講談社現代新書作品一覧

バイオサイエンス入門 生命現象の不思議を探る
講談社現代新書
遺伝子組み換えメロン、クローン牛、遺伝子治療……作物、食品、医療などさまざまな分野に応用され、日々進展するバイオの世界。生命現象の担い手としてのDNA、RNA、タンパク質の精緻なはたらきを軸にバイオのメカニズムを平易に解説し、その可能性と問題点を考える。
「生きている」ことの源――いまから100年ぐらい前までは、生物は、無生物とちがって魂をもつ特別な存在だと考えられていた。つまり、「生きている」ことは、物質だけではとうてい説明できない。いいかえると、物理学や科学の法則と知識では説明できない存在であると考えられていた。しかし、この100年あまり、とくに20世紀の後半には、生命の理解は急速に進んだ。いまでは、生物の働きや性質は、核酸(DNA RNA)とよばれる巨大な分子と、タンパク質というこれまた巨大な分子の働きと性質によって、その大筋は理解できるようになった。地球上のあらゆる生物は、すべて核酸とタンパク質をもっている。このことは、地球の上のすべての生物が、お互いに親類であり、共通の祖先をもっていることを示している。――本書より

アメリカン・ヒ-ロ-
講談社現代新書
巨大国家アメリカの夢が、幾多のヒーローを生んだ。強力なカリスマの大親分(ビッグ・ボス)、大自然と対話する聖者から、大富豪、知の巨人、冒険者まで。50人のヒーローから、民衆たちの熱い魂(アメリカン・スピリット)を読む。
“移民がつくった国家”のヒーロー――移民たちは、それぞれの想いに取りつかれて新大陸に向かった。ある願いを内に秘めて海を渡ったのである。……さまざまな思惑が渦巻く移民たちの想念がつくりあげた国では、精神作用が大手をふってまかり通る。人生かくありたい、あるいはかくあるべきだという思いは、遠慮なくその姿をととのえていく。ある人物が何かの理由で他人よりもぬきんでる時、その人物に自分自身を重ねあわせて、「その通りだ」と肯定する作用が容易にはたらくものである。アメリカに住むさまざまな人間たちが、心のなかに抱いているエネルギーのベクトルは多様ではあるが、それでも時間がたつにつれて、束ねられまとめられていろいろな顔をもったヒーローたちが誕生していった。――本書より
マイクロマシン 驚異の極微技術
講談社現代新書
産業・医療を一変させる極微技術のすベて。開腹なしの手術、原発等の巨大技術のメンテナンスに応用される直径1ミリ以下の機械、マイクロマシン。21世紀キ-テクノロジ-となるこの新技術の可能性を概観

レギュラシオン理論-経済学の再生
講談社現代新書
危機ごとに姿を変える資本主義を、どうとらえるか? 最新鋭理論〈レギュラシオン〉は、人間を取り巻く「制度」に着目、そこに働く「調整」(レギュラシオン)を通じて資本主義を透視する。ケインズ、マルクスの遺産を乗り超えフランスで誕生した、21世紀の経済学を易しく説き明かす。
経済の「変化」をとらえる――問題は、経済の「変化」をどう説明するからである。しかもその変化を、個々的にでなく総体的に、そして歴史的にでなく理論的に、だがしかし、いわゆる純理論的にでなく歴史に開かれた理論として――そういうものとして「歴史理論的」にとらえてみたというのが、私の長年の願いであった。静態的な経済学でなく、いわば「可変性の経済学」を探しもとめていたのである。加えてその経済学は、理論のための理論でなく、われわれふつうの市民が使える道具として役立ってくれるものでなければ意味がないのである。そんな私にひとつの大きな啓示をあたえてくれたのが、レギュラシオン理論であった。――本書より

冤罪はこうして作られる
講談社現代新書
無実の者が、ある日突然に「犯人」にされる。警察はなぜ「犯人」を作り出すのか。裁判官はなぜウソを見抜けないのか。見込み捜査、別件逮捕、代用監獄から、裁判官への統制、弁護人の無力化まで、今も冤罪を生み続けている日本の刑事司法の構造的欠陥をえぐる。(講談社現代新書)
無実の罪を生み出す刑事司法の構造的欠陥。ある日突然に「犯人」にされる恐怖。見込み捜査、別件逮捕、代用監獄から、裁判官への統制、弁護人の無力化まで、冤罪を生み出す刑事司法の構造的欠陥に迫る。

