講談社選書メチエ作品一覧

レンブラント工房 絵画市場を翔けた画家
レンブラント工房 絵画市場を翔けた画家
著:尾崎 彰宏
講談社選書メチエ
17世紀、国際商業都市アムステルダムを中心に美術市場がひらける。大量生産される絵画、次々に生み出されるコピー。芸術が商品となったとき、誇り高き画家レンブラントが工房経営に求めたものは何か……。さまざまな証言と史料から「工房」の実態と時代的意味をあぶり出す。 【目次】 プロローグ 工房の発明 第一章 虚構のなかの事実 1 ザンドラルトの証言 2 《夜警》にたいするライバル意識 3 ハウブラーケンの証言と芸術家神話 4 歴史の闇にほのみえる工房 第二章 共生そして競争 レンブラントとリーフェンス 1 ハイヘンスと二人の芸術家 2 運命の岐路 3 創造的競争 アエムラティオ 第三章 絵画の栄光とアカデミー 1 ヌードデッサン 2 美術アカデミー 3 レンブラントのアカデミー 第四章 絵画工場 1 トーローニー 2 肖像画 3 歴史画 4 バロックという豊饒の角 第五章 絵画市場の誕生 1 絵画の消費者 2 パトロネージ 3 自由市場 4 美術商 5 新しい競争の原理 エピローグ アトリエの自画像 参考文献 資料 あとがき 索引
大仏再建 中世民衆の熱狂
大仏再建 中世民衆の熱狂
著:五味 文彦
講談社選書メチエ
治承4(1180)年12月、平氏の南都攻めで大仏は炎上した。飢饉、地震、大火、源平の争乱。末法の予感におののく人びと。祈りの声が巷に満ちたとき、一人の僧、重源が再建の「勧進」に立ちあがった。貴族、武士、庶民のすべては熱狂し、新しい信仰が生れまてくる……。古代の終焉と中世の到来を告げた15年にわたる大事業の実態が、いま浮かびあがる。 【目次】 序章 ある青年武士の発心 第一章 大仏と中世の民衆 1 炎上 2 開眼 3 大仏聖人 第二章 聖と俗 1 修業時代 2 外護者の系譜 3 入唐三度聖人 4 高野山と別所 第三章 大仏勧進 1 鋳造へむけて 2 南無阿弥陀仏 3 源平交代 4 伊勢へ 第四章 信仰の広がり 1 周防・京・鎌倉 2 奥州合戦のころ 3 頼朝上洛と法皇の死 4 別所の展開 終章 大仏殿落慶供養 註 基本史料 あとがき 人物相関図 関連年表 主要人名索引
「人類の起原」大論争
「人類の起原」大論争
著:瀬戸口 烈司
講談社選書メチエ
「ヒトとチンパンジーの分岐は500万年前」。分子進化学者が提唱し、1000万年以前とする筆者らの見解と対立した。はたしてどちらに軍配があがるのか……。人類の祖先を求めた最新の研究成果と、激しく闘わされる論争を、古生物学の立場から分析、解読する。 【目次】 はじめに 第一章 人類化石をめぐる論争 1 人類学者・古生物学者・地質学者のからみあい 2 年代の決定 3 アウストラロピテクスから北京原人まで 第二章 ピテカントロプス発見の謎 化石の発見は、勘か運か偶然か? 1 デュボアのめざしたもの 2 パダンにて 3 パヤクンブーに転勤 4 ついに発見、ピテカントロプス 5 解剖学者デュボア 第三章 ヒトの進化は急進化 「急進化」の概念の再評価 1 コープとマーシュ 2 ヒトの脳の進化 第四章 分子時計をめぐる大論争 その年代論は正確か 1 分子進化論と人類 2 分子変化率一定の仮説はどう立証されているか 3 古生物学者対分子進化論者 4 「根井の式」にかかわる論争 5 木村資生の中立説 6 マスコミに受けた分子時計 7 古生物学からみた携帯変異 8 これからの分子時計 註 あとがき 索引
反ユダヤ主義 世紀末ウィーンの政治と文化
反ユダヤ主義 世紀末ウィーンの政治と文化
著:村山 雅人
講談社選書メチエ
