講談社学術文庫作品一覧

神々の精神史
神々の精神史
著:小松 和彦
講談社学術文庫
<カミ>を語ることは、日本人の精神の歴史を語ることである。著者は、神話・伝説・昔話などの構造分析を手がかりに、文化人類学と民俗学のはざまから揺さぶりをかける。神々の棲む村、民話的想像力の背景、根元神としての翁、フォークロアの先達・筑土鈴寛(つくどれいかん)など、日本文化の深層にひそむ民俗的発想の原点を探り、柳田・折口以後の民俗学を鋭く批判した。人類学的視点から問いかけた刺激的な知の軌跡。
老子
老子
著:金谷 治
講談社学術文庫
『老子』は、『論語』とならぶ中国の代表的な古典である。その思想は、人間はその背後に広がる自然世界の万物のなかの一つであるという自然思想の立場をつらぬくことにある。したがって老子は、人間の知識と欲望が作りあげた文化や文明にたいして懐疑をいだき、鋭く批判する。無知無欲であれ、無為であれ、そして自然に帰って本来の自己を発見せよ、という。中国思想研究の第一人者が説く老子の精髄。
電子あり
現代の宇宙像
現代の宇宙像
著:佐藤 文隆
講談社学術文庫
この宇宙はいつ、どのようにして誕生したのか。古くから人類の知的好奇心を掻き立ててきた宇宙の謎を、20世紀に花ひらいた相対性理論と量子論をもとに斬界の権威が解明。 ビッグバンによる火の玉宇宙の出現とその中でのクォークから陽子、中性子など素粒子の創成を明らかにし、その後の星や銀河の形成される宇宙の歴史を説く。また、宇宙開闢以前の姿をも探究するなど、興味尽きない現代宇宙論。
ラケス
ラケス
著:プラトン,訳:三嶋 輝夫
講談社学術文庫
ソクラテスを中心に、二人のアテネ市民とその息子たち、ラケスとニキアスという高名な二人の将軍たちのあいだで「勇気とは何か」を主題に展開される対話。息子たちの教育法にはじまる議論が、ソクラテス一流の誘導により、ソクラテス自身を含めた一同の「勇気」に対する無知の確認に導かれる。 ソクラテスによる定義探求過程の好例とされる、プラトン初学者必読の初期対話篇の傑作、待望の新訳成る。
源平の盛衰
源平の盛衰
著:上横手 雅敬
講談社学術文庫
平安末期の歴史の転換期にあって、源氏と平家の明暗を分けたものは何か。本書は保元・平治の乱から富士川の戦いを経て一ノ谷・屋島・壇ノ浦の合戦に至る平氏一門の栄華と滅亡、そして頼朝の挙兵と鎌倉幕府成立までを詳細に解説。また後白河法皇、平清盛や木曽義仲、源義経など歴史を動かした人物像を生き生きと描き、緻密な史料分析で『平家物語』の虚構も指摘。乱世の実像を鋭く読み解いた話題作。
プラトン
プラトン
著:斎藤 忍随
講談社学術文庫
古代ギリシアにあって「哲学」を学問として大成したプラトン。イデア論を基底におくその理想主義哲学は、西欧の哲学思想にはかりしれない影響を及ぼした。荒廃したアテーナイを揺籃に形成されたプラトンの思想は、倫理的徳目、政治、国家、宇宙論等々、広範にわたる。理想的国家・社会の実現を目指しつつ、生涯を研究と教育に捧げたプラトンの思索の真髄を著作の中に読み解いた絶好のプラトン入門書。
秦漢帝国
秦漢帝国
著:西嶋 定生
講談社学術文庫
秦の始皇帝が初めて中国全土を統一した紀元前3世紀から後漢末までの400年間。この時期、清朝滅亡まで存続した皇帝制度と官僚制が確立し、中国の精神文化の支柱となる儒教も国教化される。二千年にわたる中国の国家体制を決定づけた秦漢帝国の実像を、中国史の秦斗が考察。劉邦、項羽などの英雄と庶民の織りなす壮大な歴史を、兵馬俑の発見など注目の研究成果を盛り込み詳細に説いた必読の力作。
