講談社学術文庫作品一覧

とりかへばや物語(1) 春の巻
講談社学術文庫
平安末期成立の『とりかへばや』は、女性的な気質の兄君と男めいた気性の妹君とが、それぞれ女装男装して、華やかな宮廷生活に悲劇喜劇の渦をまきおこす物語である。物語名は、異常な兄妹のありようが、入れかわって正常になってほしいと願う父親のつぶやき―取りかえたい―による。第1冊春の巻は、男装の姫君中納言を中心に、彼女が肉体関係なしに妻としている右大臣家の四の君に裏切られ、秘密保持に苦しむまでの話。(全4巻)

チベット旅行記(5)
講談社学術文庫
仏教の原典を求めたいという求道者の一心から、厳重な鎖国をしくチベットに、あらゆる困難にうちかって単身入国を果たした河口慧海師の旅行記。抜群の面白さをもっているだけでなく、チベットの風俗・習慣等についての的確な記述は、本書をチベット研究のための第一級の基本的文献としている。この最終巻では、ラサを出立した慧海師が、厳重な五重の関門を奇跡的に踏破して英領インドに達し、海路日本に帰国するまでが述べられる。

新約聖書名言集
講談社学術文庫
『新約聖書』27篇は、人類2千年の歴史を指導してきた最高原理の1つである。本書は、その中から味わい深い名句・名言の数々を選び出し、その宗教的意味や歴史的背景を余す所なく解説する。「幸いなるかな心の貧しき者……」また「狭き門より入れ」など、感銘深い言葉の真意に触れるとき、読者はその求める心の方向に応じて、あるいは知的な教養を得、あるいは道徳的な指針を手にし、または愛と信仰の生活へと導かれるであろう。

竹取物語 全訳注
講談社学術文庫
この書物を手に取る人は、「かぐや姫」の話に、幼時の追憶をなつかしく蘇らせるにちがいない。そして、この作品を読み終える時、あなたが青年であるならば、より心豊かに生きる知恵を学ぶだろうし、人生の経験を多く持つ人ならば、過ぎ来し方をかえりみて、疲れた心に、慰藉と激励を与えられることだろう。『竹取物語』の現在古写本の1つ、吉田博士蔵本に初めて全訳注を施し、新しい理解と鑑賞へ読者を招待する。

チベット旅行記(4)
講談社学術文庫
仏教の原典を求めたいという求道者の一心から、厳重な鎖国をしくチベットに、あらゆる困難にうちかって単身入国を果たした河口慧海師の旅行記。抜群の面白さをもっているだけでなく、チベットの風俗・習慣等についての的確な記述は、本書をチベット研究のための第一級の基本的文献としている。この巻では、ラサの人々の生活やチベットの外交について述べられるが、ついに素性が露顕しそうになり、慧海師はチベット脱出を決意する。

蜻蛉日記(下)全訳注
講談社学術文庫
天禄3年から天延2年までの3年間の記事。兼家は右大将兼大納言の要職を占め、毎夜愛人近江へ通い作者には間遠(まどお)である。兼家への一途な求愛に諦めの気持ちも加わった作者は道綱と養女に心を使う。道綱の求婚は贈答歌を中心に私家集風に書き綴られ、養女への右馬頭(うまのかみ)の求婚の件は興味深く展開し、1篇の物語を構成している。作者の日常は近郊廻りを楽しむが、自然に目を向け、人事叙述の間に清新な筆致で自然の風情推移を描写している。

言志四録(1) 言志録
講談社学術文庫
本書は、江戸時代後期の林家の儒者佐藤一斎の、42歳から80歳にかけての、前後40年にわたる思索の賜物と言われる「言志四録」のうち、その第1巻たる「言志録」をを上梓するものである。変革期に於ける人間の生き方に関する問題意識で貫ぬかれたこの語録集は、幕末から明治にかけて多くの人々に影響を与え、西郷隆盛も自己の座右の書としていたと言われており、今日なお修養の糧として、また処世の心得として得難き書である。

文芸の哲学的基礎
講談社学術文庫
本書は、夏目漱石が明治40年と41年に行なった2つの講演、「文芸の哲学的基礎」と「創作家の態度」を収める。いずれも有名な『文学論』の、いわば序論とも各論とも考えられる講演で、文学の理論と歴史を哲学的に、心理学的に根本から究明している。特に真・善・美・壮の文学の4種の理想を論じつつ、4者の価値が平等であることを強調し、真のみを重視する自然主義の文学を批判する。漱石文学理解の要ともいえる重要な講演集である。

私の個人主義
講談社学術文庫
文豪漱石は、座談や講演の名手としても定評があった。身近の事がらを糸口に、深い識見や主張を盛り込み、やがて独創的な思想の高みへと導く。その語り口は機知と諧謔に富み、聴者を決してあきさせない。漱石の根本思想たる近代個人主義の考え方を論じた「私の個人主義」、先見に富む優れた文明批評の「現代日本の開化」、他に「道楽と職業」「中味と形式」「文芸と道徳」など魅力あふれる5つの講演を収録。

チベット旅行記(3)
講談社学術文庫
仏教の原典を求めたいという求道者の一心から、厳重な鎖国をしくチベットに、あらゆる困難にうちかって単身入国を果たした河口慧海師の旅行記。抜群の面白さをもっているだけでなく、チベットの風俗・習慣等についての的確な記述は、本書をチベット研究のための第一級の基本的文献としている。この巻では、サラ潜入を遂げた慧海師がチベット人を名乗り医者として大活躍する。ついに法王に召出される程になり、盛名がますます上る。

