講談社学術文庫作品一覧

西洋中世奇譚集成 妖精メリュジーヌ物語
講談社学術文庫
15世紀、フランスのポワトゥー地方。領主の命で、書籍商クードレットは家門の歴史を物語る。伯父を殺したレイモンダンは、森で出会った絶世の美女メリュジーヌと結婚。開墾、城塞、街、武勲溢れる子供たち……。しかし幸福な繁栄は、破棄された約束から暗転する。地方貴族の数奇な運命を描く一大叙事詩。(講談社学術文庫)
一地方の成立を語る。民話であり神話でもある半身蛇のメリュジーヌは、騎士に領地、城塞、子供、そして繁栄を与えた。物語の背景には、中世末の経済的発展と文化の浸透がある。ルゴフ、ラデュリ論文も併録。

エウセビオス「教会史」 (下)
講談社学術文庫
「反ユダヤ主義」の淵源とは?
迫害に次ぐ迫害からコンスタンティヌス帝の勝利まで。「キリスト教とは何か」が根本的に問われた時代を「教会史」の嚆矢に読む。
キリスト教最初期300年の歴史を記し、「反ユダヤ主義」など西洋精神史に多大な影響を与えた教会史の嚆矢を全訳。本巻では、セウェルス帝治下の迫害(203年)からエウセビオスの同時代、ミラノ勅令やリキニウス帝に対するコンスタンティヌス帝の勝利まで、迫害と殉教者、正統をめぐる百家争鳴の論戦が語られる。巻末に詳細な各種索引を付す。
エウセビオスは、ユダヤ人がイエスをキリストとして受け入れないというただそれだけの理由で、彼らにむき出しの憎悪を投げつけた。『教会史』の論客たちは、歴史の中のイエスや、その神性、正典、正統教会の聖書理解などについて挑戦的で重大な発言を繰り返した。これらはいずれも現代のわたしたちが問題にすべきものであろう。(中略)「キリスト教とは何か」を真摯に問う者は、「新しい皮袋に新しい酒」(マタイ、マルコ)を盛ろうとしなければならないのではないか。――<本書より>
※本書の原本は1986~1988年、山本書店から刊行されました。

乃木希典
講談社学術文庫
度を越した遊興、4度の休職と隠遁、東郷平八郎との明暗。「殉死」に沸騰する世論と、公表時に改竄された遺書。乃木希典とは、「明治国家」と根本的に相容れない人間性にもかかわらず、常に「国家意思」によって生かされ続けた人物だった。漱石、鴎外、西田幾多郎らの乃木評から小学生の作文まで網羅して描く「軍神」の実像と、近代日本の精神のドラマ。(講談社学術文庫)
「軍神」の実像と近代日本の宿痾を抉る名著。常に国家意思と結びつくことで生かされてきた「明治の軍神」の生涯と人物像を、一般庶民から、漱石や鴎外、西田幾多郎らの乃木評までを織り込みながら描き出す。

マハン海上権力論集
講談社学術文庫
国家の繁栄には貿易の拡大を必要とし、それにはシーレーン確保や海軍力増強が重要となる――。近代海軍の父・マハンの海上権力理論は、秋山真之をはじめとする旧日本海軍のみならず、同時代の列強、そして現代に到るまで諸国家の戦略に多大な影響を与えている。海の可能性が注目される今、大きな示唆を秘めた海洋戦略論を、代表作を通して紹介する。(講談社学術文庫)
国家の繁栄をはかる独創的なシー・パワー理論
海を制する者が世界を制す
秋山真之に多大な影響を与えた近代海軍の父、その思想と生涯
国家の繁栄には貿易の拡大を必要とし、それにはシーレーン確保や海軍力増強が重要となる――。近代海軍の父・マハンの海上権力理論は、秋山真之をはじめとする旧日本海軍のみならず、同時代の列強、そして現代に到るまで諸国家の戦略に多大な影響を与えている。海の可能性が注目される今、大きな示唆を秘めた海洋戦略論を、代表作を通して紹介する。
海軍士官、海軍史家、大海軍主義(ネイヴアリズム)のイデオローグ、戦略家、世界政治の評論家。さらに彼は「帝国主義者」をもって自任し、海外進出のプロパガンティストとして筆を振るい、世紀転換期の膨張政策を正当化するために、一連の時代思潮を、ときには相矛盾する形で体現する思想家でもあった。本書では、このようなマハンの著作から代表的な文章を7編選んでみた。――<本書「解説」より>
※本書は1977年、研究社出版株式会社から刊行された「アメリカ古典文庫8 アルフレッド・T・マハン」をもとに、「解説」などの新規加筆を行ない、再編集を施しました。