19世紀末、遅れてきた自由主義と多民族国家の都、ウィーン。西欧社会への同化を望み、巨万の富を蓄えて急激に擡頭したユダヤ人に、排斥の矛先が集中した。同化人を敵視するドイツ民族主義、ユダヤ人を除外した社会主義運動、カトリックやプロテスタントとの宗教問題、同化系と東方系にわかれたユダヤ人同士の相克……。政治・民族・宗教、すべての問題は、なぜ「反ユダヤ主義」を軸に展開されたのか。複雑な彩りをみせた世紀末ウィーンの政治と文化に新たな光をあてた力作。 【目次】 プロローグ 第一章 ユダヤ人の擡頭 1 自由主義の誕生 2 同化するユダヤ人 3 リンク通り 4 陽気な黙示録 5 富の不平等 第二章 反ユダヤ主義勢力 1 民族主義の高まり 2 ドイツ民族派とナチ 3 ヒトラーの二人の師 4 神を殺した民 5 魔法の触媒 第三章 人種論への萌芽 1 社会主義とシオニズム 2 社会民主党の矛盾 3 シオニズム運動の起源 4 ユダヤ人国家構想 第四章 世紀末文化の彩り 1 文化基地としてのウィーン 2 創造者たちの街 第五章 脱信仰の科学者 フロイト 1 パラドックスな関係 2 精神分析学の反響 3 ユダヤ人フロイト 第六章 過渡期の音楽家 マーラー 1 遍歴時代 2 ウィーン宮廷歌劇場監督 3 やがてわたしの時代がくる 第七章 文化的アナーキスト クラウス 1 唯一無二の存在 2 知的テロリスト 3 腐敗していたのはだれか 参考文献 年表 あとがき 索引
ピアノの誕生
ピアノの誕生
著:西原 稔
講談社選書メチエ
ベートーヴェン、クレメンティ、リスト……。絢爛豪華な演奏の裏に、理想の音色をめざして、しのぎを削ったピアノメーカーの技術競走があった。ピアニストにあこがれる娘たち、安いレッスン料に泣く教師、自動楽器に驚くブルジョア。産業革命に生み出した夢の楽器に、それぞれの希望が託されていく……。本書は音楽を通してみる「近代」の縮図である。
邪馬台国論争
邪馬台国論争
著:岡本 健一
講談社選書メチエ
邪馬台国はどこか?全国各地が名のりをあげ、論争ははてしなく続く……。1994年、京都府丹後から「青龍三年鏡」が発見された。「卑弥呼の鏡」か? がぜん畿内説が優位にたった。しかし、北九州論者も猛反撃する。侃々諤々の大論争をわかりやすく整理し、さらに、前方後円墳に注目した独自の論を展開。 【目次】 はじめに 〈卑弥呼の迷宮ー邪馬台国へ〉 序章 青龍三年鏡の出現 第一章 『魏志倭人伝』の世界 1 邪馬台国論争の意義 2 論争の時代区分 3 もう一つの倭国 4 『倭人伝』を読む 第二章 卑弥呼の迷宮 「水行十日陸行一月」 1 百家争鳴の時代 2 邪馬台国への道 方位 3 邪馬台国への道 行程 4 陳寿のイメージ 「道程」記事 5 いくつかの争点 第三章 卑弥呼の鏡 銅鏡百枚 1 謎の三角縁神獣鏡 2 同笵鏡論 3 王仲殊説の登場 4 鏡研究の新段階 第四章 卑弥呼の墓 大冢を作る 1 「鬼道」=道教的シャーマニズム 2 「大冢」の宗教イデオロギー 3 「大冢」 前方後円墳 4 宮室・楼観・城柵 5 鉄刀・貨泉・絹 終章 卑弥呼の最期 1 「以て死す」 2 邪馬台国の国語学 資料 索引
千年王国を夢みた革命 17世紀英米のピューリタン
千年王国を夢みた革命 17世紀英米のピューリタン
著:岩井 淳
講談社選書メチエ
「ヨハネの黙示録」に記された「千年の間」とはなにか?「キリストの再臨」はあるのか? 原始キリスト教の教義が、1600年の時を経て新旧イングランドによみがり、ピューリタン革命を推し進める有力な思想となった。「千年王国論」がはたした役割と意義を鮮明に描き出す。 【目次】 序章 千年王国を夢みた人びと――ピューリタン革命 第一章 千年王国論の水脈――古代から17世紀へ 第二章 大西洋を渡ったピューリタン――ヒトと情報の交流史 第三章 ニューイングランドの千年王国論――J・コトンとピューリタン革命 第四章 ピューリタン革命期の千年王国論――T・グッドウィンとW・ブリッジ 第五章 ニューイングランド帰りの千年王国論――W・アスピンウォルとT・ヴェエナー 第六章 千年王国論の行方――王政復古から18世紀へ 註(史料・参考文献) 図版出典一覧 あとがき 索引
