講談社学術文庫作品一覧

冒険商人シャルダン
講談社学術文庫
多様な宗教と言語が行き交うペルシアで成功を収めた商人にして旅行記作家のジャン・シャルダンは、新教への迫害が続く息苦しい故郷・パリを捨ててロンドンに移住し、爵位を得た。しかし、彼の最大の悩みは、怠け者の長男の行く末だった――。時代に翻弄されつつ「一級史料」を書き残した市井の人物の生涯と、彼らが生きた17世紀の社会を活写する。(講談社学術文庫)
世界を旅し、記録した「マイナーな男」の波瀾万丈
時代に翻弄され、家庭に悩んだ旅行記作家の生涯。歴史の小さな襞から、17世紀の<世界>を照らし出す。
多様な宗教と言語が行き交うペルシアで成功を収めた商人にして旅行記作家のジャン・シャルダンは、新教への迫害が続く息苦しい故郷・パリを捨ててロンドンに移住し、爵位を得た。しかし、彼の最大の悩みは、怠け者の長男の行く末だった――。時代に翻弄されつつ「一級史料」を書き残した市井の人物の生涯と、彼らが生きた17世紀の社会を活写する。
はじめは、300年も前のこんな「マイナーな人物」に関して十分な史料があるのだろうか、と疑っていたのだが、出るわ出るわ、こんなことまでと思うほどたくさんの新しい事実が明らかになり、私はシャルダン研究に夢中になっていった。第4章の冒頭にも記したように、史料としてまだほとんど使われていないシャルダン関係の大量の手紙や文書類をイェール大学で「発見」した時、私の興奮は最高潮に達した。――<「おわりに」より>
※本書の原本は、『勲爵士シャルダンの生涯――十七世紀のヨーロッパとイスラーム世界』として、1999年に中央公論新社より刊行されました。

慈悲
講談社学術文庫
稀代の仏教学者が追究した仏道の根本概念 その出発点にして到達点
他者へのあたたかな共感がここにある
友愛の念「慈」、哀憐の情「悲」。生きとし生けるものの苦しみを自らのものとする仏の心、そして呻きや苦しみを知る者のみが持つあらゆる人々への共感、慈悲。仏教の根本、あるいは仏そのものとされる最重要概念を精緻に分析、釈迦の思惟を探究し、仏教精神の社会的実践の出発点を提示する。仏教の真髄と現代的意義を鮮やかに描いた、仏教学不朽の書。
慈悲の実践はひとが自他不二の方向に向って行為的に動くことのうちに存する。それは個々の場合に自己をすてて他人を生かすことであるといってもよいであろう。(中略)それは個別的な場合に即して実現さるべきものであるが、しかも時間的・空間的限定を超えた永遠の意義をもって来る。それは宗教に基礎づけられた倫理的実践であるということができるであろう。かかる実践は、けだし容易ならぬものであり、凡夫の望み得べくもないことであるかもしれない。しかしいかにたどたどしくとも、光りを求めて微々たる歩みを進めることは、人生に真のよろこびをもたらすものとなるであろう。――<「結語」より>
※本書の原本は、1956年に平楽寺書店より刊行されました。

秘密結社
講談社学術文庫
人間社会にあまねく存在する「秘密」。メンバー共通の利害と連帯感からなる「集団」。そこに加入するための「儀礼」。それらをあわせ持つ「秘密結社」の起源と実態を文化人類学の泰斗が解き明かす。アメリカ社会とK・K・K、暗殺教団と去勢教徒、幕末維新とフリーメーソン、モーツァルト作品に描かれた「秘儀」などのほか、「世界 秘密結社事典」を収録。(講談社学術文庫)
文化人類学からみた謎の結社と儀礼の世界。「秘密」と「集団」、加入の「儀礼」。文化人類学の視点で、人間社会にあまねく存在する「秘密結社」の歴史と実態を解き明かす快著。付録に「世界秘密結社事典」

