講談社文芸文庫作品一覧

旅の話・犬の夢
講談社文芸文庫
若き文学者・江藤淳のほとばしる好奇心、躍動する批評精神。旅先での思索、愛犬との日常ーーロンドンでターナーと漱石の内的現実について考え、ドイツで音楽生活の厚みと欧州人の厳格な孤独に触れ、ウィーン国立歌劇場の爛熟と洗練を極めたオペラに酔い、アメリカで世阿弥を読み自己の核心を支えるものを発見し、東京で愛犬ダーキイを傍らに思索を重ね執筆する。著者が20代後半から30代にかけて、横溢する好奇心と旺盛な行動力、躍動する批判精神で綴った、随筆集の名著。

その言葉を/暴力の舟/三つ目の鯰
講談社文芸文庫
東京で三年ぶりに再会した、故郷の俊才の変わり果てた姿「その言葉を」。他人の怒りと攻撃性を誘発せずにはおかない、風変わりな先輩との四年間「暴力の舟」。父の葬式で一堂に会した親族たちの、幼い頃は窺い知れなかったそれぞれの事情「三つ目の鯰」。七〇年代の青春の一光景を映し出す、瑞々しい初期中篇三作。
東京で三年ぶりに再会した、
故郷の俊才の変わり果てた姿「その言葉を」。
他人の怒りと攻撃性を誘発せずにはおかない、
風変わりな先輩との四年間「暴力の舟」。
父の葬式で一堂に会した親族たちの、
幼い頃は窺い知れなかったそれぞれの事情「三つ目の鯰」。
七〇年代の青春の一光景を映し出す、瑞々しい初期中篇三作。

秀吟百趣
講談社文芸文庫
漱石、白秋、子規、茂吉、万太郎、兜太、寺山修司…明治以降の名歌・名句全百三首を鋭利な批評眼で簡潔に解説・鑑賞する魅力の詞華集

泡/裸木 川崎長太郎花街小説集
講談社文芸文庫
川崎長太郎には、小田原の花街・宮小路を舞台にした
〈小津もの〉と呼ばれる一連の作品がある。スター的映画監督・
小津安二郎と三文文士・長太郎が、ひとりの芸者を巡り対峙する。
長太郎に勝ち目はない。ひたすら〈純情〉を武器に、小津の
独身貴族的不誠実を衝く。小津自身に読まれることを
見越した如く書かれた挑戦的な戦前・戦中作九篇に、ヒロインの
その後を辿る戦後作を加え全十篇を収録。半数は単行本未収録。

妻を失う 離別作品集
講談社文芸文庫
妻に先立たれた夫の日々は、悲しみの海だ。
男性作家の悲しみは、文学となり、
その言葉は人生の一場面として心に深く沁み込んでいく。
例えば藤枝静男の「悲しいだけ」のように……。
高村光太郎・有島武郎・葉山嘉樹・横光利一・原民喜・
清岡卓行・三浦哲郎・江藤淳など、静謐な文学の極致を
九人の作家が描いた、妻への別れの言葉。

最後の酔っぱらい読本
講談社文芸文庫
名作の樽詰『酔っぱらい読本』第三弾、最終回。
漢詩も文壇話も、古典落語も映画もハードボイルドも、
読者を酔わせてくれること必至の作品揃い。
高橋和巳・李太白・阿川弘之・阿部昭・なだいなだ・遠藤周作・金子光晴・里見とん・佐藤春夫・小沼丹・河上徹太郎・和田誠・小泉喜美子・戸板康二・徳川夢声・團伊玖磨・立原正秋・藤枝静男・そして吉行淳之介。

現代小説クロニクル 1975~1979
講談社文芸文庫
濃密な血の呪縛、中上文学の出発点「岬」(芥川賞)
男と女と日常の不穏な揺らめき「髪の環」
不幸の犠牲で成り立つもの「幸福」
流される僕の挫折と成長「僕って何」(芥川賞)
言葉以前の祈りの異音「ポロポロ」
垢の玉と生死の難問「玉、砕ける」
少年を襲う怪異の空間「遠い座敷」
1975~2014年の名作を5年単位で選りすぐり、
現代小説40年の軌跡を辿る全8巻。
文学は何を書き試み、如何に表現を切り拓いてきたのか。
シリーズ第1巻。

砂の粒/孤独な場所で 金井美恵子自選短篇集
講談社文芸文庫
一筆ずつ塗り重ねられる精緻な絵画のように、あるいは一針ずつ施される絢爛たる詩集のように――一語一語選び抜かれた言葉は、思わぬつながりを持つ次の言葉を連れてきて、夢中でそれらを追ううちに思いもよらない地平に連れ去られていく。時空間も記憶も等質な粒子となって混じり合い、拡散し、迷宮のような読書体験をもたらす、著者初の自選短篇集。

