講談社現代新書作品一覧

カンヌ映画祭
カンヌ映画祭
著:中川 洋吉
講談社現代新書
光あふれる南仏の海辺の町で国家的文化イベントとして展開されるシネマの祭典。50年になろうとするその歴史とスター・監督たちの素顔をいきいきとレポートする。 アート性と商業性のバランス──映画祭としての重要性の1つに、出品作品のアート性と商業性のバランスが挙げられる。映画祭自体、商業性があってこそ、これまでに発展したことは再認識する必要がある。このイベントは映画業界の人間を元来対象にしており、今もその基本方針に変わりはない。ただし、近年は一般観客へも門戸を開放しているが、その数は全体の参加者の1割にも満たない。ジャコブ総代表は、バランスの上では、やはりアート性の比重を高める必要性を強調した。質が映画祭の価値を決めるという基本認識に基づいていると言えよう。──本書より
ストレス対処法
ストレス対処法
著:ドナルド・マイケンバウム,監・訳:根建 金男,監・訳:市井 雅哉
講談社現代新書
思考・言語・イメージを活用して感情や行動を変える道筋を示し、毎日の生活で避けることのできないストレスを効果的にコントロールするための知恵と方法を平易に説く。 別の見方──もし状況が我々にどう影響するかを変えたいのであれば、状況の解釈を変えることを学ばなければばらない。これは、言うは易く、行うは難しである。しかし、ストレスがあるとき、我々の見方だけが唯一可能な解釈ではない、と確かな研究が示していることを思い出すと役に立つ。別の見方があるのだ。そして、別の見方をみつけることができれば、我々の苦しみが軽減されるだろう。自分の足りないところよりも可能性に目を向けることによって積極的な役割がとれるように解放されるだろう。──本書より
女王陛下の英語エレガンスとユ-モア
女王陛下の英語エレガンスとユ-モア
著:倉田 保雄
講談社現代新書
階層や地域が違うと、アクセントやイントネーション、語彙にまで相違がある英語。エレガントで機知あふれる英語表現を身につける知恵。 にじみ出るエレガンス──ほんのちょっとした会話、挨拶もエレガンスの有無で相手に与える印象は違う。英国人のパーティーによばれて行き、入り口でホストに“Thank you for your kind invitation.”という類の定番の挨拶をすると、“Well no party is complete without you.(もしくはyour presence)”といった言葉が返ってくる。「あなたが来られないパーティーなんて、とても淋しくて」といった意味合いで、言われた方はたとえお世辞と思っても悪い気はしない。しかも、それが、即座にさりげなく出てくるところに社交上手のコツがあり、私はこれもやはりエレガンスの表われだと思う。──本書より
私の万葉集(二)
私の万葉集(二)
著:大岡 信
講談社現代新書
日本の詩歌の原点をなす万葉びとの心の機微、抒情の世界に、現代詩人の眼で新たな光を当て直す。好評を博すシリーズの第2集。 『万葉集』への相聞歌――もとより私はいわゆる専門の研究者ではありません。年間に、おもだった本だけでも刊行数が10冊は下るまいと思われる万葉集のさまざまな学術研究書にも、精通しているわけでは毛頭ありません。でも、私にできることもあります。私にできること、それは、言うまでもないことですが、万葉集の面白さをできるだけ多くの人に知ってもらうべく、与えられた機会を利用して、まさにこの本のようなものを書くことです。これはまあ、万葉集に対する私流の友情披瀝の本、あるいは相聞歌であると言ってもいいですが、してみれば、ずいぶんたくさんの恋文を書かせる詩集ではないかとあらためて感心します。――本書より
詩が生まれるとき 私の現代詩入門
詩が生まれるとき 私の現代詩入門
著:辻井 喬
講談社現代新書
詩とは何か?詩を生みだす力とは何か?ヨーロッパや日本の代表的な詩人の作品に即しながら、詩のもつ魅力と魔力を語り、実作者としての体験も踏まえつつ、詩を読む愉しさ、詩を書く悦びの世界へと誘う。 驚きと発見──私は高校生の頃、はじめて合唱団に入って合唱を始めましたが、2部3部とパートがわかれていくとそこにハーモニーが生まれてきます。その時、なんだか自分が今までと違った、とても広い世界に躍りだしたような感じがしました。おそらく、この感じは、はじめて海に潜った時、また、スカイ・ダイビングで、何も身に着けず空中に浮いたとき、あ、こんな世界に自分は身を置いているのか、という驚きや発見があるのと同じでしょう。世界が新しくなってきたような気がする。詩がわかりはじめるということも、こういうことなのではないかと思っています。──本書より
