講談社学術文庫作品一覧

明治鉄道物語
講談社学術文庫
近代は鉄道でやってきた!
交通・流通・産業を発展させた文明開化の象徴。その発展と普及をめぐる人間模様とは?
文明開化が謳われる明治初年、時代を象徴する最先端技術として鉄道は日本に登場した。交通や流通、産業を飛躍的に発展させた近代化の牽引車ともいえる舶来の技術に、人々はどう対応し、どのような苦難を乗り越えてわがものとして、そこにはどんな人間模様が描かれたのか――。鉄道史研究の泰斗が鉄道の受容と発展を通して活写する、近代日本の横顔。
※本書の原本は1983年、筑摩書房から刊行されました。

人間的自由の条件 ヘーゲルとポストモダン思想
講談社学術文庫
近代国家と資本主義の正当性とは?
「人間的自由」の本質に立ち戻り近現代思想を根本から問い返す!
「国家」と「資本主義」の矛盾を克服し、その獰猛な格差原理を制御する新しい時代思想はいかにして可能か。ポストモダン思想をはじめとする20世紀社会思想の対抗原理の枠組みが失効したいま、資本主義的自由国家の「正当性」をどう哲学的に基礎づけるか。カント、ヘーゲル、マルクスら近代哲学に立ち戻り現代社会の行き先を再検証する画期的論考。
ヘーゲルは、「人間的自由」の本質は必ず近代の「自由国家」を必然化し、またそれは「放埒な欲求の体系」(競争的資本主義)へ転化すると考えた。そして近代国家の「人倫」の原理だけが、この矛盾を内的に制御し克服しうると主張した。……われわれはヘーゲルが近代国家論を完成したと考えたこの場面に立ち戻り、ヘーゲルの構想を、もういちど人間的自由の本質からはじめて“解体構築”しなおす必要があるのだ。――<本書より>

クビライの挑戦 モンゴルによる世界史の大転回
講談社学術文庫
13世紀初頭に忽然と現れた遊牧国家モンゴルは、ユーラシアの東西をたちまち統合し、世界史に画期をもたらした。チンギス・カンの孫、クビライが構想した世界国家と経済のシステムとは。「元寇」や「タタルのくびき」など「野蛮な破壊者」というイメージを覆し、西欧中心・中華中心の歴史観を超える新たな世界史像を描く。サントリー学芸賞受賞作。(講談社学術文庫)
「モンゴル時代」こそが世界史の転機だった。チンギス・カンの孫クビライは、ユーラシアの東西を海陸からゆるやかに統合した。人類史上に類のない帝国「大モンゴル」の興亡を描き、新たな世界史像を提示する。

中国春画論序説
講談社学術文庫
中国は「開放的」、日本は「褻視的」である
風水・タオが教える「気」の満ちた空間での情交を夢みた中国人の身体観・宇宙観・肉麻観を読み解く
身体よりも象徴に、絵よりも文字に、性器よりも行為に、肉が麻(むずむず)する中国的感性は、独特の春画世界を創出した。屋外風の場所で、無表情(ニル・アドミラリ)かつ性差不明の男女が交合するのだ。老荘思想、房中術、煉丹術、園林術、纏足愛好、怪異趣味などが織りなす中国春画の不思議な文法(グラマー)とは? 日本、インド、西欧の春画との縦横な比較で、中国的快楽の源泉を探る。
中国美術でいうところの絵画、すなわち山水画、花鳥画、人物画などに、それぞれのグラマーがあるように、「低俗」な春画にもまた、しかるべきグラマーがあるはずだ。グラマーとは、たとえば「中国の山水画には絶えて地平線が引かれたことはない」といった素朴な基本原理(グラマー)のことである。そのグラマーのキーワードは、庭園と肉体にあると、私はかねてから考え、すこしずつ書いてもいた。それらの考えを新たに再構成し、書きおろしたのが本書である。――<「あとがき」より抜粋>
※本書の原本『肉麻図譜 中国春画論序説』は2001年、作品社から刊行されました。

日本の鬼 日本文化探求の視角
講談社学術文庫
オニの風土記
恐るべき怪異、虚空の雷神、滑稽な邪鬼……「鬼」はどのように変幻し、われわれの生活感情の中に棲み続けてきたか。説話・伝承・芸能、絵画・造形・建築資料を縦横無尽に読み解く日本人の心性史。
怪異として、神として、あるいは笑いの対象として日本人の生活感情に棲み続ける鬼。その形姿はどのように成立したか。「鬼的」なるものへの恐怖と信仰は、説話や伝承、芸能、絵画・造形、精神文化の上にどう「変幻」し、形をとどめたか。鬼の本質を自然の破壊的エネルギーに捉え、風神雷神から「かきつばた」まで、鬼を通して日本の風土を読み解く。
※本書の原本は、1975年に桜楓社より刊行されました。

