。文化の違う相手と交渉したり共同作業をする経験が、まだ日本人には少ない。さらに携帯電話、ネットなどの新しいツールの登場で、世代間のギャップは広がる。
それでは、どうしたら対話が生まれるのか。どのようなコミュニケーション・スキルが必要なのか。
――豊富な具体例をもとに、新しいコミュニケーションの在り方を真摯に探る。
解説――高橋源一郎
「みなさんも、この本を読みながら、著者である平田オリザさんと共に、ゆっくりと(平田さんが指摘するようなこと、あるいは、それに触発されて、みなさんの内側に巻き起こってくることについて)考えてもらいたいのである。それは、みなさんにとっても、たいへん貴重な時間になるだろう」

日本古代貨幣の創出 無文銀銭・富本銭・和同銭
講談社学術文庫
『続日本紀』には、708年「はじめて銀銭を行う」、「はじめて銅銭を行う」とある。和同開珎が日本初の貨幣という記述があるのはなぜか? なぜ、まず銀銭、その後銅銭が発行されたのか? 蓄銭叙位令がなぜ出されたのか? 『日本書紀』には、683年に「今より以後、必ず銅銭を用い、銀銭を用いる事勿れ」とは何を意味するのか? 政府が銅銭を流通させた(皇朝十二銭)目的を徹底的に探る。
以前からその存在は知られていましたが、1999年に奈良県の飛鳥池遺跡で発見された33枚の富本銭によって、683年頃に発行された日本最古の銅銭であることが確定されました。従来日本最古の貨幣とされていた和同開珎(708)以前に貨幣はあったのです。
しかし実際には、富本銭に先立つ貨幣として無文銀銭(銀の実体価値貨幣)が流通を担っており、その後も数世紀にわたって流通を続けていました。
『続日本紀』によれば、708年「はじめて銀銭を行う」、「はじめて銅銭を行う」として、和同開珎があたかも日本初の貨幣として発行されたかのような記述があるのはなぜか? なぜ、まず銀銭が発行され、その後銅銭が発行されたのか? また蓄銭叙位令のような貨幣流通を促すような法令が出されたのか? 一方で『日本書紀』には、683年に「今より以後、必ず銅銭を用い、銀銭を用いる事勿れ」と、上記と矛盾する記述もあるのはなぜか? 古代の貨幣をめぐって、謎が謎を呼ぶのです。
考古学が専門で、貨幣にも詳しい筆者は、文献資料と発掘資料とつきあわせてその謎を丹念に解いて行きます。また当時の鉱山の発見や大陸との関係も加味して推理を重ねます。すると古代における銀銭の役割と政府が銅銭を流通させることで(皇朝十二銭)、財政を強化しようとした事実が明らかになってきます。
日本古代貨幣史を塗り替える問題作です。刊行後15年を経て、その間に明らかになった事実も筆者の考えを補強するものでした。あらたに一章分加筆し、完全版として文庫化します。
原本:『富本銭と謎の銀銭 貨幣誕生の真相』(小学館 2000)

死産される日本語・日本人 「日本」の歴史―地政的配置
講談社学術文庫
「日本語」や「日本人」は、それ自体としてあるものではないが、好き勝手に作られる想像の産物でもない。それらは国家統合の理念として近代に要請され、だからこそ「純粋」でなければならなかった。この要請は、失われた過去に「純粋」な存在を求め、そこからの連続によって現在を正当化する。だから、日本語も日本人も、生まれた時には、すでに死産されている。──幾多の議論を巻き起こした問題の書、新稿を加えた決定版で登場。
グローバル化がとどめられない勢いをもつ現在、ナショナリズムや自民族中心主義、それが生み出す排外主義が台頭してきている皮肉な現実は、世界中のさまざまな出来事を見ても疑いない。本書は、若き日にアメリカに渡って博士号を取得したあと、本拠地アメリカのみならず、ヨーロッパやアジアを含め、世界中で活躍してきた著者が日本語でものした初めての著書である。
本書の中核をなし、書名にも採用された記念碑的論文「死産される日本語・日本人」で、著者は「日本語」や「日本人」はそれ自体としてあるものではないと説く。かといって、それらは好き勝手に作ることのできる想像の産物でもない。「日本語」や「日本人」が問題になったのは、「近代」という時代になって、それらが国家統合の理念として要請された時だった。そこで要請された「日本語」や「日本人」は「純粋」でなければならず、その「純粋」な存在は『古事記』や『日本書紀』などを素材にして、失われた過去に求められることになった。その「純粋」な存在が現在まで連綿と続いていることを理由に、現在の「日本語」や「日本人」が正当化される。
このような論理は今も至る所に見られるが、一見して分からないほど巧妙なものであることも確かである。その論理を鮮やかに浮かび上がらせた著者は、次のように言う。「国語あるいは国民語の起源をめぐる歴史的問いは、『日本語』そして国民的主体としての『日本人』が、生まれると同時に死んでいた、あるいはすでに喪失されたものとしてしか生まれることができなかった」。今もなされ続けている暴力は、生まれた時にはすでに死んでしまっていたものを根拠にしている、という事実から出発してこそ、世界の悲惨を解決する道も見出されるだろう。刊行当初から幾多の議論を巻き起こしてきた問題の書が、新稿を加えた決定版として学術文庫に登場。

