講談社学術文庫作品一覧

からだの知恵 この不思議なはたらき
からだの知恵 この不思議なはたらき
著:B・ウォルター・キャノン,訳:舘 隣,訳:舘 澄江
講談社学術文庫
暑くなって体温が上がりそうになると汗をかく。小さな傷は放っておいても自然に治ってしまう。このようにして、生物のからだはつねに一定の状態を保っている。本書は、生物体のもつ自己調節機能をひとつのシステムとして捉え、ホメオステーシス(生体における恒常性維持)という概念をはじめて提唱した書である。生命体を新しい角度から捉えたこの概念は、生物学はもちろん、心理学・社会学など現代思考全般に大きな影響を与えている。
言志四録(4) 言志耋録
言志四録(4) 言志耋録
著:佐藤 一斎,その他:川上 正光
講談社学術文庫
心を苦しめ、思慮分別に悩んで始めて本当の智恵が現われるものであり、安らかに生活している時は、思慮の力が埋れてしまっている。このことは丁度、苦いものは薬になり、甘いものは毒となるようなものである。婦女子を訓戒するには、まず恕即ち思いやりのことばを先にかけ、次に厳格なことばで結ぶようにするがよい。小人を訓戒するには、まず厳格なことばでぴりっとさせ、次に思いやりのことばをかけてやるがよい。(本文より)
新約聖書 共同訳全注
新約聖書 共同訳全注
著:共同訳聖書実行委員会
講談社学術文庫
16世紀の宗教改革以来、カトリックとプロテスタントとに分裂していたキリスト教界は、現在、協調と一致の方向に向かっている。本書は、このような時代の流れの中で、両派が協力して翻訳した本邦初の『新約聖書』。両派で思い思いに使ってきた言葉を共通化し、内容に沿って小見出しをつけたほか、歴史的・宗教的事項に注を付してあるので、新約の世界とその時代がありありと甦ってくるこれからの時代の万人向け聖書の決定版である。
近世日本国民史 豊臣秀吉(4)
近世日本国民史 豊臣秀吉(4)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
露と落ち露と消えぬる我身かな 浪華のことは夢のまた夢/慶長三年八月十五日、病床の秀吉は家康・利家・輝元・秀家の四大老を枕元に招き、秀頼の将来を依頼、十八日朝六十三歳を一期として不帰の客となるや、桃山文化もまた幕を閉じた。日本歴史ありて以来の全国統一された桃山時代は秀吉時代といってよく、この豪快児が舞躍を逞しくした晴れ舞台であり、活気と創造的空気に満ちた、日本的「近世」の道を準備した時代でもあった。
電子あり
近世日本国民史 徳川家康(2)
近世日本国民史 徳川家康(2)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
家康、征夷大将軍に登るも二年にしてその職を子秀忠に譲り、徳川氏世襲の緒を開く。その間大阪における秀頼は日に壮に赴きつつあり。時に家康七十余歳、己が頽齢を顧慮、「国家安康」の大仏鐘銘を理由に、餓虎の羊に向かうごとく大阪城を包囲、冬・夏の陣を経て遂に豊臣氏を滅亡の淵に逐う。公正なる史家は、家康その人を論ずるに稀代の政治家と驚嘆するも、倒行逆施の大阪攻めをもって、家康の中なる最大悲劇を看破する。 家康、関ヶ原役後征夷大将軍に登るも二年にしてその職を子秀忠に譲り、徳川氏世襲の緒を開く。その間大阪における秀頼は日に壮に赴きつつあり。時に家康七十余歳、己が頽齢を顧慮、「国家安康」の大仏鐘銘を理由に、餓虎の羊に向かうごとく大阪城を包囲、冬・夏の陣を経て遂に豊臣氏を滅亡の淵に逐う。公正なる史家は、家康その人を論ずるに稀代の政治家と驚嘆するも、倒行逆施の大阪攻めをもって、家康の中なる最大悲劇を看破する。
電子あり
堤中納言物語
堤中納言物語
その他:三角 洋一
