講談社学術文庫作品一覧

李白と杜甫
講談社学術文庫
中国唐代は高名な詩人を輩出したが、なかでも李白と杜甫はひときわ強い光を放っている。744年、この両者は唐の副都洛陽で世に名高い奇跡的な邂逅をした。本書は、この時から1年余の交遊を振出しに、広大な中国全土を旅から旅へと明け暮れた2人の変転きわまる生涯をたどり、さまざまな詩の形式ごとに李・杜を比較、考察する。現代語訳をこころみ、李白の奔放、杜甫の沈鬱を浮彫りにした意欲作。

ドイツのことばと文化事典
講談社学術文庫
哲学や音楽は勿論、勝れた文学や芸術で知られる国ドイツ。そしてまた、苦渋に満ちた歴史を持つ国ドイツ。果たしてドイツとは何か。本書は四季の流れに沿って、着実で堅牢なドイツ人の生活様式や風俗、習慣を探り、更にまた、ドイツ文化の諸相を伝統的な言語や宗教、文学や音楽などの面から歴史的に明らかにする。ドイツ人の生き方とその本質を浮き彫りにした興味尽きない必携のドイツ・ガイドブック。

うわさの遠近法
講談社学術文庫
明治、大正、昭和時代が軋(きし)む時うわさが走る、うわさが事実となり真実がうわさとなる
コレラ、ハレー彗星、千里眼、毒婦お伝……明治から昭和へ、激動の日本に生まれては消えた噂、デマ、迷信。人々の欲望や不安をのせて広まり、時には凄惨な事件までひき起こした様々な噂の驚くべき正体とは。情報機器が発達した今日においても依然として事実と噂の境目が曖昧な状況を踏まえて、噂を生み出す〈時代の仕掛け〉を問い直し、あざやかに近代日本を透視した庶民精神史。サントリー学芸賞受賞。

親鸞
講談社学術文庫
法然の思想を継承しつつ、独自の境地を切り開いた真宗の開祖親鸞。その思想の究極は、悪人優先の救い、煩悩具足のままの救い、この世とあの世における平等、の現世における実現にほかならない。時の権力や既存宗教による度重なる迫害、越後への配流、東国移住、実子善鸞の義絶等々、求道者ゆえ、布教者ゆえの波瀾にみちた親鸞の生涯とその思想を、真宗研究の第一人者があざやかに描いた書き下ろし。

第二次大戦に勝者なし(下)
講談社学術文庫
本下巻ではノルマンジー上陸作戦決定を巡る米英の対立から、米軍総司令官として赴任した中国戦線での毛沢東・周恩来との激論、蒋介石付参謀長として手腕を発揮した対日反攻作戦の内幕までを全告白。ヒトラー暗殺未遂事件や、暗号解読により予知されていた真珠湾攻撃など、歴史の闇にも光を当てる。連合軍参謀として活躍した米将軍が、自らの体験から第二次大戦の真実を明らかにした貴重な回想録。

第二次大戦に勝者なし(上)
講談社学術文庫
第二次大戦の見直しで世界的な反響を呼んだ米将軍の注目手記。日本の先制攻撃によって米国の参戦を導こうとしたルーズベルト大統領の画策や、ヨーロッパ戦線の主導権を巡るチャーチル英首相と米軍首脳との確執など、当事者のみが知り得た赤裸々な舞台裏を明らかにする。本巻では、真珠湾攻撃直前にスクープされた米軍の大戦動員計画の全貌から猛将パットンの活躍したシシリー島上陸作戦までを証言。

天使とわれら
講談社学術文庫
「天使についての哲学的な書物は、出版の歴史における大事件である」-アメリカの現代哲学の第一人者として幅広く活躍を続けている著者が、天使を偉大な思想として捉え、信仰からだけでなく哲学や現代思考の領域から「肉体なき精神」である天使と人間精神を考察する。一貫して神の存在を哲学的に論証し、神への信仰を理性的に根拠づけた、魅力あふれる天使学の最良の入門書。新訳の文庫オリジナル。

虫の思想誌
講談社学術文庫
熱帯などの知らない土地で、次から次へと思いもかけぬ形態と色彩を持った虫を採る時ほど無上の喜びを覚えることはない……。全世界に数百万種といわれる昆虫の世界の尽きせぬ魅力を語りつつ、ウォレスやファーブル以来の<虫と人>との関わりの歴史を説く。多様性を重んじる構造主義生物学の視角から、いまだにダーウィン進化論の影響を抜け出せない現代のネオダーウィニズムを鋭く批判した好著。

孫子
講談社学術文庫
「戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」などの名言で知られる『孫子』。春秋時代の孫武(そんぶ)が著わし、二千年以上も読み継がれた名高い古典は世界最古の兵法書として、また人間界の鋭い洞察の書として親しまれ、今日もなお組織の統率法や人間心理の綾を読みとるうえで必携とされている。本書は、従来の宋時代のテキストより千年以上も古い前漢武帝時代の竹簡文に基づく精密な唯一の解説である。
■中田敦彦のYouTube大学で大推薦、大反響!■

対人恐怖の心理
講談社学術文庫
対人緊張、赤面恐怖、蒼面恐怖、表情恐怖、態度恐怖、醜貌恐怖、視線恐怖。これらはすべて、進行段階に応じた対人恐怖の中核的症状であり、病状変遷の出発点となるのは「羞恥」する心である。この病いは、諸外国にくらべ日本に目立って多くみられる。
対人恐怖という神経症の底に横たわる「羞恥の構造」を解き明かし、「羞恥」を手がかりに日本人の心性や文化のありようまでをも探った異色の精神病理学。

