講談社文芸文庫作品一覧

春・花の下
講談社文芸文庫
理性と感情がみごとに調和した、清澄な文体でつづる傑作短篇集。巡る春に託して老女の家へのこだわりを描く「春」、死別したはずの母親についての怖ろしい疑惑が湧き上る「花の下」、娘を中心として家族全体で死にゆく母を看とる「去年の梅」の他、「ありてなければ」「迎え火」「夜の明けるまで」「春過ぎて」「市」「降ってきた鳥」「湖」の秀作10篇を収録した。
理性と感情がみごとに調和した、清澄な文体でつづる傑作短篇集。巡る春に託して老女の家へのこだわりを描く「春」、死別したはずの母親についての怖ろしい疑惑が湧き上る「花の下」、娘を中心として家族全体で死にゆく母を看とる「去年の梅」の他、「ありてなければ」「迎え火」「夜の明けるまで」「春過ぎて」「市」「降ってきた鳥」「湖」の10篇を収録した。

静かな生活
講談社文芸文庫
精神の危機を感じて外国滞在を決意した作家の父に、妻が同行する。残された3人の兄弟妹の日常。脳に障害を持った長男のイーヨーは“ある性的事件”に巻き込まれるが、女子大生の妹の機転でピンチを脱出、心の平穏が甦る。家族の絆とはなんだろうか――。〈妹〉の視点で綴られた「家としての日記」の顛末に、静謐なユーモアが漂う。大江文学の深い祈り。
精神の危機を感じて外国滞在を決意した作家の父に、妻が同行する。残された3人の兄弟妹の日常。脳に障害を持った長男のイーヨーは“ある性的事件”に巻き込まれるが、女子大生の妹の機転でピンチを脱出、心の平穏が甦る。家族の絆とはなんだろうか――。〈妹〉の視点で綴られた「家としての日記」の顛末に、静謐なユーモアが漂う。文学の深い祈り。

冥途の家族
講談社文芸文庫
父親の両腕、両脚にからまれ、しがみつくように寝る幼い娘。デキの良い娘に、何ひとつ不自由させず、こよなく愛する父親。やがて娘は成長し、家を出て、絵かきのセンセと同棲する。父の脇腹にカタマリができ、娘の渡米中に父親は癌死する。濃いつながりを持つ父と娘、母と娘、家族群像を鮮かに描き、女流文学賞を受賞した、富岡多恵子の初期を代表する傑作!

外来語の話
講談社文芸文庫
語源研究に画期的役割を担った磧学・新村出。8篇からなる「外来語の話」では、朝鮮語、漢語、南方語、欧米語等、各々の言語と日本語との関わりを考証し外来語の語源・伝来を興味深く解明する。表題作のほか「金もうる物語」「オランダ語の名残」「ピントとピストル」「外来語の本源と経路」など『広辞苑』の編者が語る知性豊かな語源探索エッセイ14篇。

正岡子規
講談社文芸文庫
“子規という不可思議な魅力”にとりつかれた著者が、作品と資料を徹底的に読み、調べ、洞察の眼を見開いて明治という激動の時代の中に、改革者としての子規の烈風の如き精神の軌跡を鮮かに浮かびあがらせる。後年病床にしばり付けられ絶え間ない激痛に号泣した36歳の短い生涯を貫く強靱な批評魂の体現者・子規。凛として牡丹動かず真昼中 亀井勝一郎賞受賞。

原民喜戦後全小説(下)
講談社文芸文庫
水のなかに浸って死んでいる子供の眼はガラス玉のようにパッと水のなかで見ひらいていた。……まるでそこへ捨てられた死の標本のように子供は河淵に横わっていた。(「鎮魂歌」)──1945年8月6日の〈死の風景〉に立ち合わされ、死者の嘆きを抱え込んでしまった作家の苦悩を刻む「氷花」「飢え」「災厄の日」「火の子供」ほか童話6篇を含む原民喜戦後全小説下、21篇。