講談社学術文庫
『堤中納言物語』は、一〇編の物語から成る平安時代の短編物語集である。「このついで」「逢坂越えぬ権中納言」など伝統的なもののあわれの世界を描く一方、毛虫を愛し、顔かたち・行いがなみの姫ならぬ「虫めづる姫君」、美しい姫君ととりちがえて老尼を連れ出す「花桜折る少将」など、皮肉な笑いで人生の断面をとらえている。簡明な構成、強い印象の文章はむしろ近代小説の性格に近く、意匠のこらされた佳品群は中古文学中、異彩を放つ。
八宗綱要
八宗綱要
著:凝然 大徳,その他:鎌田 茂雄
講談社学術文庫
仏教の教理を本格的に知ろうとする人のために、もっとも適切な案内書は鎌倉時代の擬然の『八宗綱要』である。八宗(倶舎宗・成実宗・律宗・法相宗・三論集・天台宗・華厳宗・真言宗)の教理が簡潔に説かれており、仏教各宗の教理の大要を簡単に知ることができるからである。本書は『八宗綱要』の原文の1つ1つに忠実に全注釈を加えたもので、仏教学の大要を知りたい方は訳文だけでも読んでいただければ幸いである。(著者まえがきより)
近世日本国民史 豊臣秀吉(3)
近世日本国民史 豊臣秀吉(3)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
九州役後、関白秀吉の威令全国に及ぶも、ひとり関東の北條氏これに服せず。秀吉の炯眼北條の平和的手段にて済度するべからざるを洞見、出師の名義を眞田氏居城紛争に得、大軍を擁して小田原城を包囲すれば、伊達正宗もこれに来応、北條氏全くの孤立無援。世にいう「小田原評定」の末、北條氏遂に降伏。家康を関東に移封後、秀吉の政令、津軽より薩摩に及び、中央集権は名実共に実行され、太閣検地の丈景の縄は全国津々浦々に及ぶ。 九州役後、関白秀吉の威令全国に及ぶも、ひとり関東の北條氏これに服せず。秀吉の炯眼北條の平和的手段にて済度するべからざるを洞見、出師の名義を眞田氏居城紛争に得、大軍を擁して小田原城を包囲すれば、奥羽の伊達正宗もこれに来応、北條氏全くの孤立無援。世にいう「小田原評定」の末、北條氏遂に降伏。家康を関東に移封後、秀吉の政令、津軽より薩摩に及び、中央集権は名実共に実行され、太閣検地の丈景の縄は全国津々浦々に及ぶ。
電子あり
第2回チベット旅行記
第2回チベット旅行記
著:河口 慧海
講談社学術文庫
第一回チベット入りの紀行と同じく、この本もまたきわめて信頼性の高いものである。慧海師の観察は、生物や民族の生態についても鋭い。ヤクその他家畜や、その乳製品などについて、あるいは遊牧民などについて。彼のチベット人の三区分(遊牧民、定住牧民、半農半牧民)は、今まで私が接したどの研究者の見解よりも正しいと思う。かように学術的資料としても貴重であるが、読み物としても、おもしろい。(川喜田二郎氏「解説」より)
近世日本国民史 豊臣秀吉(2)
近世日本国民史 豊臣秀吉(2)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
秀吉の大度量が優るか、家康の熟柿主義が勝つか。天下、秀吉に傾くも東顧の憂因家康あり。秀吉、妹を家康に娶わせ、母を質にしてこの猛虎を艦中に導かんとす。家康、その真率、その赤裸々にあい、この上の峻拒は亢竜の悔いを残すとして応諾。秀吉、時を移さず、信長が畢生の大経綸を継ぎ九州征伐を断行、島津を降す。凱旋の余威をもって聚楽第に天皇の行幸を仰ぎ、関白に累進、豊臣姓を称え、天下統一者たる名を実を示す。 秀吉の大度量が優るか、家康の熟柿主義が勝つか。天下、秀吉に傾くも東顧の憂因家康あり。秀吉、妹を家康に娶わせ、母を質にしてこの猛虎を艦中に導かんとす。家康、その真率、その赤裸々にあい、この上の峻拒は亢竜の悔いを残すとして応諾。秀吉、時を移さず、信長が畢生の大経綸を継ぎ九州征伐を断行、島津を降す。凱旋の余威をもって聚楽第に天皇の行幸を仰ぎ、関白に累進、豊臣姓を称え、中外に向かって天下統一者たる名を実を示す。
