講談社現代新書作品一覧

信長と天皇 中世的権威に挑む覇王
講談社現代新書
天下人信長は、天皇を超えようとしたのか。中世的権威を否定することによって統一事業を成功させた信長の前にある正親町(おおぎまち)天皇という障害。将軍義昭追放の後の政権構想を考察し、天皇制存続の謎と天皇の権威とは何かという問題に迫る。
はじめに――織田信長の最大の敵は、実は正親町天皇であった、というのが、本書でわたくしが最も協調したい点である。天正元年(1573)7月に足利義昭を追放して将軍の座から引きずり降ろし、天正8年(80)には一向一揆を事実上窒息させた信長にとって、目の上のコブは天皇しかなかった。上杉輝虎(謙信)・武田勝頼はすでにこの世の人でなく、関東の北条氏政はすでに信長に款を通じてきていた。(中略)従って、信長が明智光秀に備中攻撃の後詰めを命じたとき、毛利攻めが武田勝頼の討伐ほども手こずるとは考えていなかったに違いない。信長の眼中には、もはや毛利輝元など強敵としては映っていなかったと思われる。彼のこの期に及んでの懸案は、朝廷対策であり、天皇との関係をどうするか――この一事のほかは問題ではなかったのである。――本書より
シーラカンス はるかな古生代の証人
講談社現代新書
7千万年前そのままに生きる奇跡の魚の全貌恐竜とともに中世代に絶滅したはずの「足」のある魚が生きていた。人間より遅い泳ぎ、逆立ちのまま丸呑みする捕食、滅びなかった原因など、怪魚の全貌を解明する

フロイト以後
講談社現代新書
精神分析学は1つの思想である。心の療法から出発し、人間探求に向かう冒険的な試み。原点フロイトを押さえユング、アードラーの深層心理学から、ラカン、ドゥルーズなど現代思想に至るフロイト以後の流れをえがく。
思想としての精神分析――フロイトをはじめ、精神分析的思想家の書いたものは広く一般に読まれている。それにまた、精神分析にたいして「面白そう」と感じることは、表面上はたんなる知的興味のように見えても、じつはその背後にその人の深刻な悩みがあるかもしれない。だから、ここでもまずは「面白そう」といった好奇心から出発したいと思う。(中略)精神分析学は、精神療法であると同時に、健康・不健康を問わず、人間の心理というものを解明しようとする1つの科学であり、さらには「人間とは何か」という古来の哲学的な問いにたいして答えようとする1つの思想でもある。いわゆる現代思想に親しんでいる人は、そのいたるところでフロイトの名に出会っているはずだ。フロイトの影響をまったく被っていない思想家・哲学者など一人もいないのではないか、と思われるくらいである。――本書より
ゴルバチョフの2500日
講談社現代新書
「ゴルバチョフ」とは何者だったのか? ′91年12月25日その男は最後の“お喋り”を終えた。世界史への登場以来、冷戦終結への栄光と帝国解体への混沌を生きた希代のパフォーマーの政治と生を問う

三くだり半と縁切寺 江戸の離婚を読みなおす
講談社現代新書
夫による一方的な「追い出し離婚」と、不法に耐えかねて駆け込む哀れな妻。江戸は女性にとって暗黒時代だったのだろうか。タテマエとホンネを使いわけた離婚の実態を解き明かしつつ、江戸女性の地位の読みかえを迫る。

ヘルピングの心理学
講談社現代新書
あわただしい日常の中で、つまずきがちな人間関係……、ひとときのすこやかなつながりを回復し、人間としての成長をもたらすための独自の技法を提唱する。

