講談社文芸文庫作品一覧

自伝 土と炎の迷路
講談社文芸文庫
由緒ある釜大将の家に生まれ、形骸化したものを嫌悪し、生来の勁い信念と情熱で毀誉褒貶の世を進む。茶道美術界の重鎮・益田鈍翁や小野賢一郎、富本憲吉、北大路魯山人、両親、祖母、恩師たち。多彩な人々との出会いと別れ。桃山古陶の再現、黄瀬戸事件、永仁の壺事件、日ソ工芸展、「氷柱」誕生、『陶器大辞典』編纂。一ム才の号いわれ。陶芸の巨人が綴るその究極の創造人生の自伝。

外套・鼻
講談社文芸文庫
“我々はみなゴーゴリの〈外套〉から出てきたのだ”とドストエフスキイが言ったと伝えられる名作「外套」、一人歩きを始めた逃げだした鼻を追うコバリョフ少佐を描いた「鼻」、長官令嬢に恋した下級役人が切々と記した、滑稽にして悲痛な「狂人日記」、魔女に魅入られたキエフの神学生が妖怪と戦う「ヴィイ」の4篇を新訳でおくる。

保田與重郎文芸論集
講談社文芸文庫
戦前日本の思想界に多大な影響を与えた日本浪曼派の主軸たる保田與重郎の文芸論集を川村二郎が編成。ドイツロマン派の関連からよく西洋を理解し、近代批判と裏返しの日本の古典にもよく通暁した批評家保田與重郎は、帝国主義日本の戦争協力者、御用文学者と批判されてきた。政治と文学の季節が終って、文学作品としての批評の真骨頂を収録。「日本の橋」「誰ヶ袖屏風」など8篇。

松島秋色
講談社文芸文庫
河東碧梧桐に俳句を学び、句作で鍛えた簡潔強靱な文体は、「手織木綿の如き」文章と芥川龍之介に評された。自己の身辺を凝視し、自然風景を鮮やかに描いた作品は、写生文の真骨頂とうたわれた。少年期の体験を記す「父」、結婚に至るまでの心情を活写する「結婚まで」のほか、「積雪」「大火の夜」「伐り禿山」「松島秋色」「野趣」の7篇。瀧井孝作傑作短篇集。

旧約聖書外典(下)
講談社文芸文庫
旧約聖書外典は、ユダヤ教団によって異端的な書として廃棄され、主としてキリスト教団の手を経て今日まで伝えられてきた。下巻には、ダニエルを主人公とした知恵物語として有名な「スザンナ」「ベールと龍」、イスラエルの知恵の思想を伝える「ソロモンの知恵」、黙示文学の「第四エズラ書」「エノク書」を収録。

百日の後
講談社文芸文庫
「第三の新人」世代に続く、「内向の世代」グループの一人である坂上弘は、「第三の新人」とは違った意味で、生活者の視点から小説世界をつくり上げてきた。文学が特別な社会を対象としたものでなく、日々の暮しのなかでのサラリーマンであり、同人雑誌仲間との交友でありと、一見、平凡な日常のうちに、ニュアンスを含んだ人生を見出す。表題作ほか著者自選の5篇を収録。

駅・栗いくつ
講談社文芸文庫
「男と女のなかには距離がひそむ。親子のあいだにも寸法は残されている。駅も距離だし、国も距離だし、ことばも距離だし、風も著物も距離だ」(『駅』「さとがえり」)ーー男と女の縁、夫婦、親と子、幼な友達、嫁と姑。ささやかな日常の中に人生の機微を掬い取り、鮮やかに命を吹き込む、幸田文の強靱な感性。連作的随筆『駅』の12章と小説『栗いくつ』を収録。

旅愁(下)
講談社文芸文庫
シベリア経由でヨーロッパから日本に戻った矢代耕一郎は、パリで1度は断念した心寄せる宇佐美千鶴子と再会をする。日本の伝統を求めて歴史を溯り“古神道”に行き至った矢代は、カソリックの千鶴子との間の文化的断層に惑う。それぞれが歩む、真摯に己れの根っこを探す思索の旅。晩年の横光利一の「門を閉じ客の面会を謝絶して心血をそそいだ」(中山義秀『台上の月』)最後の長篇思想小説。

ピクニック、その他の短篇
講談社文芸文庫
感覚的、幻想的イメージ、風刺と暗喩の交錯する詩的文体。時間と空間を否定した特異の作品世界を築き、「桃の園」に描かれる記憶の不明をはじめ、作品の底に澱のように淀む家族の影は、現実の不安を描出する。表題作「ピクニック」のほか、「競争者」「窓」「木の箱」「月」「既視の街」「くずれる水」「豚」「鎮静剤」「家族アルバム」「あかるい部屋のなかで」の12篇を収める短篇集。

旧約聖書外典(上)
講談社文芸文庫
旧約聖書外典は、ユダヤ教団によって異端的な書として廃棄され、主としてキリスト教会を経て今日まで伝えられてきた。上巻には、第二神殿建設から新約の時代までのパレスチナの歴史を述べ、信仰の書としても深い感銘を与える「第一マカベア書」、しばしば西洋絵画のテーマとして取り上げられてきた「ユデト書」の他、「トビト書」「三人の近衛兵」「ベン・シラ(集会書)」を収録。