パリ・コレクション モードの生成・モードの費消
講談社現代新書
見せ、見つめ、求め、提供するモードの祭宴。偉大な仕立師(クチュリエ)ウォルト以来、パリの各メゾンが生み出したオートクチュール・プレタポルテの繚乱を追う。
ビジネスの手段としてのパリ・コレ──パリ・コレと呼ばれているのは、パリで一定期間に行なわれる、そうしたデザイナーたちのショーの集合体である。たとえば93年秋冬のシーズンに行なわれたショーは少なくとも80以上はあった。これをほぼ1週間という期間のうちに、もっとも集約的に、効率的に見せるために、パリが生みだし、長い時間のあいだにいきついた1つの形が、パリ・コレ、すなわちパリ・コレクションである。その目的は、きわめて明快だ。デザイナーの主義主張──それは、創造性であることもあり、新しい流行の提案、あるいは人目を引きつけるノウハウであったりする──を訴えると同時に、それをビジネスとして展開していく、ことにある。したがって、パリ・コレに招待される主な客は、ジャーナリストとバイヤー(仕入担当者)、そして重要な個人客である。つまりパリ・コレは、基本的にプロのために行なわれるものなのである。──本書より

「別れ」の深層心理
講談社現代新書
会ウガ別レノ始メ……といい、サヨナラダケガ人生……という。生きていくうえで避けることのできない別れは、望んだものであれ強いられたものであれ、心を大きく揺り動かす。その悲しくも豊かさに満ちたドラマの内面を探る。
「別れ」の意識――別れが「別れ」として強く意識されるということは、どういうことだろうか。それは、その人物や動物、その場所や物が強く愛情を寄せていた対象だからに他ならない。もし愛情を寄せていなければ、物理的に別れたとしても、決して「別れ」として意識されないだろう。つまり、別れとは愛する対象を失うことである。その強さは対象に寄せる愛着の強さに比例するのである。別れは、受動的であれ、能動的であれ、主体の体験として起こる。しかし、その体験が必ずしも意識的とは限らない。本人が気づかぬままに起こって、後に心に大きな影響を及ぼすこともある。たとえば、しばしば親子間や夫婦間で見られるが、同じ屋根の下で暮らしているのに、いつの間にか心が離れ離れになってしまっているような関係は、別れが本人の気づかない間に起こっているといえるだろう。――本書より

南方熊楠を知る事典
講談社現代新書
博物学、民俗学、性愛学、粘菌学、語学、エコロジー。自在に横断した広範な領域。学問で、人生で、さまざまに関わった人々や同時代人たち。奔放で骨太な、著述群。キーワード、人名、著作解題──200の項目で多彩に読み解く「南方熊楠」の全体像。
博物学──プリニウスから寺島良安に至るまで、南方の愛好した博物学者は、つねにその当時のさまざまな知識を総合化しようとしていた人物であった。……彼らの著作の中には、動植鉱物の客観的な性質の記述と共に、それらに関する伝承やイメージがふんだんに含まれており、その意味でそうした作品群は、自然科学書でありながら、同時にフォークロアの集積であり、さらに行動心理学、はては文学書としても読み得るものとなっている。博物学、Histoire Naturelleとは、まさに自然(Nature)をとらえるためにに人々が編み出してきたさまざまな種類の物語(Histoire)の集積だったのである。……物質のみにこだわる自然科学でもなく、心のみにこだわる精神主義でもない新しい学問方法の創造。南方はそうした自らの学問態度を「事(こと)の学」と呼んでいるが、博物学という名において蓄積されてきた知識こそは、その「事の学」の格好のフィールドだったのである。〔松居竜五〕──本書より

安楽死と尊厳死 医療の中の生と死
講談社現代新書
人は死を選択する権利を持ちうるのか。終末期医療と「尊厳ある死」のはざまで死の受容を考える。
「尊厳」とは何か――簡単な疑問では、「安らかに死ぬ権利」というのは、肉体的にか精神的にか、それとも社会的にか経済的にか、という側面で異なってくる。ある人は肉体的にといい、またある人は精神的にとなる。尊厳の意味が異なってくるのだ。(中略)たとえば、老人病院の狭いベッドに寝たきりにされ、腕には点滴の注射をうたれ、膀胱カテーテルも挿入され、人口延命装置に囲まれて生命を保っている老人患者がいたとしよう。すでに意識も曖昧になるときがある。かつては社会的に活動したであろうこの老人も、見た目には「生ける屍(しかばね)」である。この老人患者には、「人間としての尊厳」が失われている。延命だけの医療はやめるべきだと、私は思う。しかし、この老人患者自身は、たとえそういう状態であっても、別に「自分には尊厳は失われていない」と考えているかもしれない。――本書より
馬車の文化史
講談社現代新書
商売のため、恋のため、南へ北へ馬車は走るモーツアルトの天才は旅によって磨きがかけられ、カザノヴァは恋と冒険のため縦横無尽に走り続けた。鉄道以前・自動車以前の馬車による旅の楽と苦と快をつづる。

