講談社選書メチエ作品一覧

ベンヤミンの<問い> 「目覚め」の歴史哲学
講談社選書メチエ
未曾有の知の大陸への孤独な旅に出たオム・ド・レトル(文の人)。暗号のような文章、謎めいたことばに秘められた意味とは……。認識、歴史、暴力、倦怠そして根源史とは……。「近代」という悪夢からの目覚めを試みたベンヤミン。歴史哲学の光が、その可能性を「救済」するとき、彼のアクチュアリティーは、次の時代へと通じていくだろう。
【目次】
序章 ベンヤミンのアクチュアリティー
第一章 認識の方法
はじめに
1 いくつもの方法序説
2 六つの不変
3 『パサージュ論』おける展開
第二章 歴史と歴史家の形象
はじめに
1 パサージュとしてのベンヤミン
2 いくつかの歴史家像
3 死者の希望
第三章 暴力と崇高
はじめに
1 解体する世界
2 運命・法・神話
3 二つの「力」
4 法を越えて
第四章 倦怠論
はじめに
1 倦怠としての存在
2 近代の刻印
3 ファンタスマゴリー論
第五章 根源史の概念
はじめに
1 ゲーテ的原現象
2 レヴィ=ストロースの構造主義
3 イデアとモナド
4 廃物の星座と物語の作法
5 形象的思考による救済
参考文献
あとがき
索引

失楽園都市 20世紀の夢と挫折
講談社選書メチエ
機能・合理のふたつのイズムが徹底された20世紀。都市=楽園の図式は解体し、「欲望の制御装置」としての都市が誕生した。パリ、ロンドン、ウィーン……。都市文化を開花させた美しき19世紀の三都を前に、立ちつくす現代。新生ラスベガス、そして東京、香港……。もう一度、楽園都市の夢を見るのか? それとも新たな電脳都市が生まれるのか?われわれは、大きな岐路のまえで決断を迫られている。
【目次】
序章 「欲望制御装置」としての二十世紀都市
第一章 失楽園の世紀
1 ブダペスト、ベルリン 不安の新世紀
2 ミルトン・キーンズ 最後の田園都市
3 ニューヨーク 先取りされすぎた未来
4 ロンドン 溶解する首都
第二章 都市神話の光と影
1 一九八〇年代ポスト・モダン都市
2 生まれながらの廃墟 「ドックランド」の苦悶
3 指揮者なき音楽会 「IBA]の幻想」
4 神話の終焉 「ユーロ・ディズニー」の不振
第三章 都市の夢 アジアの夢
1 世紀末人工楽園都市ラスベガス
2 アジアは電脳都市の夢をみる
ブックガイド
あとがき
索引

伝統中国 <盆地><宗族>にみる明清時代
講談社選書メチエ
浙江省諸曁(しょき)盆地。明清時代の五百年を通じ、漢民族はこの地に移住し、暮し、中国の伝統をつくった。著者は、〈族譜〉〈故事〉など民間の資料を駆使し、盆地宇宙での物・人・情報の流れを定点観測する。「史的システム論」という方法を武器に、中国社会のシステムと変動を鮮やかにあぶり出す、新しい中国論の試み!
【目次】
はじめに
第一章 諸曁盆地の景観はいかに造られたか
序 統合体としての盆地
1 住む
2 生きる
3 暮らす
第二章 親子関係は宗族(リニージ)をどう生みだすか
序 親族関係の生成過程
1 絆を造る
2 絆を広げる
3 絆を超える
第三章 盆地と中国王朝はどう係わるか
序 支配される側の論理
1 秩序を造る
2 秩序を保つ
3 秩序を超える
おわりに
参考文献
あとがき
索引

ナチ占領下のフランス 沈黙・抵抗・協力
講談社選書メチエ
ヴィシー時代。老元帥ペタンにひきいられた日々は、「抹殺すべき四年間」(1940-44)と呼ばれる。対独協力者(コラボ)によるユダヤ人狩り、ファシズムを礼讃する知識人、ヒトラーに忠誠を誓った男たち……。多くの驚くべき事実がそこにはあった。三色旗が鉤十字に蹂躙されるなか、人びとはいかに生きたのか?われわれの知らない「もう一つのフランス」に、いま光があてられる。
【目次】
第一章 忘却のベール
第二章 第二次大戦前夜
第三章 ヴィシー体制
第四章 対独協力
第五章 レジスタンス
第六章 解放
註
あとがき
関連年表
索引