黄金の世界史
講談社学術文庫
フロイト曰く「黄金は人間の深い潜在意識の中で本能を満足させる」と。エジプトの黄金の王墓、南米の黄金文明、中国の絢爛な王宮……。政治の覇者は必ず金を求めた。古代、大帝国時代を経て、大航海時代の金銀の大流入で、西欧へと覇権が動く近代、産業資本主義の発展と金本位制が崩壊した現代まで、「金」という視座から見たもう1つの世界史を読む。
ケインズは「黄金と繁栄・権力は、同居する」と信じていた
先史時代から現代まで、5000年の金銀の動きを追跡し、黄金と覇権の所在の不思議な符合を辿る。人類学と歴史学の知見を駆使して、黄金の魔力に迫る。
フロイト曰く「黄金は人間の深い潜在意識の中で本能を満足させる」と。エジプトの黄金の王墓、南米の黄金文明、中国の絢爛な王宮……。政治の覇者は必ず金を求めた。古代、大帝国時代を経て、大航海時代の金銀の大流入で、西欧へと覇権が動く近代、産業資本主義の発展と金本位制が崩壊した現代まで、「金」という視座から見たもう1つの世界史を読む。
※本書の原本は、1997年小学館より刊行されました。

エウセビオス「教会史」 (上)
講談社学術文庫
キリスト教史の最も重要な1章
イエスの受肉からコンスタンティヌスによる「公認」までを描き、その後の西欧精神史に決定的影響を与えた最初のキリスト教会史!
イエスの出現から「殉教の時代」を経てコンスタンティヌス帝のミラノ勅令による「公認」まで、キリスト教最初期300年の歴史。以後記される教会史の雛形となって著者エウセビオスを「教会史の父」と呼ばしめ、アウグスティヌスの著作とともに現代に至るキリスト教世界の価値観の原点ともなった『教会史』全10巻を全訳、詳細な註と解説を付す。
エウセビオスの『教会史』は、イエスの出現からはじまってキリスト教が帝国の「公認宗教」と認知されるまでの、教会形成と発展の過程における歴史を語ったものである。その歴史とは、キリストについて「証しする」ことがキリストのために「殉教する」ことと同義語であった時代の歴史であり、キリスト教側の弁証家や護教家が、ユダヤ教や諸宗教にたいして、自己が奉ずる宗教の「存在理由」を明確かつ強力に主張するために、それを「定義した」時代の歴史でもある。――<「訳者はしがき」より>
※本書の原本は1986~1988年、山本書店から刊行されました。

「書」と漢字
講談社学術文庫
聖徳太子、光明皇后、空海、小野道風……名筆は、いかにして生まれたか!?
日本書道史上の逸品中の逸品の謎を、精緻に解き明かした力作。
「三経義疏」は聖徳太子の自筆か。正倉院に蔵された書のなりたちとは。空海の最高傑作「風信帖」の理念。天才児・小野道風の感性――漢字が日本に伝わり機能しはじめる飛鳥時代から、本格的に和様が完成される平安中期まで、書法にこめられた造形性とはどのようなものだったか。書道史上に残る逸品を解析しつつ、書と漢字の受容と展開をあとづける。
本書はそのような新しい学問の傾向に感化を受けながら、大陸から日本に漢字が伝えられ、それを日本がどのように受け入れ、さらに日本人の感性に適合させていったかということを、とくに造形の面に視点を置いて述べたものである。
漢字のもつ基本的な造形に、毛筆を通じた豊かな表現性が加わり、書の歴史は形成されていった。漢字がなければ書は生まれなかったし、毛筆がなくても書にはならなかっただろう。もとより日本がなくては、和様の書法は生まれるべくもなかったことをあえて述べて、これから本論に入ることにしよう。――<本書「序章」より>

