講談社学術文庫作品一覧

ウィトゲンシュタイン
ウィトゲンシュタイン
著:藤本 隆志
講談社学術文庫
第一次世界大戦では志願兵として戦い、数々の勲章を受ける一方で20世紀哲学の金字塔といわれる「論理哲学論考」を構想したウィトゲンシュタイン。ユダヤ人の大富豪の家庭に生まれながら、復員後に父親から相続した財産をすべて放棄。山村の小学校教師や修道院の庭師、建築家を経てケンブリッジ大学にもどり再び哲学の道を歩む。その波乱に満ちた生涯と思想の真髄を、鮮やかに説き明かした必携の書。
日本歴史再考
日本歴史再考
著:所 功
講談社学術文庫
あなたは、日本の歴史をどれだけ知っていますか。日本史上、中心的リーダーとして歴史を動かした人を何人知っていますか。本書は、その代表的人物といわれる菅原道真や橋本景岳らの生き方を学ぶとともに、日本の年号制度、年中行事や祝祭日、即位儀礼と神宮への親謁の意義などを考察。日本のさまざまな歴史事象を多面的・総合的な立場から見直すことにより日本民族文化の原点を探った必読の書。
現代批評の遠近法
現代批評の遠近法
著:竹田 青嗣,解説:小浜 逸郎
講談社学術文庫
ポスト・モダニズムは、その内実がよく理解できるようになるに従って、文学にとっても思想にとっても反動的性格を持つものであることが見えてきた。この評論集1冊は、そういった文学と思想の潮流に対する対抗である……。〈在日〉の苦しみを深く表現した金鶴泳文学への共感に始まり、〈20世紀末の無神論〉としてポスト・モダニズムから、昭和と天皇制の問題をも考察。竹田思想の真髄を示す好著。
歴史学の方法
歴史学の方法
著:マックス・ヴェ-バ-,訳:祇園寺 信彦,訳:祇園寺 則夫
講談社学術文庫
ヴェーバーは19世紀的科学観を克服すべく社会科学の論理的、認識的諸問題に取り組み、多くの論文を発表した。理念型の導入を提起した有名な「客観性」論文(『社会科学の方法』)もその1つであり、続いて発表された本編はこれを検証、補完し、同論文と対をなす。古代史の碩学E・マイヤーの著作に厳密な批判的分析をくわえ、歴史的な研究の論理的意味を問うヴェーバーの『歴史学の方法』最新訳。
墨子
墨子
著:浅野 裕一
講談社学術文庫
春秋時代末期に墨子が創始し、戦国末まで儒家と思想界を二分する巨大勢力を誇った墨家の学団。自己と他者を等しく愛せと説く「兼愛」の教えや、侵略戦争を否定する「非攻」の思想を唱え独自の武装集団も保有したが、秦漢帝国成立期の激動の中で突如、その姿を消す。以後2千年を経て、近代中国の幕開けとともに脚光を浴びることになった墨家の思想の全容と消長の軌跡を、斯界の第一人者が懇切に説く。
形象と時間
形象と時間
著:谷川 渥,解説:中野 美代子
講談社学術文庫
感性や美の世界における「時間」の役割とは何か?本書は、いわゆる空間芸術たる造形芸術を議論の中心的トポスとした。第1部は、形象を支える物質性に及ぼされる時間の作用として、負の時間、骨董、廃墟等をとりあげ、第2部は、形象があらわす時間の諸相として、記号の時間、馬のエクリチュール等について考察する。形象の〈崩壊〉と〈変容〉を中心に、美的時間についての新たな視点を探る好著。
モンゴルと大明帝国
モンゴルと大明帝国
著:愛宕 松男,著:寺田 隆信
講談社学術文庫
中国最後の分裂時代、北族王朝の盛衰の中からチンギス・カーンはモンゴル帝国を建設。功臣・耶律楚材の改革を経てフビライの元が史上初めて征服王朝として中国を支配する。しかしモンゴル至上主義への反発から漢民族国家・明が興り、永楽帝による北方遠征や「鄭和の西洋下り」などで栄光の中華帝国を築く。豊富な史料をもとに英雄、皇帝たちの実像と歴史に翻弄された人々の姿を活写する500年史。
ソクラテスの弁明・クリトン