電子あり
近世日本国民史 徳川家康(1)
近世日本国民史 徳川家康(1)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
秀吉の死後利家また去るや、天下は群羊一虎、家康の存分となる。三成、反対派に追われ佐和山城に屏居、時節到来を俟つ。景勝会津へ帰国。三成、兼続、恵瓊ら黙契神会、奥州不穏。家康東征中における上方事変を予期、悠悠として景勝征討の途につく。時勢正に醗酵、三成ら挙兵、家康の罪状を天下に表白。家康三万余の兵を率いて西上。慶長四年九月、東西両軍十四、五万の兵関ヶ原を中心として屹然として相対峙、激戦の火蓋を切る。 秀吉の死後利家また去るや、天下は群羊一虎、家康の存分となる。三成、反対派に追われ佐和山城に屏居、時節到来を俟つ。景勝会津へ帰国。三成、兼続、恵瓊ら黙契神会、奥州不穏。家康東征中における上方事変を予期、悠悠として景勝征討の途につく。時勢正に醗酵、三成ら挙兵、家康の罪状を天下に表白。家康三万余の兵を率いて西上。慶長四年九月十五日、東西両軍十四、五万の兵関ヶ原を中心として屹然として相対峙、激戦の火蓋を切る。
電子あり
近世日本国民史 豊臣秀吉(1)
近世日本国民史 豊臣秀吉(1)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
百世子孫を魅了する英雄秀吉の天下経営への序幕篇。秀吉、本能寺変知るや疾風迅雷、中国攻めより返して光秀を討つ。時に勝家は越中上杉攻めより兵を率いて上洛途次、家康は堺より間道を逃れ岡崎にて陣容整え光秀討伐に進発、共に秀吉から光秀伏誅の報を受く。清洲会議を経て天下の大勢暗旋黙多、秀吉に赴く。勝家を亡ぼし、強敵家康と講和したる秀吉は南海四国北陸を平定、信長の定めた大経綸を継ぎ日本統一への加速を加える。
電子あり
仏教聖典
仏教聖典
著:友松 圓諦
講談社学術文庫
苦悩に満ちた古代インド社会の中で、敢然として求道・布教に起たれた釈尊の姿を、最古の諸教典を素材とした格調高い文章で再現する。原始仏教のみずみずしい生命力が漲っている本書は、現代の人々に真の安心への道を説き示し、勇気と希望を与えるだろう。全日本仏教会の推薦を受け、広く各宗にわたって支持され、また篤信の人々によって全国津々浦々にまで普及せしめられた仏教聖典の決定版。まさに、万人のための座右の書である。
新訳論語
新訳論語
著:穂積 重遠,解説:宇野 精一,その他:蟹江 征治,装丁:千葉 雅哉,レイアウト:滋賀 紀子
講談社学術文庫
本書は、東宮大夫兼侍従長として皇太子傅育の役、最高裁判事等を閲歴した著者が、子弟教育を目的として新訳した極めて独創的な「家庭論語」である。著者は『論語』を孔子一代記と見、論語の説く人生訓・処世術を過去の道徳とせず、現代の活教訓として1つ1つの主題に、実生活や時事問題を絡ませ、時に余興的雑談を織り交ぜながら面白く語っているため、道学者流の匂いがなく、素直に現代人の心に受け入れられる魂の書となっている。
歎異抄講話
歎異抄講話
著:暁烏 敏
講談社学術文庫
親鸞の思想に「近代」と「個」の救済を発見した明治の知識人の中でも、不安から覚醒への道すじを最も熾烈に歩んだのが暁烏敏であった。『歎異抄』が危険な書として封印された状態にあったのを、公開し、論求し、本願他力の大慈悲に誰しもがあずかりうるという確信を人々に与えた、その開示の書が『歎異抄講話』であった。この一冊が果した役割の大きさは、そのまま親鸞の思想の普遍的な「新しさ」と照合している。(松永伍一氏「まえがき」より)
