講談社現代新書作品一覧

パリの誘惑 魅せられた異邦人
講談社現代新書
人を駆り立て、人をして語らしめる都市(まち)。革命があり、知識があり、芸術があるパリは、強烈な磁力線を発し、多くの異邦人を吸い寄せてきた。マリ=アントワネット、リルケ、ショパン、ピカソなど、魂を魅了された人々を通して、国際都市パリの醍醐味に迫る。
幻想のパリ――ハイネはベルリンにいられなくなった。おりもおり、フランスから七月革命のニュースが届いたのだ。そのころ彼は、7月の太陽に目が眩んだと言って、知人にこういう調子の手紙を書き送っている。「ぼくは酔い痴れ、無我夢中で、自分もパリへ行きたいと思っている……。ぼくもまた〈革命〉の息子なんだ、聖なる武器へとふたたび手を差し延べるぞ……。ぼくはもう眠れない……。気が違いそうだ!」「ベルリンは嘘で固めた首都だ……。ベルリンの自由主義ぶった偽善者どもを見ると嫌気がさす……。くる夜もくる夜も、トランクの荷拵えをしてパリへ出かけてゆく夢を見ているのさ。あそこなら、澄んだ空気が吸えるだろう……」――本書より
不老不死 仙人の誕生と神仙術
講談社現代新書
永遠の生を願い神仙術を生み出した道教思想空気を食し空を飛ぶ不老不死の人、仙人。呼吸術、房中術、仙薬、体操など、仙人になるための修業メニュ-を紹介し、道教思想を生み出した中国人の死生観に迫る。
国境をこえるドイツ その過去・現在・未来
講談社現代新書
統一ドイツはヨ-ロッパの脅威となるのか。かつて幾たびか国境をこえて周辺諸国に勢力を張ったドイツ。統一を果たしたドイツは、今、どこへ向かおうとするのか。「東方進出」の歴史と現況から未来を占う。

基本英単語を使いこなす
講談社現代新書
対話に活躍するmean、「立つ」だけでないstand、皮肉たっぷりのnose。イメージをつかめば、様々に広がる使いみち。コミュニケーションの第一歩は基本単語から。
テニスの腕前を聞かれたら?――たとえば、Kevin Costner主演のField of Dreamsの中で次のような場面があった。トウモロコシ畑の中に野球場ができて、Shoeless Joe Jacksonが初めて姿を見せ、Kevin Costner扮する主人公と話をする。話をしながら、ボールとバットがあるのを見たShoeless Joe Jacksonが、Can you pitch?(ボール投げられるかい?)と聞く。……名選手にCan you pitch?と聞かれて、主人公は臆することなく、Not bad.(けっこういけますよ)と言う。この返事は、英語のコミュニケーションの典型だと考えてよいのではないか。卑屈にNo I can't.などと言わず、かといってそれほど傲ることもなく、積極的に、しかし抑えた言い方でNot bat.と言っている。――本書より
西洋占星術 科学と魔術のあいだ
講談社現代新書
星に宿命を読む占星術の歴史と理論を紹介。星の運行が地上に及ぼす影響は?バビロニアに生まれて以来、多くの人々を魅了してきた占星術。科学になれなかった魔術の歴史と理論を、中立的立場から紹介する。

渤海国の謎 知られざる東アジアの古代王国
講談社現代新書
中国東北部、沿海州、朝鮮半島北部を版図に、2世紀以上、東アジアに君臨しながら、長く世界史の謎とされてきた「海東の盛国」。平安京の毛皮ブーム、菅原道真らによる宮廷外交など、多彩なエピソードをまじえつつ、渤海国の実像に迫る。
なぜ忘れられた国なのか――その国が、8世紀から10世紀初頭まで、東アジアの一角に厳然として存在し、日本や新羅と同じように、あるいはそれ以上に、唐の文化を吸収して文化国家として繁栄していたことは事実なのである。ましてや、その国が日本に200年間にわたって頻繁に使節を派遣してきたこと、それによって日本は、その古代文化の形成に、有形無形の利益や影響を受けたことが事実である以上、日本史の上で、この国の存在とその使節の来航を忘れることはできないのである。明治以後の日本の歴史教育は、日本文化の淵源としては、中国にのみ視界を限定して、植民地として支配した朝鮮半島の存在は、故意にその視界から外してきたと言われる。そして、渤海国の存在もそのあおりを食う形で、さらにその視界の外に追いやられたのかも知れない。しかし、今私たちは、東アジアの歴史を見る視界を東へ、北へと広げ、朝鮮半島はもちろんのこと、さらにそのかなたに存在していた渤海国と、そこから日本海の波濤をこえて来航してきた渤海使たちに歴史のスポットライトをあててみる必要がありそうである。――本書より
死の国・熊野 日本人の聖地信仰
講談社現代新書
霊・神の隠れ籠る熊野に向けられた信仰とは院政期の熊野御幸、中世の蟻の熊野詣、また山伏・修験の修行道場。黄泉の国のイメ-ジで語られる熊野に対する信仰の発祥と展開を検証し、その魔力を分析する。