不安定からの発想
講談社学術文庫
ライト兄弟はどうして大空を飛べたのか。それを可能にしたものは、勇気と主体的な制御思想だった。空が不安定なものであることを受け入れ、過度な安定に身を置かず、自らが操縦桿を握ることで安定を生み出すのだと。それはわれわれの人生に重なる発想ではないか――。現代社会を生きる人々に航空工学の泰斗が贈る不安定な時代を生き抜く逆転の発想。(講談社学術文庫)
なぜライト兄弟は空を飛べたのか――
安定を捨てよ!
不安定なシステムをみずから操縦し、自由な大空へ飛び立て!
ライト兄弟はどうして大空を飛べたのか。それを可能にしたものは、勇気と主体的な制御思想だった。空が不安定なものであることを受け入れ、過度な安定に身を置かず、自らが操縦桿を握ることで安定を生み出すのだと。それはわれわれの人生に重なる発想ではないか――。現代社会を生きる人々に航空工学の泰斗が贈る不安定な時代を生き抜く逆転の発想。
われわれは安定という表現を誤って理解し、誤って使用していたのではなかろうか。(略)われわれは人生を、また社会を、手放し飛行で飛んでいるのではない。われわれは自分を、会社を、政体を完全に、あるいは部分的でも操縦、すなわち、制御する能力があり、責任があり、可能性がある。そのとき、人生または社会が安定であることは望ましいが、たとえ不安定であっても希望はある。むしろ、不安定な人生や社会を乗りきろうとするときこそ、積極的に変革しやすいかもしれない。――<本書より>
※本書の原本は、1977年、ダイヤモンド社から刊行されました。

漢文法基礎 本当にわかる漢文入門
講談社学術文庫
漢文」とはなにか
受験参考書をはるかに超え出たZ会伝説の名著、待望の新版!
訓読のコツとは。助字の「語感」をどう読み取り、文章の「骨格」をいかに発見するか――。漢文読解の基礎力を養い、真の「国語力」を身につけるために、1970年代より形を変え版を重ねながら受験生を支え続けてきた名著を修補改訂。大学入試攻略などは当たり前、第一人者が気骨ある受験生、中国古典を最高の友人としたい人へ贈る本格派入門書。
基礎とはなにか。二畳庵先生が考える基礎ということばは、基礎医学とか、基礎物理研究所といったことばで使われているような意味なんだ。(中略)基礎というのは、初歩的知識に対して、いったいそれはいかなる意味をもっているのか、ということ。つまりその本質を反省することなのである。初歩的知識を確認したり、初歩的知識を覚える、といったことではなく、その初歩的知識を材料にして、それのもっている本質を根本的に反省するということなのだ。――<本書より>
※本書は1984年10月に増進会出版社より刊行された『漢文法基礎』(新版)を大幅に改訂したものです。

怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史
講談社学術文庫
偉大な皇帝ナポレオンの凡庸な甥が、陰謀とクー・デタで権力を握った、間抜けな皇帝=ナポレオン三世。しかしこの紋切り型では、この摩訶不思議な人物の全貌は掴みきれない。近現代史の分水嶺は、ナポレオン三世と第二帝政にある。「博覧会的」なるものが、産業資本主義へと発展し、パリ改造が美しき都を生み出したのだ。謎多き皇帝の圧巻の大評伝!(講談社学術文庫)
史上最悪の皇帝は本当に大バカだったのか? 漁色家、放蕩家、陰謀家、そして捕虜になった間抜けな皇帝、一方、パリ大改造、消費資本主義を発明し、世界史の流れを変えた男。一大伝記ついに登場!

続日本後紀(下) 全現代語訳
講談社学術文庫
「六国史」の第四、平安初期王朝社会における国風文化や摂関政治の発達を解明するための最重要史料の、初の現代語訳。先行研究をふまえて再検討した原文本文も付す。編纂の最高責任者であった藤原良房は、藤原北家の擅権体制確立にどんな役割を演じたか――。本巻は「承和の変」の起きた承和9(842)年から仁明天皇崩御(850年)までを描く。(講談社学術文庫)
華やかな平安王朝社会、擡頭する藤原北家
「最後の遣唐使」の苦難、承和の変……仁明天皇期を描く<六国史>第四
「六国史」の第四、平安初期王朝社会における国風文化や摂関政治の発達を解明するための最重要史料の、初の現代語訳。先行研究をふまえて再検討した原文本文も付す。編纂の最高責任者であった藤原良房は、藤原北家の擅権体制確立にどんな役割を演じたか――。本巻は「承和の変」の起きた承和9(842)年から仁明天皇崩御(850年)までを描く。

チーズのきた道
講談社学術文庫
「乳の生化学」の第一人者が明かす、チーズの起源と分類法、そしてそれらを育んだ風土。栄養価が高く保存性に優れたチーズを、各地の部族は、その存亡をかけて育ててきた。モンゴルのホロート、古代ローマのチーズ菓子、フランスのカマンベール、日本の酥(そ)など、古今東西の文献を渉猟し、乳文化を実地に探訪。「人類にとっての食文化」に考察は及ぶ。(講談社学術文庫)
「乳の生化学者」が調べ上げた起源と歴史、育んだ風土
ヨーロッパ・中東から、インド・モンゴル・日本まで世界のチーズと乳文化を探訪
「乳の生化学」の第一人者が明かす、チーズの起源と分類法、そしてそれらを育んだ風土。栄養価が高く保存性に優れたチーズを、各地の部族は、その存亡をかけて育ててきた。モンゴルのホロート、古代ローマのチーズ菓子、フランスのカマンベール、日本の酥(そ)など、古今東西の文献を渉猟し、乳文化を実地に探訪。「人類にとっての食文化」に考察は及ぶ。
※本書の原本は、1977年、河出書房新社より刊行されました。