ソクラテスの弁明・クリトン
著:プラトン,訳:三嶋 輝夫,訳:田中 享英
講談社学術文庫
昏迷深まる現代への贈りもの 今こそ、ソクラテスを。 待望の《新訳》登場。 不敬神の罪に問われた法廷で死刑を恐れず所信を貫き、老友クリトンを説得して脱獄計画を思い止まらせるソクラテス。「よく生きる」ことを基底に、宗教性と哲学的懐疑、不知の自覚と知、個人と国家と国法等の普遍的問題を提起した表題2作に加え、クセノポンの「ソクラテスの弁明」も併載。各々に懇切な訳註と解題を付し、多角的な視点からソクラテスの実像に迫る。新訳を得ていま甦る古典中の古典。 「いちばん大事にしなければならないのは生きることではなくて、よく生きることだ」──(「クリトン」より)
古典の読み方
古典の読み方
著:藤井 貞和
講談社学術文庫
本書は、日本語で書かれた古典文学を本格的に読みこなしてみようと志す人々のために、必要な知識や技術をどれほど身につけたらよいか、従来わかりにくかった点はどう考え直したらよいか、といった問題について、正面から読者とともに考えてみようとする書物である。伝承的なものが日々失われつつある現代こそ、古典に目を向ける時だ。物語や和歌を読みこなす方法を身につけるための最良の入門書。
カフカのかなたへ
カフカのかなたへ
著:池内 紀
講談社学術文庫
20世紀の悪夢を予兆した作家として、第2次大戦後に爆発的なブームが生じたユダヤ人作家カフカ。その明晰透明な表現法は、リアルでありながら大きな謎をはらんでいて、これまでさまざまな解釈がなされてきた。著者は性急な意味付けをしりぞけ、カフカの文学は、たぐいまれな想像力による読んで楽しい〈大人のためのメルヘン〉であると説く。作品そのものに即してカフカの魅力の源泉を語った好著。
ダルマ
ダルマ
著:柳田 聖山
講談社学術文庫
「ダルマさん」と呼ばれ、わたくしたちの日常生活にとけこんで久しいダルマ。日本のどこででも、だれにでも親しまれている。本書は、禅の開祖という既成のイメージを離れ、中央アジアから、中国、日本へとダルマのあるいた足あとをたどり、残された数多くの彼の語録や弟子たちのことばから、彼の思想の本質を明らかにする。禅学研究の第一人者が説くダルマのゆたかな思想とその歴史、待望の文庫化。
モラエスの日本随想記 徳島の盆踊り
モラエスの日本随想記 徳島の盆踊り
著:W.DE・モラエス,訳:岡村 多希子,解説:加納 孝代
講談社学術文庫
本書は、モラエスが終(つい)の栖(すみか)と定めた徳島から祖国ポルトガルの新聞に連載した記事をまとめたもので、一市井人の眼で捉えた大正初期の日本人の生活と死生観が讃嘆をもって語られる。殊に死者を迎える祭り「盆」への憧憬は、孤愁の異邦人に愛しい死者との再会を夢想させる。吉井勇が「日本を恋ぬ 悲しきまでに」と詠じたモラエスの「日本」が、現代の日本人の心奥に埋没した魂の響きを呼び起こしてくれる。
魔女とキリスト教
魔女とキリスト教
著:上山 安敏
講談社学術文庫
魔女とは何か?魔女の淵源は古代地中海世界の太母神信仰に遡る。それは恐怖と共に畏敬にみちた存在であった。時を経て太母神はゲルマンやケルト等の土着の神々と習合し、キリスト教との相克の過程で「魔女」に仕立て上げられていく。そして中世の異端審問、凄惨な魔女狩り……。民族学、神話学、宗教学、精神分析学等々、広範な学問の成果に立脚し、魔女を通じて探った異色のヨーロッパ精神史。
進歩の思想 成熟の思想
進歩の思想 成熟の思想
著:加藤 尚武
講談社学術文庫
