講談社学術文庫作品一覧
藤原定家 拾遺愚草抄出義解
講談社学術文庫
鋭い鑑賞力で定家の全体像を捉えた名歌評釈古来難解とされてきた天才的歌人定家の厖大な和歌から八十首を選び,注釈がおのずと伝記を包摂する独自の方法で義解をほどこす.余人の追随を許さぬ白眉の定家論

現代の社会主義
講談社学術文庫
東欧やソ連をはじめとする社会主義諸国に生じた政治的・経済的危機と混乱によって、社会主義は、もはや思想的にも理論的にも過去のものとなってしまったのだろうか。社会主義とは一体なんだったのだろうか。重層的な歴史の危機、主体の危機のなかで社会主義が根底から問われているいま、あらためて社会主義の思想と理論の意義と可能性の論拠を、各国の体制改革の状況と意義を考察しつつ再考する。

茶の湯事始 初期茶道史論考
講談社学術文庫
戦国時代末期の乱世に発展した茶道文化は、書院茶と草庵茶という2つの流れをもって人々の間に浸透した。両者を統一し、大成したのが千利休である。相阿弥作とされる『長歌茶湯物語』をはじめ様々な資料を駆使して、茶道点前の成立、炭・灰の仕様、懐石料理の誕生などを具体的に論じ、珠光から昭鴎をへて利休に到る初期茶道の様相を鮮やかに再現する。次代のあるべき茶道界の姿をも示唆する好著。
中国哲学
講談社学術文庫
中国思想の流れを易しく通観した画期的名著人物・思想内容とも多彩錯綜をきわめる中国哲学の推移を,主題の変遷に重点をおいて簡明に素描.中国―東洋思想の読み直しが喫緊の現在,絶好の指針となる名著.

英語研究者のために
講談社学術文庫
本書は多年の経験に基づいて築かれた英語修得の秘訣を、懇切丁寧に述べたものである。英語を学ぶとはどういうことか、どう学んだらいいのか、どんな書物を読んだらいいのか等について、極めて具体的に説いている。英語研究者として真摯に生きた著者の言葉に触れるとき、読者は本書が単なる語学案内という枠を超えた、学問への情熱や生きる勇気を与えてくれる人生探究の書であることに気づくだろう。
柿本人麻呂
講談社学術文庫
不滅の歌聖・柿本人麻呂の詩心の秘密を解明広く長く日本人から愛されてきた柿本人麻呂の詩の輝きは,現前に失われしものへの凝視のはげしさであった.万葉学の第一人者が蘊蓄を傾けた,人麻呂研究の金字塔

ニッポン ヨーロッパ人の眼で見た
講談社学術文庫
ドイツの世界的建築家ブルーノ・タウトは、1933年に憧れの日本を訪れた。伊勢神宮や桂離宮など日本古来の建築にふれたタウトは、そこに日本美の極致を見た。簡素・単純・静閑・純粋――それらの絶妙な均斉を具現した桂離宮を絶賛、その対極として華美な日光東照宮を捉え、さらに仏像、能、歌舞伎などにも深い関心をよせた。日本文化の再評価に大きな影響を与えた、タウトの最初の日本印象記。
草木虫魚の人類学 アニミズムの世界
講談社学術文庫
自然と人間を包括する<アニミズム>再評価東南アジアの水・石・稲・竹・鳥・花などとの自由な対話を通して,現代文明の宇宙喪失からの恢復を図る.前著『カミの誕生』につづくアニミズム研究の深化と展開
マキアヴェリズム
講談社学術文庫
権力のデ-モンと対峙した偉大な思想の軌跡マキアヴェリは,利益あるいは成功が善の上に位すると強弁する権力主義の走狗か,あるいは政治と道徳の難問を解いたり冷徹な学究か.乱世の思想が現代に甦える.

近世日本国民史 遣米使節と露英対決篇
講談社学術文庫
万延元(1860)年一月、咸臨丸浦賀を出港、我が遣米使節一行も米艦に乗り品川を出帆。ワシントンに着し閏三月二十八日米大統領に謁見、条約書の交換を了す。翌文久元年、東洋における列強勢力角逐のとき、露人対馬の一角を占拠、対馬は露・英の争地となる。秋に英艦隊司令官、対馬に至り露艦隊の不法を詰問、露艦撤去。されど「前門虎を拒み、後門狼を進む」の危惧は拭えず、開国初期の緊泊は続く。

反文学論
講談社学術文庫
柄谷行人の唯一の文芸時評集『反文学論』は、氏の70年代後半の独創的かつ先駆的仕事である。この『反文学論』の真の固有性、掛け替えのない特異な性格とは、いったい何なのだろうか。ほどなく〈探究〉の批評家として、文字どおり余人の追随を許さぬ領野を切り拓くことになる希有な人物が、言わばその前夜の姿態を垣間見せてくれる〈感想〉の数々こそそれだ、と思われてならない。(「解説」より)

