講談社学術文庫作品一覧

中世武士団
中世武士団
著:石井 進
講談社学術文庫
平安時代後期から戦国時代の終わりまで、中世をになった特徴的存在が武士団です。 「土」と結びついたイエ支配権の強力さと独立性、生活の実際と意識のあり方、10世紀初頭の武士団の実体と鎌倉武士団への発展の過程、「板碑」が語る武士団の歴史、安芸国の小早川氏に見る鎌倉的武士団から南北朝・室町的武士団への変貌の経過と武士団の支配下の荘園の様相、北陸の雄たる朝倉氏の城下町、越前一乗谷の考古学的発掘の成果をとり入れた戦国武士団の一面。そして中世から近世へと移りゆくなかで武士団が喪失した「自立性」への惜しみない哀悼。 本書は、日本中世史の泰斗が「中世武士団」という社会集団の実態と特色、そして中世社会の構造を、歴史書、文学作品、碑文、考古学資料を駆使し鮮やかに描き出し、高い評価を受け続けている作品です。30年以上前の著作ではありますが、学生や研究者にとっては今なお必読書であり、一般読者層にとっては最良の日本中世史入門といえる名著です。 〔原本/1974年、小学館「日本の歴史」12巻『中世武士団』〕 ※本書の原本は1974年、小学館より「日本の歴史」第十二巻『中世武士団』として刊行されました。講談社学術文庫収録にあたっては、同社より1990年に刊行された「文庫判 日本史の社会集団」第三巻『中世武士団』を底本とし、2005年に山川出版社から刊行された「石井進の世界」第二巻『中世武士団』を参照しました。 【目次より】 中世武士団の性格と特色――はじめに 曾我物語の世界 敵討とその周辺 「兵」の館をたずねて 「兵」から鎌倉武士団へ 板碑は語る 武士団とは何か 小早川の流れ(一)――鎌倉時代の歩み 小早川の流れ(二)――南北朝・室町時代の武士団 埋もれていた戦国の城下町――朝倉氏の一乗谷 失われたもの、発見されるもの――おわりに
電子あり
江戸滑稽化物尽くし
江戸滑稽化物尽くし
著:アダム・カバット
講談社学術文庫
豆腐小僧、ももんがあ、見越入道が嗤う―― 黄表紙から飛び出したドジで憎めない妖怪たち 異類と「笑い」をめぐる江戸っ子の心性とはなにか 絵と文章で構成され、江戸時代中期、社会風潮や流行をパロディー化する大衆文学としてさかんになった黄表紙。そこに登場する、人間社会に興味津々な化物たちが巻き起こす数々の「笑い」は、現代を生きる我々に何を伝えるのか。化物という「異文化」を通し、江戸時代の生活様式や価値観、江戸っ子の心性を鮮やかに描き出した、異色の近世文学研究。
高杉晋作の手紙
高杉晋作の手紙
著:一坂 太郎
講談社学術文庫
幕末の長州藩を縦横に走り回った高杉晋作は、時代を大きく旋回させて惜し気もなく舞台から去って行った。享年二十九――。一方で晋作は、厖大な手紙や日記、詩歌草稿を残している。手紙の相手は父母をはじめ、吉田松陰、久坂玄瑞、桂小五郎(木戸孝允)、山県狂介(有朋)ら、多岐にわたる。その行間からは幕末を生きた人間の生の息吹が伝わってくる。(講談社学術文庫) 吉田松陰、久坂玄瑞、桂小五郎らに吐露した本音 迫り来る外国艦隊、奇兵隊結成、長州のゆくえ…… 幕末を駆け抜けた息吹が生で伝わってくる書簡厳選100! 幕末の長州藩を縦横に走り回った高杉晋作は、時代を大きく旋回させて惜し気もなく舞台から去って行った。享年二十九――。一方で晋作は、厖大な手紙や日記、詩歌草稿を残している。手紙の相手は父母をはじめ、吉田松陰、久坂玄瑞、桂小五郎(木戸孝允)、山県狂介(有朋)ら、多岐にわたる。その行間からは幕末を生きた人間の生の息吹が伝わってくる。 選んだのは晋作の生涯を語るさい避けて通れない手紙、人柄をよく伝える手紙、時代を象徴する手紙など。とくに桂小五郎(木戸孝允)あては晋作の甘えが丸出しで、最も本音を語っていると思われるから大半を収めた。一方、ライバル視していた久坂玄瑞や山県狂介(有朋)あては、時に虚勢を張っているのが分かり面白い。あるいは晋作という人物の、やたらと治者としての誇りが高く、保守的でエリート意識が強い一面に驚かれる読者がいるかも知れない。――<「はじめに」より>