外国語をどう学んだか
講談社現代新書
英語・仏語からアラビア語・タイ語まで、外国語修得の難関をどうくぐりぬけるか? 単語・文型・名作丸暗記の力業から、各種メモ・秘密ノートを使う巧技、恋愛という裏技まで、知の世界で活躍する34人が上達法を公開。
宇宙センターで学んだロシア語――私は聞いた単語をすぐメモできるように、いつも取材手帳とペンを持って歩いた。たとえば夕食を終えて食堂の前で宇宙飛行士と「また明日」と言ってお別れする時。宇宙飛行士が言う、「スコーリスカだから気をつけてね」「ありがとう、さようなら」とにっこり笑って背を向けた後で、取材手帳をとり出し、「スコーリスカ」と書き留めながら考える、「『スコーリスカ』とはなんぞや」……そして家に到着するとさっそく辞書をとり出して「スコーリスカ」を調べる。こういう場合、一度で見つかるということはめったにない。正しい綴りがわからないし、聞き間違えていることもある。幸いに見つかった「スコーリスカ」の意味は「すべる」。そうか、道に降った雪が凍ってすべるから気をつけなさいと言ったのか。そうわかった瞬間、街灯が道を白く照らしている食堂の前で宇宙飛行士と別れた場面がフラッシュバックする。――本書より
選び取る「停年」 四五歳の自分発見
講談社現代新書
停年=自ら選びとる退職から充実した生を.企業に勤める人間が避けて通れない定年.その日がくるまで漫然と一企業内に人生を封じ込める愚.リタイヤ=新たな出発のためのヒントと豊かな後半人生への提言.

ヨーロッパ「近代」の終焉
講談社現代新書
「近代」の旗標の下、世界史をリードしてきたヨーロッパに起きている大変動。東欧市民革命、ソ連の消滅、EC統合……。合理主義、ヒューマニズム、科学への信頼など、「近代」を支えた価値のゆらぎと行き詰まりの中で、ヨーロッパはどこに向かうのか? 歴史の読み直しを通して新たな座標軸をさぐる。
問い直される「近代」――人類の歴史は、まことに自由拡大の歴史であった。その歩みは、ひとときも留るところを知らず、飽くなき前進を続けてきたかにみえる。むろん、ときに歩調を速めることもあったし、停滞することもあった。そして、長い曲折を経て、ひとつの到達点を示したのが「近代」という時代であった。「近代」は、自由を、人類のめざすべき目標のひとつとして、自覚的に提示してみせたのである。だが、終局と思われたその到達点も、じつは悠久に続く長い道行のなかの通過点、里程標にすぎないことがはっきりしてきたのである。「近代」の示したさまざまな試みが、有効性のすくないことを認められつつも、幾重にも纏った信頼感の衣が綻び始め、いま問い返しが迫られるようになっているからだ。――本書より

世界自動車産業の興亡
講談社現代新書
自動車を制する者が世界を制する。フォードシステム、商品差別化、ジャストインタイム方式──「史上最も複雑な商品」の覇権をめぐる熾烈な戦いを描く。
ことばの未来学 千年後を予測する
講談社現代新書
新歴史言語学の立場から描く日本語の未来像タ行ダ行は15世紀以前の日本語と同じに,アクセントは型を減らし母音の無声化が増える.言語自身に内在する能力の分析から,音韻を中心に未来を予測した力作.

アラブとイスラエル パレスチナ問題の構図
講談社現代新書
宿命の地=カナン(パレスチナ)を舞台にくり返された、長く根深い対立の歴史。流血の抗争はなぜ起こったのか? 宗教や民俗紛争、石油資源をめぐる思惑、難民問題など、複雑にもつれた中東問題を、国際政治のダイナミズムの中に位置づけ、解明する。
パレスチナ人とは?――パレスチナ人は、国を持たず、アラブ世界で常に差別されてきた。表面上はアラブの大義という看板の下で受け入れられても、内心ではけっして仲間うちとしては扱われてこなかった。またパレスチナ人は、国による保護を得られないため、個人の努力、そしてパレスチナ人同士の団結によって人生を切り開いてきた。ある国から追放されるようなことがあっても、命ある限りけっして奪われることのないものに投資してきた。つまり教育であった。
パレスチナ人の勉強熱心はアラブ社会では際立っている。パレスチナ人は、医者であり、作家であり、画家であり、弁護士であり、大学教員であり、ジャーナリストであり、研究者である。――本書より
黄金郷伝説―エル・ドラ-ドの幻
講談社現代新書
南米の黄金郷に夢を追った探検者たちの物語インカ,エル・ドラ-ド,アマゾン,マノア‥‥.幻の黄金郷に富を求めた探検者達と南米に夢を追った科学者達の物語を,黄金仮面の発掘で知られる孝古学者が活写