日本〈聖女〉論序説 斎宮・女神・中将姫
講談社学術文庫
密通する斎宮たち 苦悩する女神たち
古来、女性に付与されてきた「聖性」を刺激的に読み解く!
継母の嫉妬からいじめにあう中将姫。継子いじめの物語はどうして「女の病」にむすびつき、純潔な聖女となっていくのか。天皇の代がわりごとに伊勢に仕える女性として選ばれる斎宮。未婚の内親王である彼女たちの密通とは。そして三輪明神が女神として描かれる能「三輪」――。さまざまな物語のゆくえをたどり、女性の聖なる力とは何かを考える力作。
これまで女神の嫉妬の様相をいくつかみてきたが、いずれの場合も、嫉妬する方は正妻、嫉妬されるのは正妻の後に契った女性という共通点がある。現代の人間からみるとこれは当たり前のようだが、男1人を挟んで女2人がにらみ合うというのならば、後から関係を持った女がもとからの妻に嫉妬してもいいはずだ。それなのにほとんどすべての例が「嫉妬するのは先妻の方」というのは、その背景に「後妻打ち」という中世の習俗があったからではないだろうか。――<本書より>
※本書は、1996年4月、人文書院より刊行された『聖なる女――斎宮・女神・中将姫』を改題し、原本としたものです。

続日本後紀(上) 全現代語訳
講談社学術文庫
『日本後紀』に続く正史「六国史」第四。仁明天皇の即位(833年)から崩御(850年)までを詳密に綴る。父嵯峨天皇が先鞭をつけた詩文興隆を始めとする王朝文化は一層華やいだものとなる一方、藤原北家が摂関家として権力を掌握してゆく……。平安朝初期繁栄期の理解に不可欠な重要史料の初の現代語訳。本巻は承和8(841)年までを描く。(講談社学術文庫)
<六国史>第四、待望の現代語訳(付・原文)
国風文化の開花、摂関政治の展開――平安王朝初期の繁栄を詳密に描く
『日本後紀』に続く正史「六国史」第四。仁明天皇の即位(833年)から崩御(850年)までを詳密に綴る。父嵯峨天皇が先鞭をつけた詩文興隆を始めとする王朝文化は一層華やいだものとなる一方、藤原北家が摂関家として権力を掌握してゆく……。平安朝初期繁栄期の理解に不可欠な重要史料の初の現代語訳。本巻は承和8(841)年までを描く。

武士道
講談社学術文庫
“彼は「侍(さむらい)」である”という表現が今日でもしばしば使われる。では、侍とはいかなる精神構造・姿勢を指すのか――この問いから本書は書き起こされる。主従とは、死とは、名と恥とは……。『葉隠』『甲陽軍鑑』『武道初心集』『山鹿語類』など、武士道にかかわるテキストを広く渉猟し、読み解き、日本人の死生観を明らかにした、日本思想史研究の名作。(講談社学術文庫)
死を覚悟し、名を重んじ、我に勝つ
苛烈な武士の精神に日本人の思想のバックボーンを
見通した名著!
“彼は「侍(さむらい)」である”という表現が今日でもしばしば使われる。では、侍とはいかなる精神構造・姿勢を指すのか――この問いから本書は書き起こされる。主従とは、死とは、名と恥とは……。『葉隠』『甲陽軍鑑』『武道初心集』『山鹿語類』など、武士道にかかわるテキストを広く渉猟し、読み解き、日本人の死生観を明らかにした、日本思想史研究の名作。
「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」(『葉隠』)
人間というものは、何らかの絶対永遠なるものがなければ、生きて行けない。まして、死の覚悟などをきめることは出来ない。武士一般には来世が存在しなかったから、彼らが何を究極的なよりどころとしていたかが考えられなければなるまい。私はそれを、地上のものでありつつ地上をこえた人倫、名のはこばれる場としての武士社会の無窮性が、『葉隠』武士道を支える究極のものであったと思う。――<本書より>
※本書の原本は、1968年、塙書房より刊行されました。