美術という見世物 油絵茶屋の時代
講談社学術文庫
写真油絵、生人形、パノラマ館、石膏細工、西洋目鏡……「よくお目を止めて御覧下さい」
「西欧の近代」と「江戸の伝統」の邂逅……。官による「美術」の指導と民の「見世物」への欲望が交錯した幕末・明治を徹底的に再検証する。
解説:丹尾安典
なぜ仏像は日本美術を代表する彫刻作品になったのか? この問いに答えるために、細工師、油画師、彫刻師たちが活躍した幕末・明治の見世物小屋を訪れるところから始めよう。粋な口上とともに陳列されるは、生人形、西洋目鏡、写真掛軸、写真油絵、戦場パノラマ……。文明の衝突!?が生んだ「奇妙な果実」を検証し、美術周辺の豊饒な世界を再評価する。
美術館関係者は、美術展が見世物だと呼ばれることをひどく嫌うのである。(略)見世物は美術展が生まれ育った家なのである。長じてのち生家をやみくもに忌み嫌い、その貧しさを恥じるのは、実は、近代社会の中で、日本人が美術にどのような地位を与えてきたかに密接にからんでいる。見世物に向けた憎悪の形成は、近代美術の形成と裏表の関係にある。そのあたりの事情を知るために、生家は本当に貧しかったのかどうかを見つめ直すことから、本書を始めようと思う。――<「乍憚口上」より>
※本書の原本は、1993年、平凡社より刊行されました。

冒険商人シャルダン
講談社学術文庫
多様な宗教と言語が行き交うペルシアで成功を収めた商人にして旅行記作家のジャン・シャルダンは、新教への迫害が続く息苦しい故郷・パリを捨ててロンドンに移住し、爵位を得た。しかし、彼の最大の悩みは、怠け者の長男の行く末だった――。時代に翻弄されつつ「一級史料」を書き残した市井の人物の生涯と、彼らが生きた17世紀の社会を活写する。(講談社学術文庫)
世界を旅し、記録した「マイナーな男」の波瀾万丈
時代に翻弄され、家庭に悩んだ旅行記作家の生涯。歴史の小さな襞から、17世紀の<世界>を照らし出す。
多様な宗教と言語が行き交うペルシアで成功を収めた商人にして旅行記作家のジャン・シャルダンは、新教への迫害が続く息苦しい故郷・パリを捨ててロンドンに移住し、爵位を得た。しかし、彼の最大の悩みは、怠け者の長男の行く末だった――。時代に翻弄されつつ「一級史料」を書き残した市井の人物の生涯と、彼らが生きた17世紀の社会を活写する。
はじめは、300年も前のこんな「マイナーな人物」に関して十分な史料があるのだろうか、と疑っていたのだが、出るわ出るわ、こんなことまでと思うほどたくさんの新しい事実が明らかになり、私はシャルダン研究に夢中になっていった。第4章の冒頭にも記したように、史料としてまだほとんど使われていないシャルダン関係の大量の手紙や文書類をイェール大学で「発見」した時、私の興奮は最高潮に達した。――<「おわりに」より>
※本書の原本は、『勲爵士シャルダンの生涯――十七世紀のヨーロッパとイスラーム世界』として、1999年に中央公論新社より刊行されました。

慈悲
講談社学術文庫
稀代の仏教学者が追究した仏道の根本概念 その出発点にして到達点
他者へのあたたかな共感がここにある
友愛の念「慈」、哀憐の情「悲」。生きとし生けるものの苦しみを自らのものとする仏の心、そして呻きや苦しみを知る者のみが持つあらゆる人々への共感、慈悲。仏教の根本、あるいは仏そのものとされる最重要概念を精緻に分析、釈迦の思惟を探究し、仏教精神の社会的実践の出発点を提示する。仏教の真髄と現代的意義を鮮やかに描いた、仏教学不朽の書。
慈悲の実践はひとが自他不二の方向に向って行為的に動くことのうちに存する。それは個々の場合に自己をすてて他人を生かすことであるといってもよいであろう。(中略)それは個別的な場合に即して実現さるべきものであるが、しかも時間的・空間的限定を超えた永遠の意義をもって来る。それは宗教に基礎づけられた倫理的実践であるということができるであろう。かかる実践は、けだし容易ならぬものであり、凡夫の望み得べくもないことであるかもしれない。しかしいかにたどたどしくとも、光りを求めて微々たる歩みを進めることは、人生に真のよろこびをもたらすものとなるであろう。――<「結語」より>
※本書の原本は、1956年に平楽寺書店より刊行されました。