日本の裁判官
日本の裁判官
著:野村 二郎,装丁:杉浦 康平,装丁:赤崎 正一
講談社現代新書
一人ひとりが「独立」しながら、組織の一員でもある裁判官。最高裁以下のピラミッドの中で、彼らはいかに判決を作るのか。その誕生・教育から勤務評価まで、霧につつまれたエリート達の素顔に迫る。 裁判官の日常生活――裁判審の日常の生活は平均的には午前9時半ごろ裁判所に出勤、午後5時すぎ退庁だ。法廷の審理と事件記録の検討が主な仕事。法廷はだいだい午前10時から。昼休みをはさんで午後3時すぎには閉廷する。……裁判所への通勤には2、3人ずつ乗り合いの自動車がある。地方では自転車で通勤する裁判官もいるが、車が使用されるのは、裁判記録を自宅に持ち帰り検討することもあるからだ。…… 裁判所への出勤が原則だが、宅調日もある。この日は公舎など自宅で記録を調べる。戦前からある制度だ。多くの地裁では、いまの合同庁舎ができるまでは裁判官2人に1つしか机がなく、引き出しを左右に分けて共同使用し、落ち着いて仕事ができる雰囲気に欠けていた。このため宅調日のほうが仕事がはかどるという裁判官がいたほど。いまはほぼ1人ずつ机があるが、どこの地裁も1週間に1日、宅調日をおいている。――本書より
大統領の説得術 人を動かすレトリック
大統領の説得術 人を動かすレトリック
著:岡部 朗一,装丁:杉浦 康平,装丁:佐藤 篤司
講談社現代新書
レトリックを駆使して、政敵を論破し、政策を訴え、窮地を切りぬける大統領。時に「ほめて殺し」、時に「攻めて守る」説得戦略のすべて。 レトリック的大統領制──レトリック学者のジェームズ・シーザーは、「かつては大統領は大衆レトリックをめったに使わなかったが、現在では大統領が国家を統治する主要な手段の1つとして機能している」と明言する。このような背景から、「語ることは統治なり」(speaking is governing)という神話にも似た伝統が形成されてきた。(中略)大統領選挙運動(campaign)では候補者はレトリックを通して有権者に語りかけ、首尾よく当選して大統領に就任すれば、「何か語らねば」というプレッシャーにさいなまれ、現実のというより、想像上、知覚上の「危機」について語り、大衆のムード、感情に訴えかける。現実には国家危機はないのに、ことばレトリックを通して大統領がいかにも重大な危機が存在するかのように国民の知覚を操作することも可能になる。実際、大統領が軍隊を派兵する決定を正当化しようとする戦争レトリックには、危機の「創出」と「管理」の手法が見え隠れしている。──本書より
漢字の字源
漢字の字源
著:阿辻 哲次
講談社現代新書
食物や器の文字に形象された、古代の祭祀や日常生活。男女関係から天下国家も描写し、珍獣妖怪まで跋扈する漢字たち。確かな理論と豊な蘊蓄(うんちく)で繙(ひもと)く、中国4000年の社会文化史。 ホウキを持った貴婦人――「婦」とはホウキを手に持った女性ということで、ここからこの字はしばしば世の女性解放論者から目の仇にされるようになった。曰く、女性を意味する「婦」がオンナとホウキからできているのは、女性を家事労働に縛りつけようとする封建的な思想の表われにほかならず、このような作り方をしている漢字はこの男女平等の時代にまことに許しがたい文字であると。…… 一部の漢字の背景にはたしかに男女差別がある。しかしこの「婦」もまた男尊女卑の思想が表われた例のひとつだと考えならば、それは古代中国の実情と文化をふまえていない、いささか浅薄な議論というべきである。甲骨文字や殷周時代の青銅器の銘文においては、「婦」は当時の王の妃を指す文字として使われている。…… この場合のホウキは、戸外や一般家屋の掃除に使われるものではなく、実は神聖なお祭りをする祭壇を掃除するためのものだったのである。――本書より
生きることと読むことと 自己発見の読書案内
生きることと読むことと 自己発見の読書案内
著:中野 孝次,その他:靉 嘔,装丁:杉浦 康平,装丁:佐藤 篤司
講談社現代新書
