講談社学術文庫作品一覧

鎌倉仏教
鎌倉仏教
著:田中 久夫
講談社学術文庫
仏僧と信徒のひたむきな求道と信心。中世の幕開きに興った仏教改革の潮流と根本思想 中世の幕開きに興った仏教改革の潮流。禅宗や浄土思想の影響で新しい宗派が誕生する一方、旧仏教にも変革の機運が生じ、日本史上、仏教が最も活気に満ちた瞬間が到来する。経済や社会が急激な変化を遂げる時代、人々は何を求め、何に祈ったのか。貴族のための伝統的仏教が個人の救済をめざす大衆仏教に変貌する過程を描く、日本仏教史理解の必読書。
純粋な自然の贈与
純粋な自然の贈与
著:中沢 新一
講談社学術文庫
贈与は結びつけるエロスを、貨幣は分離するロゴスを持つ。すべての富は、物質性をもたない「無」の領域から「有」の世界に贈り物としてやってくる。古式捕鯨の深層構造を探る「すばらしい日本捕鯨」、モースの思想的可能性を再発見する「新贈与論序説」などを収録。贈与の原理を、経済や表現行為の土台に据え直し、近代の思考法と別の世界を切り開く。 モースの贈与論、マルクスの剰余価値説、キルケゴールの愛の思想、レヴィ=ストロースの構造主義を超えて、価値増殖の本質を解き明かす未来の贈与価値論、ここにはじまる 贈与は結びつけるエロスを、貨幣は分離するロゴスを持つ。すべての富は、物質性をもたない「無」の領域から「有」の世界に贈り物としてやってくる。古式捕鯨の深層構造を探る「すばらしい日本捕鯨」、モースの思想的可能性を再発見する「新贈与論序説」などを収録。贈与の原理を、経済や表現行為の土台に据え直し、近代の思考法と別の世界を切り開く。 【目次より】 序曲 すばらしい日本捕鯨 日本思想の原郷 バスケットボール神学 ゴダールとマルクス バルトークにかえれ 新贈与論序説 ディケンズの亡霊 後奏曲 あとがき 学術文庫版へのあとがき 初出一覧
電子あり
成熟する江戸 日本の歴史17
成熟する江戸 日本の歴史17
著:吉田 伸之
講談社学術文庫
路地裏の細密画が語る「小さな」歴史 十八世紀、社会的成熟をとげた「江戸」。それは豪商などが君臨する上層から貧しい乞{こつ}食{じき}=勧進層や芸能者が身分的周縁を形作った最下層まで、様々な階層が溶け合う小宇宙たる大都市だった。 そのさまを現代に伝える絢爛絵巻の内実とは何か。また、人々の営みやネットワークとはどのようなものか。前近代の達成である成熟の諸相をミクロの視点から描き出す。
〈声〉の国民国家 浪花節が創る日本近代
〈声〉の国民国家 浪花節が創る日本近代
著:兵藤 裕己
講談社学術文庫
近代国家への歩みを始めた日本に国民国家の理念をもたらしたものは、上からの法制度や統治機構ではなく、大衆の側の浪花節芸人が語る物語と、彼らのメロディアスな<声>だった。前時代の封建的秩序を破壊し、天皇制の精神的支柱となった義理人情のモラルをつまびらかに分析、声を媒介に政治と芸能とを架橋して日本近代の成立を探る、斬新な試み。(講談社学術文庫) 政治と芸能とを架橋する斬新な試み 日本近代の理念を形成した浪花節芸人の<声> 近代国家への歩みを始めた日本に国民国家の理念をもたらしたものは、上からの法制度や統治機構ではなく、大衆の側の浪花節芸人が語る物語と、彼らのメロディアスな<声>だった。前時代の封建的秩序を破壊し、天皇制の精神的支柱となった義理人情のモラルをつまびらかに分析、声を媒介に政治と芸能とを架橋して日本近代の成立を探る、斬新な試み。 明治20年代の国民国家の成立期から、昭和20年の敗戦にいたる60年間は、浪花節流行の60年間だった。日本近代の国民大衆について考えるには、浪花節という声の文学(オーラル・リテラチュア)の問題をさけてとおれない。いわゆる浪花節的な感性とモラルは、ポスト近代の21世紀にあっても、依然として現時点的(アクチュアル)な「国民」の問題でありつづけるのである。――<本書第8章より>
電子あり
最後のロシア皇帝ニコライ二世の日記
最後のロシア皇帝ニコライ二世の日記
著:保田 孝一
講談社学術文庫
帝政ロシア最後の皇帝となったニコライ二世。その生涯は歴史の流れの大転換を一身に体現するものであった。訪日の際の大津事件、日露戦争、第一次世界大戦への突入、革命の進行に伴う退位と抑留等、歴史的事件の渦中で彼は何を見、どう動いたのか。処刑の直前まで書き続けられた日記から、日常の政務、革命への態度、人間関係、日本観などを読み解く。(講談社学術文庫) 帝国の終焉に立ち会ってしまった男の生涯。1882年14歳の時から1918年銃殺される三日前まで書かれた日記。大津事件、日露戦争、二月革命などの大事件をどう見ていたのか。激動の時代が映される。
