講談社学術文庫作品一覧

続・勘の研究
続・勘の研究
著:黒田 亮,解説:大塚 鐙
講談社学術文庫
古来東洋においては、たとえば禅の悟りや剣法の極意、芸能における名人芸などにみられる、ある普遍的なものを「いわく言いがたし」とか「名状すべからず」とか称しつつ伝えてきた。本書において著者は、この普遍的な“何か”を「勘」という概念によって捉え、その学問的体系づけを試みている。本書は「勘」という前人未踏の研究領域における唯一の心理学的研究であり、日本人の精神の働きと構造を立体的に解剖した古典的名著である。
今昔物語集(五)
今昔物語集(五)
その他:国東 文麿
講談社学術文庫
『今昔物語集』巻五は釈尊以前の、インド古代伝承にもとづく種々の説話を収める。前四巻に比べて世俗説話性が濃厚であり、僧迦羅国(今のスリランカ)建国由来談をはじめ、国宝の夜光玉を盗んだ盗賊が半国を賜わった話、女色に迷った一角仙人の話、月の中の兎の話、虎の威を借る狐の話、棄老国の話など、人間のさまざまな欲望をとらえて波乱に富んだ興味深い話が多く、それらが釈尊の前生や仏法ないし処世訓と結びついて語られる。
今昔物語集(四)
今昔物語集(四)
その他:国東 文麿
講談社学術文庫
『今昔物語集』巻四は釈尊入滅後における仏弟子・高僧たちの強固な求道心や勝れた教化力を賛(たた)える説話を収める。阿難・羅ご羅(らごら)等の仏弟子のほか、のちに中国・日本仏教諸宗の祖と仰がれ、あるいは仏教史上偉大な業蹟を残した高僧たち、優婆崛多(うばくつた)・竜樹・提婆・無着・世親・護法・清弁等が年代順に登場し、それらの活躍する人間味豊かな話によって、仏滅後の天竺仏教の状況と重んずべき教理・信仰を平易に、また興味深く教えようとする。
西行物語
西行物語
著:桑原 博史
講談社学術文庫
鎌倉時代成立の『西行物語』は、歌人西行の生涯を記した伝記物語。友人の急死に世の無常を知った藤原義清は、娘を縁から蹴落して恩愛の道を絶ち、二十五歳で出家して西行と名のる。伊勢から関東へ、陸奥から四国と旅を重ねつつ、歌ごころの涌くままに詠ずる名歌は、彼のひたすらな道心をはぐくみ、ついに「願はくは花の下にて春死なむ」の願いどおり極楽往生を遂げる。数奇と道心の生涯を伝える物語のはじめての全訳である。(全一冊)
論語物語
論語物語
著:下村 湖人
講談社学術文庫
このうえなくわかりやすい言葉で、『論語』のエッセンスを読める! 孔子が伝えたかったことは、こんなことだった。 『次郎物語』で名高い作家にして教育思想家であった下村湖人が、 人生をかけて読んだ『論語』を、そこに残された言葉をもとに、ひとつの物語として書き紡いだ。 ページをひらけば、孔子や弟子たちが直接語りかけてくる! 【永杉喜輔「まえがき」より】 湖人は生涯をかけて『論語』に学んだ。二千年以上も経た『論語』の章句を自由自在に使って、『論語』で養われた自分の思想を物語に構成したものが本書で、『論語』の精神を後世に伝えたい一念が結晶している。孔子と弟子たちが古い衣をぬぎすて、現代に躍り出す。その光景がみずみずしい現代語でたんねんに描かれている。 【本書「富める子貢」より】 「なるほど、貧富ともに体験をつんだという点では、君は第一人者じゃな」  子貢の耳には、孔子のこの言葉は、ちょっと皮肉に聞こえた。しかし、孔子がみだりに皮肉をいう人でないことを、彼はよく知っていたので、次の瞬間には、それを自分がほめられる脱提であると解した。 「君が、貧にしてへつらわなかったことも、富んで驕らないことも、わしはよく知っている」  そういった孔子の口調は妙に重々しかった。子貢は、ほめられると同時に、なぐりつけられたような気がした。 「それでいい。それでいいのじゃ」  孔子の言葉つきはますます厳粛だった。子貢は、もうすっかり叱られているような気になってしまった。 「だが――」と孔子は語をつづけた。 