東郷平八郎
東郷平八郎
著:下村 寅太郎
講談社学術文庫
名著復刊 「日本海海戦」とは何であったか 近代日本海軍は東郷司令長官の登場をもって完成した――国民的英雄とその偉業とを精神史的に究明した古典的名著。 1905年5月、日本海海戦の勝利は、近代日本海軍の完成を証する「世界史的驚異」であった。偉業を指揮した連合艦隊司令長官東郷平八郎とはいかなる人物か。秋山真之ら幕僚は卓抜な能力をどのように発揮したか。哲学者の眼光をもって明治海軍の「人格的象徴」たる名将の本質を射抜き、近代化における日露海戦の精神史的意義を究明した刮目の名著。 東郷大将は軍人以外の何者でもなかった。しかしあくまで軍人たることをとおして軍人以上の偉大さに達した。軍人によく見られる何々宗の信者ではなく、稚拙な詩文を弄せず、訓語せず、もっぱら沈黙しつねに素朴に住した。ついに武人以外の何者でもなく、それをとおして古典的人間に到達した。東郷大将の伝記者の任務は、なによりも大将を沈黙の裡(うち)に置くことであって、それにおいて偉大さを見出だすことであろう。――<本書より>
雨月物語(下)
雨月物語(下)
その他:青木 正次
講談社学術文庫
古今東西の怪異小説中、群を抜く『雨月物語』は江戸中期の国学者上田秋成の傑作である。本書は巻四「蛇性の婬」と、巻五「青頭巾」「貧福論」を収載。中世以来、邪婬の動物とみられている蛇の化身をテーマにし、一人の優男に終始執念をもやしてつきまとう女の愛欲を綴る「蛇性の婬」、美少年を愛するあまり、その死体を食べ尽くす鬼僧の、同性愛愛欲の妄執を描く「青頭巾」、金銭執着の「貧福論」など、卓抜な怪異描写で人間の執念のすさまじさを描く。
雨月物語(上)
雨月物語(上)
その他:青木 正次
講談社学術文庫
安永天明期の暗い世相、他人や自分までが怪しく得体の知れぬ異界の妖霊のように見えてくる時代社会の中で、そういう仮象の向う側に人はどこまでその人間的な実体に迫りうるものなのか、を問いつめた怪異小説。当代知識人の知的な苦悩に正面からいどみ、知的な文体を極限まで展開して、そこに人間が人間に出会いうる可能性を探った上田秋成の内的力動を伝える代表作品。古今東西の怪異小説中、秀抜傑出、深い感銘を与える。(全二巻)
今昔物語集(三)
今昔物語集(三)
その他:国東 文麿
講談社学術文庫
『今昔物語集』巻3は維摩(ゆいま)・文殊(もんじゅ)・目連(もくれん)・舎利弗(しゃりほつ)・賓頭盧(びんずる)など仏弟子たちの霊験教化にかかわる説法を収め、巻末に沙羅双樹下の哀愁にみちた釈尊入滅関係話を置いて巻一から続く釈尊在世時の説話を終える。教化を受けるものは国王・后・王子・王女をはじめ、長者から下婢・異類に及び、それらのさまざまな人間的欲望に基づく苦悩の救済を通じて、釈尊と仏法の尊さを語ろうとする。中でも阿闍世(あじゃせ)王が父王を殺し教化される話は有名である。
近世日本国民史 明治三傑 西郷隆盛・大久保利通・木戸孝允
近世日本国民史 明治三傑 西郷隆盛・大久保利通・木戸孝允
著:徳富 蘇峰,その他:平泉 澄,その他:蟹江 征治,装丁:志賀 紀子
講談社学術文庫
大久保利通、参朝の途次紀尾井坂にて凶刃に斃る。時に明治十一年五月、木戸孝允病死後一ヶ年、西郷隆盛自刃より八ヵ月、共に手を携えて維新回天を成就したる後袂を分って朝野に分離し、互いに死闘を演じたる三人、年を隔てずして逝く。絶大の大史筆ここに至って明治の重大事件の綱領を口述せんと期すも既に齢に余裕なく多く三傑の回想感慨に耽ける状、恰も沖天の火炎燃えつくしてなお余燼を存するに似て、通史の興味まさに津々。
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