英会話の常識・非常識
講談社現代新書
会話で使われる全単語の10%が「You」と「I」。命令文で示せる「丁寧さ」やhad betterが表す「強迫」。中学文法で作れる完璧な英文など、ビギナー用基礎の基礎を満載。
わが愛する夭折画家たち
講談社現代新書
村山槐多・関根正二・松本竣介・靉光ほか。短い生涯を人一倍の情熱と意欲で駆けぬけ、観る者の心を妖しくも不思議な感動で魅了する作品群を遺した画家たちの、ドラマに満ちた生涯と画業を丹念に掘り起こす
コロンブスは何を「発見」したか
講談社現代新書
新大陸の「発見」は世界に何をもたらしたか大航海時代の幕あけとなったコロンブスの新大陸との出会い。謎につつまれたその生涯と、波乱に満ちた航海の跡をたどりつつ「発見」がもつ歴史的な功罪を問い直す

「民族」で読むアメリカ
講談社現代新書
「アメリカ人」はどのように形成されてきたのか?最初の植民以来、世界史転換のたびに、大量移動する人々を受け容れ、成長してきた多民族国家の歴史と構造に迫る。
「アメリカ人の形成」――本書はアメリカ人の形成を、近代世界システムと国際労働力移動という観点を導入しながら説明しようとするものである。世界の一体化は、今からちょうど500年前、コロンブスのアメリカ「発見」から始まった。それ以後ヨーロッパ系白人が中心となって、世界は一つのシステムの中に編成されていき、今や第三世界の僻地まで単一の世界資本主義の下に包摂されるようになった。その過程の中で、地球上の人々が、自発的にか強制的にか、膨大な数で移動することになった。こうして近代世界の歴史は、人口・労働力移動の歴史だったのであり、その過程の中でアメリカ人が形成されてきたのである。――本書より
季節性うつ病
講談社現代新書
季節と心・身体の相関関係を臨床的に考察。SAD――それは冬に発症することの多い、ちょっと特殊なうつ病。女性に多く、過眠・過食・体重増が特徴。その臨床治療を通し、心身と季節・光の連関を解明する

オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」
講談社現代新書
西欧人の見た「残虐な征服者」は、西欧をはるかにこえる先進国だった。羊飼いでも大臣になれる開放的な社会。キリスト教世界で迫害されたユダヤ難民を受け入れた宗教的寛容性。多民族・多宗教の超大国を支えた「柔らかい専制」の秘密に迫る。
ユダヤ難民を保護した寛容性――近代西欧を見なれた我々にとって、西欧社会は開放的で合理的な社会だというイメージが定着している。そして、キリスト教も、合理的で寛容な宗教とイメージされがちである。これに対し、イスラム世界は閉鎖的で非合理的な社会であり、イスラムは不寛容な宗教だというイメージが強い。しかし、少なくとも中世から初期近代までは、実態はむしろ逆であった。……15世紀以降になると、それまではムスリムの支配下に安全に暮らしてきたスペインのユダヤ教徒も、(キリスト教徒に)厳しく迫害されるようになった。この時、迫害に耐えかねた彼らが安住の地として大量に移住した先が、オスマン帝国だった。ノーベル文学賞受賞者であるオーストリアのエリアス・カネッティも、彼らの子孫の一人である。かつてはオスマン領だったブルガリアのルスチュクに生まれ、ユダヤ人差別の存在をまったく知らずに育った。スイスの学校に入ってはじめて自分が差別される存在であることを知ったと、その自伝で述べている。――本書より