電子あり
日本人の数学 和算
日本人の数学 和算
著:下平 和夫
講談社学術文庫
『塵劫記』の吉田光由、“算聖”関孝和、最上流の会田安明、そして東京数学会社へ 泰平の江戸に開花した日本数学の精華 『塵劫記』の吉田光由、高等数学を開拓した関孝和、和算が民衆に広がる契機を作った最上流の会田安明。そして明治維新、西洋文明が流入するなかで、日本中の数学者が一堂に会して発足したわが国最初の学会、東京数学会社――。幕藩体制下に独自の発展をとげ、世界に類を見ない大輪の花を開いた和算という文化とその歴史を描いた、格好の和算入門。 上代および中世の日本人の数的知識がどのようなものであったかを追求することは、日本人の一面を知る上に必要であるが、そのなかでも明治維新以前の日本人の一般的な数学知識を知ることは、和算から洋算への転機となるためのステップを知る上にきわめて貴重な手がかりを与えてくれるという意味で、ますます研究さるべき分野であろう。――<本書「はしがき」より> ※本書の原本は、1972年、河出書房新社より刊行されました。
世界史への扉
世界史への扉
著:樺山 紘一
講談社学術文庫
疫病が世界を一体化した。鎖国は一七世紀の世界的流行だった。歴史上には各地にいくつもの<ルネサンス>があった――。モノとヒトの組み合わせから世界史の同時性を探り、歴史学の内外で唱えられる新視角を紹介・検証する小論集。西欧の歴史を普遍のモデルとせず、多様性と日常性に着目しながら、現代の激動を解読する「歴史への感受性」を磨く。(講談社学術文庫) 歴史への感受性を磨く。現代がちがって見えてくる。 モノとヒトが織り成す<世界史の共時性>を探り、歴史学の内外で唱えられる新視角を紹介する。 疫病が世界を一体化した。鎖国は一七世紀の世界的流行だった。歴史上には各地にいくつもの<ルネサンス>があった――。モノとヒトの組み合わせから世界史の同時性を探り、歴史学の内外で唱えられる新視角を紹介・検証する小論集。西欧の歴史を普遍のモデルとせず、多様性と日常性に着目しながら、現代の激動を解読する「歴史への感受性」を磨く。 ※本書の原本『地域からの世界史 第19巻 世界史への扉』は、1992年に朝日新聞社より刊行されました。
電子あり
城の日本史
城の日本史
著・編:内藤 昌,著:河田 克博,著:水野 耕嗣,著:麓 和善,著:油浅 耕三
講談社学術文庫
城のすべてを知るための本格的入門書 歴史的変遷、城郭の構成法、各要素の意匠と役割を、300点以上の図版を交えて、多角的に解説。 名城譜として、日本を代表する29城を収録。 空に聳える天守。流麗かつ威厳ある、日本固有の意匠。城はその源意において「都市」である。記紀に登場する「キ」や「サシ」にその淵源を遡り、中世~近世の発達を解説。郭・塁の縄張、丸、曲輪の構成原理と、天守、櫓、門、橋、堀、塀、便所、台所、井戸など、建築としての城に肉迫。名城譜として、全国二十九の城を詳細に紹介。図版三百点以上を所収。 従来、この種の本は、<城>の軍事的要素のみを強調して、人間社会の集住様態としての<都市>の性格を、ほとんど無視してきている。……しかし、例えば安土城・大坂城・伏見城・駿府城・江戸城など……のかなりな詳細が明らかになってみると、……<城>という都市的建築が造られた宗教・政治・経済の社会的背景、すなわち日本史的意義を、単に戦うことの機能以上に評価しなくてはならなくなっている。本書は、そうした体系的視座による研究成果をもとに、可能なかぎりフィジカルに図説することを特色とする。――<「まえがき」より抜粋> ※本書の原本『ビジュアル版 城の日本史』は1995年に角川書店より刊行されました。