満州事変
講談社学術文庫
1931年9月18日、奉天郊外の柳条湖で南満州鉄道の線路が爆破された。この事件を契機に、大陸での勢力拡大を目論む関東軍は満州(現・中国東北部)全土を占領する。膨大な史料の精緻な読みをとおして、第一次山東出兵、張作霖爆殺事件から、関東軍の暴走、満州国建国、国際連盟脱退まで、当時の状況を詳細に再現、近現代史の問題点を抉剔する。(講談社学術文庫)
十五年戦争の契機となった紛争の実像とは? 現在の日中関係にも影を落とす満州事変。山東出兵、張作霖爆殺、満州国建国、国際連盟脱退――。膨大な史料の精緻な読みによって、事件の全貌を鮮やかに再現する。

万葉集鑑賞事典
講談社学術文庫
『万葉集』をどう読むか
代表歌165首の評釈と152項目の基礎知識。従来の読み方を見直し、真の魅力にふれるための画期的入門書!
「籠もよ み籠持ち ふくしもよ みぶくし持ち……」巻1巻頭に雄略天皇御製歌が置かれている意味とは。柿本人麻呂歌集歌はどんな位置を与えられているか。4516首の歌を題詞・左注とともに漢字で表記し、20巻のかたちに編まれた『万葉集』。代表歌165首を評釈し、知っておきたい基礎知識を平易・簡潔に解説。『万葉集』を読み、学ぶための最適の入門書。
『万葉集』は、みかけのうえでは十分整理されていないところがあります。作者名を記す巻と記さない巻とが混在し、訓主体書記を主としつつも仮名書記の巻もあります。また、最後の4巻は「歌日誌」と呼ばれたりすることもあるように家持を中心に年次を逐った構成となっています。不均質といってよいものです。……ただ、いかに不均質であっても、そうしたかたちで成り立っているのが『万葉集』なのです。その20巻でつくる『万葉集』として見ることがまず必要ではないでしょうか。――<「はじめに」より>

相撲の歴史
講談社学術文庫
大相撲=相撲ではない!
神話に登場する相撲から外国人力士問題まで、1300年超の大きな歴史の流れを描く
「国技」を問い直すための必読書
記紀神話の力くらべ、御前の女相撲、技芸による年占(としうら)が国家的行事=相撲節(すまいのせち)へと統合された律令時代。時代を下るにつれ、武芸大会へと変貌し、相撲人(すまいびと)は固定化する。寺社祭礼への奉納、武士の娯楽を経て、営利勧進相撲へと発展する江戸期。「国技」として生まれ変わる明治以降。1300年超の相撲史を総合的に読み直し、多様・国際化する相撲の現在を問う。
「大相撲」の世界が形成されてゆく過程についても、(略)きちんとした歴史的記述が与えられねばならない。(略)「大相撲」の世界が確立されてからたかだか200有余年であるのに対し、相撲の歴史は、控え目に見積って『日本書紀』に載せる健児(こんでい)相撲の記事から数えても1300年以上になり、「大相撲以前」の「相撲の歴史」は、「大相撲」の世界が成立する前史として片づけてしまうには、あまりに長く、かつまた起伏に富んだ歴史なのである。――<「はじめに」より>
※本書の原本は、1994年に山川出版社より刊行されました。

〈私〉の存在の比類なさ
講談社学術文庫
<私>とは何か。「他者の問題」とは何か。
哲学の根本問題を考え続ける著者会心の論考!
解説・茂木健一郎
永井均は今と同じあり方で存在しながら、彼が私でなくなることは想像できる。このとき、彼には何の異変も起きていない。しかしもはや彼は私ではない。この私を<私>と表記しよう。<私>から展開される永井哲学は、他者や倫理など根源的な問題を刺戟し続けてやまない。著者自身、「本書こそが独在論の入門書として最もふさわしい」と断ずる必読の哲学書。
ここで何よりも重要なことは、エリザベス2世や永井均やアインシュタインには、並び立つ同種の者(仲間)が、すなわち隣人が存在するが、<私>にはそれが存在しない、ということである。私は、ウィトゲンシュタインがある講義ノートで用いた表現を借りて、<私>とは「最も重要な意味において隣人を持たない」ものである、と規定したい。そして私は、他者の問題とは、最も根本的には、この本質上隣人を持たないものの(本質上隣人を持たないというそのことを含めた)隣人を捜すことである、と考えているのである。――<本書より>
※本書の原本は、1998年、勁草書房より刊行されました。