電子あり
建礼門院右京大夫集 全訳注
建礼門院右京大夫集 全訳注
その他:糸賀 きみ江
講談社学術文庫
壇ノ浦に消えた恋人・資盛――『平家物語』の叙事詩的世界を抒情詩で綴りあげた可憐な名品 建礼門院徳子の女房として平家一門の栄華と崩壊を目のあたりにした女性・右京大夫の追想の記。歌と管絃と恋に生きた宮仕えの春秋、最愛の人資盛を壇ノ浦に喪ったあとの悲嘆の日々……明暗の折々に詠まれた歌360余首と詞書とが濃密に結び合う。『平家物語』の叙事詩的世界を抒情詩で描き出した日記的家集の名品を情趣豊かな訳と注解で味わう。 『平家物語』が男たちの視点で平家の興亡を描いているのに対して、『右京大夫集』は女性が平家一門の栄華と崩壊を目のあたりにした追憶の手記であり、叙事詩的世界を抒情詩によって表現した作品と言えようか。従って『平家物語』が語る人間像と『右京大夫集』が伝える平家の人々との間にはかなりの距離があることに気付かされる。つまり、朝夕見馴れた一門の人々を内側から悲しみをこめて回想し、『平家物語』からはうかがわれない普段の素顔を見せているのである。――<「解題」より>
シチリア・マフィアの世界
シチリア・マフィアの世界
著:藤澤 房俊
講談社学術文庫
「シチリア。道化芝居と悲劇が絶え間なく繰り返されるその人間の大スペクタクルをよりよく理解するには、マフィアをわかる必要がある」 シチリアの過酷な風土と圧政とが育んだマフィア。大土地所有制の下で、18世紀に台頭した農村ブルジョワ層は、暴力と脅迫でイタリア近・現代政治をも支配した。謎の組織の誕生と発展の歴史を辿る。(講談社学術文庫) 名誉、沈黙、暴力、犯罪。マフィアとは何か。シチリアの過酷な風土と圧政が育んだマフィア。18世紀に台頭する農村ブルジョワ層は、暴力と脅迫でイタリア近・現代政治を支配した。謎の組織の実像を解明する。
電子あり
天下泰平 日本の歴史16
天下泰平 日本の歴史16
著:横田 冬彦
講談社学術文庫
長い戦乱の世から武士の平和の世へ文治の始まりと大衆文化の広がり 大坂の陣、島原の乱を経て、<徳川の平和>が実現した。中世末期から続いた戦乱は終わりを告げた。人々が冀(こいねが)ってきた泰平の世はどのようにして確立したのだろうか。武力の凍結、諸法度の制定、「訴」の制度の樹立。新しく生み出された徳川家と諸大名、また公家の関係、町や村の仕組みなどを解析し、情報と知が大衆化した<書物の時代>出現の過程を追う。
学術都市アレクサンドリア
学術都市アレクサンドリア
著:野町 啓
講談社学術文庫
プトレマイオスの庇護の下、ギリシアや東方の知を集めた思想・宗教・民族の坩堝。芸術・文学・科学の殿堂ムーセイオンや世界中の書物を集めた大図書館、さらに巨大な灯台がそびえ立つ地中海の中心都市。アレクサンドロス大王を継ぐプトレマイオス朝の「愛知」の志向はギリシア世界から東方から一流の知性を集め、学術の一大センターを築き上げた。古代における学問の隆盛を担い、やがて消えていった謎のヘレニズム都市の姿に迫る。 プトレマイオスの庇護の下、ギリシアや東方の知を集めた思想・宗教・民族の坩堝 芸術・文学・科学の殿堂ムーセイオンや世界中の書物を集めた大図書館、さらに巨大な灯台がそびえ立つ地中海の中心都市。アレクサンドロス大王を継ぐプトレマイオス朝の「愛知」の志向はギリシア世界から東方から一流の知性を集め、学術の一大センターを築き上げた。古代における学問の隆盛を担い、やがて消えていった謎のヘレニズム都市の姿に迫る。
電子あり
進化の設計
進化の設計
著:佐貫 亦男,絵:木村 しゅうじ
講談社学術文庫
構造と機能が明らかにする、生存と滅亡の必然性。 神が動物を設計するならどう図面を引くか? 地球の誕生から四六億年、動物の登場から六億年。じつに多様な「形」をもって地球上に発生した動物たちは、厳しい環境変化の中で淘汰され、またあるものは適応・進化し、今なお地球上に生き続ける。彼らの生存と滅亡を分けたものとは何か。九十余点のイラストをまじえ、航空工学の権威が動物の構造と機能を独自の視点から解明する異色の「進化論」。