倭国伝 全訳注 中国正史に描かれた日本
講談社学術文庫
古来、日本は中国からどのように見られてきたのか。金印受賜、卑弥呼と邪馬台国、倭の五王、「日出ずる処」国書、「日本」国号、朝鮮半島と動乱の7世紀、遣唐使、僧侶や商人の活躍、蒙古襲来、勘合貿易、倭寇、秀吉の朝鮮出兵。そこに東アジアの中の日本が浮かび上がる――。中国歴代正史に描かれた1500年余の日本の姿を完訳する、中国から見た日本通史。
中国歴代王朝が綴る歴史書の中の日本
漢委奴国王金印、邪馬台国、倭の五王、秀吉の朝鮮出兵――中国が見た日本の1500年
古来、日本は中国からどのように見られてきたのか。金印受賜、卑弥呼と邪馬台国、倭の五王、「日出ずる処」国書、「日本」国号、朝鮮半島と動乱の7世紀、遣唐使、僧侶や商人の活躍、蒙古襲来、勘合貿易、倭寇、秀吉の朝鮮出兵。そこに東アジアの中の日本が浮かび上がる――。中国歴代正史に描かれた1500年余の日本の姿を完訳する、中国から見た日本通史。

明治鉄道物語
講談社学術文庫
近代は鉄道でやってきた!
交通・流通・産業を発展させた文明開化の象徴。その発展と普及をめぐる人間模様とは?
文明開化が謳われる明治初年、時代を象徴する最先端技術として鉄道は日本に登場した。交通や流通、産業を飛躍的に発展させた近代化の牽引車ともいえる舶来の技術に、人々はどう対応し、どのような苦難を乗り越えてわがものとして、そこにはどんな人間模様が描かれたのか――。鉄道史研究の泰斗が鉄道の受容と発展を通して活写する、近代日本の横顔。
※本書の原本は1983年、筑摩書房から刊行されました。

人間的自由の条件 ヘーゲルとポストモダン思想
講談社学術文庫
近代国家と資本主義の正当性とは?
「人間的自由」の本質に立ち戻り近現代思想を根本から問い返す!
「国家」と「資本主義」の矛盾を克服し、その獰猛な格差原理を制御する新しい時代思想はいかにして可能か。ポストモダン思想をはじめとする20世紀社会思想の対抗原理の枠組みが失効したいま、資本主義的自由国家の「正当性」をどう哲学的に基礎づけるか。カント、ヘーゲル、マルクスら近代哲学に立ち戻り現代社会の行き先を再検証する画期的論考。
ヘーゲルは、「人間的自由」の本質は必ず近代の「自由国家」を必然化し、またそれは「放埒な欲求の体系」(競争的資本主義)へ転化すると考えた。そして近代国家の「人倫」の原理だけが、この矛盾を内的に制御し克服しうると主張した。……われわれはヘーゲルが近代国家論を完成したと考えたこの場面に立ち戻り、ヘーゲルの構想を、もういちど人間的自由の本質からはじめて“解体構築”しなおす必要があるのだ。――<本書より>

クビライの挑戦 モンゴルによる世界史の大転回
講談社学術文庫
13世紀初頭に忽然と現れた遊牧国家モンゴルは、ユーラシアの東西をたちまち統合し、世界史に画期をもたらした。チンギス・カンの孫、クビライが構想した世界国家と経済のシステムとは。「元寇」や「タタルのくびき」など「野蛮な破壊者」というイメージを覆し、西欧中心・中華中心の歴史観を超える新たな世界史像を描く。サントリー学芸賞受賞作。(講談社学術文庫)
「モンゴル時代」こそが世界史の転機だった。チンギス・カンの孫クビライは、ユーラシアの東西を海陸からゆるやかに統合した。人類史上に類のない帝国「大モンゴル」の興亡を描き、新たな世界史像を提示する。

中国春画論序説
講談社学術文庫
中国は「開放的」、日本は「褻視的」である
風水・タオが教える「気」の満ちた空間での情交を夢みた中国人の身体観・宇宙観・肉麻観を読み解く
身体よりも象徴に、絵よりも文字に、性器よりも行為に、肉が麻(むずむず)する中国的感性は、独特の春画世界を創出した。屋外風の場所で、無表情(ニル・アドミラリ)かつ性差不明の男女が交合するのだ。老荘思想、房中術、煉丹術、園林術、纏足愛好、怪異趣味などが織りなす中国春画の不思議な文法(グラマー)とは? 日本、インド、西欧の春画との縦横な比較で、中国的快楽の源泉を探る。
中国美術でいうところの絵画、すなわち山水画、花鳥画、人物画などに、それぞれのグラマーがあるように、「低俗」な春画にもまた、しかるべきグラマーがあるはずだ。グラマーとは、たとえば「中国の山水画には絶えて地平線が引かれたことはない」といった素朴な基本原理(グラマー)のことである。そのグラマーのキーワードは、庭園と肉体にあると、私はかねてから考え、すこしずつ書いてもいた。それらの考えを新たに再構成し、書きおろしたのが本書である。――<「あとがき」より抜粋>
※本書の原本『肉麻図譜 中国春画論序説』は2001年、作品社から刊行されました。

