講談社学術文庫作品一覧

王女ク-ドル-ン
講談社学術文庫
絶世の美女、王女クードルーンが略奪された。王女に許婚者がいるのを知りつつこの暴挙に出たのは、王女に横恋慕するノルマンディーの若き王、ハルトムートであった……。「ドイツのオデュッセー」と評され「中高ドイツ語文学中の最高傑作」とも賞された、『ニーベルンゲンの歌』とならび立つ中世ドイツの傑作長編英雄叙事詩。待望久しい、中期高地ドイツ語原典からのわが国初のオリジナル完訳版成る。

聖と呪力の人類学
講談社学術文庫
聖なる秘仏は呪力を持つとされ、人びとはこの力の現世利益(げんぜりやく)を求めて集まる。著者は、このような仏教と呪力信仰との関係を理解するためのヒントを民俗信仰のなかに見る。たとえば、わが国の民俗レベルの呪力信仰の中心に活躍するシャーマンたちとその宗教施設は、東北や南西諸島に限らず、むしろ東京などの大都市圏に多く存在するという。聖と呪力をめぐる問題を宗教人類学的に考察した期待の力作。

私という現象
講談社学術文庫
文学も実人生も虚構であることに変わりはない。事実そのものがすでに操作されたものなのだ。私をひとつの現象と見なす考え方は、文学作品の質を、それが事実に基づくかいなかによって判断しようとする立場を無効にする……。〈自我の崩壊〉ということ自体が主題となった現代文学の困難を的確に解説、〈現象としての自己〉の様々なありようを、物語の終焉を体現する作家達を通して考察した第一評論集。

細川幽斎
講談社学術文庫
足利義輝・義昭の2人の室町将軍を支え、信長・秀吉・家康の3人の天下人から信任されて近世細川家の祖となった細川幽斎(藤孝)。戦国武将として乱世の興亡を生き抜く中で若くして歌道に志し、二条家の古今伝授を受けた幽斎は、古典、茶の湯、料理、音曲、礼式、有職故実など、あらゆる学芸の理を究めた。馬と茶の湯を知らぬは武士の恥、と説いた稀代の文人武将の波瀾の生涯をいきいきと論述する。

論文の技法
講談社学術文庫
本書は論文を書く人のための技法書です。それだけでなく、論文をどう書き始めたらいいのか困ったときに、また論文を書くことに飽きたり、行き詰まったり、恐怖心をいだいたりしたときに、ちょっとしたヒントと勇気づけを与えてくれる本です。アメリカの著名な社会科学者が、長年にわたる自らの論文指導の体験をもとに、論文作成の基本的な考え方とその方法を、具体例を示しながら説いた必携の書。

ユングとキリスト教
講談社学術文庫
精神医学者として著名なユングはすぐれた思想家でもあった。中心的課題を西洋精神の本質の追究におく彼は手懸りをキリスト教精神史に求め、原始キリスト教の成立過程、グノーシス主義の影響等を深層心理学的見地から再検討し、従来看過されてきた重大な問題点を見出した。ユングの思索を追うことにより、キリスト教における正統信仰確立過程で切り捨てられてきた影の領域の復権を迫る意欲的論考。

近代日本精神史論
講談社学術文庫
未開ならぬ半開の日本を文明段階に早急に導くことを使命とした福沢諭吉。国際社会は文明の進歩ではなく力の闘争が発展される場で、日本の地位をいかに向上させるかを課題とした徳富蘇峰。これら代表的思想家の言説を中心に、明治、大正、昭和の思潮を解説。英雄崇拝的心情を培った明治、快楽主義の「耽溺青年」を生んだ大正、〈近代の超克〉が強調された昭和の「近代日本精神史」を辿る文庫オリジナル。

中国的レトリックの伝統
講談社学術文庫
本書は、レトリックに見る中国人独特の思考とその生き方を探ろうとするものである。古くは「建安七子」の1人で悪口(あっこう)のレトリックの名手・陳琳(ちんりん)、杜甫(とほ)以前の中国最大の詩人と目される曹植(そうしょく)から革命家・毛沢東までを取りあげ、彼らの巧みな表現、言い回しとその発想を読み解く。さらに現在日本の文学者のなかで、高橋和巳、武田泰淳ら中国的レトリックを自在に駆使した作家への影響をも明らかにする。

モ-ツァルト考
講談社学術文庫
モーツァルトには、さまざまな顔がある。むろん、彼は神童だった。生活無能者である反面、一介の音楽家という職業で生きた最初の人だった。あるときは子供のようにうつけた顔でウィーンの街頭に佇んでいる。旅の途上にいる……。フランス革命によって幕をおろした華やかな18世紀西欧文化を一身に体現した、時代の申し子としてのモーツァルト。誕生から死まで、その尽きせぬ魅力のすべてを語る。

ケルト妖精学
講談社学術文庫
アイルランドに伝わるケルト神話では、戦いに敗れて地下に逃れた異教の神々が妖精の祖先とされる。妖精たちは、民間伝承や文学作品にどのように登場し、表現されてきたか。アーサー王伝説の湖の精やシェイクスピアの妖精王オーベロン、児童文学のピーターパンなど、妖精像の変容を神話学、民俗学、比較文学等の視点から興味深く論述。妖精研究の第一人者によるファンタジック・フォークロアの力作。