デリダ 脱構築と正義
講談社学術文庫
ポスト構造主義を代表する哲学者、ジャック・デリダ。ロゴス中心主義が「まったき他者」を排除・隠蔽してきた歴史を暴き出した尖鋭で長大な問いかけは、我々に影響を与え続けている。脱構築、散種、差延をはじめとする独創的な概念を生み出した思想の核となる「哲学的」モチーフをとらえ、彼が呈示した「他者との関係としての正義」を潜在的・顕在的に追究する。

擬音語・擬態語辞典
講談社学術文庫
日本語表現の決め手となる「擬音語・擬態語」約2000語を集大成した決定版オノマトペ辞典。用例を豊富に収載し、実際の用法も紹介。俳句・短歌の創作や、翻訳などにも役立つ。「ふっくら」と「ぷっくり」など、類義語の微妙な意味の違いも解説。「参考」欄では、「あっさり」は「浅い」からできた語、「徳利」は酒を注ぐ音「とくとく」から、など、擬音語・擬態語にまつわる歴史的背景や興味深い薀蓄も満載し、読んで楽しめる。
「しくしく痛む」と「きりきり痛む」はどう違う? 江戸時代には、鶏の声を「とーてんこー」と聞いていた?――。日本語表現力の決め手となる「擬音語・擬態語」約2000語を集大成した、決定版のオノマトペ辞典。
擬音語・擬態語の歴史的研究を開拓したことで知られ、テレビでもおなじみの編者を中心に、14人の研究者が執筆した。用例を豊富に収載し、実際の使い方、用法も紹介。俳句・短歌の創作や、翻訳などにも役立つ。
「類義語」欄を設け、「ふっくら」「ぷっくり」など、似たような言葉の微妙な意味の違いも解説。
「参考」欄では、「あっさり」は「浅い」からできた語、「徳利」は酒を注ぐ音「とくとく」から、など、擬音語・擬態語にまつわる歴史的・文化的背景など興味深い薀蓄も満載。著名マンガ家の作品に現れる用例も収録し、見て楽しめるビジュアルな編集。外国人の日本語学習者にも最適。
『暮らしのことば擬音・擬態語辞典』(2003年、小社刊)を改題し、文庫化。

中世芸能講義 「勧進」「天皇」「連歌」「禅」
講談社学術文庫
日本中世芸能の世界を、「勧進」「天皇」「連歌」「禅」という四つの切り口から論じる。経済活動の原動力としての勧進が芸能を包含していく過程、天皇制のなかの祓穢思想と芸能との発生のかかわり、位相の変化の連なりを集団の連関のなかで生み出す連歌のダイナミズムと美学、禅が孕むバサラ的思想。超域的な視点から能楽研究を拓いてきた第一人者の眼で歴史資料から鮮やかに見出される日本中世文化の全容を描く画期的講義の記録。
日本中世芸能の世界を、「勧進」「天皇」「連歌」「禅」という四つの切り口から論じる。経済活動の原動力としての勧進が芸能を包含していく過程、天皇制のなかの祓穢思想と芸能との発生のかかわり、位相の変化の連なりを集団の連関のなかで生み出す連歌のダイナミズムと美学、禅が孕むバサラ的思想。超域的な視点から能楽研究を拓いてきた第一人者の眼で歴史資料から鮮やかに見出される日本中世文化の全容へと迫る画期的講義の記録。