酒池肉林~中国の贅沢三味
講談社現代新書
中国の厖大な富が、大奢侈となってふり注ぐ。後宮3000の美女、甍を競う巨大建築から、美食と奇食、大量殺人・麻薬の海、精神の蕩尽まで。3000年を彩る贅沢三昧オンパレードにもう1つの中国史を読む。
人乳で育てたブタがうまいか?――こうした文字通りの消費に血道をあげる傾向は、次の王済のエピソードにも如実にあらわれている。武帝(司馬炎)がある時王済の家に行幸したところ、王済はごちそうを出すのに、すべて瑠璃の器をつかい、100人余りの侍女はみなうす絹のズボンと上着を身につけ、飲食物を手で捧げもった。蒸したブタがこってりとうまく、ふつうの味とちがっていたので、武帝は不思議に思い、わけをたずねた。(王済は)答えていった。「人乳を飲ませております。」武帝ははなはだ穏やかならず、食事がまだ終わらないうちに立ち去った。……乾飯や蝋燭で炊いた飯や人乳を飲ませたブタが美味だとはとうてい考えられないけれども、このように高価な素材や珍奇な材料を、燃料、塗料、飼料などとして、目につかないところで消費することこそ贅沢の神髄だと、西晋貴族は考えたのだった。卑近なたとえをあげれば、本当のお洒落は洋服の裏地に凝る、といったところだろうか。――本書より

オスとメス=性の不思議
講談社現代新書
誘惑するオス、選ぶメス。華やかで激しい性行動のメカニズムは何か? 性が生まれ、男女へと進化した15億年の壮大な性の歴史を展望する。
性はなぜ誕生したか――人間の男女の関係が、芸術の永遠のテーマの一つであるように、性にまつわる諸問題も、生物学の実に大きなテーマとなっています。いったい全体、性というややこしいものがなぜ出現したのかという根本的な問題は、いまだに現代生物学の謎の1つに数えられています。また生物の世界には、性はあっても雄と雌に別れていないものや、性転換するものなど、奇妙なものが数々あります。そして、いったん雄と雌に分かれたあとは、雄と雌は、決してどんなときも仲良く手に手を取って協力して生きていくものとはならなくなりました。……本書では、どのようないきさつで性というものがこの地球上に現れ、それが出現したあとには、雄と雌の間にどのような相互交渉が持たれるようになったのか、現代の進化生物学で知られているところのエッセンスをご紹介したいと思います。――本書より
御家騒動―江戸の権力抗争
講談社現代新書
新しい視点でとらえた歴史の中の権力抗争。伊達騒動、加賀騒動、黒田騒動など、江戸時代に多発した藩政をめぐる権力抗争。家督相続や身分秩序がはらむ矛盾、武家政治のモラルの変遷を通して描く江戸裏面史
ベルリン 都市は進化する
講談社現代新書
生命体としての都市ベルリンの進化をたどる双子の漁村集落ベルリン・ケルンが“帝都”となり、東西分裂の傷を癒し、今、新たな世界都市像を模索する。建築や都市構造を手がかりに都市という生命現象に迫る

「頭脳国家」シンガポ-ル~超管理の彼方に…
講談社現代新書
遺伝子主義、エリート教育、強制貯蓄、言語改造……。選び抜かれた頭脳集団による合理主義の「君子政治」。都市国家が生き残るために強要された「超管理」の現実。
国民生活への介入――「もしも政府が国民の個人的問題、例えば隣人が誰なのか、どうやって生計を立てているのか、騒音を出していないか、どこに唾を吐くのか、どの言語を話すのかなどについて干渉しなかったとしたら、今日の我々の繁栄はなかっただろう」これは、経済的繁栄を達成した1986年のリー首相の言葉である。この発言に象徴的にあらわされるように、シンガポール政府の国民生活への干渉・管理は、結婚・出産という家族計画にとどまらず、政治、経済、文化のあらゆる面に及んでいる……。国民の多くは政府の管理に反感を抱きながらも、シンガポールの生き残りと年々豊かになる自らの生活の代償に、管理を選んだのではあるまいか……。国際社会での生き残りと経済成長のために、さまざまな分野に及ぶ国家の管理体制を担ったのは、リー・クアンユー一家に代表されるようなエリートたちであった……。したがって、限られた唯一の資源である国民のなかから、いかにして優秀な頭脳を選び、育てていくのかが、シンガポールの生存と不可分とみなされたのも理解できよう。――本書より