エロスの世界像
エロスの世界像
著:竹田 青嗣
講談社学術文庫
世界をエロス的に経験された秩序と捉える〈エロス的世界像〉の観点は、ニーチェのプラトニズム批判に始まり、フッサール、ハイデガー、バタイユへと受け継がれた。著者はそこにこそ、実存としての人間存在が生と世界を了解するための原理を見出すことができると説く。
神さまはサイコロ遊びをしたか
神さまはサイコロ遊びをしたか
著:小山 慶太
講談社学術文庫
アインシュタインは、自身の光量子理論から発展した量子力学の確率的解釈に対して、「神さまはサイコロ遊びをしない」と非難した。宇宙を創造した神の意図を探りたいと言う好奇心から出発した自然科学は、天動説に固執した時代から4世紀を経て、ビッグバン理論を確立した。宇宙創成以前の時空が消滅する世界を解明せんとする現代まで、神に挑戦した天才物理学者達の苦闘を辿る壮大な宇宙論の歴史。
ヘ-ゲル
ヘ-ゲル
著:城塚 登
講談社学術文庫
近代ドイツ最大の哲学者ヘーゲルは、論理学、自然哲学、精神哲学、宗教哲学、歴史哲学、哲学史等々にわたって、近代哲学の枠組みを超出する壮大な哲学体系を構築した。ヘーゲル哲学が「現代哲学の母胎」といわれる所以である。本書は、マルクス、フォイエルバッハはもとより、アドルノ、サルトル、ルカーチなど、現代思想の諸潮流に多大な影響を与えたヘーゲル哲学の核心に迫る恰好の案内書である。
近代経済学の歴史
近代経済学の歴史
著:菱山 泉,解説:根井 雅弘
講談社学術文庫
近代経済学の主流をなし、ケンブリッジ学派が担った「正統派理論」。学派の始祖で、資本主義発展の過程を飛躍や断絶のない漸進的な連続的成長とみて、需要供給均衡理論を説いたマーシャル、その弟子で厚生経済学を提唱したピグー、貨幣と密接な景気変動理論を開拓したロバートソンなどの思想を、透徹した論理と歴史的背景の中で考察。ケインズに至る近代経済学の潮流を手際よく明快に説く必読の書。
敬語
敬語
著:菊地 康人
講談社学術文庫
尊敬語・謙譲語・丁寧語など、敬語の高度な発達は日本語の大きな特質だといわれているが、それらを適切に使いこなせる人は意外に少ない。本書は、言語学的分析をもとに敬語の仕組みをわかりやすく解きほぐし、豊富な用例によって使用法の様々を解説、さらに敬語システムの現代的変化をも展望する。日本語の急所というべき、複雑多岐にわたる敬語表現のすべてがこの1冊でわかる、現代人必携の書。
現代倫理学入門
現代倫理学入門
著:加藤 尚武
講談社学術文庫
私はこの本で、現代の倫理学で議論される原理的な問題と応用倫理学で取り扱われる内容を、明確に描き出したい。それには日常生活で出会う倫理問題を考えることが、現代倫理学の中心問題を理解する早道だと思う。難しい術語や学説の違いを知るより、現代の倫理学者達の議論の中身に入ってもらいたいという気持ちで書いた。何よりもまず、読み物として面白く通読できるよう心がけた。(「あとがき」より)
電子あり
国語辞典 改訂新版
国語辞典 改訂新版
監:阪倉 篤義,監:林 大
講談社学術文庫