北欧神話と伝説
北欧神話と伝説
著:ヴィルヘルム・グレンベック,訳:山室 静
講談社学術文庫
荒涼峻厳な世界で育まれた北の民の精神を語るエッダ、サガ、神話、伝説を読む。ヨーロッパ北部周縁の民=ゲルマン人は、キリスト教とは異なる独自の北方的世界観を有していた。古の神々と英雄を謳い伝える『エッダ』と『サガ』。善悪二元の対立抗争、馬への強い信仰、バイキングに受け継がれた復讐の義務……。荒涼にして寒貧な世界で育まれた峻厳偉大なる精神を描く伝説の魅力に迫る。北欧人の奥深い神話と信仰世界への入門書。
電子あり
論語 増補版
論語 増補版
その他:加地 伸行
講談社学術文庫
第一人者渾身の訳注、待望の新版! 漢字一字から検索できる新索引付き! 人間とは何か。溟濛の時代にあって、人はいかに生くべきか。現代と交響する至高の古典に、われわれは親しみ、学んできた。だが、さらに多くの宝石のように美しいことばが、人知れず眠っている――。儒教学の第一人者が『論語』の本質を読み切り、独自の解釈、達意の現代語訳を施す。漢字一字から検索できる「手がかり索引」等を増補した決定新版!
織豊政権と江戸幕府 日本の歴史15
織豊政権と江戸幕府 日本の歴史15
著:池上 裕子
講談社学術文庫
信長、秀吉、家康……群雄が覇を競い、戦乱に明け暮れた半世紀 信長の黄金の安土築城、商業・貿易促進。秀吉の検地と刀狩と朝鮮出兵。家康の身分固定支配。三代にわたる天下統一・覇権確立の過程とは? その結果、社会構造はどう変化したのか? 戦国時代より続いた乱世の中で、民衆はどのように生き抜いたのか? 一五六八年の信長の上洛から、一六一五年の大坂夏の陣での豊臣氏滅亡までの半世紀を描きだす。
古典植物辞典
古典植物辞典
著:松田 修
講談社学術文庫
日本の主要な古典に現れる上代植物のすべて 無類の花好き、日本人は、古より花に心を寄せながら暮らしを共にしてきた。『古事記』『風土記』『万葉集』などにどんな植物が登場するかを精査し、検証を加える
ナポレオン フーシェ タレーラン 情念戦争1789-1815
ナポレオン フーシェ タレーラン 情念戦争1789-1815
著:鹿島 茂
講談社学術文庫
1789年の大革命から1815年のワーテルローの戦いまで、ナポレオンの熱狂情念が巻き起こした相次ぐ戦争による混乱と怒濤の30年。この偉大なる皇帝の傍らに、警察大臣フーシェ=陰謀情念と外務大臣タレーラン=移り気情念なかりせば、ヨーロッパは異なる姿になったにちがいない。情念史観の立場から、交錯する三つ巴の心理戦と歴史事実の関連を丹念に読解し、活写する。(講談社学術文庫) 情念史観で読み直す革命とナポレオンの時代。熱狂=ナポレオン、陰謀=フーシェ、移り気=タレーラン。3人の男の情念が、絡み合い、ぶつかり合い、革命からワーテルローの戦いまでの激動期を生み出した。
電子あり
周縁から見た中世日本  日本の歴史14
周縁から見た中世日本  日本の歴史14
著:大石 直正,著:高良 倉吉,著:高橋 公明
講談社学術文庫
列島「周縁」に湧き上がる活力、繁栄、交流 12~15世紀、奥州十三湊、琉球王国、南西の海域世界では、交易を基盤とした自立的な権力が生まれていた。京都中心の国家の枠組を越えた、もう一つの中世史。
一揆と戦国大名  日本の歴史13
一揆と戦国大名  日本の歴史13
著:久留島 典子
講談社学術文庫
日本史の中で最も激しく社会が動いた時代。 室町幕府の権威の失墜、荘園公領制の変質と、中世社会の中央集権的な性格が崩れ始める。民衆が自立性を強め守護や国人が戦国大名へと成長する時代の動きを分析。
イブン・ジュバイルの旅行記
イブン・ジュバイルの旅行記
著:イブン・ジュバイル,その他:藤本 勝次,その他:池田 修
講談社学術文庫