ノリソダ騒動記
講談社文芸文庫

旅愁(上)
講談社文芸文庫
近代日本人の生き方を根源から問いなおす恋愛思想小説。日本伝統主義者の矢代耕一郎と、対照的にヨーロッパの合理的精神に心酔する久慈、2人が心惹かれるカソリックの宇佐美千鶴子らが織りなす鮮烈微妙な恋愛心理の綾。東洋と西洋、信仰と科学、歴史と民族の根の感情等、横光利一が苦闘した生涯の思索の全てを人物に投影させつつパリ、東京を主舞台に展開させた畢生の大作。(全2冊)

ミドルマ-チ(四)
講談社文芸文庫
銀行家バルストロウドの旧悪を知るラッフルズの不審な死に医師リドゲイトもかかわっていたらしいという噂に、ミドルマーチ中が大騒ぎとなるなか、ドロシアは慕い続けてきたウィルと再婚して、物語は大団円を迎える。イングランド中部の商業都市ミドルマーチを舞台に多彩な人間模様を描き出した、ヴィクトリア朝を代表する女流作家ジョージ・エリオットの代表作。(全4巻)

日本の文学論
講談社文芸文庫
歌論、俳論というのは、日本の古典文学論ではあるが、それは古今集や新古今集の序文に見られ、また歌合の判詞などにも納得の行く形で表現されている。歌の心と詞、日本的美意識については、西洋の論理ですべて割り切れるものではない。明晰を越えた直観、それを著者は新たな批評の言葉として提起している。従来の日本語の批評言語を読み直すことで、日本文学の豊かさを示唆する画期的文学論。

日本文壇史24 明治人漱石の死
講談社文芸文庫
大正社会主義を明確にうちたてた大杉栄の月刊「平民新聞」、第2次「近代思想」は巧妙に弾圧された。大正5年、荷風、慶応義塾辞任。鴎外退官。藤村帰国。上田敏永眠。芥川、久米ら第4次「新思潮」創刊。17歳の宮本百合子『貧しき人々の群』で登場。次代を担う多くの青年に敬愛された漱石、『明暗』掲載途中絶筆。漱石逝き、鴎外筆を断ち名実ともに明治は終焉。白樺派の大正文壇制覇前夜であった。全24巻完結。

ミドルマ-チ(三)
講談社文芸文庫
年長の夫カソーボン牧師は散歩中に死ぬが、ドロシアは青年ジャーナリストのウィルに密かな思いを寄せる。一方、市長の娘ロザモンドと結婚したリドゲイト医師は派手な生活から借金に追われ、わがままな妻に失望する。イングランド中部の商業都市ミドルマーチを舞台に多彩な人間模様を描写した、ヴィクトリア朝を代表する女流作家ジョージ・エリオットの傑作長篇(全4巻)

美しい墓地からの眺め
講談社文芸文庫
戦時下、大病で富士山の見える故郷・小田原の下曽我に帰った著者は、自然界の小さな虫の生態にも人間の生命を感じ、自然との調和のなかにやすらぎを見出す。本書は、文学への出発時の芥川賞受賞作「暢気眼鏡」から、最晩年の作品「日の沈む場所」にいたる14作品を収録。これらをたどることで著者の人生、ひいては人が生きることへの発見、喜びと慰めを読みとることが出来る、珠玉の作品集。
戦時下、大病で富士山の見える故郷・小田原の下曽我に帰った著者は、自然界の小さな虫の生態にも人間の生命を感じ、自然との調和のなかにやすらぎを見出す。本書は、文学への出発時の芥川賞受賞作「暢気眼鏡」から最晩年の作品「日の沈む場所」にいたる14作品を収録。これらをたどることで著者の人生、ひいては人が生きることへの発見、喜びと慰めを読みとることが出来る。

時間
講談社文芸文庫
人生の中で時間が流れていく、ということの意味を考え現代文明の偏見を脱して捉われの無い自由な自分となる。文化の真の円熟や優雅さは18世紀西欧にあるとの『ヨオロツパの世紀末』を著した著者が、その最晩年に到達した人間的考察の頂点にして、心和む哲学的な時間論。『時間』を書き上げると残っているものを全部出したと感じる、と述懐した批評家吉田健一の代表作。

若い詩人の肖像
講談社文芸文庫
小樽高等商業学校に入学した「私」は野望と怖れ、性の問題等に苦悩しつつ青春を過ごす。昭和3年待望の上京、北川冬彦、梶井基二郎ら「青空」同人達との交遊、そして父の危篤……。純粋で強い自我の成長過程を小林多喜二、萩原朔太郎ら多くの詩人・作家の実名と共に客観的に描く。詩集『雪明りの路』『冬夜』誕生の時期を、著者50歳円熟の筆で捉えた伊藤文学の方向・方法を原初的に明かす自伝的長篇小説。

ミドルマ-チ(二)
講談社文芸文庫
ドロシアと結婚した27歳年上のカソーボン牧師は、妻に好意をよせるいとこのラディスローへの嫉妬に苦しむ。この物語のもう一方の主要人物である有能な青年医師リドゲイドは、ミドルマーチ市長の娘ロザモンドと結ばれる。イングランド中部の商業都市ミドルマーチを舞台に多彩な人間模様を描写した、ヴィクトリア朝を代表する女流作家ジョージ・エリオットの代表作。(全4巻)