青年期の心-精神医学からみた若者
講談社現代新書
子どもからおとなへの過渡期……友達に囲まれ明るく過ごすこともあれば、自己を見失い、深刻な悩みの淵におちこむケースもある。親―子、自―他、愛―性……多様な課題をはらむ現代の青年の内実を、心理・病理の面から考察。
モラトリアムを楽しむ――高学歴化や管理社会化がすすんだにもかかわらず、若者たちはきわめておとなしく扱いやすくなったように見える。青年たちはもはや、こうした状況に異議申し立てをしようとはしない。かれらは、あまり早くおとなになろうとはせず、むしろ長くなったモラトリアムを楽しんでいるようにも見える。放送世論調査所の調査によると、中学高校生の多くは、「あまり早くおとなになろうとは思わない」と答え、その理由として、「おとなになることがなんとなく不安だから」「子どもでいる方が楽だから」などという理由をあげている。こうした変化にたいして、〈青年の幼児化〉という指摘がなされている。しかし、重要な点は、社会のしくみに若者のパーソナリティが適合してきた結果と見ることができる。――本書より

「覚り」と「空」-インド仏教の展開
講談社現代新書
ブッダの覚りとはどのようなものか? 入滅後、部派分裂の中で尖鋭化するアビダルマ哲学。勃興する大乗運動と、中観・唯識による「空」の思想。釈尊から衰亡に至るまでのインド仏教の歩みをたどる。
説法への決意――この梵天勧請の話は我々に、本当に釈尊の教えを聞こうとする覚悟はあるのか、と問いかけてくるものである。釈尊の教えは、世間的な欲望を微塵も充たすものではありえない。我々がふつうあると思い、愛着している自我を、根底から解体せずにはおかない教えでもある。それは、もしかしたら人々を害し、傷つけるかもしれない。むしろ人々の想いにさからい、精神の安定を妨げるかもしれない、そういう教えなのである。それでもあなたは聞きたいというのか、とこの話は我々に、その覚悟のほどを問いかけているものである。――本書より

交響曲の名曲・名盤
講談社現代新書
ワルター指揮の「40番」が描くモーツァルトの幻想的な世界。また、クナッパーツブッシュの「第8」にはブルックナーの浄福の境地を聴く――。あまたのCDの中から音の豊穰・交響曲の名盤を選りすぐり、それらが作り出す音楽的感動の深さを語る。
モーツァルト・交響曲第25番ト短調――モーツァルトは短調の交響曲をたった2曲しか書いていない。しかも両方ともト短調である。「第25番」と「第40番」だが、人は前者を〈小ト短調〉と呼ぶ。僕は現在、モーツァルトの数多くの交響曲のなかで、この小ト短調を最も愛する。もちろん大きいほうのト短調も「ジュピター」もすばらしいが、「第25番」はコンサートで演奏される機会が少なく、CDもあまり出ていないので、新鮮味のあるのが大きな理由だ。しかしけっしてそれだけではない。17歳のモーツァルトが音楽に封じこめた青春の嵐は、とてもただごとではなく、その内容の濃さ、その果てしない魅力とともに、われわれの心臓をギュッとつかんでふりまわすようないのちを湛えているからである。それは遠い18世紀のかなたから響いてくる音楽とは思えない。まるでたった今生まれたような、フレッシュなメッセージにあふれているのだ。――本書より