反歴史論
講談社学術文庫
「証言」の真偽という問題は、今も世間の感情を刺激し、「歴史」をめぐる激しい闘争を生み出し続けている。誰一人として歴史から逃れることができない人間が、歴史の支配から自由になることはできるのか。数々の著作を送り出してきた著者が、哲学、文学、映画、精神分析、民俗学など、多彩な分野を縦横無尽に駆け抜けながら、繊細かつ大胆に思考する。今こそ読まれるべき名著が、書き下ろしの新稿を加えて、学術文庫に登場。
「従軍慰安婦」報道をめぐって生じた「『朝日新聞』問題」に見られるとおり、今も「歴史」や「歴史観」は世間に強い感情を呼び起こし、激しい闘争の原因になっている。文化も文明も技術も、制度も慣習も言語も、今あるものはすべて過去に作られた歴史の産物であり、歴史から完全に逃れて考え、生きられる人など一人もいない。
本書は、この歴史による支配がいかにして起きるのかを解明し、歴史から自由になることはできなくても、歴史の支配から自由になる可能性はあることを示そうとするものである。
「従軍慰安婦」問題にも明らかなように、いつからか歴史は「記憶」の問題として考えられるようになった。当事者の「証言」の真偽が問われるのはそのためだが、これは歴史の支配から自由になろうとする運動だったと著者は言う。「歴史は、ある国、ある社会の代表的な価値観によって中心化され、その国あるいは社会の成員の自己像(アイデンティティ)を構成するような役割をになってきた」。国や社会によって決められたのではない歴史を生み出すために個人の記憶が重視されたが、その結果、国や社会に記憶の真偽をめぐる闘争が、つまりは歴史をめぐる新たな闘争が生み出されたのは、何とも皮肉なことである。
「古典とは、この言葉の歴史からみても、反歴史的概念である」という小林秀雄の言葉を出発点にする本書は、歴史を軽々と超える古典作品を生み出した人間が、歴史に翻弄される存在でもある、という二重の事実を繊細かつ大胆に思考していく。ニーチェ、シャルル・ペギー、ジャン・ジュネ、レヴィ=ストロースといった多彩な作家を取り上げ、哲学、文学、映画、精神分析、民俗学を横断しながら展望されるのは、真に歴史の支配から逃れて考え、生きる可能性にほかならない。戦後70年を迎える今、好評を得た名著が書き下ろしの新稿を加えて、ついに学術文庫に登場。

古典落語(選)
講談社学術文庫
学術文庫の好評ロングセラー『古典落語』正編、続編に続く第三巻。大衆に支えられ、名人たちによって磨きぬかれてきた落語。古典といわれる噺の数々は、人情の機微、人生のひとこまを笑いの中にとらえ、庶民の姿を描き出す、言葉の文化遺産といえるだろう。明治・大正・昭和期の速記本をもとに、20篇を完全再現収録。(講談社学術文庫)
学術文庫の好評ロングセラー『古典落語』正編、続編に続く第3巻。大衆に支えられ、名人たちによって磨きぬかれてきた落語。古典といわれる噺の数々は、人情の機微、人生のひとこまを笑いの中にとらえ、庶民の姿を描き出す、言葉の文化遺産といえるだろう。明治・大正・昭和期の速記本をもとに、20篇を完全再現収録。

宇宙誌
講談社学術文庫
我々はどこから来たか、我々とは何か、我々はどこへ行くのか――。科学の飛躍的進展が人類にもたらした劇的変化。我々はどのような思索を経て、現在の科学技術を築きあげたのか。そして新たな文明への途上にあって、宇宙の意味、可能性とは何か。古代ギリシャからホーキングにいたる天才たちの足跡を追い、200億光年の時空を旅する壮大な知的大紀行。

満鉄調査部
講談社学術文庫
ソ連研究の中心地であり、満洲国建国に際して経済計画の策定に注力。日中戦争期には占領地の宣撫工作と調査活動とともに、日中戦争の行方を予測する総合調査までも担った。アジア太平洋戦争開戦後は、ビルマ・マラヤの調査までも手がけたが、関東憲兵隊との摩擦により機能停止に。満鉄調査部の活動は、いまでは「日本初のシンクタンク」と評され、そのエッセンスが戦後の経済発展やアジア研究に大きく寄与した。その全貌を明かす。
![スッタニパータ [釈尊のことば] 全現代語訳](https://dvs-cover.kodansha.co.jp/0000211769/0JC8IsBuYPw6RIim3OOes0alycnzJVO8tQnszKGa.jpg)
スッタニパータ [釈尊のことば] 全現代語訳
講談社学術文庫
かくしてひとり離れて修行し歩くがよい、あたかも一角の犀そっくりになって――。『法句経(ダンマパダ)』とともに原始仏典の中でも最古層とされる『スッタニパータ』。最初期の仏教思想と展開を今に伝えるこの経典は、釈尊に直結する教説がまとめられ、師の教えに導かれた弟子たちが簡素な生活のなかで修行に励み、解脱への道を歩む姿が描き出される珠玉の詞華集である。2400年前の金口直説を平易な現代語で読む。