忘れられない本がある。生きる励ましとなり、心の支えともなる本がある。自分にとって本当に必要な本といかにして出会うか。読書の醍醐味を語る。 「出会い」としての読書――人間は生きていく上でいつも順調にいくとは限らない。精神的にも、肉体的にも、あるいは家庭や、勤務先での立場や、どんなところで物事がうまくいかず、いつ生が危殆に瀕するかもしれない。ぼくの経験を言えば、そういう時に最も力になってぼくを救う役目を果たしてくれたのは、家族や友人や同僚ではなく、何よりもまず書物であった。だからここではぼくが生涯に何度か陥った危機のとき、あたかも救済者の如く現れ、ぼくを力づけてくれた本のことを語ろうと思う。人は自分がそれをそれと知らずに欲していたとき、まさにそこに現れるべき本に出会うことがあるものだ。――本書より
戦後企業事件史
戦後企業事件史
著:佐高 信,その他:木村 恒久,装丁:杉浦 康平,装丁:佐藤 篤司
講談社現代新書
経営トップの公私混同、内紛、粉飾決算、不正融資、そして倒産。社会を忘れ、逆命利君を疎んじる会社大国が引き起こした多種多様な企業事件を題材にして、事件の主役とその構造に迫る。 株主総会――毎年、6月末の同じ日の同じ時刻に、一斉に株主総会が開かれる。上場企業のほぼ9割もがこんな異常なことをやるのは、総会屋が恐いからである。総会屋のハシゴを恐れて、企業はこそこそと形式的に株主総会をする。なぜ恐いのか。それは企業が弱みをもっているからである。(中略)一般的には総会屋が悪者視される。右翼や暴力団と区別のつかない総会屋は確かに誉められた存在ではない。しかし、彼らが生存できるのは、企業がつけこまれる隙をもち、彼らにエサを与えるからである。内紛、汚職、粉飾決算等、さまざまに恥部や暗部をもつ企業は、それを嗅ぎつけた総会屋に口止め料を渡す。問題は総会屋よりも企業にあるのである。――本書より
子守り唄の誕生 五木の子守り唄をめぐる精神史
子守り唄の誕生 五木の子守り唄をめぐる精神史
著:赤坂 憲雄,イラスト・その他:佐藤 篤司,装丁:杉浦 康平
講談社現代新書
日本の子守り唄はなぜ暗いのか。重く湿った匂いはどこから来るのか。近代の闇の底から聴こえてくる、数も知れぬ守り子たちの呟きの唄を解読し、忘れられた精神史の風景を掘り起こす。 守り子の父は山から山へ――おどんがお父っぁんな、あん山ぁおらす、と歌われた。山中の出作り小屋で焼畑耕作にしたがうナゴ百姓の父を偲んだ唄と解することは、そこではまだ可能だ。しかし、おどんがお父っぁんな、山から山へ、里の祭にゃ、縁がない、と歌われたときには、もはやそうした解釈では届かない。山から山へ、という歌詞の意味は、焼畑農耕と関連づけることではまったく了解しがたい。里の祭りや宮座には縁がない、という歌詞と重ね合わせにしてみるとき、ゆるやかに浮上し像を結んでくるのは、村の秩序のそとを漂泊・遍歴してゆく人々=ナガレモンたちの姿である。焼畑をするナゴ百姓たちは、山から山へと渡り歩くことはない。ナゴの娘がみずからの父について、山から山へ、また、里の祭りには縁がない、と歌うことはありえない。――本書より
競馬の快楽
競馬の快楽
その他:植島 啓司,イラスト・その他:山口 はるみ,装丁:杉浦 康平,装丁:赤崎 正一
講談社現代新書
競馬事始め学習法から、思い出の名馬・快勝負。馬名に読みとれる家族劇や、アメリカ競馬に生きる格闘技魂。はては、バリ島の闘鶏に見るオッズの自然律や、カジノにおける現実変容術まで。賭博を語り、人生の勝負に想いをめぐらす。人間到る所、賭ければパラダイス! 新聞予想――幼い頃からその才能を高く買われた兄、才能はそれほどでもないが努力して自分に打ち勝とうとした弟。…… 兄は不運にも病弱で、力を発揮するチャンスを逸してしまう。ようやく本来の姿に戻ったのがちょうど人生の勝負時。奇しくも必死に努力してきた弟との対戦となった。さて、こういう場合、あなたはどちらを選ぶだろうか。競馬というのは単純に強いほうを選ぶというのではなく、自分に似たほうを選ぶようにできているのではないか。あなたはヘンリーかトーマスか。兄か弟か、才能か努力か。…… 競馬は人生をそのままなぞるわけでなはい。だが、いかなる結果に終わろうと永遠に忘れられないものがある。われわれはそれらをも引き受けながら賭け続けるのである。――本書より
幻獣の話
幻獣の話
その他:池内 紀,装丁:杉浦 康平,装丁:赤崎 正一
講談社現代新書
