寂聴さんに教わったこと

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寂聴さんに教わったこと

ジャクチョウサンニオソワッタコト

文芸(単行本)

追悼 瀬戸内寂聴さん
66歳年下の秘書が、誰よりも近くで見つめつづけた寂聴さんの最期の日々と、愛の教え。
寂聴さんの素顔を伝える写真多数収録。

「10年間、私が見てきた寂聴先生の素顔と、先生から私が教わったこと、先生の情熱と愛溢れる生き方が、
この本を読んだ人に伝わってくれたらうれしい。」(本文より)

・まえがきより――
2021年11月9日、瀬戸内寂聴先生が亡くなった。私は今も先生がこの世にもう存在しないことが理解できていない。

先生は寂庵にずっと帰りたがっていた。「死ぬのは寂庵がいい」、そう言っていた。帰る準備もしていたのに、それを待たずして先生の容体は急変し、逝ってしまった。

「先生のそばに最後までいる」と決めていたけれど、そんなに簡単なことではなかった。大切な人の死に直面するということは私が想像していた以上にきついことだ。
「瀬尾さんの声を一番よく聞いていたし、慣れているから先生は理解しやすいんだね」と入院中によく言われた。会話は出来なくとも、先生は耳が聴こえていて私の言うことは理解していたし、相槌も打ってくれた。

先生が亡くなる前日、私は先生と二人きりになれた。私が一方的に話していたけれど、息子の話をすると先生が笑った気がした。いや、絶対笑った。まさかその時が先生との最後の会話になるとは思わなかったけれど、その時間が持てたこと、今でも本当に良かったと思う。

先生との時間はいつか終わりがくるとしても、こんなに急にくるとは思いもせず、私の半身がどこかへもぎとられていくような気持ちになる。温かくひだまりのような先生の笑顔がもう見られないと思うと、私の心は寒く心細くなってしまった。

けれど友人が教えてくれた言葉に、「失くしたものより残ったものを数えろ」という名言があって、私もそうしようと思う。
先生との日々は尊いものであり、私にとって宝物であったことを強く感じている。
――瀬尾まなほ


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書誌情報

紙版

発売日

2022年01月13日

ISBN

9784065266571

判型

小B6

価格

定価:1,320円(本体1,200円)

ページ数

210ページ

初出

「まなほの寂庵日記」共同通信社配信 2017年6月~2021年11月。

著者紹介

著: 瀬尾 まなほ(セオ マナホ)

瀬尾まなほ 1988年、兵庫県生まれ。京都外国語大学英米語学科卒。卒業と同時に寂庵に就職。2013年、長年勤めていた先輩スタッフたちが退職し、66歳離れた秘書として奮闘の日々が始まる。2017年6月より共同通信社の連載「まなほの寂庵日記」を開始。同年11月に出版したエッセイ『おちゃめに100歳! 寂聴さん』(光文社)がベストセラーになる。2021年4月、読売新聞の連載「秘書・まなほの寂庵ごよみ」を開始。困難を抱えた若い女性たちを支援する「若草プロジェクト」の理事も務める。他の著書に『命の限り、笑って生きたい』(光文社)、『寂聴先生、ありがとう。』(朝日新聞出版)などがある。

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