地図の想像力
地図の想像力
著:若林 幹夫
講談社選書メチエ
「地図」とは、「世界」を制作する欲望である。古えの想像的な世界図を、正確な測量が覆いつくしていった。近代とは、500年をかけて世界を「単一の連続平面」に描くプロジェクトだった。世界に対する知の意志は、地図を媒体にして、資本の権力を結びつく。地図という具体的な表現のなかに、社会と人間の構造を探る。
中世都市鎌倉
中世都市鎌倉
著:河野 眞知郎
講談社選書メチエ
壮大な武家屋敷の跡が、小学校の敷地の下から現れた!軒を連ねる浜辺の倉、華やかな寺院、町屋の庶民生活……。「中世考古学」は古都のイメージをつぎつぎと塗りかえる。盛んな交易で中国にまでつながり、あらゆる物資を食欲に呑みこんだ東国最大の都市。発掘の最前線に立つ学者が「もののふの栄華」を明らにする。
「声」の資本主義
「声」の資本主義
著:吉見 俊哉
講談社選書メチエ
「声」がブルジョア的記号として、流通しはじめる19世紀。電気的テクノロジーが、つぎつぎに新たなネットワークを生み出した。大衆の想像力……。資本の欲望……。国家の戦略……。混沌たる草創期のメディア状況と消費社会のダイナミクスを解明する。
性の神話を超えて
性の神話を超えて
著:ス-ザン・グリフィン,訳:幾島 幸子
講談社選書メチエ
レイプは被害者の魂を引き裂く。女性の「存在」が否定され、男性中心主義文化の基盤となる。レイプのない静かな世界は可能なのか?「恐怖」ではなく「希望」を選択する魂が、意識の変革を訴える。真の「人間の解放」……。それはこの蛮行の徹底的な拒否からうまれるだろう。
英国ユダヤ人
英国ユダヤ人
著:佐藤 唯行
講談社選書メチエ
ユダヤ人永久追放はなぜおこったのか? 儀式殺人告発とは何か? そして国王の恣意税(しいぜい)とは……。苛酷な差別にさらされながら共生の道をさぐる「離散する民(デイアスポラ)」にとって、島国イギリスは安住の地たりえたのか。英国史の文脈のなかにユダヤ人世界を明確に位置づけた力作。(講談社選書メチエ) ユダヤ人永久追放はなぜおこったのか? 儀式殺人告発とは何か? そして国王の恣意税(しいぜい)とは……。苛酷な差別にさらされながら共生の道をさぐる「離散する民(デイアスポラ)」にとって、島国イギリスは安住の地たりえたのか。英国史の文脈のなかにユダヤ人世界を明確に位置づけた力作。
電子あり
明末のはぐれ知識人 馮夢龍と蘇州文化
明末のはぐれ知識人 馮夢龍と蘇州文化
著:大木 康
講談社選書メチエ
史上最高最難関の試験・科挙にいどみ、健闘むなしく「はぐれた」受験生たち。家庭教師、塾講師、代筆屋、私設秘書、編集者。試験のあいまの副業が、明末の文化にあらたな展開をもたらした。白話小説の成立、庶民の発見、そして出版の隆盛……。一知識人の生涯をとおして見つめる、中国社会の一大転機。 【目次】 はじめに 第一章 経済と文化の都 1 蘇州の調べ 2 銀と新安商人 3 文人たちの街 第二章 すべては科挙へ通ず 1 夢と龍 2 状元への道 3 立ち並ぶ狭き門 4 傾向と対策・明代版 第三章 酒とバラの日々 1 遊び人 2 歌曲の発信基地 3 妓女のまこと 第四章 文学と大転換 1 白話小説の隆盛 2 『水滸伝』と『金瓶梅』 3 「真」の探求 4 「庶民」の発見 5 勧善懲悪の構図 第五章 自活の道 1 館師 2 新たなる自己実現 3 大編集者 第六章 晩年の霹靂 1 ついに官につく 2 祁豹佳と馮夢龍 3 鶯花のうたげ 参考文献 馮夢龍著作目録 図版出典 あとがき 索引
ゴーギャン 芸術・楽園・イヴ
ゴーギャン 芸術・楽園・イヴ
著:湯原 かの子
講談社選書メチエ