オイディプスの謎
オイディプスの謎
著:吉田 敦彦
講談社学術文庫
ギリシァ悲劇の白眉『オイディプス王』と『コロノスのオイディプス』。作者ソポクレスは二つの物語で深遠な問いを立てる。人間の本性とは何か? 苛烈な運命の下で、人間はいかに生きるべきか? 前五世紀、栄華を誇ったアテネはその後大敗戦、疫病の猖獗を経験する。大国難の中にあっても、人間は高貴なる魂を保持せねばならぬと訴えたのである。(講談社学術文庫) 捨て子、父殺し、王位、母子婚、そして漂流する盲目の物乞いから神霊へと変容する 人類史上最高の悲劇に秘められた幾重もの謎とは? ギリシァ悲劇の白眉『オイディプス王』と『コロノスのオイディプス』。作者ソポクレスは二つの物語で深遠な問いを立てる。人間の本性とは何か? 苛烈な運命の下で、人間はいかに生きるべきか? 前五世紀、栄華を誇ったアテネはその後大敗戦、疫病の猖獗を経験する。大国難の中にあっても、人間は高貴なる魂を保持せねばならぬと訴えたのである。 この二篇の劇〔『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』〕は、東日本大震災という未曾有の災害を経験した現在の日本人にとって、無縁であるとは思えない。波瀾万丈だったこの紀元前五世紀における転変のあいだに、アテネは二度にわたって、そんなことが起こるとは想像もつかなかった、非常な国難に遭遇した。……これらの劇にはそれらの大国難のそれぞれに当たって、ソポクレスが苦悩のどん底にある同胞たちに向かって、訴えずにいられなかった思いが、生々しく吐露されている。――<「学術文庫版まえがき」より> ※本書の原本は、1995年、青土社より刊行されました。
電子あり
伊藤博文演説集
伊藤博文演説集
編:瀧井 一博
講談社学術文庫
「我国旗の中央に点ぜる赤き丸形は……昇る朝日の尊き徽章(きしょう)となり……文明諸国の間に伍して前方に且(か)つ上方に動かんとす」と明治四年サンフランシスコで日本の進む途を謳い上げた「日の丸演説」。文明国たらんと憲法制定・議会開設に奔走、政党政治のあるべき姿を説き、台湾・韓国統治の意義を語って国制を彫琢した政治家・伊藤の代表的演説三九篇を収録。(講談社学術文庫) 伊藤の日本建国の理念を、いまこそ読み直す。明治憲法を制定し、4度も総理大臣に就任した伊藤博文。彼は、いったいどのような構想で日本という国を作ろうとしたのか。折々の演説を再現し、肉声と思想に迫る。
電子あり
密教経典 大日経・理趣経・大日経疏・理趣釈
密教経典 大日経・理趣経・大日経疏・理趣釈
その他:宮坂 宥勝
講談社学術文庫
大乗の教えをつきつめた先に現れる深秘の思想、密教。宇宙の真理と人間存在の真実を追究する、その精髄とはなにか。心のありかたを説く『大日経』住心品、真言宗などで読誦(どくじゅ)される『理趣経』、それらの奥義を理解するための注釈書『大日経疏』と『理趣釈』。詳細な語釈を添え現代語訳を施した密教の代表的経典をとおし、その教義と真髄を明らかにする。(講談社学術文庫) 大乗仏教をつきつめた深秘のおしえ 人間と宇宙の一体化 その教義と行法を読む 大乗の教えをつきつめた先に現れる深秘の思想、密教。宇宙の真理と人間存在の真実を追究する、その精髄とはなにか。心のありかたを説く『大日経』住心品、真言宗などで読誦(どくじゅ)される『理趣経』、それらの奥義を理解するための注釈書『大日経疏』と『理趣釈』。詳細な語釈を添え現代語訳を施した密教の代表的経典をとおし、その教義と真髄を明らかにする。  勝上の大乗の句と   心続生の相とは  諸仏の大秘密にして  外道は識る能わず  我れ今悉く開示せん  一心にまさに諦聴すべし 最勝にして無上の偉大な教え〔大乗〕の句と、心の連続のすがたとは、もろもろの仏の大なる秘密であり、仏教以外の者はこれを知ることができない。わたしは今、残らずこれを開き示そう、ひたすらにまさしく明らかに聴くがよい。――<本書「大日経」より>
