講談社文芸文庫作品一覧

日本文壇史1 開化期の人々
講談社文芸文庫
同時代の文士や思想家、政治家の行動、「そのつながりや関係や影響を明らかにすることに全力をつくした」という菊地寛賞受賞の伊藤整畢生の明治文壇史・全18巻の“1”。仮名垣魯文、福沢諭吉、鴎外、柳北、新島襄、犬養毅ら、各界のジャーナリズム動かした人々。坪内逍遙の出現と、まだ自己の仕事や運命も知らずに行き合う紅葉、漱石等々を厖大な資料を渉猟しつつ生き生きと描写する人間物語!

辰雄・朔太郎・犀星
講談社文芸文庫
作家としての福永武彦が、現代にふさわしい小説を書こうと意図したとき、たくまずその脳裏に浮かんだ先達ともいうべき作家たち――彼らへの「感謝の現れ」、オマージュとして捧げたのが『意中の文士たち』である。本書はその下巻であり、福永が最も親炙し敬愛した堀辰雄、その魂の内面の表現に深く共感を寄せた萩原朔太郎・室生犀星についての、こよなく優れたエッセイを収めた。
作家としての福永武彦が、現代にふさわしい小説を書こうと意図したとき、たくまずその脳裏に浮かんだ先達ともいうべき作家たち──彼らへの「感謝の現れ」、オマージュとして捧げたのが「意中の文人たち」である。本書にはその下巻──福永が最も親炙し敬愛した堀辰雄、その魂の内面の表現に深く共感を寄せた萩原朔太郎・室生犀星についてのこよなく優れたエッセイを収めた。

石蕗の花網野菊さんと私
講談社文芸文庫
祖父広津柳浪、父和郎、そして桃子。1人きりの兄が病没し、嫁がず、孕まず、“家”が消滅する宿命を担う湘南での日々。名作『一期一会』を残し、孤独な老齢を靭く生きる網野菊へのひとかたならぬ親愛と深い交響の中で生まれる静謐な感動。文学者3代の末、広津桃子の女流文学賞受賞の名品。

古典の細道
講談社文芸文庫
記紀の記述の相違から倭建命に深くかかわる精神、能「大原御幸」の演者の一瞬の間に隠れた真実を感得する魂。芸術・文学に造詣深い著者が、誘われるごとく、業平、小町、世阿弥、蝉丸、継体天皇、惟喬親王等、12人の縁りの地を訪ね歩き、正史に載らぬもう一つの姿を鮮やかに描き出す。伝承・伝説を語り継いだ名もない人々“語り部”、その心に、共鳴し、慈しむ、白洲正子の独創的古典へのエッセイ。

ゆれる葦
講談社文芸文庫
6歳で実母と生き別れ、16歳で女子大に仮入学する旅立ちまでの精神の遍歴をたどった自伝的長篇。終生志賀直哉を文学の師と仰ぎ精進した女流作家が、3代にわたる一族と、自己の人間形成を冷静に見据える。他に短篇「教母」「イワーノワさん」等6作を収録し、網野菊の感銘深い文学世界の精髄を凝縮する。

ヨオロッパの人間
講談社文芸文庫
ヨオロッパ世界はその精神の故郷が地中海にあってその文明の円熟の頂点は18世紀に極まるとみる著者は、人間が人間であることの限界を認め、その人間らしさを重視しつつ、エリザベス1世、ヴォルテエル等の魅力からランボオ、ヴァレリイ他の鮮かな人間像へと説き及ぶ。18世紀の優雅と哀愁を回顧し、諦念から出発した人生のそれ故の喜びと楽しみを、芳純な文体で語る歴史随筆。

アヴァンギャルド芸術
講談社文芸文庫
常に時代を“転形期”として捉え、前近代的なもの、B級の芸術を否定的媒介にして“モダニズム”を超える思考の提出。世界の秀れた前衛の思想をラジカルに踏んだ強力な視座、常にダイナミックな“変革”を志す世界的発信性の獲得。思想の追尋者・花田清輝の代表作。

河岸の古本屋
講談社文芸文庫
古本屋のない町は文化の低い町とみる著者が、パリのセーヌ河岸の古本屋(ブキニスト)の盛衰を心情込めて語る『河岸の古本屋』。「誤訳の楽しみ」など12章に綴る魅力溢れる読書論「本とつき合う法」。日本人の人生観、パリでの青春の日の見聞、日本の文壇人の想い出、大学教育の危機等。血肉を通してフランスのモラリストを深く研究した著者の多彩な文学活動を示す、滋味豊かなエッセイ集。

マルドロオルの歌
講談社文芸文庫
「筆名ロオトレアモン伯爵、本名イジドル・デュカス。1846年に生れ、1870年に死す。」これ以外、その生涯が全く不明の詩人が残した「歌」は、奇跡的に今世紀に伝わり、現代文学の新たな脱皮、革命の起爆装置として日々作用しつづけている。『マルドロオルの歌』の初訳者として、戦中・戦後の熱烈な読者の詩魂を震盪せしめた青柳瑞穂の名訳を収める。

魯迅
講談社文芸文庫
“絶望の虚妄なることは正に希望と相同じい”と魯迅を引用し「絶望も虚妄ならば、人は何をすればよいか。……何者にも頼らず、何者も自己の支えとしないことによって、すべてを我がものにしなければならぬ。」と魯迅を追尋しつつ論及、昭和18年遺書を書く想いで脱稿。そして応召。僚友武田泰淳の『司馬遷』とともに、戦時下での代表的名著。