春画 片手で読む江戸の絵
講談社学術文庫
武士のお守り? 性生活の手引き? いいえ、ポルノグラフィーです。独身男(セリバ)たちが溢れた江戸は、遊郭が栄え、艶本(えほん)が数多板行され、男色も当たり前だった。枕絵、笑絵、危絵、美人画……。浮世絵の性化(エロテイサイズ)された画像を対象に、縦横無尽に議論する。春画を、「美術」ではなく、江戸の性の文脈で捉え直し、斬新な解釈を提示する。(解説・上野千鶴子)
美ではなく、欲望を、現実ではなく、幻想を描いたのが春画である
江戸人の思考と江戸時代の性(セクシュアリティ)を手掛かりに、春画を再解釈する
武士のお守り? 性生活の手引き? いいえ、ポルノグラフィーです。独身男(セリバ)たちが溢れた江戸は、遊郭が栄え、艶本(えほん)が数多板行され、男色も当たり前だった。枕絵、笑絵、危絵、美人画……。浮世絵の性化(エロテイサイズ)された画像を対象に、縦横無尽に議論する。春画を、「美術」ではなく、江戸の性の文脈で捉え直し、斬新な解釈を提示する。(解説・上野千鶴子)

日本はどこへ行くのか 日本の歴史25
講談社学術文庫
文庫版日本の歴史 いよいよ完結!
世界・周縁から見定める近代日本の姿とゆくえ
近代日本の虚構と欺瞞を、周縁部から問い直す。単一民族史観による他者排斥・抑圧・侵略をくりかえし、資本主義的発展の不均衡の中で、同一性を求めて呼び寄せた永遠なる「日本」。アイヌや沖縄、朝鮮半島の人々を巻き込んだ「帝国」日本の拡張。グローバリズムの中の象徴天皇制。境界を超えた視点から「日本」のゆくえを論じる、シリーズ最終巻。

沈黙するソシュール
講談社学術文庫
ジュネーヴ大学就任講演、形態論、「書物」の草稿、ホイットニー追悼などソシュールの重要なテクストを訳出し、それに対する繊細かつ本質的なノートを付す。その往還自体がひとつのテクストとなって、本書でわれわれは、いつしかソシュールの思想の生の姿に立ち会うこととなる。あえて俗流解釈を排し、言語=ラングそのものを問い続けた記念碑的力作。(講談社学術文庫)
日本のソシュール研究に画期をなした快著。現代思想の扉を開いた言語学者として評価されるソシュールだが、その思想の本質とは何か。通念となった解釈をカッコに入れ、本来の魅力をあぶり出す野心作。

大阪商人
講談社学術文庫
密貿易を組織した毛剃九右衛門〔けづり八右衛門〕、独占的地位で巨利をあげた糸割符商人。江戸城出入りの特権商人尼崎屋は新田開発をし、寒天輸出を一手に担う。廻船により各地物産は、荷受問屋を通して、流通する。秘伝南蛮吹の精銅技術をもとに鉱山開発までした住友家。「天下の町人」となった呉服商。江戸の経済を牛耳っていた商都大阪の活況を描く。(講談社学術文庫)
天下の台所を支えた商人の類型と実相を描く。貿易商人・天竺徳衛門、呉服商・下村彦右衛門から江戸の実業家・住友家まで。大阪を舞台に活躍した代表的商人とその同業者、社会・風俗・経済の実相を活写する。