秘密結社
講談社学術文庫
人間社会にあまねく存在する「秘密」。メンバー共通の利害と連帯感からなる「集団」。そこに加入するための「儀礼」。それらをあわせ持つ「秘密結社」の起源と実態を文化人類学の泰斗が解き明かす。アメリカ社会とK・K・K、暗殺教団と去勢教徒、幕末維新とフリーメーソン、モーツァルト作品に描かれた「秘儀」などのほか、「世界 秘密結社事典」を収録。(講談社学術文庫)
文化人類学からみた謎の結社と儀礼の世界。「秘密」と「集団」、加入の「儀礼」。文化人類学の視点で、人間社会にあまねく存在する「秘密結社」の歴史と実態を解き明かす快著。付録に「世界秘密結社事典」

不安定からの発想
講談社学術文庫
ライト兄弟はどうして大空を飛べたのか。それを可能にしたものは、勇気と主体的な制御思想だった。空が不安定なものであることを受け入れ、過度な安定に身を置かず、自らが操縦桿を握ることで安定を生み出すのだと。それはわれわれの人生に重なる発想ではないか――。現代社会を生きる人々に航空工学の泰斗が贈る不安定な時代を生き抜く逆転の発想。(講談社学術文庫)
なぜライト兄弟は空を飛べたのか――
安定を捨てよ!
不安定なシステムをみずから操縦し、自由な大空へ飛び立て!
ライト兄弟はどうして大空を飛べたのか。それを可能にしたものは、勇気と主体的な制御思想だった。空が不安定なものであることを受け入れ、過度な安定に身を置かず、自らが操縦桿を握ることで安定を生み出すのだと。それはわれわれの人生に重なる発想ではないか――。現代社会を生きる人々に航空工学の泰斗が贈る不安定な時代を生き抜く逆転の発想。
われわれは安定という表現を誤って理解し、誤って使用していたのではなかろうか。(略)われわれは人生を、また社会を、手放し飛行で飛んでいるのではない。われわれは自分を、会社を、政体を完全に、あるいは部分的でも操縦、すなわち、制御する能力があり、責任があり、可能性がある。そのとき、人生または社会が安定であることは望ましいが、たとえ不安定であっても希望はある。むしろ、不安定な人生や社会を乗りきろうとするときこそ、積極的に変革しやすいかもしれない。――<本書より>
※本書の原本は、1977年、ダイヤモンド社から刊行されました。

漢文法基礎 本当にわかる漢文入門
講談社学術文庫
漢文」とはなにか
受験参考書をはるかに超え出たZ会伝説の名著、待望の新版!
訓読のコツとは。助字の「語感」をどう読み取り、文章の「骨格」をいかに発見するか――。漢文読解の基礎力を養い、真の「国語力」を身につけるために、1970年代より形を変え版を重ねながら受験生を支え続けてきた名著を修補改訂。大学入試攻略などは当たり前、第一人者が気骨ある受験生、中国古典を最高の友人としたい人へ贈る本格派入門書。
基礎とはなにか。二畳庵先生が考える基礎ということばは、基礎医学とか、基礎物理研究所といったことばで使われているような意味なんだ。(中略)基礎というのは、初歩的知識に対して、いったいそれはいかなる意味をもっているのか、ということ。つまりその本質を反省することなのである。初歩的知識を確認したり、初歩的知識を覚える、といったことではなく、その初歩的知識を材料にして、それのもっている本質を根本的に反省するということなのだ。――<本書より>
※本書は1984年10月に増進会出版社より刊行された『漢文法基礎』(新版)を大幅に改訂したものです。

怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史
講談社学術文庫
偉大な皇帝ナポレオンの凡庸な甥が、陰謀とクー・デタで権力を握った、間抜けな皇帝=ナポレオン三世。しかしこの紋切り型では、この摩訶不思議な人物の全貌は掴みきれない。近現代史の分水嶺は、ナポレオン三世と第二帝政にある。「博覧会的」なるものが、産業資本主義へと発展し、パリ改造が美しき都を生み出したのだ。謎多き皇帝の圧巻の大評伝!(講談社学術文庫)
史上最悪の皇帝は本当に大バカだったのか? 漁色家、放蕩家、陰謀家、そして捕虜になった間抜けな皇帝、一方、パリ大改造、消費資本主義を発明し、世界史の流れを変えた男。一大伝記ついに登場!

続日本後紀(下) 全現代語訳
講談社学術文庫
「六国史」の第四、平安初期王朝社会における国風文化や摂関政治の発達を解明するための最重要史料の、初の現代語訳。先行研究をふまえて再検討した原文本文も付す。編纂の最高責任者であった藤原良房は、藤原北家の擅権体制確立にどんな役割を演じたか――。本巻は「承和の変」の起きた承和9(842)年から仁明天皇崩御(850年)までを描く。(講談社学術文庫)
華やかな平安王朝社会、擡頭する藤原北家
「最後の遣唐使」の苦難、承和の変……仁明天皇期を描く<六国史>第四
「六国史」の第四、平安初期王朝社会における国風文化や摂関政治の発達を解明するための最重要史料の、初の現代語訳。先行研究をふまえて再検討した原文本文も付す。編纂の最高責任者であった藤原良房は、藤原北家の擅権体制確立にどんな役割を演じたか――。本巻は「承和の変」の起きた承和9(842)年から仁明天皇崩御(850年)までを描く。

チーズのきた道
講談社学術文庫
「乳の生化学」の第一人者が明かす、チーズの起源と分類法、そしてそれらを育んだ風土。栄養価が高く保存性に優れたチーズを、各地の部族は、その存亡をかけて育ててきた。モンゴルのホロート、古代ローマのチーズ菓子、フランスのカマンベール、日本の酥(そ)など、古今東西の文献を渉猟し、乳文化を実地に探訪。「人類にとっての食文化」に考察は及ぶ。(講談社学術文庫)
「乳の生化学者」が調べ上げた起源と歴史、育んだ風土
ヨーロッパ・中東から、インド・モンゴル・日本まで世界のチーズと乳文化を探訪
「乳の生化学」の第一人者が明かす、チーズの起源と分類法、そしてそれらを育んだ風土。栄養価が高く保存性に優れたチーズを、各地の部族は、その存亡をかけて育ててきた。モンゴルのホロート、古代ローマのチーズ菓子、フランスのカマンベール、日本の酥(そ)など、古今東西の文献を渉猟し、乳文化を実地に探訪。「人類にとっての食文化」に考察は及ぶ。
※本書の原本は、1977年、河出書房新社より刊行されました。

日本〈聖女〉論序説 斎宮・女神・中将姫
講談社学術文庫
密通する斎宮たち 苦悩する女神たち
古来、女性に付与されてきた「聖性」を刺激的に読み解く!
継母の嫉妬からいじめにあう中将姫。継子いじめの物語はどうして「女の病」にむすびつき、純潔な聖女となっていくのか。天皇の代がわりごとに伊勢に仕える女性として選ばれる斎宮。未婚の内親王である彼女たちの密通とは。そして三輪明神が女神として描かれる能「三輪」――。さまざまな物語のゆくえをたどり、女性の聖なる力とは何かを考える力作。
これまで女神の嫉妬の様相をいくつかみてきたが、いずれの場合も、嫉妬する方は正妻、嫉妬されるのは正妻の後に契った女性という共通点がある。現代の人間からみるとこれは当たり前のようだが、男1人を挟んで女2人がにらみ合うというのならば、後から関係を持った女がもとからの妻に嫉妬してもいいはずだ。それなのにほとんどすべての例が「嫉妬するのは先妻の方」というのは、その背景に「後妻打ち」という中世の習俗があったからではないだろうか。――<本書より>
※本書は、1996年4月、人文書院より刊行された『聖なる女――斎宮・女神・中将姫』を改題し、原本としたものです。

