講談社学術文庫作品一覧

ヨ-ロッパ中世の宇宙観
講談社学術文庫
市民の違約に憤る不気味な〈鼠捕り男〉は、笛を吹いて町中の子供を誘い出し山の彼方へ攫(さら)って消える。〈ハーメルン伝説〉の不吉な謎を解読しつつ、著者の炯眼は中世民衆の思考世界を凝視する。さらに、僅かな史料を手掛りに歴史空間に今も谺(こだま)する民衆の叫びに耳をすませば、時代の変動を生きぬく人々の苦しい生存の呻きが伝わってくる。西洋中世民衆の生活と意識を活写して感銘深い阿部史学の原点と現在。

世界の共同主観的存在構造
講談社学術文庫
廣松渉は、思想としての近代とはなにか、近代を超克するとはどのようなことがらであるのか、を哲学的に問いつめる。その若き日の主要論文をおさめたこの書は、「大きな物語」の終焉がささやかれる現在においてなお、新鮮なかがやきと衝撃力をうしなっていない。否、思想的指針の一切を喪失したかに見える今日にあってこそ、それらの論考の課題意識が十分にふまえられてなければならないとおもわれる。

民衆史―その100年
講談社学術文庫
名著、復刊。
「歴史に埋もれた人間たちを掘り起こし、その死者たちのかたい口を開けしめよう。すぐれた民衆群像の資質と高い倫理性への誇りをとり戻すためにも、私たちは幾度も歴史の最下流に降りねばならぬ……」明治の自由民権運動の検証から、水俣に象徴される現代の住民運動と共同体の問題まで、近代日本の百年を歴史形成の主体である民衆レベルに視座をすえて捉え直す。著者が提唱した「民衆史」の到達点。

魔術から数学へ
講談社学術文庫
〈小数〉はどのように生まれたか。〈対数〉は、そして〈微積分〉は? 宗教戦争が猖獗(しょうけつ)を極める17世紀ヨーロッパ、魔女が空行き占星術と錬金術がまだ人の心を揺ぶっていた混沌たる文化パラダイムの中から異形の数学者たちが頭角を現わす。ガリレイ=デカルト=ニュートン=ライプニッツ。著者ならではの余裕と気品の名文が、近代数学成立の数奇な劇を紡ぎ出す。全編に、博学と哲学がしみわたった傑作。
夏目漱石―非西洋の苦闘
講談社学術文庫
漱石に託して語る,近代日本の精神と文化.圧倒的な西洋の衝撃のもとで,後進国からの留学生夏目漱石は使命感と重圧感を背負って苦闘した.非西洋人漱石を通して,世界史的視点から明治日本を考察した力作

日本藝能史六講
講談社学術文庫
人の住む近くにはものやたま(スピリットやデーモン)がひそむ。家や土地につくそれら悪いものを鎮めるために主は客神(まれびと)の力を借りる。客神至れば宴が設えられ、主が謡えば神が舞う。藝能の始まり。著者は、時を遡って日本藝能発生の直の場面に立ち合おうとするかのようだ。表題作「六講」に加えて名編「翁の発生」を収録。著者の提示する「発生学風」の方法こそ近代学問の限界を突破する豊穰なエクリチュール。
カオスモスの運動
講談社学術文庫
独創的な丸山言語哲学の新しい希望の一歩.実体論=反映論の虚妄を暴き近代主義パラダイムを完膚なく解体した衝撃の丸山理論.言葉を操る動物ホモ・ロクエンスとしての人間の栄光と悲惨を止揚する新視座.

神と翁の民俗学
講談社学術文庫
歴史や民俗の中に登場する「翁(おきな)」とは何か。この翁は人間界に何を告げようとしたのか。著者は、日本の神の多くは翁の姿でこの世に現われ、また神から翁への展開というモチーフが日本の宗教史を貫く主旋律であったと主張する。さらに「神」が老体の翁であるのに対して、「仏」はなぜ青年の姿で表現されるのかという対照性の命題を追究する。日本人と神や仏との関係に新たな一石を投じた異色の民俗論。
アインシュタイン
講談社学術文庫
今世紀最大の科学者の生涯と主要論文を紹介若き数学者としてアインシュタインに師事した著者が,敬愛をこめてその生涯と思想を語り,相対性理論を平易に解説.天才物理学者の全体像を促えた画期的な労作.
中国の文芸思想
講談社学術文庫
中国文学の理解に必須の九つの鍵概念を解説「風」とは何か.「雅」「神」「儒」「侠」とは何か?中国文学研究の第一人者が,文学と人間の深処を極め,難解ではあるが余人には成し得ぬ高度な論考として上梓