「君にとっては、貧乏はたしかに一つの大きな災いだったね」  子貢は返事に窮した。彼は、今日道々、「貧乏はそれ自体悪だ」とさえ考えてきたのであるが、孔子に真正面からそんな問いをかけられると、妙に自分の考えどおりを述べることができなくなった。 「君は、貧乏なころは、人にへつらうまいとして、ずいぶん骨を折っていたようじゃな。そして、今では人に驕るまいとして、かなり気を使っている」 「そうです。そして自分だけでは、そのいずれにも成功していると信じていますが……」 「たしかに成功している。それはさっきもいったとおりじゃ。しかし、へつらうまい、驕るまいと気を使うのは、まだ君の心のどこかに、へつらう心や、驕る心が残っているからではあるまいかの」  子貢は、その明敏な頭脳に、研ぎすました刃を刺しこまれたような気がした。孔子はたたみかけていった。……
電子あり
なぞの研究
なぞの研究
著:鈴木 棠三,装丁:蟹江 征治,レイアウト:志賀 紀子,その他:石尾 利郎,写真:勝田 敏照
講談社学術文庫
名著、復刊。 日本の「なぞなぞ」の歴史の実態を本書ははじめて解明する。なぞの芽生えが既に上代の典籍に童謡揺歌として見え始め、中国のなぞもその渡来とともに機敏に我々の先祖は摂取した。奈良、平安、室町、江戸期と順次資料に基いて、なぞの変遷や盛衰の跡をたどり、文芸との関わり合いや、古典なぞの解き方、なぞの名人たち、なぞの興行、なぞ本の板行(はんこう)、民間伝承のなぞ等々にいたる、なぞの広汎な種々相を懇切平明に興味深く解説する。
法句経講義
法句経講義
著:友松 圓諦
講談社学術文庫
本書は、昭和九年に刊行されるや、一世を風靡し、戦雲たれこめる暗く不安な時代にあった人びとに一筋の光明をもたらした名著であり、原始仏教のもっているみずみずしい生命力を復興し、法句経の名を天下に知らしめたのである。仏教再認識の機運を盛り上げ、昭和の仏教革新運動の起点となった本書は、いまなおわれわれに、仏教の真髄が何であるかを教えてくれるとともに、人生というものは豊かな意義深いものであると認識させてくれる。
キリスト教問答
キリスト教問答
著:内村 鑑三
講談社学術文庫
「来世は有るや無きや」「聖書ははたして神の言なるか」「奇跡の信仰」など、キリスト教の八つの根本問題に対して、はぎれよく、わかりやすく答えながら、人生を切り開いていく勇気と希望を与えてくれる書。キリスト教伝道者としての信念を貫いた著者が、みずからの生涯をかけた研究によってかちとった信仰は、あらゆる読者に、宗教を超えて生きる指針を示すことであろう。キリスト教の信仰を通して、人生とはなにかを語りかける名著。
近世日本国民史 堀田正睦(五) 朝幕交渉篇
近世日本国民史 堀田正睦(五) 朝幕交渉篇
著:徳富 蘇峰,その他:平泉 澄,その他:蟹江 征治,装丁:志賀 紀子
講談社学術文庫
安政四年十二月十四日、幕府は日米通商条約締結に関する委曲の事情を朝廷に具申のため、林大学頭・津田半三郎を京都に特派。京都、諸藩有志家の入説ありて政治的に覚醒、両人擯斥を被り毫も要領を得ず。備中守は川路聖謨・岩瀬忠震を随行せしめ条約勅許の叡慮を請べく急遽上京するも、今や朝議は幕議を圧し勅許下らず、堀田らは空手にて帰府。江戸と京都、条約締結で沸騰し、継嗣問題で暗闘。井伊直弼次第に頭角を現し、暗躍す。
電子あり
近世日本国民史 堀田正睦(四)
近世日本国民史 堀田正睦(四)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