あにいもうと・詩人の別れ
講談社文芸文庫
長い沈潜の後、自らの抒情を封じ、野性の愛を描いて見事に第2の昴揚期を開いた「あにいもうと」(文芸懇話会賞)。深い愛で妻の発病と命の揺らぎを見つめた「死のいざない」。親しい詩人達の友誼と理非を超えたその死を語る「信濃」「詩人の別れ」ほか、「つくしこいしの歌」「庭」「虫寺抄」等。逞しい作家魂とひたむきに追う犀星の美意識が展開する多彩な中期作品群より8篇を収録。

『わが性の白書』
講談社文芸文庫
癌で死んだ或る作家の遺書『わが性の白書』の出版をめぐる、関係者たちの思惑とその「真相」。逆手にとりつつ、文壇・マスコミに登場する女流作家の放胆な軌跡。現代という時代の「世界の空虚さ」の真只中で演じられる、真摯に生きようとする者たちの喜劇的なドラマ。文芸評論家・中村光夫が、初めて50代で執筆発表した、痛撃な批評と苦いユーモアの漂う、意欲的長篇小説。現代風俗を取り込んで描く、果敢な挑戦作。

新編 琅 記
講談社文芸文庫
『広辞苑』の編者新村出博士の名著と名高い語源探索の書『琅かん記(ろうかんき)』全61編の随筆から、令孫新村徹氏が30余編を選んで「新編」とした。「更紗」「キセル」の語源を尋ねて南蛮の情緒にひたり、「亜刺比亜馬と波斯馬」を語って「魏志」「後漢書」の倭国の記述に始まり、秀吉を経て将軍吉宗の馬匹改良の話に達す。興趣尽きぬ、琅かんの玉にも比すべき随筆集。

戦艦大和ノ最期
講談社文芸文庫
昭和20年3月29日、世界最大の不沈戦艦と誇った「大和」は、必敗の作戦へと呉軍港を出港した。吉田満は前年東大法科を繰り上げ卒業、海軍少尉、副電測士として「大和」に乗り組んでいた。「徳之島ノ北西洋上、「大和」轟沈シテ巨体四裂ス 今ナオ埋没スル三千の骸(ムクロ) 彼ラ終焉ノ胸中果シテ如何」戦後半世紀、いよいよ光芒を放つ名作の「決定稿」。

月は東に
講談社文芸文庫
起きてしまった知人の配偶者との「関係」の事実を、男は謝罪し弁明するほどに、ますます窮地に陥ってゆく。露呈する主人公の心の「やましさ」を、作家の眼が凝視する。救いを願う個我の微妙な感情と心理を描いた、意欲的長篇。夏目漱石、志賀直哉らと日本の近代小説が探求し続けてきた、人間の「倫理とエゴ」の重く切実な主題を共有する、『幕が下りてから』に続く著者中期の代表作。

夢の力
講談社文芸文庫
芥川賞受賞前後から『枯木灘』『紀州木の国・根の国物語』の達成、熊野大学の開校、『化粧』を編み、『鳳仙花』へと書き継ぐ3年間の、その時を語る若き中上健次のエネルギーの“渦”。「風景の貌」「緋の花」「戦争を欲する子供たち」「一本の草」「坂口安吾」「野性の青春」「路上のジャズ」「私の文章修業」等。挑戦して止まぬ若者と物語世界を繋ぐ第二文芸エッセイ集。「この『夢の力』は、木箱をこじあけるように開けて欲しい」

雲の影・貧乏の説
講談社文芸文庫
漢籍・仏典・古典籍等に深く博い知識を有し雄渾壮大な想像力と強烈な意志力で異彩を放ち天才をうたわれた明治文壇屈指の名文家蝸牛庵幸田露伴。「少年時代」「雲の影」「釣談」「江戸と江戸文学」「美人論」「簡素治新ということ」「貧乏の説」「淡島寒月氏」「樋口一葉」「明治文壇雑話」など、最後の文語体文学者が記した口語体エッセイ30篇。

鴎外・漱石・龍之介 意中の文士たち(上)
講談社文芸文庫
作家としてのみならず学究・評者として非凡であった福永武彦が、深く心の裡に愛した文学者について自ら記した文章を蒐めて、「意中の文士たち」と名づけたエッセイ集上下巻のうち、上巻を収める。鴎外・漱石・芥川・荷風・谷崎・梶井基次郎・中島敦、そして川端康成への、いわば福永武彦の「感謝の現れ」をオマージュとして捧げた文章である。
作家としてのみならず学究・評者として非凡であった福永武彦が、深く心の裡に愛した文学者に就て自ら記した文章を蒐めて「意中の文士たち」と名づけたエッセイ集上下巻のうち、上巻を収める。鴎外・漱石・芥川・荷風・谷崎・梶井基次郎・中島敦、そして川端康成への、いわば福永武彦の「感謝の現れ」をオマージュとして捧げた文章である。

再婚者・弓浦市
講談社文芸文庫
幼い娘をもつ若い女性と結婚した中年の“私”が、“官能の烈しさ”を秘めた過去の日々を回想する「再婚者」。30年ほど前にお会いし求婚されました、という婦人の突然の来訪に戸惑う小説家の奇妙な体験「弓浦市」。作家の日常の虚実を淡々と語る「夢がつくった小説」。川端康成最晩年に至る心境のにじむ短篇11篇収録。

詩人 金子光晴自伝
講談社文芸文庫
あまりに刺激的な幼少期の環境と気弱な反面の劇しい性格。詩と放埒の青春と人生を決定した最初のヨーロッパ旅行。『鮫』『マレー蘭印紀行』等の芳醇、厖大な詩と散文を生んだ破天荒な2度目のヨーロッパ行き。戦後の“解体”と“出発”。人間尊重と自我意識で、独りファシズムに抗し、常に現代詩に独自の輝きを放った詩魂の遍歴の道筋を平易淡々と自ら語った波瀾・流浪の“人生記録”。