観音経講話
講談社学術文庫
東アジアの仏教圏には数多くの観音霊場があるように、観音信仰は昔から庶民の心の中に力強く根づいており、『観音経』は『般若心経』とならんで最も広く読誦(どくじゅ)されてきたお経である。このお経を一心に唱えれば、観音菩薩は聖観音、千手観音、馬頭観音など、三十三身に姿を変えて現われ、人々の苦しみや悩みに応じて教えを説いてくれるという。宇宙の根本原理を見事に血肉化した観音教典のこころを読む。

ヨ-ロッパ中世の宇宙観
講談社学術文庫
市民の違約に憤る不気味な〈鼠捕り男〉は、笛を吹いて町中の子供を誘い出し山の彼方へ攫(さら)って消える。〈ハーメルン伝説〉の不吉な謎を解読しつつ、著者の炯眼は中世民衆の思考世界を凝視する。さらに、僅かな史料を手掛りに歴史空間に今も谺(こだま)する民衆の叫びに耳をすませば、時代の変動を生きぬく人々の苦しい生存の呻きが伝わってくる。西洋中世民衆の生活と意識を活写して感銘深い阿部史学の原点と現在。

世界の共同主観的存在構造
講談社学術文庫
廣松渉は、思想としての近代とはなにか、近代を超克するとはどのようなことがらであるのか、を哲学的に問いつめる。その若き日の主要論文をおさめたこの書は、「大きな物語」の終焉がささやかれる現在においてなお、新鮮なかがやきと衝撃力をうしなっていない。否、思想的指針の一切を喪失したかに見える今日にあってこそ、それらの論考の課題意識が十分にふまえられてなければならないとおもわれる。

民衆史―その100年
講談社学術文庫
名著、復刊。
「歴史に埋もれた人間たちを掘り起こし、その死者たちのかたい口を開けしめよう。すぐれた民衆群像の資質と高い倫理性への誇りをとり戻すためにも、私たちは幾度も歴史の最下流に降りねばならぬ……」明治の自由民権運動の検証から、水俣に象徴される現代の住民運動と共同体の問題まで、近代日本の百年を歴史形成の主体である民衆レベルに視座をすえて捉え直す。著者が提唱した「民衆史」の到達点。

魔術から数学へ
講談社学術文庫
〈小数〉はどのように生まれたか。〈対数〉は、そして〈微積分〉は? 宗教戦争が猖獗(しょうけつ)を極める17世紀ヨーロッパ、魔女が空行き占星術と錬金術がまだ人の心を揺ぶっていた混沌たる文化パラダイムの中から異形の数学者たちが頭角を現わす。ガリレイ=デカルト=ニュートン=ライプニッツ。著者ならではの余裕と気品の名文が、近代数学成立の数奇な劇を紡ぎ出す。全編に、博学と哲学がしみわたった傑作。
夏目漱石―非西洋の苦闘
講談社学術文庫
漱石に託して語る,近代日本の精神と文化.圧倒的な西洋の衝撃のもとで,後進国からの留学生夏目漱石は使命感と重圧感を背負って苦闘した.非西洋人漱石を通して,世界史的視点から明治日本を考察した力作

日本藝能史六講
講談社学術文庫
人の住む近くにはものやたま(スピリットやデーモン)がひそむ。家や土地につくそれら悪いものを鎮めるために主は客神(まれびと)の力を借りる。客神至れば宴が設えられ、主が謡えば神が舞う。藝能の始まり。著者は、時を遡って日本藝能発生の直の場面に立ち合おうとするかのようだ。表題作「六講」に加えて名編「翁の発生」を収録。著者の提示する「発生学風」の方法こそ近代学問の限界を突破する豊穰なエクリチュール。
カオスモスの運動
講談社学術文庫
独創的な丸山言語哲学の新しい希望の一歩.実体論=反映論の虚妄を暴き近代主義パラダイムを完膚なく解体した衝撃の丸山理論.言葉を操る動物ホモ・ロクエンスとしての人間の栄光と悲惨を止揚する新視座.

神と翁の民俗学
講談社学術文庫
歴史や民俗の中に登場する「翁(おきな)」とは何か。この翁は人間界に何を告げようとしたのか。著者は、日本の神の多くは翁の姿でこの世に現われ、また神から翁への展開というモチーフが日本の宗教史を貫く主旋律であったと主張する。さらに「神」が老体の翁であるのに対して、「仏」はなぜ青年の姿で表現されるのかという対照性の命題を追究する。日本人と神や仏との関係に新たな一石を投じた異色の民俗論。