電子あり
万博と戦後日本
万博と戦後日本
著:吉見 俊哉
講談社学術文庫
戦後日本を画した五つの万博。高度成長の熱狂と「大阪万博」、沖縄返還と「海洋博」、研究学園都市と「科学博」、環境問題と「愛・地球博」。大衆の夢=「成長」と国家政策=「開発」は、所得倍増計画の下に癒着、そして乖離し、開発主義政策システムは破綻する。万博の裏で蠢く国家、官僚、地方、知識人、産業界、市民運動家の葛藤に、戦後政治の限界を看破する。 国、地方、企業、知識人、市民運動家の駆引 戦後日本のエポックを画した万博。その企画・実行を担う様々なエージェントの存在。博覧会の裏で動いていた政治力学を抉り出し、日本社会が孕む問題点を抉り出す (原本『万博幻想』を改題)
天皇 天皇の生成および不親政の伝統
天皇 天皇の生成および不親政の伝統
著:石井 良助
講談社学術文庫
「天皇親政」と「国体」へのタブーが解けた戦後の学界で、いち早く天皇統治の解明に挑んだ法制史家による「天皇の歴史」。「不親政」と「刃に血ぬらざること」こそが天皇の伝統であり、それゆえに邪馬台国の時代から現在にいたるまで、「統合の象徴」として存続しえたという。その後の日本人の天皇観に大きな影響を与えた必読の論考。(講談社学術文庫) 邪馬台国から象徴天皇まで 「不親政」と「刃に血ぬらざること」が天皇統治の伝統である――。戦後いち早く独自の視点を打ち出した法制史の泰斗が、「国民統合」の論理を解明した名著。 「天皇親政」と「国体」へのタブーが解けた戦後の学界で、いち早く天皇統治の解明に挑んだ法制史家による「天皇の歴史」。「不親政」と「刃に血ぬらざること」こそが天皇の伝統であり、それゆえに邪馬台国の時代から現在にいたるまで、「統合の象徴」として存続しえたという。その後の日本人の天皇観に大きな影響を与えた必読の論考。(解説・本郷和人) ※本書の原本は、1982年、山川出版社より刊行されました。
電子あり
荘子 内篇
荘子 内篇
著:福永 光司
講談社学術文庫
自由無碍の境地を語る「鵬鯤(ほうこん)」の物語、一切肯定を謳う「荘周夢に胡蝶となる」――。老子とともに道教の始祖とされる、中国が生んだ鬼才・荘子が遺し、後世に多大な影響を与えた、無為自然を基とし人為を拒絶する思想とはなにか。荘子自身の手によるとされる「内篇」を、老荘思想研究の泰斗が実存主義的に解釈、荘子の思想の精髄に迫った古典的名著。 「人間はただ、万物の窮まりない流転のなかで楽しく逍遥すればよい」 「無為自然」と「一切斉同」中国が生んだ鬼才の思想 自由無碍の境地を語る「鵬鯤(ほうこん)」の物語、一切肯定を謳う「荘周夢に胡蝶となる」――。老子とともに道教の始祖とされる、中国が生んだ鬼才・荘子が遺し、後世に多大な影響を与えた、無為自然を基とし人為を拒絶する思想とはなにか。荘子自身の手によるとされる「内篇」を、老荘思想研究の泰斗が実存主義的に解釈、荘子の思想の精髄に迫った古典的名著。 『荘子』は解脱の中国的論理を明かにした書物である。荘子における解脱の論理とは何か。それは人間の、道――実在への渾沌(こんどん)化であった。荘子において道――実在とは、“生きたる渾沌”、すなわち、あらゆる対立と矛盾をそのまま自らの内に包む大いなる無秩序、人間の概念的認識を超えて体験するよりほかない生々溌剌たる宇宙のはたらきそのものであったが、この生きたる渾沌とそのまま一つとなり、生きたる渾沌を生きたる渾沌として愛してゆくことが荘子の解脱であった。――<本書「解説」より> ※本書の原本は、1966年、朝日新聞社より刊行されました。
