講談社学術文庫作品一覧

テキストと実存 ランボー・マラルメ・サルトル・中原と小林
講談社学術文庫
ランボー、マラルメ、ベルクソン、サルトルらの作品を読み解く著者の目差しは、時に敵対しあうかに見える作家・思想家のテキスト間に、主題体系の共有という思いがけない〈関係〉を見出す。それは現代思想の最も重要な《差異》の生産としての《読むこと──書くこと》の実践であり、《間テキスト性》から人間了解の深みへと斬りこむ身振りであった。猖獗する「様々な意匠」の祖述者の群れから一頭地を抜く独創的論考。

歎異抄を読む
講談社学術文庫
「歎異抄」は、親鸞晩年の弟子唯円が自らの願いを織りまぜて先師の法語を綴ったものである。「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」の悪人正機の教えや、「わがこころのよく殺さぬにはあらず」の宿業観など、人間存在の根底に迫る真理の言葉といえよう。本書は、原文と現代語訳の対照や解説の扱いに工夫をこらし、「歎異抄」を宗学から開放して仏教思想との関連から平明・懇切に論及した好著。

江戸時代の朝鮮通信史
講談社学術文庫
度重なる不幸な歴史の故に、ともすれば憎悪と差別の応酬のみが目立つ日本──韓国・朝鮮関係にも、信頼と尊敬の通い合う友好の時代があった。江戸期260年。徳川将軍の代がわりごとに、都合12回、朝鮮王朝は総勢500人におよぶ大使節団を派遣し両国の親善を寿(ことほ)いだ。対馬藩儒官雨森芳洲(あめのもりほうしゅう)の「誠信外交」に代表される親交の歴史を発掘し、明治以来の差別と排除のイデオロギーに事実をもって反証する。

積みすぎた箱舟 カメルーン動物記
講談社学術文庫
近年はイギリス・ジャージー島に自分の動物園を作り、絶滅に瀕した野生動物の保護活動を続けている世界的に著名な動物学者ダレルの、西アフリカ・カメルーン密林における若き日の小動物観察記。動物に寄せる溢れんばかりの愛情、原住民の生活・習俗におよぶ見事な洞察、密林の美しさを謳いあげる的確な自然描写。自然を愛し、自然と一体化するナチュラリストとして現代屈指の存在ダレルの最高傑作。

小泉八雲 回想と研究
講談社学術文庫
西洋の文明社会を脱出して、日本に帰化したラフカディオ・ハーン。彼は小泉八雲と名乗り、生涯日本を愛し続け数々の名作を残した。本書ではそんな彼の人となりを、妻小泉節子を始め、雨森信成、ホーフマンスタールなど、八雲周辺の人々の回想でしのび、さらに学術文庫『小泉八雲名作選集』の訳者、八雲研究者による秀れた人物論、作品論を収録した。小泉八雲ファンに贈る八雲研究の最新、最高の書。

茶道改良論
講談社学術文庫
大日本茶道学会の創立120周年を記念し、創立者・田中仙樵の名著を新装復刊。明治31年に大日本茶道学会を創設した著者は、欧化政策により衰退した茶道を復興するために秘伝開放を主張し、茶道の奥義の普及に努めた。『南坊録』の研究者として、千利休の精神に還ることを説き続け、その茶道観は今も大きな影響力を保持している。厖大な著述から、主要論文を精選した茶道論の白眉。巻末解説を、現会長の田中仙堂氏が新たに執筆。
大日本茶道学会の創立120周年を記念し、創立者・田中仙樵の名著を新装復刊。
明治31年に大日本茶道学会を創設した著者は、欧化政策により衰退した茶道を復興するために秘伝開放を主張し、茶道の奥義の実践普及に努めた。千利休の言動の記録『南坊録』の研究者として、利休の精神に還ることを生涯説き続け、その茶道観は今も大きな影響力を保持している。厖大な著述から、主要論文を精選した茶道論の白眉。
巻末解説を、現会長の田中仙堂氏が新たに執筆。

現象学とは何か フッサールの後期思想を中心として
講談社学術文庫
フッサール現象学は単なる哲学の一方法論ではなく長い西欧形而上学の歴史における本質的な出来事であり、新時代(ポスト・モダン)の哲学の運命を決する特筆すべき事件である。本書は現象学研究の第一人者がフッサールの厖大な原テクストに独自の読みをほどこし、意識と存在・人間と理性・物と世界など現代思想の根本問題に清新な解答を与えようとする。初版刊行以来知識人に多大の感銘を与えた名著の、待望の文庫化。

近世日本国民史 和宮御降嫁
講談社学術文庫
井伊大老横死後幕府の実権を握った久世・安藤は、大老の遺策となった和宮降嫁を朝廷との軋轢緩和の一とするも、乾坤一擲、外夷掃除の大力量はなかった。時に公卿岩倉具視、御降嫁を公武合体の楔子とすべく天皇の諮門に答えて上書。はじめ忌避していた和宮もついにこれを承諾。。「惜しまじな君と民とのためならば身は武蔵野の露と消ゆとも」と詠じて東下。自ら将軍家茂の御台所としてその生涯を捧ぐ。
鳥葬の国 秘境ヒマラヤ探検記
講談社学術文庫
秘境ヒマラヤを身近にした学術探検踏査の書ヒマラヤの奥深く今も残る奇習“鳥葬”。また、陽気なチベット人の日常生活や、個性豊かな探検隊員の内幕など秘境への旅を克明に綴った不滅のフィ-ルド調査記録