ことばは生きている。従って、辞典は常に時代に沿ったものでなければならない。本辞典は、(1)学習、ビジネス、社会生活に、必要十分な七万六千余語を厳選、(2)漢字辞典の機能を兼ね備え、(3)最新かつ最大の用字・用語辞典の役も果す多機能の国語辞典である。さらに「敬語の使い方」をはじめ、実用性に重きをおいた巻末付録も充実。机上用として、携帯用として、現代を生きる学生・社会人必備の一冊。
現代短歌入門
現代短歌入門
著:岡井 隆,解説:篠 弘
講談社学術文庫
思索する前衛歌人の名を負う岡井隆。「アララギ」から出発した彼は、むしろそのリアリズムを徹底批判し、現代詩としての思想表現に努めた現代短歌界のオピニオン・リーダーである。本書については「特に私をめぐる覚書や場の理論については、歌論と作品の間に働く微妙な力働的関係にも注目して、柔軟にその本意を読みとってほしい」と岡井はいう。短歌を志すすべての人に希望と勇気を与える必携の書。
アンシァン・レジ-ムと革命
アンシァン・レジ-ムと革命
著:A.DE・トクヴィル,訳:井伊 玄太郎
講談社学術文庫
「近代は諸条件の平等化に向かう」というトクヴィルにとって、絶対主義も1つの社会学的現象である。王政による中央集権は階級秩序の破壊、富の平等化、思想の同一化をもたらし、革命はその中ですでに進行・達成されていた。1789年の革命はアンシァン・レジームとの断絶ではなく、国家利益のために社会の地位が剥奪されてゆく歴史の産物であったと看破。『アメリカの民主政治』と並ぶ刮目の歴史論。
つくられた桂離宮神話
つくられた桂離宮神話
著:井上 章一
講談社学術文庫
〈桂離宮の発見者〉とされるドイツの建築家ブルーノ・タウトは1933年に来日、翌年「ニッポン」を刊行し、簡素な日本美の象徴として桂離宮を絶讃した。著者は、タウトに始まる桂離宮の神格化が、戦時体制の進行にともなうナショナリズムの高揚と、建築界のモダニズム運動の勃興を背景に、周到に仕組まれた虚構であったことを豊富な資料によって実証する。社会史の手法で通説を覆した画期的日本文化論。
ドイツ教養市民層の歴史
ドイツ教養市民層の歴史
著:野田 宣雄
講談社学術文庫
19世紀から20世紀始めにかけての近代ドイツの精神形成に大きな影響を与えたといわれる教養市民層。政治や社会、文化の各方面にわたって圧倒的な力を誇ったこのエリート層の思想と行動を、マックス・ヴェーバーの英独比較論を手がかりにしながら、宗教社会学的見地に立って分析。ナチズムを招来した歴史のなかで、ドイツ教養市民層が果たした役割とその性格を考察した、画期的なドイツ精神史論。
日本古代国家の成立
日本古代国家の成立
著:直木 孝次郎
講談社学術文庫
四世紀の崇神天皇に始まり三輪政権が、応神天皇を始祖として瀬戸内海の制海権を握った河内政権により征服させる過程や、壬申の乱の後に天武天皇が実力で全権を掌握するまでを綿密に解説。また稲荷山古墳鉄剣銘を独自に読み解き、雄略天皇の日本統一をめざした戦いを明らかにするなど、古墳や遺物に秘められた謎を著書ならではの緻密な分析と推理で解く。古代史の奉斗による日本国家成立の大検証。
保田與重郎
保田與重郎
著:桶谷 秀昭,解説:高橋 英夫
講談社学術文庫
近代日本の文明開化を徹底批判し、戦後は好戦的文士として公職追放を受けた保田與重郎。著者は、厖大な資料を駆使して、保田の戦時中の歩みだけでなく、戦後30数年に及ぶ思想の一貫性を確認。戦時下の保田があれだけ若者を魅きつけたのは、日本主義や好戦思想のためでなく、「死」を真に意味づけうるものが、その真摯な思索の中にあったからだと説く。復古派文人・保田與重郎の批評精神の軌跡。