ヒトはいかにして生まれたか 遺伝と進化の人類学
講談社学術文庫
人類学の泰斗が、近年の遺伝学の成果を取り入れ、「ヒトの誕生」への道のりを語る。古代ギリシャの哲人を悩ませた「なぜサルはヒトに似ているか」という問題に、ダーウィンの進化論がひとつの答えを提示し、20世紀の半ば以降は、DNAと進化の関係が探究されてきた。「毛がない」ことの意味、人類学からみた「雪男の謎」、ヒトの特徴である「ネオテニー」「自己家畜化」とは。文系・理系を融合した「新しい人類学」を提唱する。
「ヒト」とはそもそも何か。二足歩行をする「人類」が誕生したとき、DNAのレベルでは、何が起こっていたのか――。人類学の泰斗が、近年の遺伝学の成果を取り入れ、「ヒトの誕生」への道のりを語る。
古代ギリシャの哲人を悩ませた「なぜサルはヒトに似ているか」という問題に、ひとつの答えを提示したのが、ダーウィンの進化論だった。20世紀の半ば以降、DNAの発見によって「進化」と「遺伝子」の関係が探究されるようになるが、人類学と遺伝学は簡単に接続できるものではなかった。ヒトとチンパンジーが遺伝子はよく似ているのに姿は全く違うのに対し、カエルは遺伝的に大きな差異があっても姿はそっくりという例にみるように、遺伝子の進化と形態の進化は一致しないのだ。
こうした人類誕生にまつわる「遺伝」と「進化」の関係を、「進化の中立説」「遺伝距離」「構造遺伝子と調節遺伝子」などの用語を使いつつ、やさしく解説する。
二足歩行と脳の発達はどちらが先か、「毛がない」ことの意味、人類学からみた「雪男の謎」、ヒトの特徴である「ネオテニー」「自己家畜化」とは何か、など豊富な話題をまじえて、文系・理系を融合した「新しい人類学」を提唱する。
『ゲノムから進化を考える5 ヒトはいかにして生まれたか』(岩波書店、1998年刊)の文庫化。

日本人のための英語学習法
講談社学術文庫
英語を理解するということは、単に単語を覚えればいいのではなく、英語ネイティブたちの頭の中にある、英語によって切り取られた世界の成り立ち、そのイメージを捉える必要がある。他言語に比べても、英語の世界観と日本語の世界観の間には、乖離がある。本書では英語の世界観、英語ネイティブの思考方法について考え、その先で、英文法の原理を探り、動詞、名詞、前置詞などの根本的な役割について、とことん平易に説明する。

伊藤博文 近代日本を創った男
講談社学術文庫
初代総理大臣として内閣制度を創設し、みずから中心となって大日本帝国憲法を制定しながら、木戸孝允や岩倉具視らの間をたくみに世渡りして出世した「軽佻浮薄」な人物、あるいは、旧憲法によって民主化の道を狭め、韓国では民族運動を弾圧した権力者、といったイメージで語られてきた伊藤博文。日本近代政治史の第一人者である著者が、歴史学の最新成果をふまえて、伊藤の全生涯と「剛凌強直」たる真の姿を描き切る、決定版評伝。
初代総理大臣として内閣制度を創設し、みずから中心となって大日本帝国憲法を制定した伊藤博文の本格的評伝。
幕末維新、岩倉使節団、西南戦争、明治十四年の政変、条約改正、立憲政治の確立、日清・日露戦争、そして韓国統治・・・。伊藤博文の68年の生涯は、近代日本の草創期にそのまま重なっている。まさに「近代日本を創った男」であるにもかかわらず、本書が登場するまで、伊藤の本格的評伝はほとんど書かれることがなかった。そればかりか、木戸孝允や岩倉具視ら有力者の間をたくみに世渡りして出世した「軽佻浮薄」な人物、あるいは、旧憲法によって民主化の道を狭め、韓国では民族運動を弾圧した権力者・・・といったイメージで語られ続けたのである。
本書で、日本近代政治史の第一人者である著者は、書簡や日記等の一次史料を渉猟し、歴史学の最新成果をふまえて、伊藤の全生涯と、「剛凌強直」たる真の改革者の姿を描き切った。その後の伊藤博文のイメージを一変させた決定版である。
(2009年に講談社から刊行された同名書籍の文庫化)