続日本紀(上) 全現代語訳
講談社学術文庫
『続日本紀』は、『日本書紀』に次ぐ勅撰史書である。古代史研究に不可欠の重要史料でありながら、記紀のように詳細な解説がなされなかった40巻全篇に現代語訳を試みたのが本書である。上巻は、文武元年から天平14年までの14巻を収める。大宝律令制定・平城遷都という統一国家確立に至る表舞台を軸に、藤原氏の台頭・大仏建立などの史実が庶民の姿を交じえて語られる。古代史新発見に必読の書。

レトリック感覚
講談社学術文庫
アリストテレスによって弁論術・詩学として集成され、近代ヨーロッパに受け継がれたレトリックは、言語に説得効果と美的効果を与えようという技術体系であった。著者は、さまざまの具体例によって、日本人の立場で在来の修辞学に検討を加え、「ことばのあや」とも呼ばれるレトリックに、新しい創造的認識のメカニズムを探り当てた。日本人の言語感覚を活性化して、発見的思考への視点をひらく好著。
ギリシア・ロ-マ神話
講談社学術文庫
古代ヨ-ロッパ人の世界を写す珠玉の神話集詩人ホメ-ロスとヘシオドスによって体系づけられたギリシア・ロ-マ神話。古代人が捉えた自然や世界や人間の不思議を、詩情豊かに謳い上げた十三の物語で構成。

ライフサイクルの心理学(下)
講談社学術文庫
大人の人生の困難は、青少年問題・老人問題の谷間で見過ごされがちだ。本書で著者たちは、ミドルエイジの工場労働者・会社の管理職・生物学者・小説家の4つの職業グループから各10人、合計40人に個別面接し詳しく比較考察。その結果人間は成人した後も変化しつづけ、一定の段階を踏んで発達していく事実を明らかにした。下巻では、人生半ばの過渡期から中年に入る時期の生活構造が解明される。

ライフサイクルの心理学(上)
講談社学術文庫
人は不安定な幼・少・青年期を経て成人するが、一旦大人になってしまえばもう安心だろうか。そうでもない。大人にもライフステージごとに特有の問題が発生し、職業・家庭・精神生活の各局面で様々の難問がふりかかる。仕事上の悩み・転職=退職の危機・妻との関係・子供の教育問題……等々が《心》を脅やかす。人々は人生のピンチをどうしのいでいるか。40人の個人史を詳細に面接比較した画期的研究。

ミクロコスモス 松尾芭蕉に向って
講談社学術文庫
俳諧は最小の詩型の中にこの世、この宇宙の森羅万象を映し出し、封じ込める秘法に他ならない。最小の宇宙の中に最大の宇宙をつかみ取るのである。それが達成された時、最小と最大は対応しあう……。芭蕉の言語空間と精神世界の究極を探るキーワードを、大宇宙に対応するミクロコスモス(小宇宙)に求め、「おくのほそ道」「七部集」等の諸作の深部にクリティカルに迫り、新しい芭蕉像を創造した力作評論。

民主主義の展望
講談社学術文庫
詩集『草の葉』をはじめ、民主主義の神髄を高らかに歌い上げた詩人ホイットマン。19世紀中葉、すでに民主国家であったアメリカに、なお存在する著しい社会の不公正や不平等を鋭く指摘し、民衆の力を信じつつ民主主義精神の重要さを説いた。世界情勢が激動し、民主主義の本質が問われている今日、本書は真の民主主義が単に制度や理論では実現し得ぬ、永遠のテーマであることを我々に教えてくれる。
斑鳩の白い道のうえに 聖徳太子論
講談社学術文庫
豊かな幻想と実証で描いた聖徳太子論の名著黒駒を駆って戦さにのぞむ聖徳太子。深く仏教に帰依した太子の法隆寺創建。東アジア未曽有の歴史の転換期を生きた、ひとりの古代知識人の華麗にして哀切な運命。

ドイツの大学 文化史的考察
講談社学術文庫
19世紀から第1次世界大戦にかけてドイツの大学は過激派学生が登場し、大学紛争が頻発した。放縦な生活を送る学生と専門研究に没頭する教授たちで大学は混迷をきわめていた。だが、こうした中で豪華絢爛たる学生文化と科学革命が花開いた。ドイツの大学は世界の大学のモデルとなり、憧れの的となったが、やがて軍国主義の波にのみこまれていった。ドイツの大学のおいたちを文化史的にさぐる好著。

島たちをめぐる冒険
講談社学術文庫
『ラプラタの博物学者』や『はるかな国とおい昔』などで知られるハドスンは、一方で大好きな鳥についての本を著した。この『鳥たちをめぐる冒険』はその1冊である。ハドスンは自然の生物の中で鳥こそ自然の生命力が最もきれいで、快活で、自由な形であらわれており、鳥による喜びは他にかえがたいという。鳥たちとの出会いや思い出を通して、自然と人生への限りない愛情と喜びを綴る博物学の名著。

朝鮮の詩ごころ「詩調の世界」
講談社学術文庫
「時調」は朝鮮個有の定型詩。高麗王朝末期の12、3世紀に生まれ、今日まで800年の歳月を受けつがれてきた。本書で著者は、詩の背後に秘められた数奇な人間劇と人物群像を語りつつ、民俗のアイデンティティを明確に描き出す。民俗の詩歌を知ることが、とりもなおさずその国民性を知り魂を理解する捷路であるなら、本書は、近くて遠い隣国の人々の価値観・人生観を理解するうえでの最適の書である。