パブリック・スクール-英国式受験とエリート
講談社現代新書
過熱しない英国式受験のシステムを分析し、エリート生産装置パブリック・スクールの支配の秘密とその変容を解読。
英国エリートの本流=パブリック・スクール人――こうしてみてくると、英国のほうが日本よりはるかに学歴の社会的地位規定力が大きい学歴社会にみえる。またわれわれ日本人にはパブリック・スクールは灘や開成のような六年制進学私立校に、オックスブリッジは東大や京大にみえてくる。だとしたら、なぜ英国で日本のようなはげしい受験競争がおこらないのだろうか。パブリック・スクール、オックスブリッジへむけてのわれもわれもの入学競争がおきないのか。むろん英国でもパブリック・スクールや大学受験はそれなりに深刻ではある。大学受験のための受験予備校に似た学校もある。だがこうした予備校も夏は休暇でのんびりムードだ。日本のような過熱状態にはない。不思議になってくる。――本書より
魔法の世界の子どもたち <いい子>育ての落とし穴
講談社現代新書
魔術的世界に棲む幼児の声を親はどう聞くか「おおらかに育てたい」という親の願いと行動がなぜ裏目に出るのか。フレイバ-グの理論を引きつつ、大人の世界観に立脚した合理的科学的育児の問題点を考える。

ナチス裁判
講談社現代新書
ユダヤ人死者600万をはじめとする、史上最悪の戦争犯罪はいかになされたか? 全世界からの囂々(ごうごう)たる非難の中、ドイツはいかに自らを裁いたか? 日本との比較は? 10万におよぶ容疑者の追及、時効の壁との闘い、民間追跡者の執念、「上官の命令」と良心の問題――など、法廷・議会で闘わされた激しい論争を通し、巨大な戦争犯罪とその裁きの全貌に迫る。
ドイツと日本の差――戦争犯罪の処理について、日本とドイツの違いは、すでに記述したように日本は連合軍による裁判ですべて終わり、ドイツはドイツ人自らも容疑者を裁いてきたことだ。曲折はあったが、ナチスが犯した過去の事実を改めて見つめ直し、論議をたたかわせ、深刻、重大な事態の認識を深めながら処罰、一方で被害を与えた諸国に謝罪し、償いをしてきたのである。……いつまでも過去の古傷にさわられるのは、当事者にとって重苦しく実につらいことである。また、法的、政治的責任を果たすのは問題処理の重要な方法である。しかし、それでもなお、正当な根拠をもち、戦禍の痛みがいやされない人々がいる限り、勇気をもって古傷にふれ、誠実な対応をすることは大切な道義だ。ナチス戦争裁判の法廷には、犯罪行為を裁きながら、人間社会の道義をわきまえたドイツの人々の苦悩と勇気と誠実さがあった。――本書より

「日本人英語」のすすめ
講談社現代新書
「日本人英語」は世界へのパスポート。その意外な表現力に着目し、英米人英語のもつ世界観を逆照射。「地域語」としての英語を発見し自分のものにするユニークな英語論!
日本人英語の開放表現性――to、about、through、withの選択肢の中からどれかを選ばないと、文法的な欠陥が残って、英米人に不快感を与える。しかし、前置詞を入れることによって、文にある一定の意味が限定され、イメージの広がりは損なわれる。英文コピー制作者とそれを目にした読者を、自由な形で結んでいたコミュニケーションは、前置詞のルールに応じるだけで、あるひとつのイメージに限定され、読者の想像の扉は固く閉じられてしまう。……限定したイメージに閉じ込められる、英米語の「閉鎖表現性」。複数のイメージを、読者がそれぞれの好みに対応して描き出せる、日本人英語の「開放表現性」。日本人英語の中には、英米語とは一風変わったさまざまな表現力が、まだ静かに眠っているのではないだろうか。――本書より
エイズの常識
講談社現代新書
日本人はエイズとどう付き合ったらよいのか世界の成人人口370人に1人が感染している“現代の黒死病”エイズ。感染の経路、予防方法、エイズ差別の問題などを元WHOエイズ世界対策研究顧問がリポート