ユダヤ人とドイツ
講談社現代新書
不幸なユダヤ人大量虐殺は、なぜ起こったのか? 排除――依存の二面性のなかでゆれ動いたユダヤ人とドイツの錯綜した緊張関係を歴史的に検証し、過去の直視と克服がいかに可能かを模索する。
過去の直視と克服――終戦後、ナチの残虐行為が全世界に知れわたった時、ドイツ国民は「ドイツ人であること」をこの上なく恥じ、くさいものにはふたをし、一日も早く忘れ去ろうとした。ドイツの学校でもこのテーマはタブーとされ、ほんのわずかしか取り扱われなかった。しかし、1979年1月、アメリカ映画「ホロコースト」がテレビで放映された時、初めてドイツ国民は大きなショックとともにナチ時代における残虐行為の全貌を知ったのである。ドイツ人にとって、明らかに情報不足があった。これとともに広まった加害者意識は、過去の問題を隠すことなく、それに真剣に取り組もうという勇気を生みだした。……それは、ドイツ国民の罪や責任云々よりも、「過去の直視と克服」の問題である。――本書より
江戸の無意識 都市空間の民俗学
講談社現代新書
江戸=都市空間はなぜ視線の対象とされたか18世紀以降のおびただしい地誌・民俗誌の生産.『八犬伝』の想像的始源空間の意味.江戸下層民の病んだ無意識とその治癒の構造から都市空間に潜む権力性を暴く

イギリス貴族
講談社現代新書
政・官・軍のリーダーとして大英帝国を支えつつ、宏壮な邸宅では社交、狩猟、スポーツに熱中――空前の豊かな生活を送った活力あるエリートたちを描く。
広大な領地――「お宅の敷地はどのくらいあるのですか」と尋ねられた貴族は、「わが国境はあの山の向こうのそのまた向こうの……」と答えた、こういう話を聞いたことがある。実際、貴族の所有している土地は広大な面積にのぼるものであった。たとえば今を去ること120年前の1870年代、つまり、かの大英帝国真っ盛りの時期に、なんと700年ぶりに土地所有の調査がおこなわれた。そしてこのとき明らかになったことは、イギリスがいかに大土地所有制の国かという点である。まずイングランドとウェールズにおいて、400人の貴族が全所有地の17%にあたる572万8979エーカーを所有していた。1エーカーは約1200坪だから、大変な広さの所有地である。……そしてこれらの所領が時代とともにふえたり、あるいは減ったりして今日にいたるわけだが、それにつけても思うのは、わが日本国と比べてなんとスケールの大きなことよという点である。なにしろチャールス皇太子が地主となっている土地の広大さは、東京23区の面積に相当するというのだから、いくら身分が違うとはいえ、呆然としてつばも出なくなる。――本書より

これからの「老い」―老化の心理学
講談社現代新書
自分はいま人生の行程のどこにいるのか。「老人」にはまだ間があると思っていてもさまざまな老化のサインが送られている。それらをどう受容し、豊かな高齢期をどう準備するか。人生上の自己確認、子・孫に対する姿勢、楽しみの創造、ぼけの予防など、よりよい加齢のための提言。
高齢者についての知識――各文章を読んで(略)チェックして欲しい。
(1)65歳以上の人の中で、90歳以上の人の占める比率は10%前後である。正・誤
(2)大多数の老人は70歳を越える頃からぼけ始める。正・誤
(3)少なくとも1割の老人は養護老人ホーム・特別養護老人ホームなどに長期に入所している。正・誤
(4)ほとんどの老人は自分の型にはまっていて、それを変えることが難しい。正・誤
(5)大多数の老人は社会的に孤立している。正・誤
(6)75歳以上の男性の約半分は1年間に1日も病床についていない。正・誤
(7)年間に死亡する日本人の約70%は65歳以上の人である。正・誤
(8)肉体的な力は老人になると衰えがちである。正・誤
(9)65歳以上で自動車を運転する人は若い人より事故を起こす率は低い。正・誤
(10)およそ8割の老人は健康で、ふつうの生活を送るのに差支えない。正・誤
(11)老人は何か新しいことを学ぶのに、若い人より時間がかかるものである。正・誤――本書より