堀田正睦はハリスと三次にわたり会見、鎖国の不可、開国の国是を脳裏に印象づけられ、一切ハリスの要求を容るる旨告げる。幕府は直ちに井上清直・岩瀬忠震を全権委員に任命、安政四年十二月、九段下蕃所調所にて日米修好通商条約の談判を開始、彼我の懸隔を討論、十三次に及び漸く締結。本篇はその堀田、ハリス会見および条約談判記録であり、開国当時の最も困難な内外情勢下に、当局者がその最善を尽くしたのかの迫真篇である。 堀田正睦はハリスと三次にわたり会見、鎖国の不可、開国の国是を脳裏に印象づけられ、一切ハリスの要求を容るる旨告げる。幕府は直ちに井上清直・岩瀬忠震を全権委員に任命、安政四年十二月十一日、九段下蕃所調所にて日米修好通商条約の談判を開始、彼我の懸隔を討論、十三次に及び漸く締結。本篇はその堀田、ハリス会見および条約談判記録であり、開国当時の最も困難な内外情勢下に、当局者がその最善を尽くしたのかの迫真篇である。
電子あり
植物知識
植物知識
著:牧野 富太郎
講談社学術文庫
私は、草木に愛を持つことによって、人間愛を養うことができる、と確信して疑わぬのである。もしも私が日蓮ほどの偉物であったなら、きっと私は草木を本尊とする宗教を樹立してみせることができると思っている。自然の宗教!その本尊は植物。なんら儒教、仏教と異なるところはない。もし諸君が本書を読んで、いささかでも植物趣味を感ぜられ、且つあわせて植物知識を得られたならば、筆者は大いに満足するところである。(「あとがき」より)
万葉集入門
万葉集入門
著:上村 悦子
講談社学術文庫
私は万葉の歌が好きで好きでたまらない。雄略天皇の求婚歌、大伴坂上娘女や笠女郎、狭野弟上娘子の恋愛歌、家持夫妻の相聞歌、虫麿の伝説歌等々どれも皆すべてすばらしい。東歌や嗤笑歌などを愛唱していると憂鬱などはふっ飛んでしまうから不思議である。世の中の方々がもっと万葉歌を愛唱してくださったらと思う。そのため一読すぐ理解できる現代語訳の必要をしみじみ感じてこの書を世に送った次第である。(著者「まえがき」より)
近世日本国民史 堀田正睦(三) 朝幕背離緒篇
近世日本国民史 堀田正睦(三) 朝幕背離緒篇
著:徳富 蘇峰,その他:平泉 澄
講談社学術文庫
安政四年十月、ハリス江戸入府、堀田正陸と会見、懸河の弁を振って開国貿易の利を説く。他方、松平慶永はハリス問題を好機とし、一橋擁立を解決すべく橋本左内含めて京都を誘導。堀田は長崎で日蘭・日露の条約追加調印、江戸ではハリスの将軍謁見、国書捧呈の段取りを進めるなど対外施為に間然するなきも、ハリス出府に伴う水戸・尾張の反対は、江戸の不一致を暴露、京都の関東に対する姿勢は徐々に強化、朝幕背離の形勢を醸す。
電子あり
近世日本国民史 堀田正睦(二) 公武合体篇
近世日本国民史 堀田正睦(二) 公武合体篇
著:徳富 蘇峰,その他:平泉 澄
講談社学術文庫
安政三年七月、米国総領事ハリス下田に入港、居催促の体をなして通商条約を迫る。外交すこぶる切迫、時の名宰相阿部正弘は開明派堀田正陸を老中首座に迎え、外国御用懸に任じこの難局に当たらしめ、自らはその力を専ら内国に用い、公武合体として国論統一を試みんとす。時に将軍継嗣問題起り、内外の政局蜂巣を突き破らんとする様相を呈し始むる折、阿部、不惑に達せずして逝き、堀田は一人にて内外の衝に当たらねばならなかった。
電子あり
近世日本国民史 堀田正睦(一) 孝明天皇初期世相篇
近世日本国民史 堀田正睦(一) 孝明天皇初期世相篇
著:徳富 蘇峰,その他:平泉 澄,装丁:志賀 紀子,その他:蟹江 征治
講談社学術文庫
黒船の来航は幕府封建制度崩壊を促し、中央統制系も頽弛は、雄藩の自主・独立的態度を明確にならしめ、対立、対抗、やがて対戦への趨勢を来すも、外間の風雨に打たれ、雪霜に晒された国民的自覚は、各藩連盟の機運を醸成、天下有志士の交通は次第に頻繁、隠然の裡に新組織へ胎動。かかる情勢下、維新気分旁魄せる少年子弟が、松下村塾で先生と講習討論を始めるたるごとく、日本各地に回天の原力が育ちつつあった。 黒船の来航は幕府封建制度崩壊を促し、中央統制系も頽弛は、雄藩の自主・独立的態度を明確にならしめ、対立、対抗、やがて対戦への趨勢を来すも、外間の風雨に打たれ、雪霜に晒された国民的自覚は、各藩連盟の機運を醸成、天下有志士の交通は次第に頻繁、隠然の裡に新組織へ胎動。かかる情勢下、中国西端の辺陬の地に、維新気分旁魄せる少年子弟が、松下村塾で先生と講習討論を始めるたるごとく、日本各地に回天の原力が育ちつつあった。