フランスことば事典
講談社学術文庫
外国で暮らしてみると、感情生活も、事物に対する情感も異なっていることを感じさせられることが多い。著者は、永年のフランス生活の体験に基づき、「シャボン」や「パン」など日常生活の「ことば」の背景にある日本人とは異なるフランス人が持つ文化や民族性の特性を指摘しつつ、フランス語の豊かな情感と、その魅力を興味深く語る。生活文化の観点か説く生きたフランス語を学ぶための必携の書。

西洋中世世界の成立
講談社学術文庫
豊かな文化を共有するヨーロッパ世界の基盤はどのように形成されたのか。本書は紀元前1世紀のカエサル、タキトゥスの時代から、ゲルマン民族の大移動、西ローマ帝国の没落、イスラムの侵入を経て、紀元後8~9世紀のカール大帝の時代に至る1000年の経過を論述。古代ギリシア・ローマの伝統とキリスト教の世界観、ゲルマン民族の団体意識などの混交による西洋中世社会の成立を明らかにした名著。

不死のワンダ-ランド
講談社学術文庫
人間にとっての最大の暴力ないし災厄として、不安や恐怖の最後の対象である〈死〉。著者は、世界大戦による大量死の時代を背景に登場したハイデガー哲学と、それに続くバタイユ、ブランショ、レヴィナスらの〈死〉に真正面から向き合った思想を考察する。さらに〈死の抑止〉を旨とする現代医学をも視野に入れ、現代人が直面する未知の状況──〈私の死〉を死ぬことができぬ状況を的確に照射した画期的論考。

道教の神々
講談社学術文庫
中国の宗教の主流をなし、日本にも大きな影響を与えた道教。本書は、中国の人々の生活に密着している道教信仰の現状を述べると共に、道教の神々の世界を考究。道教の儀式の折に本尊としてその絵像が掛けられる元始・霊宝・道徳天尊の三神をはじめ、多くの神々及び古くから日本人に親しまれてきた鍾馗や閻魔などの由来を紹介し、気功や風水説にも論及した。わが国道教学の権威による先駆的道教入門。

現代哲学の岐路
講談社学術文庫
本書は、今日の一般的な思想状況の展望からはじめて、現代の思想的中心課題ともいうべき近代合理主義批判という問題に焦点をあわせた。20世紀思想のあらゆる可能性が芽生えた19世紀から1920年代までの世紀転換期の思想の動きを主眼に、ドイツの観念論から近代初期の哲学まで遡り、さらに古代ギリシア以来の哲学思想の流れを概観する。現代哲学を学ぶ人に贈る対談形式の必携の哲学ガイド。

詩人 与謝蕪村の世界
講談社学術文庫
江戸の詩人、与謝蕪村。彼は大飢饉や倹約令が打ち続く時代に貧しい生活を送りながらも、その現実に左右されることのない独自の美の世界を俳諧や絵画の中に構築した。彼の努力と天与の才が交錯する蕪村芸術の神髄を、芭蕉や漱石の俳句、大雅の絵画などのすぐれた作品と対比しつつ説く。文明批評家として世界を舞台に活躍し続けている著者が、長年愛してやまない蕪村のすべてを情熱を傾けて描く力作。

宇宙像の変遷
講談社学術文庫
無限の時間と空間をもつ〈宇宙〉という概念は、古来、人間を惹きつけてやまない。著者はデモクリトスやプトレイオスらのギリシャ・ローマの宇宙観から筆を起こし、コペルニクス、ケプラー、ガリレオ、デカルト、ニュートンとつづく天文学の業績を平明に解説。20世紀のアインシュタイン、ガモフらによる新たな〈宇宙神話〉ビッグ・バン理論まで、幾多の曲折を経て確立された壮大な宇宙論の歴史。

内乱記
講談社学術文庫
古代ローマの運命を、内乱から平和へ、そして共和政から帝政へと大きく変えた英雄カエサルと政敵のポンペイユスとの対決を描く劇的な記録。前49年ルビコン川を渡ったカエサルは、西はスペインから東はバルカン半島まで、北はアルプスから南は地中海を渡ってエジプトまでローマ世界を東奔西走して戦う。困難を克服し勝利するまでを、カエサル自ら迫真の名文で綴る、『ガリア戦記』と並ぶ重要史料。

昭和期日本の構造
講談社学術文庫
昭和期の戦後・戦中期の日本の政治・社会をその深部から解明するために、この時代を中心的に動かした軍部、とりわけ陸軍を構造的に分析。著者はまず日本ファシズム論についての素朴な疑問から出発、陸軍の中枢部でのエリート派閥抗争を概観し、また昭和陸軍の原型に迫る。さらに、近代日本史上最大のクーデターである二・二六事件を徹底的に考究。激動の昭和を歴史社会学的に考察した画期的論考。

天使論序説
講談社学術文庫
天使とはなにか、天使というものは本当に実在するのだろうか。西洋の長い思想の歴史の中で、2000年以上に及ぶ長い期間、多くの優れた思想家が天使について様々な探究と思索を行なってきた。本書は、天使を神話やメルヘンの世界の想像力の対象としてのみならず思想史の流れに立ち返り、学問的研究の対象として捉えることによって、現代人の自己実現と認識が図れると説く卓越した書き下ろし天使論。