日本仏教 思想のあゆみ
講談社学術文庫
聖徳太子、南都六宗、最澄・空海、鎌倉新仏教……。歴史的に仏教の展開の最終段階に位置し、高度な思想を展開した日本仏教。唯識や華厳の世界観、最澄や空海の即身成仏の思想、法然、親鸞、一遍らの念仏、道元の坐禅観、日蓮の唱題──。各宗派祖師の思想の概略をわかりやすく明らかにしながら、日本人のものの見方及び考え方の特質を描き出す一冊。(講談社学術文庫)
聖徳太子、南都六宗、最澄・空海、鎌倉新仏教……。歴史的に仏教の展開の最終段階に位置し、高度な思想を展開した日本仏教。唯識や華厳の世界観、最澄や空海の即身成仏の思想、法然、親鸞、一遍らの念仏、道元の坐禅観、日蓮の唱題──。各宗派祖師の思想の概略をわかりやすく明らかにしながら、日本人のものの見方及び考え方の特質を描き出す一冊。

侍従長の回想
講談社学術文庫
2014年における史学界最大の話題は『昭和天皇実録』の完成でした。天皇裕仁の一生と「昭和」という時代をいかに描き、評価するか……。この点において『実録』編纂者の苦心は並々ならぬものがあったと思われます。同時にこれを読む側も眼光紙背に徹する必要があります。そのためにもマッカーサーとの会見など『実録』の資料ともなった本書『侍従長の回想』はきわめて重要なものです。多くの読者の目に触れることを願います。
著者の藤田尚徳は海軍大将であり、サイパン陥落後の1944(昭和19)年8月から極東国際軍事裁判が開廷する1946(昭和21)年5月まで侍従長の任にありました。「聖断」に至るまでの天皇の懊悩、重臣たちの動き、玉音放送に至るまでなど、その回想は天皇の側近に侍していた人物でなければ知りえない秘話に満ちています。なかでもクライマックスは1945(昭和20)年9月27日、虎の門の米国大使館における昭和天皇とマッカーサーとの会見です。
2014年における近代史学界最大の話題は『昭和天皇実録』の完成でした。天皇裕仁の一生と「昭和」という時代をいかに描き、評価するか……。この点において『実録』編纂者の苦心は並々ならぬものがあったと思われます。同時にこれを読む側も眼光紙背に徹する必要があります。そのためにも『実録』の資料ともなった本書『侍従長の回想』はきわめて重要なものです。多くの読者の目に触れることを願います。

地名の研究
講談社学術文庫
日本は諸外国とくらべて地名が膨大であると説き、柳田は有名な「大きな地名」よりも、小字などの「小さな地名」に着目する。また、地名を新古の生活の必要によって命名する「利用地名」、自分の土地だと宣言するための「占有地名」、地名を分割して名付ける「分割地名」に分類。それぞれの特徴は何か。地名学の源流となった名著。(解説・中沢新一)(講談社学術文庫)
日本は諸外国とくらべて地名が膨大であると説き、柳田は有名な「大きな地名」よりも、小字などの「小さな地名」に着目する。また、地名を新古の生活の必要によって命名する「利用地名」、自分の土地だと宣言するための「占有地名」、地名を分割して名付ける「分割地名」に分類。それぞれの特徴は何か。地名学の源流となった名著。(解説・中沢新一)

差別感情の哲学
講談社学術文庫
差別とはいかなる人間的事態なのか? 他者に対する否定的感情(不快・嫌悪・軽蔑・恐怖)とその裏返しとしての自己に対する肯定的感情(誇り・自尊心・帰属意識・向上心)、そして「誠実性」の危うさの考察で解明される差別感情の本質。自分や帰属集団を誇り優越感に浸るわれらのうちに蠢く感情を抉り出し、「自己批判精神」と「繊細な精神」をもって戦い続けることを訴える、哲学者の挑戦。