電子あり
南方熊楠 地球志向の比較学
南方熊楠 地球志向の比較学
著:鶴見 和子
講談社学術文庫
南方熊楠は、柳田国男とともに、日本の民俗学の草創者である。この二人は、その学問の方法においても、その思想的出自と経歴においても、いたく対照的なのである。日本の学問のこれからの創造可能性を考えるために、この二つの巨峰を、わたしたちはおのれの力倆において、登り比べてみることは役に立つであろう。そうした意味で、微力ながら、これはわたしの南方登攀記の発端である。(著者まえがきより)〈昭和54年度毎日出版文化賞受賞作〉
西国立志編
西国立志編
著:サミュエル・スマイルズ,訳:中村 正直
講談社学術文庫
原著『自助論(セルフ・ヘルプ)』は、世界10数ヵ国語に訳されたベストセラーの書。日本では明治4年、『西国立志編』として中村正直により翻訳刊行された。「天は自ら助くる者を助く」という独立独行の精神を思想的根幹とした、欧米史上有名な300余人の成功立志談である。この自助精神は、近代国家と資本主義の形成期にあって、新しい日本と自分の前途に不安を抱いていた多くの青少年に希望の光明を与えた。福沢諭吉の『学問のすゝめ』と共に、明治の2大啓蒙書。
近世日本国民史 織田信長(3)
近世日本国民史 織田信長(3)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
天生十五年五月、光秀、愛宕山西坊にて連歌興行。「ときは今あめが下知る五月哉」の発句を神前に籠置き、謀反を決意、六月朔日、信長を本能寺に弑す。―すでに勝頼は武田譜代の面々に見捨てられ、天目山に自刃。家康は安士に参礼の後、大坂、堺に遊ぶ。中国征伐に出陣中の秀吉は鳥取城を抜き、高松城を眼前にして毛利の大軍と対峙―今や信長の勢威漸く四方に及び、天下統一の正に成る寸前の変。時に信長五十歳炎の生涯を遂ぐ。 天生十五年五月二十八日、光秀、愛宕山西坊にて連歌興行。「ときは今あめが下知る五月哉」の発句を神前に籠置き、謀反を決意、六月朔日、信長を本能寺に弑す。―すでに勝頼は武田譜代の面々に見捨てられ、天目山に自刃。家康は安士に参礼の後、大坂、堺に遊ぶ。中国征伐に出陣中の秀吉は鳥取城を抜き、高松城を眼前にして毛利の大軍と対峙―今や信長の勢威漸く四方に及び、天下統一の正に成る寸前の変。時に信長五十歳炎の生涯を遂ぐ。
電子あり
大鏡 全現代語訳
大鏡 全現代語訳
著:保坂 弘司
講談社学術文庫
平安朝期、藤原氏栄華の世界の男の生きざまを、男の手によって内部告発的に描き出した異色の歴史文学作品。叙述は紀伝体であるがそれが却って登場人物の性格を特徴的に捉え、あざやかな人物像を照し出し、四人の話者の語り口と相まって、歴史の見方のとかく片寄りがちな弊を巧みに避け得て、謀略的事件の真相を伝えている。歴史の鏡に写る当代一七六年間の登場者にあびせる真実と讃美と批判のはざまに、和泉式部紫式部も顔を出す。
近世日本国民史 織田信長(2)
近世日本国民史 織田信長(2)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
天正三年五月、織田徳川連合軍は長篠において武田軍と対陣。死なせる信玄、生ける信長を走らすか。勝頼もとより勇者にして軍事巧者たるも、信玄遺将を統率する能わず、ただ武田嫡々相伝の御旗・無楯にこの一戦必勝を誓う。対する信長は鉄砲の威力を最善に利用したる斬新戦術を用い、甲斐の常勝軍を大破、背後の憂を断ち、時代の主人公となるも、一敵減ずれば一敵生ず、毛利氏と本願寺は鎌信の入洛を急ぐなど、信長の覇図なお多難。
電子あり