先知先哲
講談社文芸文庫
『吉川幸次郎全集』、『田中美知太郎全集』等々を刊行した元編集者・出版人である著者が、82歳のこれまでに巡り合った真の偉大な精神、10余名の肖像画。竹内勝太郎、野間宏、榊原紫峰、田辺元、中村光夫他、殊に京大の恩師小島祐馬先生を深い敬慕を込めて綴る。“いまは毎日酒をたのしみ、時に碁を打つ”晴耕雨読の一知識人が、先人達の素顔とその魅力を書いた評伝。

井伏鱒二・弥次郎兵衛・ななかまど
講談社文芸文庫
日本の“親爺”木山捷平最晩年の飄々短篇集。常に市井の人として一貫し、独特の詩情溢れる飄々たる人生世界を描出した木山捷平最晩年の珠玉短篇。敬愛する井伏鱒二の秀抜な素描、若き太宰治の真摯な青春像。
日本の“親爺”木山捷平最晩年の飄々短篇集常に市井の人として一貫し、独特の詩情溢れる飄々たる人生世界を描出した木山捷平最晩年の珠玉短篇。敬愛する井伏鱒二の秀抜な素描、若き太宰治の真摯な青春像。

日本文壇史5 詩人と革命家たち
講談社文芸文庫
足尾銅山鉱毒事件が社会問題となりつつある時、博文館、春陽堂と硯友社系の文学者達で成りたった中心的文壇の外で、明治31年、独歩の「武蔵野」発表、子規の短歌革新など、日本文学の根本的改革が始まった。明治33年、蘆花『不如帰』刊行、与謝野寛「明星」創刊ほか、藤村、虚子、鏡花等、明治初年代生まれの文学青年達が鮮烈な文学活動を展開する中、漱石は英国留学に出発した。

原民喜戦後全小説(上)
講談社文芸文庫
人類は戦争と戦争の谷間にみじめな生を営むのであろうか。原子爆弾の殺人光線もそれが直接彼の皮膚を灼かなければ、その意味が感覚出来ないのであろうか──(「戦争について」)8月6日の惨劇を時間を追い克明に描いた傑作「夏の花」3部作をなす「壊滅の序曲」「廃墟から」「美しき死の岸に」等凄絶な地獄絵〈ヒロシマ〉を引き受けた著者の冷徹な声を、戦後50年を経て今問う原民喜戦後全小説上、17篇。

わが井伏鱒二・わが横浜
講談社文芸文庫
東西古今の文学・思想・芸術等々に該博な造詣を持ち、常に誠実で現代稀にみる明晰な書斎人としての業績を持つ批評家寺田透の、心を開いて親愛する井伏鱒二論の全てと、大震災を経、大空襲を経た“故郷”横浜に関わる秀逸な随想、単なる愛着や回顧を越えて滲み出す澄明な“歴史”の説得力。

能の物語
講談社文芸文庫
紀有常の娘が業平との永久の愛を語り清絶に舞う「井筒」、一ノ谷の合戦で討たれた平敦盛と今は僧となり弔う直実が夢のごとき人生と無常を語る「敦盛」、ほか「隅田川」等。最大限に省略された舞台空間で無限の表現を可能にした能、視覚聴覚に訴えるその“間”と、幽玄と美を文章に写す。創造的な独自の解釈を加え物語る能の名作21篇。

屍の街・半人間
講談社文芸文庫
真夏の広島の街が、一瞬の閃光で死の街となる。累々たる屍の山。生きのび、河原で野宿する虚脱した人々。僕死にそうです、と言ってそのまま息絶える少年。原爆投下の瞬間と、街と村の直後の惨状を克明に記録して1度は占領軍により発禁となった幻の長篇「屍の街」。後遺症におびえ、狂気と妄想を孕んだ入院記「半人間」。被爆体験を記した大田洋子の“遺書”というべき代表作2篇。