戦争と資本主義
講談社学術文庫
戦争なくして資本主義はなかった。軍需による財政拡大は資本形成を促し、常備軍の増強は農業、流通、貿易に影響を与え、武器の近代化は製鉄や機械製作、造船、繊維産業の成長をもたらす。そして軍隊の「指導と行動の分業化」が大量生産した画一的人間。豊富な資料と文献で論究する、近代軍隊の発生から18世紀末にかけて戦争が育んだ資本主義経済の実像。
軍隊に内在する拡大傾向が経済的作用を生む
戦争がなければ資本主義は存在しなかった
戦争なくして資本主義はなかった。軍需による財政拡大は資本形成を促し、常備軍の増強は農業、流通、貿易に影響を与え、武器の近代化は製鉄や機械製作、造船、繊維産業の成長をもたらす。そして軍隊の「指導と行動の分業化」が大量生産した画一的人間。豊富な資料と文献で論究する、近代軍隊の発生から18世紀末にかけて戦争が育んだ資本主義経済の実像。
戦争は資本主義の組織をたんに破壊し、資本主義の発展をたんに阻んだばかりではない。それと同様に戦争は資本主義の発展を促進した。いやそればかりか――戦争はその発展をはじめて可能にした。それというのも、すべての資本主義が結びついているもっとも重要な条件が、戦争によってはじめて充足されねばならなかったからである。――<本書「序文」より>
※本書の原本は、1996年に論創社より刊行されました。

梁塵秘抄口伝集 全訳注
講談社学術文庫
平安末期に大流行した「今様」を集大成し、歌詞集十巻・口伝集十巻、現存すれば五千余首を数え『万葉集』にも匹敵したとされる大歌謡集「梁塵秘抄」。このうち、後白河院が生涯を通しての今様習練、今様の歴史、傀儡女たちとの交流、編纂の意図等を綴った『梁塵秘抄口伝集』こそが主流であった。全訳、懇切な注釈に加え、今様の基礎知識も詳しく解説。
「亡からむあとに人見よ」後白河院畢生の今様語り
平安末期に流行した歌謡の由来と正統の伝え、今様に懸けた人生
平安末期に大流行した「今様」を集大成し、歌詞集十巻・口伝集十巻、現存すれば五千余首を数え『万葉集』にも匹敵したとされる大歌謡集「梁塵秘抄」。このうち、後白河院が生涯を通しての今様習練、今様の歴史、傀儡女たちとの交流、編纂の意図等を綴った『梁塵秘抄口伝集』こそが主流であった。全訳、懇切な注釈に加え、今様の基礎知識も詳しく解説。
「声わざの悲しきことは、我が身崩(かく)れぬるのち、とどまることの無きなり。その故に、亡からむあとに人見よとて、いまだ世に無き今様の口伝を作りおくところなり」今様をきわめたがゆえに気づかざるを得なかった歌謡の本質は、「声わざ」にこそあった。歌えば消えてゆくはかないところに命を紡いでいるという、口承文芸の命のありどころに、院はあらためて思い至っている。ここに満ち満ちているのは、後白河院個人の、「愛執」とも呼ぶべき今様への真摯な想いである。――<本書より>

戦後と高度成長の終焉 日本の歴史24
講談社学術文庫
民主主義国家への再出発
経済大国へ、そしてバブルの崩壊
政治は日本をどう変えたのか
戦後とはどのような時代だったのだろうか。敗戦、占領政治、そして新憲法が制定され、日本は平和と民主主義を旗印に復興への道を歩み始める。東西冷戦、朝鮮戦争、ベルリンの壁崩壊と激しく変わる国際社会。講和、日米安保、55年体制の自社両党の攻防とその終焉、高度経済成長とバブルの崩壊。政党政治を軸に内政・外交に揺れた戦後の日本を追う。

西洋中世奇譚集成 聖パトリックの煉獄
講談社学術文庫
12世紀、ヨーロッパを席巻した冥界巡り譚「聖パトリキウスの煉獄」「トゥヌクダルスの幻視」を収録。2人の騎士は臨死体験を通して、異界を訪問する。無数の悪霊の襲来から始まり、灼熱、悪臭、寒冷、虫、蛇、猛獣が跋扈する煉獄で、執拗な拷問と懲罰を受けた後、甘美にして至福の天国を見学し、現世へと帰還する。中世人の死生観を熟読玩味する。
腹を食い破る蛇、悪霊たちの打擲、四肢を断ち切る処刑人、灼熱と悪臭……
想像を絶する責め苦と試練が待ち受ける西欧版地獄とは?
12世紀、ヨーロッパを席巻した冥界巡り譚「聖パトリキウスの煉獄」「トゥヌクダルスの幻視」を収録。2人の騎士は臨死体験を通して、異界を訪問する。無数の悪霊の襲来から始まり、灼熱、悪臭、寒冷、虫、蛇、猛獣が跋扈する煉獄で、執拗な拷問と懲罰を受けた後、甘美にして至福の天国を見学し、現世へと帰還する。中世人の死生観を熟読玩味する。
女子修道院長たる、尊敬すべきギゼラ殿へ、(略)修道士マルクスより。(略)自己の愚鈍を貴女に露呈しても恥と思わないことに致します。と申しますのも、≪聞き従うことは生贄に勝る≫からで、(略)賢き貴女が喜ばれるのは、アイルランド人トゥヌクダルスなる者の身に起きた不可思議を、いかに吾等の筆が無学であっても、野卑な言葉(俗語)からラテン語に翻訳し、入念な貴女のもとで転写されるべくお送りすることです。――<「トゥヌクダルスの幻視 序」より抜粋>