漢詩と日本人
講談社選書メチエ
『白氏文集』も『和漢朗読集』も、写本で読むしかない時代、中国の詩は、ひとにぎりの宮廷貴族のものであった。木版印刷による空前のロングセラー、『唐詩選』、『三体詩』は、読者階層を庶民大衆へと大きく広げ、その影響は、俳諧、川柳から都々逸(どどいつ)にまで及ぶ。わが国の古典と化した漢詩の、豊かな味わいとつきない魅力を語り、日本人との千年以上にわたる深いかかわりを丹念に跡づける労作。
【目次】
はじめに
序章 漱石と漢詩
第一章 阿倍仲麻呂と唐の詩人たち
第二章 平安朝と文人の漢詩
第三章 『三体詩』の話
第四章 『唐詩選』の話
第五章 都々逸と漢詩
参考文献
あとがき
索引

生命の起原論争
講談社選書メチエ
パスツールによって、生物の「自然発生」は否定された。しかし、46億年の地球史のなかで、一度だけ、「無機」から「有機」への変化、「生命の発生」が起こったと考えられている。いつ、どこで、どのように? いま生物学はこの困難な課題に答えようとしている。数々の論争を通し、生命の本質を鮮やかなタッチで描きです思想史外伝。
【目次】
序章
第一章 多数世界観
第二章 生命力偏在の時代
第三章 自然発生の最終否定
第四章 進化論と生命起源
第五章 飛来する生命
第六章 地球上での生命発生
終章
参考文献・引用文献
あとがき
人名索引

身体の零度
講談社選書メチエ
纏足(てんそく)やコルセットのような不自然な風習を、なぜ私たちは続けてきたのだろうか。〈私〉をつくりだす源に、何があるのだろうか。謎はみなひとつのところから流れでている――。本書は、東西の豊富な文献を駆使して、泣きかた・笑いかた・行進・舞踊など人間の表情や動作に立ちむかう。そして、身体へのまなざしの変容こそが、近代の起点であることをあざやかに検証する。社会史・思想史のなかに、身体を位置づけた力作。

御用絵師狩野家の血と力
講談社選書メチエ
室町中期から江戸末までの4百年、絵画の世界に君臨した天才絵師たち、元信、永徳、探幽……。「絵師の家」として、時の権力に巧みに結びつき、城、御所などの障壁画制作を独占していく。狩野派の画風はいかに創られたのか? 「家」の継続はいかに図られたのか? 狩野家の闘いと苦悩を新しい視点から描く。
【目次】
はじめに
第一章 絵師の家、狩野家の出現――正信
第二章 狩野派の大成――天下画工の長・元信
第三章 栄光と大飛躍――永徳
第四章 狩野派の動揺
第五章 画壇の帝王――探幽
第六章 奥絵師の繁栄と衰退
註・参考文献
あとがき
索引

二十世紀モード 肉体の解放と表出
講談社選書メチエ
飾られたカラダからの解放、貧しいまでに簡素なスタイル、反抗のシンボルになったジーンズ、浮き彫りにされた脚の意味、オートクチュールとプレタポルテ……。20世紀はモードの大転換をなしとげた。ポワレやシャネル、賢三や一生のデザインにもふれつつ、時代精神とのかかわりを見つめた力作。
【目次】
序章 もっとも二十世紀的
第一章 背景としての十九世紀
第二章 肉体と布の交響詩――第一次革命の群像
第三章 ジーンズ――モードの新しい流れ
第四章 女性像の変容――脚を通して
第五章 躍動する肉体
第六署 デザイナーズ――第二次革命の群像
註
ブックガイド
年表
図版出典
あとがき
索引