日本人の人生観
講談社学術文庫
戦後30数年を経た今日、外部の何ものかによって生き方が決定され、人々は敷かれたレールの上を走っておればよい時代は終ったはずである。しかし日本人は依然として画一的な生涯をめざす傾向から脱け出せないでいる。その背景には、われわれ日本人が無意識の内に従っている或る種の共通の人生観があるのではなかろうか。本書は、そういう「日本人の伝統的な人生観」を再把握し、新しい生き方への出発点を示すことを目標としている。

チベット旅行記(2)
講談社学術文庫
仏教の原典を求めたいという求道者の一心から、厳重な鎖国をしくチベットに、あらゆる困難にうちかって単身入国を果たした河口慧海師の旅行記。抜群の面白さをもっているだけでなく、チベットの風俗・習慣等についての的確な記述は、本書をチベット研究のための第一級の基本的文献としている。この第二巻では、チベット国境を越えた慧海が、厳重な警備の眼を避けながらチベット第二の都シカチェを経てラサに至るまでが述べられる。

チベット旅行記(1)
講談社学術文庫
仏教の原典を求めたいという求道者の一心から、厳重な鎖国をしくチベットに、あらゆる困難にうちかって単身入国を果たした河口慧海師の旅行記。抜群の面白さをもっているだけでなく、チベットの風俗・習慣等についての的確な記述は、本書をチベット研究のための第一級の基本的文献としている。この第一巻では、チベット行を決心して海路カルカッタへ着き、万全の準備の後、ヒマラヤに入り、チベット国境を越えるまでが述べられる。

蜻蛉日記(中)全訳注
講談社学術文庫
兼家との結婚生活17年目の元日、共に祝う恒例を破り、作者邸前を先払いも高らかに素通りする。4日も同様。開門して跪(ひざまず)いている従者や侍女の手前作者は居たたまれない。目と鼻の間にある伊尹(これまさ)家の大饗(だいきょう)の夜も期待空しく訪れない。作者は決心して鳴滝の山寺へ参籠する。尼に?と驚いた兼家はその夜物忌(ものいみ)を冒して迎えに赴くが下山せず。3週間目、兼家の強行手段により無事長髪の作者は下山し雨蛙の異名を得る。中巻は本日記の中軸をなす。

蜻蛉日記(上)全訳注
講談社学術文庫
平安朝最初の女流文学『蜻蛉日記』は、美貌と歌才をうたわれた作者が摂関家の錚々(そうそう)たる貴公子兼家に求婚されたことに筆を起こし、以後21年間の結婚生活を描いた作品である。夫に純粋な愛情を持ちつづけた作者は「三十日三十夜はわが許に」を希求するが、多情な兼家の漁色癖に悩み苦しむ。しみじみ蜻蛉のごとき我が身と観じて、閉ざされた貴夫人のはかない結婚生活をあえて公開し、世の女性の「例(ためし)にもせよ」と述べている。(全3巻)

良寛(下)
講談社学術文庫
春の日に子供らと手まりをついて遊んだ名僧。良寛についてはこのイメージが一般に知られている。だが著者はあえて「童児と手まりをついて興じたということは、童児と手まりをついて楽しまざるを得なかったということである」という。良寛の行動の背後に深い人間的な苦悩のあったことを明らかにする。ここに新しい良寛像が打ち出される。現代人の目で良寛の生涯をみなおし、かれの主要作品を新たな角度から鑑賞する、意欲的な力作。

良寛(上)
講談社学術文庫
新潟県出雲崎の旧家橘屋の長男として良寛は生まれた。父の以南は風流人で、家業に力を注がず、一家は衰えてゆく。その中で良寛は十八歳のころ親の期待にそむいて出家してしまう。そんな境涯の良寛が考えていたことは何だったろう。良寛の作った多くの漢詩や和歌には、人生に対する深い思いがこめられている。名僧とたたえられる良寛にも、実は苦い自己反省が常にあったのではないか。良寛を一個の人間として見直す味わい深い名著。

中世の光と影(下)
講談社学術文庫
さまざまな紆余曲折を経て、「ヨーロッパ」は12世紀に確立する。ここに東ローマとは全く別個の構造と理念を持つ世界が成立した。が、この世界も15世紀には、「中世の秋」という崩壊期をむかえる。本巻では、上巻に続き、中世後期の西欧社会を概観する。本書は、中世1000年にわたる人間の営為の、本質的意義を解明する史論でもあり、また同時に、歴史家堀米庸三がヨーロッパ世界生成の歴史空間にしるしたひとり旅の旅日記でもある。

中世の光と影(上)
講談社学術文庫
従来、西欧中世期は、華やかな古典文化とルネッサンスの狭間の暗黒の時代と考えられていた。しかし中世は、古典文化・ゲルマン精神・キリスト教の三者が、たがいに対立抗争を続けながら、次第に「ヨーロッパ」を形成していく、独特のエネルギーに満ちた時代であった。著者は自らの紀行文もまじえつつ、このヨーロッパ生成の過程を解明し、中世社会の本質を鮮やかに描き出す。本書は単なる「通史」を超えた、史論と歴史紀行の結晶である。

古事記(上)
講談社学術文庫
大和朝廷が史書として編纂したわが国最古の古典。上巻にはイザナキ・イザナミ二神の国生み、天照大神・スサノオノミコトの葛藤、天の岩屋戸、ヤマタノオロチ退治などのなじみ深い物語が多い。古代国家の統一と成立のかげで、素朴で明るい古代人の人間像が、おおらかに記述されている。神話・伝説であり、文学であり、歴史である古事記には、われわれ祖先のエネルギーが満ちあふれている。〈全三巻〉