キリスト教の原始宗教、文明と野蛮、聖なるものとエロス的なもの……。自己の根源と探求し、両極を激しく揺れるゴーギャン。楽園を目指して行動する画家が、ケルトの故地ブルターニュと熱帯の孤島タヒチに見たものはなにか?北欧の妻メットと南海の“イヴ”テハマナに求めたものはなにか?「芸術の殉教者」の破天荒な生涯と心の叫びを、画家自身に語らせながら鮮やかに描き切る。 【目次】 はじめに 序章 第一章 楽園原景 1 幼年期の黄金郷 2 放浪癖 3 メット、スカンジナヴィアの真珠 4 絵画への憧憬 5 生活と芸術の乖離 第二章 北の楽園ブルターニュ 1 メットとの確執 2 ポン=タヴェンの画家村 3 南島への誘惑 4 綜合主義(サンテテイスム)の絵画 5 受難者たち 6 象徴主義絵画 7 彼方への夢想 8 旅立ち 第三章 南の楽園タヒチ 1 ポマレ王国の落日 2 マオリの神話世界 3 原初のイヴ 4 タヒチの絵画世界 5 一時帰国 6 楽園追放 第四章 内なる楽園 1 タヒチ再訪 2 「北」と「南」のサンテーズ 3 文明のゆくえ 4 言論活動 5 さらなる未開の地へ 6 「心ならずも私のなかにある野性」 終章 註 参考文献 おわりに 索引
寄生バチをめぐる「三角関係」
寄生バチをめぐる「三角関係」
著:高林 純示,著:田中 利治
講談社選書メチエ
寄生の標的を探すカリヤコマユバチ、葉を食い荒らすアワヨトウ、「タスケテクレー信号」を放つトウモロコシ、卵を守るためにイモムシを去勢するポリドナウイルス……。昆虫と植物、そしてウイルスが引く起こす奇妙な三角関係とはなにか。マクロな自然空間とミクロの寄生体内。二つの世界に拡がる共生の不思議。化学生態学と生理学の気鋭が描きだす驚異の昆虫コスモス。 【目次】 はじめに 第一部 序章 寄生バチをめぐる三角関係 第一章 匂いの遠近法 1 寄主発見 2 匂いの操作実験 3 追跡と検証 第二章 三すくみの生態系 1 至近要因と究極要因 2 齢を見分ける 第三章 トウモロコシ上でのさらなる探索 1時空間のずれ 2 分析と合成 3 産卵から孵化へ 第四章 ボディーガードを雇う植物 1 植物の5W1H 2 匂いとボディーガード 3 新しい化学生態学へ 第二部 第一章 ハチ―イモムシ、そして共生ウイルス 1 夜間観察 2 午前七時の一幕 3 単寄生か多寄生か 4 寄主はなぜ少食になるのか 第二章 寄主制御 1 生体防御反応 2 体内の防御戦 3 欺瞞 4 毒液とポリドナウィルス 第三章 親と子の絆? 1 ポリドナウィルス 2 起源と遺伝 3 忘れ去られたポリドナウィルス 第四章 寄主の蛹化阻止とは? 1 発育日数がたりない 2 いつまで寄生できるのか 3 謎の分身・テラトサイト 4 前胸腺の直接抑制 5 あらたな難問 ブックガイド あとがき 索引
ユング
ユング
著:アンソニ-・スティ-ヴンズ,訳:鈴木 晶
講談社選書メチエ
心理学の巨人はいかにして生まれたのか。個人主義者、偉大なる奇人にして普遍的人間。その彼を襲った、二度の精神的危機=「創造の病」。「無限なるもの」との関わりを追いつづけた彼の分析心理学は、宇宙論でもある。練金術、「易経」からUFOまでに及ぶ知的探究がたどりついた地点とは……。本書は、ユングの豊かな遺産への格好の手引き書である。
最後の遊牧帝国 ジューンガル部の興亡
最後の遊牧帝国 ジューンガル部の興亡
著:宮脇 淳子
講談社選書メチエ
