講談社学術文庫作品一覧

脳と心のメカニズム
講談社学術文庫
心とは何か。意識とは、思考とは、記憶とは何か。未熟な脳で生まれた無垢の人間は、5カ月もすると急激に変貌する。刺激――反応による本能的・機械的行動にとどまらない選択的・自発的活動を示す。「意思」による高級な行動。この人間にのみ特有の脳機能の中枢に位置するのが神経細胞――ニューロンである。本書はニューロンの電気現象の解明という物理学的アプローチから、人体究極の謎「脳と心」に迫る。

原典による心理学入門
講談社学術文庫
古代ギリシアから近代ヨーロッパにかけての心理思想の主要著作から、ヴント、ジェームズによる科学的心理学の成立期を経て、現代の3大潮流、ワトソンの行動主義・フロイトの精神分析学・ケーラーのゲシュタルト理論まで、原典21篇を収録。人類社会の未曽有の危機に直面する現代ほど、人間とは何か、という心理学の命題への解答が切望されている時はない。心理学を学ぶための必携の書。

海の神話
講談社学術文庫
万物の母なる豊饒の海。本書は、古代シュメールの原初海洋の女神、ローマ神話のヴィーナスの誕生、ギリシアの海神ポセイドーン、中国の盤古神話、日本の記紀に登場するイザナギ・イザナミのみそぎ神話など、世界各地に分布する海の起源についての神話を中心に、人類の海体験から結晶した珠玉の神話42篇を収録した。海と人間との関わりを通して人類の文化や歴史の側面などを比較考察した名篇。
子殺しの行動学
講談社学術文庫
猛り狂う利己的遺伝子、世界最初の観察記録南インドの野生ザル、ハヌマンラングール。ボスザルの新旧交代に続いて起ったむごたらしい出来事とは社会生物学・動物行動学の常識を一変させた世界的研究。

現代の俳句
講談社学術文庫
高浜虚子に始まる現代の俳句は、日本人の精神生活に深く滲透し、実作者は老若男女を問わず増えつづけている。本書は、現代俳句を代表する107人の精選作を展望して、俳句形式のもつ魅力を見事に結集した画期的な詞華集である。自然をテーマとした時代から、人間探究の俳句へ、社会性を持つ俳句へ、そして、ことばが主役となる俳句へと大きく展開する現代俳句の今後を示唆する待望のハンドブック。

シャーマニズムの世界
講談社学術文庫
シャーマニズムとは何か。本書は、あの世や神仏、精霊などと直接交流・交信の能力をもつと信じられる人物、即ちシャーマンの宗教的社会的役割を具体的に説く。特にシャーマニズムの現象を、啓蒙されていない民衆の土俗的な習俗として捉えるのではなく、むしろ仏教やキリスト教などの世界宗教の中核をも貫く、人間の基本的な宗教現象の1つとして捉える。佐々木シャーマニズム論の原点をなす労作。

連句入門 蕉風俳諧の構造
講談社学術文庫
発句以下長・短句(五七五・七七)を交互に連ねて三十六句で巻き終える歌仙こそ、蕉風俳諧の核心をなすものである。永年『芭蕉七部集』に親炙(しんしゃ)し、連句の実作をも重ねてきた著者が、「冬の日」「猿蓑」「炭俵」の世に言う蕉風三変の代表歌仙を素材に、詩心と詩心が切り結ぶドラマの場としての連句の興趣を再現する。絶妙の挨拶・会釈・笑いに充ちたスリリングな知的ゲームの醍醐味を伝える、安東芭蕉学の会心作。

ジャポニズム 印象派と浮世絵の周辺
講談社学術文庫
19世紀後半のフランスの印象派美術に、成立条件も美意識も明らかに異なる北斎や広重、歌麿などの日本の浮世絵が重要な役割を果たしたことは広く知られている。モネをはじめゴッホやロートレック、ゴーガンなど印象派の画家たちが、この日本の芸術をどう取り入れ、どう昇華させていったのか。彼らの作品を通じて、日仏2つの芸術を明らかにしつつ、「ジャポニスム」とはなにかを論考した注目の書。

現代思想の基礎理論
講談社学術文庫
「近代」は閉塞した。フランス革命の輝やかしい理想にも拘らず、人間の支配=被支配、差別と排除の構造は温存された。理性は頽落し、人間の管理化は進み、地球環境の汚染が昂進する。どう克服できるのか。その哲学は? 方法は? 近代主義を踏み超える革命的理論装置としての構造主義=ポスト構造主義に着目し、批判的に検討し、真に豊饒な「トランスモダン」の思想への展望を切り拓く知的生産の書。