モノとしての「脳」 ニューロンの生と死のなぞ
講談社選書メチエ
「脳」という聖域の解明に、急激な進歩をみせる科学。1千億個のニューロンがうごめく脳。遺伝子に書き込まれた自殺プログラム……。特殊なタンパク質があかす脳の不思議とは? 極度に肥大化したヒトの脳に特有な疾患のかずかず。「アルツハイマー病」の解決の糸口もここにある。人類にとって最後のフロンティアをめぐる研究の最前線からの報告。
【目次】
プロローグ 人格としてのニューロン
第一章 生体内の情報伝達のしくみ
第二章 生物進化とニューロン
第三章 脳神経系の形成とアポトーシス――プログラム細胞死の不思議
第四章 生存維持と老化――ニューロンの一生
第五章 ニューロトロフィンの解明
第六章 脳をまもるタンパク質
第七章 脳研究の展望
エピローグ 高齢化社会とニューロン
ブックガイド
あとがき
索引

ハプスブルクの君主像 始祖ルードルフの聖体信仰と美術
講談社選書メチエ
対抗宗教改革の時代。ハプロブルク家の小さなエピソード「ルードルフと司祭」は、カトリック信仰のシンボルとなって様々に変容していく。そして、フェルメール『信仰の寓意』のカーテンに描きこまれたルードルフ一世。その意図はなにか? 「寓意」とは……? 社会的コンテクストのなかで図像を読み解く刺激的な書。
【目次】
はじめに
ハプスブルク家家系図抄
第一章 敬虔なる始祖――「ルードルフと司祭」伝承の成立と16世紀までのその展開
第二章 理想的カトリック君主――対抗宗教改革期における伝承の変容
第三章 祝祭と演劇の中の「ルードルフと司祭」
第四章 伝統と創意――スペイン領ネーデルラントを中心とする17世紀の作例
第五章 ルードルフに倣いて
第六章 皇帝家礼賛――中欧のバロック美術
第七章 フェルメールの『信仰の寓意』
結び
註
写真提供・図版複写元
あとがき
索引

幕末の天皇
講談社選書メチエ
近代天皇制は、18世紀末から80年間にわたる、朝廷の“闘い”のドラマから生まれた。神事や儀礼の再興、復古を通して、朝権を強化した光格天皇。その遺志を継ぎ、尊皇攘夷のエネルギーを結集した孝明天皇。幕末政治史の表舞台に躍り出た2人の天皇の、薄氷を踏むような危うい試みを描き、「江戸時代の天皇の枠組み」を解明する。

<こっくりさん>と<千里眼>
講談社選書メチエ
明治なかば、燎原の火のようにひろがった〈こっくりさん〉。人々はなぜ、この不思議な遊びに熱狂したのだろうか。大流行した〈心霊学〉や〈催眠術〉、全国を二分した〈千里眼〉論争。〈こっくりさん〉とともに歴史の深層に沈んだ現象を発掘し、日本近代のもうひとつの顔をあきらかにする力作。

アイヌの世界観
講談社選書メチエ
タマ・オオカミ・シマフクロウ……。魚の満ちあふれる川、シカが群れつどう山。大自然をアイヌはカムイ(神)としてとらえる。彼らの信仰はいかにして形成されたのか?「ことば」が「生活世界」を切り取るプロセス。秘密はそこにある。北の民の世界観がいま、認識人類学の立場から鮮やかに解明される。

免疫 生体防御のメカニズム
講談社選書メチエ
エイズウイルスがターゲットにするT細胞。アレルギーにかかわるB細胞と肥満細胞。現代の病は免疫系に挑戦する。自己と自己認識、他者である病原菌を排除するシステム、T細胞を教育する胸腺の不思議。最先端の研究者が、免疫のしくみと近未来の展望を語る力作。
【目次】
序章
第一章 免疫の世界
第二章 免疫のメカニズム
第三章 拒絶反応
第四章 自己免疫の不思議
第五章 エイズを考える
第六章 がん免疫
第七章 免疫系の過剰な防衛反応
第八章 分子レベルでみる免疫反応
第九章 明日の免疫学
参考文献
あとがき
索引