14世紀、元朝が中国から撤退した後、中央ユーラシア草原は歴史の舞台から消えてしまう。しかし、モンゴル帝国の後裔たちは、各地で強大な遊牧王権をつくり、独自の文化を形成していた。そして17世紀、ジューンガル部は大遊牧帝国を築きあげる。さまざまな言語の史料を駆使し、誰も語れなかったオイラト民族の歴史を鮮明に描き出す意欲作。 【目次】 序章 遊牧民にも歴史がある 第一章 ジューンガルのガルダン、清軍に敗れる 1 ハルル・モンゴル、ガルダンに逐われて清朝に帰属 2 清の康熙帝のジューンガル親征 3 ジューンガルのガルダンの滅亡 4 ジューンガルとはなにか 第二章 モンゴル帝国の伝統 1 モンゴル民族の起源 2 遊牧帝国の性格 3 モンゴル帝国の遺産 第三章 モンゴルとオイラトの抗争 1 オイラトの出現 2 北元時代の始まり 3 オイラトの覇権 第四章 オイラト部族連合と新しいモンゴル 1 四オイラト部族連合 2 新たに形成されたモンゴル 3 再びモンゴルとオイラトの抗争 第五章 十七世紀のオイラト 1 オイラトの新しい隣人ロシア 2 ジューーガル史の通説の誤り 3 ジューガル。ハーン国はなかった 第六章 ジューンガル部の覇権 1 ガルダン・ボショクト・ハーン 2 ツェワンラブタンの時代 3 ガルダンツェリンの時代 第七章 ジューンガル部の滅亡、その後 1 清の乾隆帝のイリ征伐 2 トルグート部の帰還 3 最後の遊牧帝国ジューンガル 註 参考文献 略年表 あとがき 索引
柳田国男と事件の記録
柳田国男と事件の記録
著:内田 隆三
講談社選書メチエ
ある一家心中事件をめぐって生み出されたいくつかの言説。法の言説と新聞報道。「新四郎さ」そして「山に埋もれたる人生ある事」。事件の季節は入れ替わり、新たな動機が付与される。柳田はその独特の方法をもって何を語ろうとしたのだろうか。事実とは……。そしてその記録が描きだそうとした歴史の意識とは……。本書は、社会記述の方法をめぐるスリリングな論考である。 【目次】 序文 第一章 抽象する視線 1 無方法と内省 2 抽象する視線 3 可変性の形象 4 幻覚の正体 第二章 可視性の場 1 像の記述 2 距離の感覚 3 像のなかに消える女 4 物語のディスクール 第三章 描かれた構図 1 人間の自然 2 ある記録 3 事件の構図 4 文体の可視性 第四章 事件の現場 1 動機の暗転 2 春と秋 3 事件の報道 4 事件の現場と説話空間 5 記述の焦点 註 文献案内 あとがき 索引
武装SS ナチスもう一つの暴力装置
武装SS ナチスもう一つの暴力装置
著:芝 健介
講談社選書メチエ
指導者ムヒラーの下、親衛隊は国防軍と対立しつつ、組織のなかに武力を蓄えていく。アイケ、ディートリッヒ、ベルガー等、名ただる危険人物を中心として。果たして武装親衛隊(SS)は、「栄誉ある」国防軍の一翼だったのか? ヒトラーの私兵、暴力組織だったのか? いまだ結着のつかない武装勢力の実態をあばき、ナチズムの犯罪の本質に迫まる渾身の書。 【目次】 プロローグ ビットブルク事件と武装親衛隊神話 第一章 突撃隊から親衛隊へ 1 突撃親衛隊の起源 2 退院基準とヒトラー・ユーゲント 3 ベルガーの登場とヒトラーの八月指令 第二章 武装親衛隊とヒムラー 1 武装親衛隊の成立 2 武装親衛隊の役割 3 外国人徴募問題 第三章 独ソ戦のなかの武装親衛隊 1 バルバロッサ作戦 2 独ソ戦での外国人義勇軍 3 カフカース攻勢 4 ゲルマン軍団への再編成 第四章 武装SS将校と兵士 1 世代経験と世代意識 2 親衛隊将校の職歴と社会的構成 3 武装親衛隊将校団・SS士官学校・部隊将校弊兵士教育 4 世界観教育 第五章 際限なき動員と武装SSの最後 1 民族ドイツ人の動員 2 総力戦期の国内動員 ヒトラー・ユーゲントからの募集 3 東方師団の末路と武装SSの終幕 エピローグ 戦後の武装親衛隊に関連して 註・史料参考文献 あとがき 索引
対馬藩江戸家老
対馬藩江戸家老
著:山本 博文
講談社選書メチエ
時は享保、八代将軍吉宗の時代。対馬藩のドル箱、朝鮮人参貿易に暗い影がさしはじめていた。折しも将軍の代替りを祝する通信使がやってくる。莫大な出費、気むずかしい使節、素人同然の老中たち……。藩のために奮闘する江戸家老、平田直右衛門の悩みは尽きない。三百年の日朝「交隣」の実態と、日々たたかう侍の群像を活写する。