フランス語はどんな言葉か
講談社学術文庫
フランスではどんなに高度な内容の学術論文でも、言葉の適切さと美しさを伴わなければ価値を認められないといわれる。通り雨が石畳をぬらすパリの町角では、耳の中に小さな余韻を残す柔らかい語尾をもった言葉が交わされる。
フランス語の美しい響きをこよなく愛する著者が、豊かな風土と文化に磨きぬかれたフランス語の特質を解説。もっとも洗練された言葉、フランス語を知るための最良の入門書。

アダム・スミス
講談社学術文庫
18世紀英国の資本主義勃興期に、「見えざる手」による導きを唱えて自由主義経済の始祖となったアダム・スミス。彼は手放しの自由放任主義者ではなくフェアな自由競争を主張し、『道徳感情論』では利己心の自制を説き、『国富論』では政経癒着による独占と特権を批判した。
現代日本社会が抱える問題点にも鋭い示唆を与えるスミスの思想の核心とその生涯を、豊富な資料を駆使して第一人者が説く必携の書。

神々の精神史
講談社学術文庫
<カミ>を語ることは、日本人の精神の歴史を語ることである。著者は、神話・伝説・昔話などの構造分析を手がかりに、文化人類学と民俗学のはざまから揺さぶりをかける。神々の棲む村、民話的想像力の背景、根元神としての翁、フォークロアの先達・筑土鈴寛(つくどれいかん)など、日本文化の深層にひそむ民俗的発想の原点を探り、柳田・折口以後の民俗学を鋭く批判した。人類学的視点から問いかけた刺激的な知の軌跡。

老子
講談社学術文庫
『老子』は、『論語』とならぶ中国の代表的な古典である。その思想は、人間はその背後に広がる自然世界の万物のなかの一つであるという自然思想の立場をつらぬくことにある。したがって老子は、人間の知識と欲望が作りあげた文化や文明にたいして懐疑をいだき、鋭く批判する。無知無欲であれ、無為であれ、そして自然に帰って本来の自己を発見せよ、という。中国思想研究の第一人者が説く老子の精髄。

現代の宇宙像
講談社学術文庫
この宇宙はいつ、どのようにして誕生したのか。古くから人類の知的好奇心を掻き立ててきた宇宙の謎を、20世紀に花ひらいた相対性理論と量子論をもとに斬界の権威が解明。
ビッグバンによる火の玉宇宙の出現とその中でのクォークから陽子、中性子など素粒子の創成を明らかにし、その後の星や銀河の形成される宇宙の歴史を説く。また、宇宙開闢以前の姿をも探究するなど、興味尽きない現代宇宙論。

ラケス
講談社学術文庫
ソクラテスを中心に、二人のアテネ市民とその息子たち、ラケスとニキアスという高名な二人の将軍たちのあいだで「勇気とは何か」を主題に展開される対話。息子たちの教育法にはじまる議論が、ソクラテス一流の誘導により、ソクラテス自身を含めた一同の「勇気」に対する無知の確認に導かれる。
ソクラテスによる定義探求過程の好例とされる、プラトン初学者必読の初期対話篇の傑作、待望の新訳成る。

源平の盛衰
講談社学術文庫
平安末期の歴史の転換期にあって、源氏と平家の明暗を分けたものは何か。本書は保元・平治の乱から富士川の戦いを経て一ノ谷・屋島・壇ノ浦の合戦に至る平氏一門の栄華と滅亡、そして頼朝の挙兵と鎌倉幕府成立までを詳細に解説。また後白河法皇、平清盛や木曽義仲、源義経など歴史を動かした人物像を生き生きと描き、緻密な史料分析で『平家物語』の虚構も指摘。乱世の実像を鋭く読み解いた話題作。

プラトン
講談社学術文庫
古代ギリシアにあって「哲学」を学問として大成したプラトン。イデア論を基底におくその理想主義哲学は、西欧の哲学思想にはかりしれない影響を及ぼした。荒廃したアテーナイを揺籃に形成されたプラトンの思想は、倫理的徳目、政治、国家、宇宙論等々、広範にわたる。理想的国家・社会の実現を目指しつつ、生涯を研究と教育に捧げたプラトンの思索の真髄を著作の中に読み解いた絶好のプラトン入門書。

秦漢帝国
講談社学術文庫
秦の始皇帝が初めて中国全土を統一した紀元前3世紀から後漢末までの400年間。この時期、清朝滅亡まで存続した皇帝制度と官僚制が確立し、中国の精神文化の支柱となる儒教も国教化される。二千年にわたる中国の国家体制を決定づけた秦漢帝国の実像を、中国史の秦斗が考察。劉邦、項羽などの英雄と庶民の織りなす壮大な歴史を、兵馬俑の発見など注目の研究成果を盛り込み詳細に説いた必読の力作。

エロスの世界像
講談社学術文庫
世界をエロス的に経験された秩序と捉える〈エロス的世界像〉の観点は、ニーチェのプラトニズム批判に始まり、フッサール、ハイデガー、バタイユへと受け継がれた。著者はそこにこそ、実存としての人間存在が生と世界を了解するための原理を見出すことができると説く。