私の万葉集 三
講談社文芸文庫
新元号「令和」の出典、
『万葉集』の魅力を
現代詩の巨人が説きあかす!
現代詩人・大岡信の先見性に満ちた『万葉集』論、第三巻。
新元号の出典となった「梅花の宴」について、
日本文学史とこの宴との重要な関連を指摘。
『万葉集』を現代人が味わい楽しむ「生きた」歌集として読み解く。
大岡信の『私の万葉集』第三巻(全五巻)。
ひさかたの 天の香具山 この夕
霞たなびく 春立つらしも 人麻呂
ゆったりとした万葉人の息吹を伝えたい。
著者の思いは、愛情深く、平易な文体で現代につなげていく。
「万葉集」巻八から十二までを、たとえば恋の歌、
それは、日本人の永遠に通ずる心の古典として……。

手紙読本
講談社文芸文庫
石川啄木が友人の金田一京助宛に、長男の死を告げながら葬儀用に羽織袴の借用を頼む手紙。夏目漱石が饅頭を貰ったことへの礼状に、饅頭の俳句を添えて。内田百けんが借金を請う無心状。谷崎潤一郎の赤裸々な恋文。太宰治が芥川賞を懇願する手紙。福沢諭吉が我が子に送った人生のアドバイス。正岡子規が弟子の高浜虚子に与えた厳しい訓戒。二葉亭四迷、森鴎外の遺書……。一通の手紙に表れる作家の知られざる素顔や、作家同士の興味深い交友関係。名編集者・江國滋が86通の手紙を厳選し、手紙の内容ごとに寸評を加えたアンソロジー。巻末解説・斎藤美奈子。

「私小説」を読む
講談社文芸文庫
志賀直哉、藤枝静男、安岡章太郎を貫く「私小説」の系譜。だが、著者はここで日本文学の一分野を改めて顕揚したり、再定義を下したりはしない。本書は、我々が無意識・無前提に受け入れている「読みの不自由さ」から離れ、ひたすら、いまここにある言葉を読むこと、「作品」の表層にある言葉の群との戯れを通じ、一瞬ごとの現在を生きようとする試みなのである。「読むこと」の深見と凄みを示す、文芸批評の名著。

個人全集月報集 円地文子文庫・円地文子全集 佐多稲子全集 宇野千代全集
講談社文芸文庫
日本古典文学への深い造詣をもとに、
女の情念と孤独を官能的に描いた円地文子。
戦中、戦後を厳しい眼差しで見つめ、
魂の文学へと昇華させた佐多稲子。
四度の結婚や実業家としての活躍など、
奔放な人生を小説に投影した宇野千代。
激動の時代を波瀾万丈に生き、
昭和の「女流文学」を牽引した三作家の
文学性と人間像を浮き彫りにする、
個人全集月報集第三弾。

残響 中原中也の詩によせる言葉
講談社文芸文庫
〈あゝ、おまへはなにをして來たのだと……
吹き來る風が私に云ふ〉
〈作者に吹いたのと同じ風が俺にも君にも吹いてくるぜ。
冷たい悲しい、憎くて甘い下郎のような風だぜ。〉
早世の天才詩人・中原中也の詩五七編に、
現代文学を牽引する著者が深く耳を澄まし、響きを返す。
時空を超え谺しあう二人の詩人、魂の残響。

凡人伝
講談社文芸文庫
主人公の英語教師はあるときふと思い立つ。世に偉人伝は数多あるが、第二のナポレオンは現れない。ならば失敗に鑑みる『凡人伝』を書くほうがよほど有益だ。神童と謳われ、その後凡人の道を歩む自分の伝記を書こう、と。自然主義、プロレタリア文学隆盛時に全く新たな分野を開拓、「ふつうの人々」の生活に寄りそい、上質で良識ある笑いを文学にもたらした、ユーモア小説の第一人者による傑作長篇。

日日の麺麭/風貌 小山清作品集
講談社文芸文庫
市井の人々の小さな人生に汚れなき魂を見いだし、
五〇篇に満たない美しい短篇を遺して
不遇の生涯を閉じた作家、小山清の希少な作品集。
馴染の妓との関わりと別れを哀切に綴る「朴歯の下駄」、
幼な子イエスを慈しむマリヤとヨセフのある一日「聖家族」ほか、
太宰治、井伏鱒二との交流を振り返る随筆を併録。