博覧会の政治学 まなざしの近代
講談社学術文庫
18世紀末にフランスに誕生した資本主義の祭典=展示会は、19~20世紀、各国の万国博覧会へと発展する。国家は「帝国」と「商品」をディスプレイし、博物学的まなざしは、日常生活領域へと浸透すると同時に、大衆の欲望=娯楽・見世物性を満足させる。博覧会という場が孕む微視的な権力の作用を明らかにし、スペクタクルの社会理論を提示する。
帝国主義のプロパガンダ装置
消費社会の広告装置
見世物としての娯楽装置
博覧会は大衆の欲望や感覚をどのように動員し、再編したのか?
18世紀末にフランスに誕生した資本主義の祭典=展示会は、19~20世紀、各国の万国博覧会へと発展する。国家は「帝国」と「商品」をディスプレイし、博物学的まなざしは、日常生活領域へと浸透すると同時に、大衆の欲望=娯楽・見世物性を満足させる。博覧会という場が孕む微視的な権力の作用を明らかにし、スペクタクルの社会理論を提示する。
(近代的な)まなざしの場は、(略)博覧会だけでなく、動物園や植物園、博物館や美術館、各種の展覧会や見本市、百貨店やショッピングモール、さらには無数の広告としていまもわれわれの日常に溢れている。(略)いまや必要なのは、万国博であれ、オリンピックであれ、(略)19世紀以降、現在までの文化変容を貫いてきたスペクタクル的な権力の展開を、この権力が作動する場を生き、ときにはこれを変形させてもいった人々との弁証法的な関係のなかで、より緻密に読み取っていくことである。――<「終章 博覧会と文化の政治学」より抜粋>
※本書の原本は、1992年中央公論社より刊行されました。

仏典のことば さとりへの十二講
講談社学術文庫
人はなぜ迷い、悩むのか。苦しみは自分の感覚器官が生み出す欲望に執着することで起こる。万物が流転する世間では、すべてが互いにつながりをもち、支え、対立し、そして助けあって存在している。そこに「私のもの」など何もない――。仏教の基本教理を表す12のことばを通して、無限の広がりを持つ釈尊の教えを平易に説く、現代人必読の仏教入門。(講談社学術文庫)
諸行無常、衆縁和合、悉有仏性、南無帰依仏――衆生を救済する仏たちの教え
万物が流転する世間をひたすらゆだねて生きる
人はなぜ迷い、悩むのか。苦しみは自分の感覚器官が生み出す欲望に執着することで起こる。万物が流転する世間では、すべてが互いにつながりをもち、支え、対立し、そして助けあって存在している。そこに「私のもの」など何もない――。仏教の基本教理を表す12のことばを通して、無限の広がりを持つ釈尊の教えを平易に説く、現代人必読の仏教入門。

道徳教育論
講談社学術文庫
宗教に依拠せず、自律した個人を確立する道徳教育とは――。『自殺論』『社会分業論』で実証的社会学を創設したデュルケムは、「規律の精神」と「社会集団への愛着」こそが道徳性の主要な要素であると説く。学級と教師の役割、体罰の禁止、科学教育の必要性など、現在の「教育問題」になお力強い方向性を与える、20世紀初頭のソルボンヌでの講義録。
「規律」と「自律」を子どもにどう教えるか
科学としての社会学を確立した著者が道徳教育の理論と実践を論じた古典
宗教に依拠せず、自律した個人を確立する道徳教育とは――。『自殺論』『社会分業論』で実証的社会学を創設したデュルケムは、「規律の精神」と「社会集団への愛着」こそが道徳性の主要な要素であると説く。学級と教師の役割、体罰の禁止、科学教育の必要性など、現在の「教育問題」になお力強い方向性を与える、20世紀初頭のソルボンヌでの講義録。
※本書は、1964年に明治図書出版より刊行された『道徳教育論』1、2を、文庫化にあたり1冊にまとめたものです。