一角獣から鳳凰、ゴジラまで――。人はどこまで空想の翼を翔かせえたか? 神話・伝説、宗教、芸術が生んだおびただしい幻獣は、何を物語るか? 絶対の美、恐怖の極、珍妙笑止な獣など、人間の華麗な精神絵巻をひもとく。 輪廻転生する幻獣――いたるところに奇妙な生きものがいる。…… ロンドンのウェストミンスター寺院付属の図書室には、この種の一覧表といったものがあり、ベルギーの古都ブリュージュにも、ドイツの古都アウグスブルクにも同様のものがそなわっている。…… 架空の生きものが博物誌から消えるのは18世紀後半以降で、リンネの分類体系にはサテュロスなど若干の生きのこりはあったものの、ビュフォンの『博物誌』にいたり、現実の生物分類から完全に消し去られた。…… おもてだっては地上から姿も消したが、この知的遺産は目に見えない水路によるかのようにして、のちのちの時代につたわっている。しずかに意識の下を流れ、イメージの重なりのなかにまじって、やがてときならぬところにあふれ出る。――本書より
「ことば」を生きる―私の日本語修業
「ことば」を生きる―私の日本語修業
著:ねじめ 正一,装丁・その他:赤崎 正一,装丁:杉浦 康平,イラスト・その他:南 伸坊
講談社現代新書
生きたことば、光ることばとはどういうものか。詩人のことばはどこが違うのだろうか。自らの修業時代をたどり、ことば感覚の体得法を伝授。 志村先生――私が書いたのはほとんど語呂合わせである。「石がころころコロッケ食ったらお腹が空いた/井の頭公園の鯉が餌をえさえさ食べて下痢をした/……」シャレ帖に毛が生えたような文章ばかりだった。そんな文章のどこがいいのか、志村先生は必ずみんなの前で読み上げるのだ。最初は「その手には乗らないぞ」と気を引き締めていた私も、回が重なるうちにだんだんいい気持ちになってきた。通信簿の成績は体育を除いてオール2、もちろん国語も2で、本だってマンガしか読まなかった私が、文章を書くことにちょっぴり自信を持ったわけだ。その機を逃さず、志村先生は「今度は班ノートに詩を書いてみろ」と言ったのである。「お前なら書ける。いつもあんなおもしろい文章を書くんだから」とも言うのである。おだてに弱い私は、信頼する志村先生のこの一言に舞い上がって、次週の班ノートにさっそく詩を書いた。「店番」という題の詩だった。――本書より
英語メディアを使いこなす TIMEからCNNまで
英語メディアを使いこなす TIMEからCNNまで
著:鍋倉 健悦,装丁:杉浦 康平,装丁:赤崎 正一,その他:浅沼 テイジ
講談社現代新書
見出しは動詞に注意、FENは英字紙と平行して聴く、速読は文頭から――。英語情報を活かすテクニックとヒント。 「興味あるテーマ」から入る――。英文による情報雑誌は、経済や国際情勢といったいわゆる堅い話ばかりでなく、文化やトレンドなどのソフトな話題も満載している。だから興味ある記事にぶつかれば、それが、英文雑誌の世界に入っていくひとつのきっかけになると思う。そして、さらに積極的になって、自分の趣味に合った専門誌を見つけ、情報を増やしていく目的で読めるようになれば、これに勝る読み方はあるまい。……もっともはじめのうちは、半分くらいしかわからないかもしれない。しかし裏を返して言えば、それは半分もわかるということである。5割打者ということなのだから、もっと自信を持ってほしい。――本書より
江戸古川柳の世界―知的詩情を味わう
江戸古川柳の世界―知的詩情を味わう
著:下山 弘,装丁:杉浦 康平,装丁:赤崎 正一
講談社現代新書
日常生活の機微を、優しくも鋭いまなざしでとらえ、自由に、おおらかに作られて、江戸庶民の間で大流行した575の世界の機知あふれる詩情を読み、解き、楽しむ。 女房の抵抗――「近所ならこれ着なさいと意地悪さ」亭主が1人でモゾモゾと、良い着物に着替えはじめたので、女房が、「どこへ行くの」と尋ねる。「なに、その、ちょいと近所までだよ」近所までが聞いてあきれるョ。どうせ白粉を塗りたくった女のところへ鼻の下を伸ばしに行くんだろう……。女房の勘は百発百中なのだ。それでツンとして意地悪なアドバイスに及ぶ。「近所へ行くのなら、この普段着でいいでしょ」これが妻としては精一杯の抵抗なのだ。察するところ、夫はふだん家にいるようだし、経済的に家庭を困らせていないようだから、妻としては離婚調停を申し立てるべき段階ではない。この段階では妻ががまんするのが美徳というより当然の心得だった。――本書より