青鞜小説集
講談社文芸文庫
明治四十四年、平塚らいてうを注進に『青鞜』が発刊された。
女流文芸誌はやがて婦人解放運動へと傾き、世間の批判を浴びる。
そして『青鞜』に載った小説のうち、偏った選択ながらもこの一冊だけが、
その足跡として残された。
野上弥生、神近市、小金井きみ(森鴎外妹)、森しげ(鴎外夫人)、
岩野清(岩野泡鳴夫人)など一八人の当時の新しい女たちの
高い意識と周年は、時代を経て、現在の女性の礎になっている。

地獄変相奏鳴曲 第四楽章
講談社文芸文庫
本第四楽章をもって、〈連環体長篇小説〉『地獄変相奏鳴曲』がついに完結。十五年戦争の時代をくぐり、敗戦・占領下の混乱、そして戦後の激動を生き抜いてきた、一組の老齢に達した夫婦が、周到な準備のもと、何ゆえ「情死」を選びとったのか? 互いに敬愛する男女の仲に根づく〈無神論的・唯物論的にして宗教的〉な境地とはいかなるものか? 日本人の現代および近未来の課題に果敢に挑戦した最終楽章「閉幕の思想」。
本第四楽章をもって、〈連環体長篇小説〉『地獄変相奏鳴曲』がついに完結。
十五年戦争の時代をくぐり、敗戦・占領下の混乱、
そして戦後の激動を生き抜いてきた、一組の老齢に達した夫婦が、
周到な準備のもと、何ゆえ「情死」を選びとったのか?
互いに敬愛する男女の仲に根づく〈無神論的・唯物論的にして宗教的〉な
境地とはいかなるものか? 日本人の現代および近未来の課題に
果敢に挑戦した最終楽章「閉幕の思想」。
解説/阿部和重

地獄変相奏鳴曲 第一楽章・第二楽章・第三楽章
講談社文芸文庫
第一楽章「白日の序曲」の初稿発表より40年の歳月を経て完成した「連環体長編小説」――全四楽章のうち、旧作の新訂版である第一楽章から第三楽章までを本書に収録。異姓同名の男女の織りなす四つの世界が、それぞれ独立した中篇小説でありながら、重層化され、ひとつの長篇小説となる。十五年戦争から、敗戦・占領下、そして現代にいたる、日本人の精神の変遷とその社会の姿を圧倒的な筆致で描破。
第一楽章「白日の序曲」の初稿発表より40年の歳月を経て
完成した「連環体長編小説」――全四楽章のうち、旧作の
新訂版である第一楽章から第三楽章までを本書に収録。
異姓同名の男女の織りなす四つの世界が、それぞれ独立した
中篇小説でありながら、重層化され、ひとつの長篇小説となる。
十五年戦争から、敗戦・占領下、そして現代にいたる、
日本人の精神の変遷とその社会の姿を圧倒的な筆致で描破。

日和山 佐伯一麦自選短篇集
講談社文芸文庫
新聞配達の早朝の町で、暗天に閉ざされた北欧の地で、染織家の妻と新たな暮らしを始めた仙台の高台の家で、そして、津波に耐えて残った小高い山の上で――「私」の実感をないがしろにしない作家のまなざしは常に、「人間が生きて行くこと」を見つめ続けた。高校時代の実質的な処女作から、東日本大震災後に書き下ろされた短篇まで、著者自ら選んだ9篇を収録。
新聞配達の早朝の町で、暗天に閉ざされた北欧の地で、
染織家の妻と新たな暮らしを始めた仙台の高台の家で、
そして、津波に耐えて残った小高い山の上で――
「私」の実感をないがしろにしない作家のまなざしは常に、
「人間が生きて行くこと」を見つめ続けた。
高校時代の実質的な処女作から、東日本大震災後に
書き下ろされた短篇まで、著者自ら選んだ9篇を収録。

公園/卒業式 小島信夫初期作品集
講談社文芸文庫
著者十六歳、岐阜中学校校友会誌に掲載された小品から、昭和二十年代までの初期作品を集成。第一高等学校時代の透明感溢れる心象風景を綴った伝説的佳品「裸木」や、同人誌「崖」に発表された「往還」「公園」などの戦前作品、また、著者固有のユーモアの深淵を示す「汽車の中」「卒業式」「ふぐりと原子ピストル」など、〈作家・小島信夫〉誕生の秘密に迫る十三篇を収録。
著者十六歳、岐阜中学校校友会誌に掲載された小品から、
昭和二十年代までの初期作品を修正。第一高等学校時代の
透明感溢れる心象風景を綴った伝説的佳品「裸木」や、
同人誌「崖」に発表された「往還」「公園」などの戦前作品、
また、著者固有のユーモアの深淵を示す「汽車の中」「卒業式」
「ふぐりと原子ピストル」など、〈作家・小島信夫〉誕生の
秘密に迫る十三篇を収録。小島文学入門のための貴重な一書。