急速な科学技術の発展によって進歩と成長を続けてきた現代の社会。環境破壊や遺伝子操作、脳死問題など、今、われわれは既成の理論や哲学では解決できない多くの課題に直面している。科学と人間、さらには文化と政治のかかわりを、環境倫理学や歴史哲学を視点に据えなおし、成熟の社会を目ざすべき21世紀に求められる哲学・思想のあり方を探る卓抜の論考。注目の丸山真男論もあわせ収める。
アウトサイダ-
アウトサイダ-
著:ハンス・マイヤ-,訳:宇京 早苗
講談社学術文庫
ユダヤ系ドイツ人として生まれ、20世紀のさまざまな歴史的事件を直接体験し、ブレヒトやマンなど多くの作家・思想家・政治家とも交流した人文主義者ハンス・マイヤー。本書は、19世紀以降のヨーロッパ社会が抑圧し、アウトサイドへと排除してきた歴史の日陰の存在である女性や同性愛者、ユダヤ人などの悲劇の歴史を描出。ヨーロッパとは何かを問いなおすマイヤーの必読の主著、待望の翻訳なる。
幕末日本探訪記
幕末日本探訪記
著:ロバ-ト・フォ-チュン,訳:三宅 馨
講談社学術文庫
英国生まれの世界的プラントハンターが、植物採集のため幕末の長崎、江戸、北京などを歴訪。団子坂や染井村の植木市など各地で珍しい園芸植物を手に入れるだけでなく、茶店や農家の庭先、宿泊先の寺院で庶民の暮らしぶりを自ら体験。日本の文化や社会を暖かな目で観察する一方、桜田門外の変、英国公使館襲撃事件や生麦事件など生々しい見聞をも記述。幕末日本の実情をつぶさに伝える貴重な探訪記。
中世の文藝
中世の文藝
著:小西 甚一,解説:向井 敏
講談社学術文庫
幽玄・優艶・有心など、日本的美意識の多くは、変転つねなき動乱のさなかに和歌・能・笛・琴などの「道」に精進を重ねた中世人によって生み出された。風流の極地に我が身を解放することにより、有限の生のなかで永遠を求めんとした「道」の理念を説き、宗祗の連歌と世阿弥の能を楕円の両焦点とした中世文藝の深遠豊饒な世界を明確に論述する。全5巻の大著「日本文藝史」に先行して執筆された珠玉作。
ソクラテス以前の哲学者
ソクラテス以前の哲学者
著:廣川 洋一
講談社学術文庫
アリストテレスはソクラテス以前の哲学者を自然学者と断じたが、彼らは「神的なもの」「自己の内的世界」「国家・社会の問題」等にも強い関心を懐いていた。水を万物生成の元と考えたタレス、魂の神性と転生を説いたピュタゴラス、自分自身とその魂の深求を第1義としたヘラクレイトス等々……。今日に伝わるソクラテス以前の主要な哲学者の真正の言葉を丹念に読み解き、その真価を明らかにした意欲作。
座の文学
座の文学
著:尾形 仂,解説:大岡 信
講談社学術文庫
座とは何か。日本独特の文芸形式である俳諧の本質は、人の和をもって始まり、それをもって終わる。すなわち、俳諧における座とは、文芸的な人間連帯である連衆心(れんじゅしん)を営んだ場である。孤独を自覚する者同士が、日常性とは別次元の関係でつながり、生きる楽しみを共にする。俳聖・芭蕉にとって座こそ、その詩情を誘発し、増幅し、普遍化する、いわばかれの詩の成立に不可欠の媒体であったと説く名著。 この『座の文学』という労作は、俳諧というものが、根本的に「睦み合う連衆心」の産物であり、孤高の態度で他者を見くだし、拒絶する行き方とは正反対のものであるゆえんを、感嘆すべきねばり強い説得力をもって説き明かしている。(大岡信・解説より)
シェイクスピアと日本人
シェイクスピアと日本人
著:ピ-タ-・ミルワ-ド,訳:中山 理
講談社学術文庫
日本人にとってシェイクスピアの魅力とはなにか。『ロミオとジュリエット』と近松の『曾根崎心中』、『ハムレット』と漱石の『こころ』などを比較検討し、イギリスと日本双方の心と次元がシェイクスピアにもあることに気づく。恋人たちの自殺や恋愛物語における女性観に日本的な色合いを発見して、共感をいだくのである。「万人の心を持つ」シェイクスピアの、言葉の魔術と魅力をさぐる文庫オリジナル。