永遠のロ-マ
講談社学術文庫
イタリアの一ポリス・ローマは、どのようにして世界帝国へと発展していったか。繁栄を享受するローマと、その支配に抵抗する諸民族の戦いを通して築きあげられたパクス=ローマーナ(ローマの平和)とはなんであったか。そして「永遠の支配」を誇ったローマは、なぜ滅びなければならなかったか。ひとつの文明の生成と没落を通して、危機的状況を深める現代文明の行く末を直視する、著者快心の力作。

禅の道
講談社学術文庫
本書は、オイゲン・ヘリゲルのいわば「遺稿集」である。ここに収められている禅の神秘主義を論じた手稿の数々は、いずれもヘリゲル自身の決定稿である。“虎を描いて猫に類する”底の禅書が氾濫するなかで、身をもって禅の真髄に徹したヘリゲルの片言隻句は今日なお新しく、多くの示唆を与えてくれる。ヘリゲルこそは、日本人以外で禅の本質を把握し、その精神の息吹を感得した唯一の人なのである。
ショパン
講談社学術文庫
ロマン派音楽の巨星の人と芸術の核心を探る20歳で祖国ポ-ランドを離れたショパンの謎に包まれた人間像と,その芸術の本質を解き明かし在来のロマンティックなショパン像の通念を破る.毎日芸術賞受賞作

二十一世紀の人類像―民族問題を考える―
講談社学術文庫
噴出する世界の民族問題をどう考えるべきか。東西冷戦後の世界は21世紀へむけ国家体制を乗りこえ民族のせめぎあいが強まる。民族・人種・国家の概念さえ判然としないわれわれ日本人は、それらの理解なしには世界に貢献できない。ますます強まる民族の自己主張の本質はなにか。本書は卓越した見識をもつ著者が豊富なフィールドワークから世界を見る目=民族学的視点を開示する刮目の書である。

知的生活
講談社学術文庫
「知的生活」とは、生き生きとものを考える喜びにあふれた人生のこと。知識だけに偏らない全人間的な徳の獲得を奨める人生哲学の名著として欧米に名高い本書は、ライフ・スタイルとしての「知的生活」を愛する全ての人に、有用な心構えを教えてくれる。時間の使い方・金銭への対し方から読書法・交際術まで、そこにはいささかの空疎な議論もなく、切実な実体験から生まれた「人生の極意」にみちている。

日本人の自伝
講談社学術文庫
わが国の自伝的著作の系譜を通観し、もっとも秀れた2つの自伝、内村鑑三『余は如何にして基督信徒となり乎』と、福沢諭吉『福翁自伝』を対比・分析する。さらに山鹿素行、新井白石、松平定信等、近世日本人の自伝における武士的自我へと遡り、日本人の心性の根幹を精緻に講究。自伝というジャンルの東西文学史上の位置を展望しながら、日本人の「我」の自覚の歴史を解明する著者のライフワーク。

仏道入門 四十二章経を読む
講談社学術文庫
「四十二章経」は仏教の中国への東漸を証す漢訳経典の嚆矢(こうし)。仏教に初めて出会う人々に釈敬の諭(さと)しのエッセンスを、42の項目に要約して伝える狙いをもつ。「出家」とは何か。いかにして愛欲を去るか。仏教者の「十善行・十悪行」とは。心中の衆邪・衆魔と対決し、自身を「出塵の覚者」へと高めていくにはどうしたらいいか、等々、仏道初入の人々に自力悟達・得道の心構えと実践法をやさしく説きあかす。

ライン河の文化史
講談社学術文庫
ローレライの歌で知られるライン河は、ロマンティックな川であるばかりでなく、ヨーロッパの政治・経済の中心として、またヨーロッパ文化の1つの軸として、そこに生きる人々の生活と精神構造にまで大きな影響を与えてきた。ドイツ人が「父なる河」と呼ぶライン河。その歴史は、流域の歴史であり、人間の営為の歴史である。ドイツ文学の第1人者が限りない情熱をこめて描く異色のライン河の文化史。
日本人の知性と心情
講談社学術文庫
精神医学者が捉えた日本的知性と感性の原理現代社会は人々を画一的な型にはめ易く,外来文化の影響である知的生活,甘え人間等の言葉が安易に使用される.日本人の深層意識を分析し日本的知性の復権を説く

典座教訓・赴粥飯法
講談社学術文庫
「典座教訓」には、禅の修行道場における食を司る典座の職責の重要さが記され、この典座が調理してくれた食事を頂く修行僧の心得を示したのが「赴粥飯法」である。道元は、両者の基本にあるものこそ仏道修行そのものであると力説する。飽食時代といわれる昨今の食生活を省みるとき、本書のもつ現代的意義は大きく、多くの示唆に富む必読の書といえよう。食と仏法の平等一如を唱えた道元の食の倫理。