電子あり
本居宣長
本居宣長
著:相良 亨
講談社学術文庫
漢意(からごころ)を否定し、われわれは現に日本人を支えてきた秩序によって生きるしかないという神道論を展開。文芸においては物のあわれを主張した宣長。その思想を追うことは、今日のわれわれ自身を知り、未来に生かすべきものと、同時に克服すべきものも見出すことだと著者はいう。日本思想史に決定的な影響を与えた宣長の本質を鮮やかに浮き彫りにした名著。(講談社学術文庫) 物のあわれ論と神道論をつらぬくものとは? 「悲しみ」をうけとめること そこに「安心」がある 宣長に「せむかたなし」の思想を読みとり、日本思想史研究の画期をなした名著! 漢意(からごころ)を否定し、われわれは現に日本人を支えてきた秩序によって生きるしかないという神道論を展開。文芸においては物のあわれを主張した宣長。その思想を追うことは、今日のわれわれ自身を知り、未来に生かすべきものと、同時に克服すべきものも見出すことだと著者はいう。日本思想史に決定的な影響を与えた宣長の本質を鮮やかに浮き彫りにした名著。 宣長は一方において物のあわれを説いた。それは、例えば悲しむべきことを悲しむことであった。他方において宣長は、よきもあしきも、すべては神のしわざであるとし、そのようにうけとめるところに安心があるといった。本居宣長を理解しようとするものは、どうしてもこの物のあわれ論と神道論とのつながり、重なりを問わないではおられない。――<本書より> ※本書の原本は、1978年、東京大学出版会より刊行されました。
電子あり
ドストエフスキー人物事典
ドストエフスキー人物事典
著:中村 健之介
講談社学術文庫
「死せる生」にあって「生ける生」を求める――。作家の分身である登場人物たちが作品の中で繰り返し展開するテーマ、それは苦痛の中に生きる人間の現実である。処女作『貧しい人たち』から絶筆となった『カラマーゾフの兄弟』まで、全小説の内容紹介とともに百九十三人の主要登場人物を論じ、ドストエフスキー文学の魅力に迫る、読む「人物事典」。(講談社学術文庫) 読む前に、読むときに、読んでから――この一冊で“文豪”のすべてがわかる! 「死せる生」にあって「生ける生」を求める――。作家の分身である登場人物たちが作品の中で繰り返し展開するテーマ、それは苦痛の中に生きる人間の現実である。処女作『貧しい人たち』から絶筆となった『カラマーゾフの兄弟』まで、全小説の内容紹介とともに百九十三人の主要登場人物を論じ、ドストエフスキー文学の魅力に迫る、読む「人物事典」。 ヂェーヴシキン(『貧しい人たち』)、ラスコーリニコフ、ソーニャ(『罪と罰』)、ムィシキン(『白痴』)、ピョートル、マリヤ(『悪鬼ども』)、アルカーヂー(『未成年』)、ドミートリー、イワン、アリョーシャ(『カラマーゾフの兄弟』)――。作家の分身たる193人の主要登場人物の徹底探究を通し、全小説を貫くテーマ、そして普遍性と現代性を浮き彫りにする。崇拝のベールを取り払い、ドストエフスキーの実像がここに現れる。 ※本書の原本は1990年、朝日新聞社から刊行されました。
電子あり
イブン=ハルドゥーン
イブン=ハルドゥーン
著:森本 公誠
講談社学術文庫