ガリバ-旅行記
講談社文芸文庫
1951年3月、原民喜自殺。死の直前に書かれた『ガリバー旅行記』再話。その第4章馬の国(フウイヌム)は怒りも憎しみも悪もなく、死に悲しみもないユートピア。穏やかな理性の国に唯一、光る石を好み争うことしかしないヤーフと呼ばれる人間に似た卑しい生きものが存在した。1945年8月6日の剥ぎとられた街〈ヒロシマ〉を所有する原民喜の悲痛な『ガリバー旅行記』。

近代フランス詩集
講談社文芸文庫
上田敏『海潮音』にはじまり、堀口大学、日夏耿之介ら、日本翻訳詩の高い達成点の伝統の中で、自ら全訳した、ボオドレエル、リラダンをはじめとした、近代フランス詩人40人の秀詩を、翻訳詩のレヴェルを超え、創作詩にまで、高めた訳者、斎藤磯雄縷骨の訳業。“魂の神聖な売春”と、ボオドレエルが称した、至高の意味での“自己放棄”の絶唱。

日本文壇史4 硯友社と一葉の時代
講談社文芸文庫
明治28年、露伴が大作『風流微塵蔵』で注目をあび、硯友社系の柳浪、鏡花達の活躍の中で一際輝いた一葉は、29年、絶賛を博しながら24歳の生涯を閉じた。紅葉の『金色夜叉』が読者を熱狂させていた明治30年、藤村が抒情詩集『若菜集』を刊行、独歩は「源叔父」を発表。紅葉、露伴の活動華々しき文壇に、文学史を画する清新な作品が、若い文学青年達によって登場しはじめた。

風貌・姿勢
講談社文芸文庫
文学に精進しつつ95歳の天寿をまっとうした作家が、その生涯に敬愛し、私淑した文士たちの風貌と姿勢を生き生きと描出する。鴎外、漱石、志賀直哉から小林秀雄、田中貢太郎、太宰治、中野重治ら30余名。講談社名著シリーズ版『風貌・姿勢』に拠る、作家・文士の風貌と個性を見事に活写した随筆集。
文学に精通しつつ95歳の天寿を全うした作家が、その生涯に敬愛し、私淑した文士たちの風貌と姿勢を生き生きと描出する。鴎外、漱石、志賀直哉から小林秀雄、田中貢太郎、太宰治、中野重治ら30余名。講談社名著シリーズ版『風貌・姿勢』に拠る新篇随筆集。

乞食王子
講談社文芸文庫
“その積りでいれば”世の中随分おもしろく眺められる“結構な御身分”のその時々を自由自在に生きる“乞食王子”。ロンドン、パリ、上海、カルカッタ、世界各地を歩き、古今東西の文明・文化の何たるかを知り尽した著者の、感性豊かな視線とウイットに溢れた独創の世界。「銀座界隈」「東京」「人の親切」「宮廷」「文士」「海坊主」等々、虚実入り混った79篇収録の限りなく優雅なエッセイ集。

雉子日記
講談社文芸文庫
『風たちぬ』の最終章「死のかげの谷」完結までの数年、軽井沢滞在等の中で祈り祈りに綴られたエッセイ集。浅間の高原の四季への想い。読書の日々。生涯にわたって最も深く影響をうけたリルケをめぐる「リルケ雑記」。療養しつつ清冽なリリシズム漂う作品を残した堀辰雄の死に立ち向う健康的で強靱な精神の持続が生んだ名品。

新編 文学の責任
講談社文芸文庫
碩学・吉川幸次郎の中国文学の高弟であり、戦後日本文学の思想を根源的に、果敢に継承しようとして早逝した著者。『悲の器』で圧倒的な出発を果たし、『邪宗門』『散華』等々、70年代までの現代日本を代表する文学・思想者、高橋和巳の文壇的出発前を含めた初期の思想を凝集した「志」エッセイ。