信長と天皇 中世的権威に挑む覇王
講談社現代新書
天下人信長は、天皇を超えようとしたのか。中世的権威を否定することによって統一事業を成功させた信長の前にある正親町(おおぎまち)天皇という障害。将軍義昭追放の後の政権構想を考察し、天皇制存続の謎と天皇の権威とは何かという問題に迫る。
はじめに――織田信長の最大の敵は、実は正親町天皇であった、というのが、本書でわたくしが最も協調したい点である。天正元年(1573)7月に足利義昭を追放して将軍の座から引きずり降ろし、天正8年(80)には一向一揆を事実上窒息させた信長にとって、目の上のコブは天皇しかなかった。上杉輝虎(謙信)・武田勝頼はすでにこの世の人でなく、関東の北条氏政はすでに信長に款を通じてきていた。(中略)従って、信長が明智光秀に備中攻撃の後詰めを命じたとき、毛利攻めが武田勝頼の討伐ほども手こずるとは考えていなかったに違いない。信長の眼中には、もはや毛利輝元など強敵としては映っていなかったと思われる。彼のこの期に及んでの懸案は、朝廷対策であり、天皇との関係をどうするか――この一事のほかは問題ではなかったのである。――本書より
シーラカンス はるかな古生代の証人
講談社現代新書
7千万年前そのままに生きる奇跡の魚の全貌恐竜とともに中世代に絶滅したはずの「足」のある魚が生きていた。人間より遅い泳ぎ、逆立ちのまま丸呑みする捕食、滅びなかった原因など、怪魚の全貌を解明する

フロイト以後
講談社現代新書
精神分析学は1つの思想である。心の療法から出発し、人間探求に向かう冒険的な試み。原点フロイトを押さえユング、アードラーの深層心理学から、ラカン、ドゥルーズなど現代思想に至るフロイト以後の流れをえがく。
思想としての精神分析――フロイトをはじめ、精神分析的思想家の書いたものは広く一般に読まれている。それにまた、精神分析にたいして「面白そう」と感じることは、表面上はたんなる知的興味のように見えても、じつはその背後にその人の深刻な悩みがあるかもしれない。だから、ここでもまずは「面白そう」といった好奇心から出発したいと思う。(中略)精神分析学は、精神療法であると同時に、健康・不健康を問わず、人間の心理というものを解明しようとする1つの科学であり、さらには「人間とは何か」という古来の哲学的な問いにたいして答えようとする1つの思想でもある。いわゆる現代思想に親しんでいる人は、そのいたるところでフロイトの名に出会っているはずだ。フロイトの影響をまったく被っていない思想家・哲学者など一人もいないのではないか、と思われるくらいである。――本書より
ゴルバチョフの2500日
講談社現代新書
「ゴルバチョフ」とは何者だったのか? ′91年12月25日その男は最後の“お喋り”を終えた。世界史への登場以来、冷戦終結への栄光と帝国解体への混沌を生きた希代のパフォーマーの政治と生を問う

三くだり半と縁切寺 江戸の離婚を読みなおす
講談社現代新書
夫による一方的な「追い出し離婚」と、不法に耐えかねて駆け込む哀れな妻。江戸は女性にとって暗黒時代だったのだろうか。タテマエとホンネを使いわけた離婚の実態を解き明かしつつ、江戸女性の地位の読みかえを迫る。

ヘルピングの心理学
講談社現代新書
あわただしい日常の中で、つまずきがちな人間関係……、ひとときのすこやかなつながりを回復し、人間としての成長をもたらすための独自の技法を提唱する。

外国語をどう学んだか
講談社現代新書
英語・仏語からアラビア語・タイ語まで、外国語修得の難関をどうくぐりぬけるか? 単語・文型・名作丸暗記の力業から、各種メモ・秘密ノートを使う巧技、恋愛という裏技まで、知の世界で活躍する34人が上達法を公開。
宇宙センターで学んだロシア語――私は聞いた単語をすぐメモできるように、いつも取材手帳とペンを持って歩いた。たとえば夕食を終えて食堂の前で宇宙飛行士と「また明日」と言ってお別れする時。宇宙飛行士が言う、「スコーリスカだから気をつけてね」「ありがとう、さようなら」とにっこり笑って背を向けた後で、取材手帳をとり出し、「スコーリスカ」と書き留めながら考える、「『スコーリスカ』とはなんぞや」……そして家に到着するとさっそく辞書をとり出して「スコーリスカ」を調べる。こういう場合、一度で見つかるということはめったにない。正しい綴りがわからないし、聞き間違えていることもある。幸いに見つかった「スコーリスカ」の意味は「すべる」。そうか、道に降った雪が凍ってすべるから気をつけなさいと言ったのか。そうわかった瞬間、街灯が道を白く照らしている食堂の前で宇宙飛行士と別れた場面がフラッシュバックする。――本書より