詩学と文化記号論
講談社学術文庫
現代の思想全般に衝撃的な影響をもたらしたのは、言語についての新しい認識である。すなわち言語を単なる表現・伝達の手段をしてではなく、意味を読み取り、意味を創り出す〈認知〉の役割を果たすものと捉えるのである。人間が生み出すあらゆる文化現象を言語をモデルにして成立した記号として把握する文化記号論と、文学を対象とする詩学の現代的局面を、認知言語学の第一人者が明快に論じた意欲作。
ハイデルベルク ある大学都市の精神史
講談社学術文庫
大学都市ハイデルベルクの歴史と文化を探るアルト・ハイデルベルクで知られるドイツの大学都市ハイデルベルク。その歴史を辿りながら、この都市を舞台に活躍した学者等に光を当て、その精神史的相貌を描く
いまを生きる心の技術 知的風景の中の女性
講談社学術文庫
カトリックの立場から論ずる反時代的女性論女性-母親までが社会的・物質的価値によって評価される進歩一生産第一主義の近代的価値観に異議あり。非効率・非合理の「家庭の精神」の復権を主張する叡知の書

続日本紀(中) 全現代語訳
講談社学術文庫
『続日本紀』は政府公文書類を基とし、その記述の信憑性と多岐に亘る日常の行政記録によって『万葉集』と共に当時の民衆生活を知る上での貴重な史料である。聖武天皇の天平15年から称徳天皇の神護景雲3年迄の15巻を収めた本巻では、大仏開眼大法要の栄華の中、皇位継承を巡る藤原氏とその反動勢力とが凄惨な闘争を展開し、一方、造東大寺や遷都に困窮する庶民の姿が現代語訳で生々と語られる。

日本文化私観
講談社学術文庫
伊勢神宮や桂離宮などに日本美の極致を見たタウトは、建築家としての鋭い直観と透徹した哲学的瞑想とにより、神道や絵画、彫刻や工芸、建築など、日本の芸術と文化を更に深く見つめた。彼の透徹した眼識力と歴史認識は、日本人が忘却している日本の伝統的精神の復活をうながさずにはおかず、日本人と日本文化に寄せる真情は、読む人の心にせまる。名著『ニッポン』と並ぶ必読のタウトの日本文化論。

自分史-その理念と試み-
講談社学術文庫
歴史形成の主体である民衆とは1人1人の自分であり、自分が自分の歴史を書く自分史の実践こそ、歴史的自覚を促す契機である。著者は自らの追憶や実感だけを愛惜する懐古調の自伝の類を斥け、自分史を根底にすえて民衆史を捉え、民衆史を主軸に同時代史を描くことを提唱する。誰もがかけがえのない自分史を書くことで歴史への主体的参加を果たすべきだと説く『民衆史』に続く注目の文庫オリジナル。

破壊の伝統 人間文明の本質を問う
講談社学術文庫
わたしたち人間は、自ら地球生態系の一員であることを忘れ、自然を略奪・破壊し、あくなき利便・快適・飽食を追求してきた。その結果、美しい海洋と森林に恵まれた水惑星地球号は息も絶えだえ、絶滅寸前の野生動物はすでに4500種を越えた。この期に及びようやく自然保護に転じたコインの両面的〈開発=保護〉思想を退け、遠く人類文化の黎明とともに始まった〈破壊の伝統=人間中心主義〉の宿痾(しゅくあ)と対決する。

新装版 江戸時代史(下)
講談社学術文庫
本書は歴史学の泰斗三上参次博士が、江戸時代について、余すところなく語った不朽の名著である。流麗な文章のなかに、歴史の真の流れを見きわめて動じなかった明治の学者の毅然とした気骨が伝わってくる。維新後最も早い時期にまとめられた総合的な江戸時代史として今なお重要な意味を持っている。下巻では六代将軍家宣から吉宗、家治を経て、文化文政、天保時代にいたるまでを精密明断に論述する。

新装版 江戸時代史(上)
講談社学術文庫
国史学の泰斗三上参次博士によって書かれた本書は、最も早い時期にまとめられた総合的な江戸時代史として知られている。博士の実証的合理的な学風と、精密明断な叙述と万全な内容は、よくその真価特色を煥乎(かんこ)たらしめ、読む人を魅了せずにはおかない。上巻においては、徳川氏の出自から家康、家光を経て五代将軍綱吉の薨去(こうきょ)にいたるまでを収録。歴史の真実を見きわめた江戸時代史研究に不可欠の名著。

レトリック認識
講談社学術文庫
古来、心に残る名文句は、特異な表現である場合が多い。思考において論理がすべてではなく、言語も文法だけでは律しきれない。論理と文法の手にあまる言語表現の多彩な機能――黙説、転喩、逆説、反語、暗示など、レトリックのさまざまを具体例によって検討し、独創的な思考のための言語メカニズムの可能性を探る。在来の西欧的レトリック理論に新しい光をあてた『レトリック感覚』に続く注目の書。

生きものの建築学
講談社学術文庫
建築の近代化は、人びとの住意識を急激に変えてきた。本書は、自然界の生きものの巣を探索し、豊富な図版や写真を駆使して現代建築が置き忘れた問題点を模索する。クモの巣と重力の法則やハタオリドリの営巣と引っぱりの力、またビーバーのダムやシロアリの塚づくりにみる巧妙な技術など、混迷と行きづまりに悩む現代の建築観に語りかけるものは多い。生きものたちの巣づくりに学ぶ現代建築評論。