日本の鬼 日本文化探求の視角
講談社学術文庫
オニの風土記
恐るべき怪異、虚空の雷神、滑稽な邪鬼……「鬼」はどのように変幻し、われわれの生活感情の中に棲み続けてきたか。説話・伝承・芸能、絵画・造形・建築資料を縦横無尽に読み解く日本人の心性史。
怪異として、神として、あるいは笑いの対象として日本人の生活感情に棲み続ける鬼。その形姿はどのように成立したか。「鬼的」なるものへの恐怖と信仰は、説話や伝承、芸能、絵画・造形、精神文化の上にどう「変幻」し、形をとどめたか。鬼の本質を自然の破壊的エネルギーに捉え、風神雷神から「かきつばた」まで、鬼を通して日本の風土を読み解く。
※本書の原本は、1975年に桜楓社より刊行されました。

満州事変
講談社学術文庫
1931年9月18日、奉天郊外の柳条湖で南満州鉄道の線路が爆破された。この事件を契機に、大陸での勢力拡大を目論む関東軍は満州(現・中国東北部)全土を占領する。膨大な史料の精緻な読みをとおして、第一次山東出兵、張作霖爆殺事件から、関東軍の暴走、満州国建国、国際連盟脱退まで、当時の状況を詳細に再現、近現代史の問題点を抉剔する。(講談社学術文庫)
十五年戦争の契機となった紛争の実像とは? 現在の日中関係にも影を落とす満州事変。山東出兵、張作霖爆殺、満州国建国、国際連盟脱退――。膨大な史料の精緻な読みによって、事件の全貌を鮮やかに再現する。

万葉集鑑賞事典
講談社学術文庫
『万葉集』をどう読むか
代表歌165首の評釈と152項目の基礎知識。従来の読み方を見直し、真の魅力にふれるための画期的入門書!
「籠もよ み籠持ち ふくしもよ みぶくし持ち……」巻1巻頭に雄略天皇御製歌が置かれている意味とは。柿本人麻呂歌集歌はどんな位置を与えられているか。4516首の歌を題詞・左注とともに漢字で表記し、20巻のかたちに編まれた『万葉集』。代表歌165首を評釈し、知っておきたい基礎知識を平易・簡潔に解説。『万葉集』を読み、学ぶための最適の入門書。
『万葉集』は、みかけのうえでは十分整理されていないところがあります。作者名を記す巻と記さない巻とが混在し、訓主体書記を主としつつも仮名書記の巻もあります。また、最後の4巻は「歌日誌」と呼ばれたりすることもあるように家持を中心に年次を逐った構成となっています。不均質といってよいものです。……ただ、いかに不均質であっても、そうしたかたちで成り立っているのが『万葉集』なのです。その20巻でつくる『万葉集』として見ることがまず必要ではないでしょうか。――<「はじめに」より>

相撲の歴史
講談社学術文庫
大相撲=相撲ではない!
神話に登場する相撲から外国人力士問題まで、1300年超の大きな歴史の流れを描く
「国技」を問い直すための必読書
記紀神話の力くらべ、御前の女相撲、技芸による年占(としうら)が国家的行事=相撲節(すまいのせち)へと統合された律令時代。時代を下るにつれ、武芸大会へと変貌し、相撲人(すまいびと)は固定化する。寺社祭礼への奉納、武士の娯楽を経て、営利勧進相撲へと発展する江戸期。「国技」として生まれ変わる明治以降。1300年超の相撲史を総合的に読み直し、多様・国際化する相撲の現在を問う。
「大相撲」の世界が形成されてゆく過程についても、(略)きちんとした歴史的記述が与えられねばならない。(略)「大相撲」の世界が確立されてからたかだか200有余年であるのに対し、相撲の歴史は、控え目に見積って『日本書紀』に載せる健児(こんでい)相撲の記事から数えても1300年以上になり、「大相撲以前」の「相撲の歴史」は、「大相撲」の世界が成立する前史として片づけてしまうには、あまりに長く、かつまた起伏に富んだ歴史なのである。――<「はじめに」より>
※本書の原本は、1994年に山川出版社より刊行されました。