戦争を始めるのは誰か 湾岸戦争とアメリカ議会
戦争を始めるのは誰か 湾岸戦争とアメリカ議会
著:会田 弘継,装丁:杉浦 康平,装丁:佐藤 篤司,その他:國米 豊彦
講談社現代新書
戦争権限は大統領にあるのか、議会にあるのか。湾岸戦争を目前に控え、議会は動き出す。もはや共和党も民主党もない。戦争か否かの1票を自らの良心に従い、投じるのだ。 「アメリカ議会最良の時」――議会制度は瀕死の状態だという人もいる。冒頭紹介したような、アメリカでも日本でもみられる議員の生態は、その証拠だ。(中略)議会制度は、利権構造で民衆に媚びたがために、存立の基盤を自ら切り崩し、復讐を受けているのだ。これは、日本も同じことである。問題は、議会制度の根幹にかかわるような事態が訪れたときに、どれだけ本来期待されている機能を議会が果たせるかだ。よたよたのアメリカ議会は、ペルシャ湾岸危機が実質的な米・イラク戦争へと移行していく最後の局面で、とにかくその期待に応えようと試みた。歴史を振り返りつつ、先人の言葉を思い出しながら、同時に、ひとりひとりの議員が自身の歩んできた道を思い起こしながら、議場で「良心と判断」の説明をしようと努めた。議員の演説は夜を徹して行われ、延々30時間にも及んだ。――本書よ
はじめてのスペイン語
はじめてのスペイン語
著:東谷 穎人
講談社現代新書
明快な音と、歯切れのよいリズム。直説法と接続法の使い分けや、再帰表現が語る、豊かなニュアンス。神と話すことば」の世界へようこそ。 スペイン語と神とカルロス・プリメロの午後――スペインの長いゆったりとした昼食を済ませたあと、コーヒーを飲み、ゆっくりと銘酒「カルロス・プリメロ」を舌の上でころがしながら、気の合った仲間と会話を楽しむ。まさに私にとっては至福のひととき。良き仲間をもつ喜びと、その仲間たちとスペイン語を通して心を通じ合える喜びを噛みしめ、「カルロス・プリメロ」に陶然となり、カルロス1世のことばを思い出すのです。…… さて前口上が長くなりました。とにかくスペイン語は美しいことばです。長い歴史の奥深い文化に裏打ちされたこのことばの仕組みの概略を、これから皆さんにやさしく解説し、スペイン語の世界にお誘いしたいと思います。――本書より
現代家庭の年中行事
現代家庭の年中行事
著:井上 忠司,著:サントリ- 不易流行研究所,その他:浅沼 テイジ,装丁:杉浦 康平,装丁:佐藤 篤司
講談社現代新書
四季折々に生活のリズムを刻み、家族の絆を結ばせる年中行事。「豊かな社会」の中で変容する行事の意義と、家庭づくりの知恵を探る。 家庭の活性化のために――家庭生活を、1週間の単位ではなくて、1年間の単位で考えてみては、どうだろう。1年のタイムスパンで考えると、家族のメンバーが週にいくど食卓をかこむか、などということは、さして大きな問題とはなりえない。家庭の現状はかならずしも嘆くにあたらないのである。発想の転換ひとつで、家族がなにがしか活性化すること、請け合いである。1年というサイクルでみれば、わが国には、春夏秋冬という四季があり、それぞれの季節にふさわしい「年中行事」がある。この年中行事に着目すると、「家庭」という劇場では、もっと多様な“シナリオ”と“演出”が可能になることであろう。――本書より
ソクラテスはなぜ裁かれたか
ソクラテスはなぜ裁かれたか
著:保坂 幸博,その他:山本 匠,装丁:杉浦 康平,装丁:佐藤 篤司
講談社現代新書
有罪とされた哲学者ソクラテスは、どんな罪を犯したのだろうか。その裁判の争点を問い直し、神話的ギリシア世界におけるソクラテスの真の偉大さを考察する。 魂に働きかける──ソクラテスの対話の特徴は、その表現形式や議論の内容にあるよりも、相手の魂に直接的に働きかけて、これを説き指導することにあったように思われる。……ソクラテスにとって、そして実はプラトンにとっても、言葉とは書かれるものではなく、話されるものであった。「話される言葉こそが、魂に裏づけられた言葉である」とプラトンはいっている。ソクラテスは対話する相手を目の前にするとき、その相手の精神がどのような状態にあって、どこを向いているかということを、即座に見抜く透徹した目をもっている。そして、このように相手の存在を確認したうえで、その場に最も効果的な対話を形作る特異な能力をもっている。──本書より