十四世紀のチュニスに生まれ、政治家として栄達と失脚を繰り返すなかで独自の「文明の学問」を拓いたイブン=ハルドゥーン。文明と王権はいかにして崩壊するのか、都会と田舎の格差はなぜ広がるのか、歴史の動因となる「連帯意識」とは――。イスラーム世界にとどまらない普遍性と警句に満ちた主著『歴史序説』の抄訳と、波瀾の生涯。(講談社学術文庫) イスラーム世界が生んだ偉大なる歴史哲学者 文明はいかに栄え、崩壊するのか。権力はなぜ堕落するのか。「連帯意識(アサビーヤ)」を鍵に人類史を分析したアラブの思想家の生涯と、代表作『歴史序説』の抄訳。 十四世紀のチュニスに生まれ、政治家として栄達と失脚を繰り返すなかで独自の「文明の学問」を拓いたイブン=ハルドゥーン。文明と王権はいかにして崩壊するのか、都会と田舎の格差はなぜ広がるのか、歴史の動因となる「連帯意識」とは――。イスラーム世界にとどまらない普遍性と警句に満ちた主著『歴史序説』の抄訳と、波瀾の生涯。(解説・池内恵) ※本書の原本『人類の知的遺産22 イブン=ハルドゥーン』は、1980年に小社より刊行されました。
電子あり
天災と国防
天災と国防
著:寺田 寅彦
講談社学術文庫
標題作「天災と国防」ほか、自らの関東大震災経験を綴った「震災日記より」、デマに対する考察「流言蜚語」など、地震・津波・火災・噴火などについての論考やエッセイ全十二編を収録。平時における備えと災害教育の必要性など、物理学者にして名随筆家ならではの議論はいまだに有効である。天災について再考するための必読書。(解説・畑村洋太郎) 天災の被害を大きくするのは人災である 悪い年回りはむしろいつかは回って来るのが自然の鉄則であると覚悟を定めて、良い年回りの間に充分の用意をしておかなければならないということは、実に明白すぎるほど明白なことであるが、またこれほど万人がきれいに忘れがちなこともまれである。 「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」 「現代では日本全体が一つの高等な有機体である。各種の動力を運ぶ電線やパイプやが縦横に交差し、いろいろな交通網がすきまもなく張り渡されているありさまは高等動物の神経や血管と同様である。その神経や血管の一か所に故障が起こればその影響はたちまち全体に波及するであろう」――<本文より抜粋> ※本書は『寺田寅彦全集』『寺田寅彦随筆集』(岩波書店)を底本に、物理学者で随筆家でもある寺田寅彦の発表したもののなかから災害に関連するものを集め、再構成したものです。
電子あり
自死の日本史
自死の日本史
著:モーリス・パンゲ,訳:竹内 信夫
講談社学術文庫
日本精神の光輝と陰影を描き出し、日本人の「運命への愛(アモール・フアテイ)」を讃える フランス最高の知性が透徹した眼差しで、日本二千年の歴史伝統に迫る 意志的に選び取られた死=自死。記紀と『万葉集』にある古代人の殉死に始まるこの風土の自死史。道真の怨霊、切腹の誕生、仏教と自死の関係を問う。『葉隠』『忠臣蔵』に表出する武士道精神と近松、西鶴が描く心中とは何か? そして近代日本が辿った運命を、芥川、太宰、三島らの作品に探る。自殺大国の謎を西欧知性が論理と慈愛で描く「画期的日本文化論」。 死の誘惑を断ち切って生き続ける力が、自分にはあるのだということを日本民族は示した。生を、平和を、労働を、日本は選んだのである。(中略)何世紀にもわたってこの日本列島の男たち、女たちを<意志的な死>に誘(いざな)ってきたさまざまな道筋を注意深く観察した結果、わたしは今でははっきりとこう言うことができる――日本人の持つあらゆる徳のなかでもひときわ優れて美しい徳はその生命力である、と。――<「日本版への序」より抜粋> ※本書の原本は1986年、筑摩書房より刊行されました。
韓国は一個の哲学である 〈理〉と〈気〉の社会システム