続日本後紀(上) 全現代語訳
講談社学術文庫
『日本後紀』に続く正史「六国史」第四。仁明天皇の即位(833年)から崩御(850年)までを詳密に綴る。父嵯峨天皇が先鞭をつけた詩文興隆を始めとする王朝文化は一層華やいだものとなる一方、藤原北家が摂関家として権力を掌握してゆく……。平安朝初期繁栄期の理解に不可欠な重要史料の初の現代語訳。本巻は承和8(841)年までを描く。(講談社学術文庫)
<六国史>第四、待望の現代語訳(付・原文)
国風文化の開花、摂関政治の展開――平安王朝初期の繁栄を詳密に描く
『日本後紀』に続く正史「六国史」第四。仁明天皇の即位(833年)から崩御(850年)までを詳密に綴る。父嵯峨天皇が先鞭をつけた詩文興隆を始めとする王朝文化は一層華やいだものとなる一方、藤原北家が摂関家として権力を掌握してゆく……。平安朝初期繁栄期の理解に不可欠な重要史料の初の現代語訳。本巻は承和8(841)年までを描く。

武士道
講談社学術文庫
“彼は「侍(さむらい)」である”という表現が今日でもしばしば使われる。では、侍とはいかなる精神構造・姿勢を指すのか――この問いから本書は書き起こされる。主従とは、死とは、名と恥とは……。『葉隠』『甲陽軍鑑』『武道初心集』『山鹿語類』など、武士道にかかわるテキストを広く渉猟し、読み解き、日本人の死生観を明らかにした、日本思想史研究の名作。(講談社学術文庫)
死を覚悟し、名を重んじ、我に勝つ
苛烈な武士の精神に日本人の思想のバックボーンを
見通した名著!
“彼は「侍(さむらい)」である”という表現が今日でもしばしば使われる。では、侍とはいかなる精神構造・姿勢を指すのか――この問いから本書は書き起こされる。主従とは、死とは、名と恥とは……。『葉隠』『甲陽軍鑑』『武道初心集』『山鹿語類』など、武士道にかかわるテキストを広く渉猟し、読み解き、日本人の死生観を明らかにした、日本思想史研究の名作。
「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」(『葉隠』)
人間というものは、何らかの絶対永遠なるものがなければ、生きて行けない。まして、死の覚悟などをきめることは出来ない。武士一般には来世が存在しなかったから、彼らが何を究極的なよりどころとしていたかが考えられなければなるまい。私はそれを、地上のものでありつつ地上をこえた人倫、名のはこばれる場としての武士社会の無窮性が、『葉隠』武士道を支える究極のものであったと思う。――<本書より>
※本書の原本は、1968年、塙書房より刊行されました。

倭国伝 全訳注 中国正史に描かれた日本
講談社学術文庫
古来、日本は中国からどのように見られてきたのか。金印受賜、卑弥呼と邪馬台国、倭の五王、「日出ずる処」国書、「日本」国号、朝鮮半島と動乱の7世紀、遣唐使、僧侶や商人の活躍、蒙古襲来、勘合貿易、倭寇、秀吉の朝鮮出兵。そこに東アジアの中の日本が浮かび上がる――。中国歴代正史に描かれた1500年余の日本の姿を完訳する、中国から見た日本通史。
中国歴代王朝が綴る歴史書の中の日本
漢委奴国王金印、邪馬台国、倭の五王、秀吉の朝鮮出兵――中国が見た日本の1500年
古来、日本は中国からどのように見られてきたのか。金印受賜、卑弥呼と邪馬台国、倭の五王、「日出ずる処」国書、「日本」国号、朝鮮半島と動乱の7世紀、遣唐使、僧侶や商人の活躍、蒙古襲来、勘合貿易、倭寇、秀吉の朝鮮出兵。そこに東アジアの中の日本が浮かび上がる――。中国歴代正史に描かれた1500年余の日本の姿を完訳する、中国から見た日本通史。