 本書は通称「イブン・ジュバイルの旅行記」、原題「旅路での出来事に関する情報覚え書き」の全訳です。才智あふれるジュバイルが美文で綴ったこの「旅行記」は、12~13世紀にあっては優れたメッカ巡礼案内として広く読まれ、また後にはイブン・バットゥータ(14世紀)などの旅行記のお手本とされ、多くの旅行記編者が都市の記述を「借用」してきました。そして現在、中世イスラム社会の事情を知る上では欠かせない、貴重な文献となっています。  敬虔なイスラム教徒で、ムワッヒド朝のグラナダ太守に書記として仕えていたジュバイルは、太守が戯れに「酒盃七杯飲むべし」と下した厳命に抗えず、禁を犯してしまいます。それを悔いた太守が盃七杯に金貨を満たして与えると、ジュバイルは罪を償うためにその金貨を元手にメッカ巡礼に旅立ちました。キリスト教徒の巡礼者と同船してアレクサンドリアへ。メッカでは大モスクやカアバ神殿の威容に触れ、メディナからバグダッドへ。そして「東方の真珠」ダマスクスでウマイヤ大モスクに圧倒され、十字軍支配下にあったエルサレムでは、かのサラーフ・アッディーン(サラディン)の勝利の目撃談に触れる……。ベドウィンの襲撃、船の難破に遭うなど、艱難辛苦の旅を詳述した「旅行記」ですが、十字軍時代の地中海東方事情を知るための基本図書でもあります。 〈原本:『旅行記』関西大学出版部、1992年〉 【目次より】 まえがき(監訳者による) 1 グラナダ~エジプト 2 メッカ巡礼 3 聖都メッカ 4 メディナ~バグダード 5 マウシル~アレッポ 6 ダマスクス 7 アッカ 8 シチリア~アンダルス
電子あり
ケガレ
ケガレ
著:波平 恵美子
講談社学術文庫
民間信仰において、ケガレを祓う儀礼は頻繁に多様な形で行われていた。人間の不幸は、ケガレ=不浄に原因があると考えられ、生活の隅々にまでその指標が浸透していたのである。死=黒不浄、出産・月経=赤不浄、罪や病、境界・峠という空間等、様々な民俗事例にあらわれたケガレ観念の諸相を丹念に追い、信仰行為の背後にあるものを明らかにする。(講談社学術文庫) 本人の民間信仰に深く浸透していた「不浄」の観念とは? 民間信仰において、ケガレを祓う儀礼は頻繁に多様な形で行われていた。人間の不幸は、ケガレ=不浄に原因があると考えられ、生活の隅々にまでその指標が浸透していたのである。死=黒不浄、出産・月経=赤不浄、罪や病、境界・峠という空間等、様々な民俗事例にあらわれたケガレ観念の諸相を丹念に追い、信仰行為の背後にあるものを明らかにする。 文化人類学では、人間の文化は自分たちを取り巻く世界を構造化するものであるとする。その構造は、その文化を担う人々によって明示されている。それとは気づかぬまま、人々はその構造に従って認識し行動する。優劣を付けたり、差異化さらには差別したり、グループ分けしたり、強い関係、弱い関係を結んだり、関係を結ぶことを拒否したりする。少くとも、1980年代までの日本文化では、世界を構造化する大黒柱にケガレという指標を用いていたといえる。ケガレは差異化のもっともわかりやすい、そして、時には感情に訴え、身体反応までも引き起す強い指標であった。――<「学術文庫版まえがき」より> ※本書の原本は、1985年、東京堂出版より刊行されました。
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タテ社会の力学
タテ社会の力学
著:中根 千枝
講談社学術文庫
日本では法よりも社会的規制によって人々の行動は律される。『タテ社会の人間関係』で著者が提示した〈タテ社会〉というモデルを動かすメカニズムを、全人格的参加、無差別平等主義、儀礼的序列、とりまきの構造など、興味深い事例で解明、日本社会のネットワークを鮮やかに描き出す。外的変化に柔軟に対応する軟体動物的構造の再認識に国際化の扉は開く。(講談社学術文庫) 全人格的参加・無差別平等主義・儀礼的序列・とりまきの構造―― 日本の社会構造にはたらくダイナミズムとは何か 日本では法よりも社会的規制によって人々の行動は律される。『タテ社会の人間関係』で著者が提示した〈タテ社会〉というモデルを動かすメカニズムを、全人格的参加、無差別平等主義、儀礼的序列、とりまきの構造など、興味深い事例で解明、日本社会のネットワークを鮮やかに描き出す。外的変化に柔軟に対応する軟体動物的構造の再認識に国際化の扉は開く。 私たちの社会生活に規制が働き、全体の治安が維持されているのは、個々人が小集団的規制に常に従い、全体が力学的にバランスをとろうとする動きをもっているからといえよう。こうした社会に育まれた私たち日本人は、規制というものを肌で感じながら行動しているといえよう。日本社会においては、社会的規制が法規制の機能まで包含していると解釈できる。こうした世界になれていると、法のきびしさを忘れがちである。否、知らないで過すことも可能である。――<本書より>
電子あり