韓国は一個の哲学である 〈理〉と〈気〉の社会システム
著:小倉 紀蔵
講談社学術文庫
日本の道徳は古くさく韓国の道徳は青くさい 韓国社会の思想的な「しくみ」を独自の統一理論であざやかに解明する!! 「韓国に関する認識は最終的に解決された」。韓国人が垣間見せる理の顔と感情の顔、その乖離は何に由来するのか。儒教(朱子学)に基づく<理>と<気>の世界観を軸に、著者独自の「統一理論」で韓国人の思考や行動原理、そして韓国社会のメカニズムをあざやかに読み解いてゆく。思想史や歴史的経緯までも踏まえた、正しい韓国理解のための必読の一冊。 この書物では、韓国社会の思想的な「しくみ」のみが語られている。いわば学校の理科室にある骨格標本のようなものだ。肉づけをするための引用や説明はほとんど省いた。そのため読みにくいかもしれない。しかし韓国の「しくみ」を見渡すのには、よいのだ。韓国を旅しながら、韓国人と話しながら、「なぜこうなのか」と疑問に思うだろう。その答えの全豹が、この小さな本の中に書き込まれてあるのだ。――<本書より>
謡曲入門
謡曲入門
著:伊藤 正義
講談社学術文庫
謡曲研究の第一人者が、校訂作業の折にふれて記した研究余滴。それがはからずも珠玉の文章となり、すぐれた案内となった。本書は、『謡曲雑記』としてまとめられたその各稿に、後進による解説を付し、入門書として編み直したものである。「安宅」「蟻通」「邯鄲」「自然居士」「俊寛」「天鼓」「百万」「三輪」など、代表的な曲のより深い解釈と鑑賞にいざなう。(講談社学術文庫) 「謡曲入門」の決定版! 「葵上」「浮舟」「邯鄲」「融」「三輪」など、代表的な謡曲40曲を厳選し、第一人者ならではの、深い洞察に支えられた鑑賞に読者を導く。 (原本『謡曲雑記』に 収録された四十余編を曲名の五十音順に編成し直し、各曲の本論に、前付けの 解説を付し編集した)
電子あり
古代ローマの饗宴
古代ローマの饗宴
著:エウジェニア・サルツァ・プリーナ・リコッティ,訳:武谷 なおみ
講談社学術文庫
キャベツ礼賛者カトー、最高の饗宴を催した解放奴隷トリマルキオ、「真似のできない暮し」をしたクレオパトラ、葡萄酒を愛した詩人ホラティウス、消化不良のキケロ……。養殖の海魚、肥えたヤマネ、乳育のカタツムリなど贅を極めた晩餐から、農夫の質実剛健な食卓まで、二千年前、大繁栄を謳歌した帝国の食文化とは。当時の食材やレシピも多数併録。 永遠なる美食の大帝国で、人々は何をどう食べ、飲んでいたのか? 監察官カトー、武将アントニウス、詩人ホラティウス、『料理書』のアピキウス、解放奴隷、農夫……。当時のレシピも併録 キャベツ礼賛者カトー、最高の饗宴を催した解放奴隷トリマルキオ、「真似のできない暮し」をしたクレオパトラ、葡萄酒を愛した詩人ホラティウス、消化不良のキケロ……。養殖の海魚、肥えたヤマネ、乳育のカタツムリなど贅を極めた晩餐から、農夫の質実剛健な食卓まで、二千年前、大繁栄を謳歌した帝国の食文化とは。当時の食材やレシピも多数併録。 私はなにを語るのでしょう? むろんそれは古代ローマの社会生活や習慣であり、ローマ人の時間の過ごし方や、楽しみ方といったものです。友達と会うこと、愛する人と睦まじく食事をすること、好物の料理を味わうこと。結局のところ、今日私たちがやっていることとそんなに違いはありません。宴会でなにがどのようにふるまわれたかも調査ずみです。また巻末では、いくつか古代ローマのレシピを紹介します。皆様方のお国には、おいしい魚と肉、ハチミツ、それに、ローマ人が好んで用いた品々がたくさんある。だから再現はきっと可能なはずです。――<「学術文庫版によせて」より抜粋> ※本書は1991年、平凡社より刊行された『古代ローマの饗宴』を元に改変をほどこしました。
電子あり