文禄・慶長の役〔壬辰・丁酉倭乱〕 文学に刻まれた戦争
講談社選書メチエ
近世初頭、東アジアをゆるがす一大事件が勃発した。壬辰・丁酉倭乱……。朝鮮半島を血に染めた、秀吉の野望のまたの名である。民族の記憶としてその惨禍は、両国民の心性に深く刻みこまれる。時代のうねりのなかで潤色される史実。天竺徳兵衛、論介、つむがれた多くの物語……。極限の文化接触=戦争を、歴史・文学の両面からとらえなおす意欲作。
【目次】
まえがき
第一部 史実としての壬辰倭乱
第一章 東アジアの地殻変動
第二章 極限の文化接触
第二部 文学のなかの壬辰倭乱
第三章 晋州城攻防戦
第四章 歌舞伎に登場する朝鮮の名将
第五章 朝鮮の妓生と日本の豪傑
第六章 深いひび――文学と国家意識
註
参考文献
あとがき
索引

ウィトゲンシュタイン
講談社選書メチエ
脱俗をこころみること3回。禁欲的同性愛者。そして根無し草の放浪者。工科大学に失望し、ようやく4つめのケンブリッジ大学で哲学を志す。「哲学の問題をすべて解決した」と確信した『論考』……。一時期、哲学をはなれた彼が再度『探究』した哲学の問題とは。奇矯なる魂の生んだ比類なき思索を追う。

「飢餓」と「飽食」 食料問題の十二章
講談社選書メチエ
アフリカの飢えた子供たち。燃料にされるヨーロッパの過剰バター。穀物の7割以上を輸入する日本。食料矛盾は拡大されるばかりである。21世紀の地球はどうなるのか。人口爆発、環境汚染、緑の革命、南北格差……。世界に立ちふさがる難問に挑む力作。
【目次】
序章 食料問題――1960~2000
第一章 人口爆発と地球
第二章 食料増産の可能性――土地か収量か
第三章 緑の革命――ミラクル・ライス
第四章 人はなにをどう食べるか
第五章 栄養不足人口と食料の分配
第六章 飢饉はなぜおこるか
第七章 食料援助を考える
第八章 戦略物資としての穀物
第九章 食料生産と地球環境問題
第十章 食料の安全保障――日本の立場
終章 21世紀、人は食べられるか
註
各章文献
あとがき
索引

悲劇の宰相長屋王 古代の文学サロンと政治
講談社選書メチエ
憤死した長屋王の執念か、つぎつぎと死んでいく藤原四兄弟。おびえる聖武天皇。時代は騒然としていた。中国文化へ憧れた王の「危険思想・左道」への熱狂なのか、藤原一族の謀略なのか。文人政治家の悲劇は数々の推測をよぶ。長屋王邸の発掘をふくむ多くの資料・文献から、奈良時代の精神を鮮やかに描きだす。
【目次】
はじめに
第一章 悲劇の宰相、長屋王
第二章 長屋王因縁の系譜
第三章 危険思想「左道」とは何か
第四章 藤原氏門流の政治と文学
第五章 作宝楼の文学
主要参考文献一覧
あとがき
索引

イスラム・ネットワーク アッバース朝がつなげた世界
講談社選書メチエ
8世紀、ユーラシア大陸。アッバース朝は、イスラム独特の都市間交通を利用し、交通網をつくりあげていった。「草原の道」「海の道」「川の道」は、北欧へ、アフリカへ、スペインへ、中国へと通じる。はじめて世界は一つになったのである。「ネットワーク論」の視角から世界史を書きかえる問題の一書。
【目次】
第一章 ネットワーク論と世界史成立の起点
第二章 イスラム・ネットワークの拡大と変容
第三章 アッバース朝と首都バグダード
第四章 アッバース朝における経済の発展
第五章 西方世界への拡大
第六章 内陸アジアのイスラム・ネットワーク
第七章 ヴァイキングの活動
第八章 ペルシア湾と中国沿岸部を結ぶ
第九章 黎明期の東アジア海上交易
第十章 イスラム・ネットワークからモンゴル・ネットワークへ
註・参考文献
あとがき
索引