講談社学術文庫作品一覧

近代科学を超えて
講談社学術文庫
幾多の重要な科学的発見が必ずしも既成の事実に拠るものではなかったことを検証した著者は、進んでトマス・クーンのパラダイム論の成果の上に立って、科学理論発展の構造の分析を本書で試みた。パラダイムとサブ・パラダイム、サブ・パラダイム同士の緊密な相関関係に着目しながら、科学の縦断的(歴史的)=横断的(構造論的)考察から、科学史と科学哲学の交叉するところに、科学の進むべき新しい道をひらいた画期的科学論である。
中国聖賢のことば
講談社学術文庫
固苦しい訓詁の法則を超越した中国古典抄訳清冽な感情で中国の古典を眺め、聖賢の遺したことばを個性的な感情移入で訳したユニークな書。収録抄訳のいずれもが人生の妙諦に触れた、中国古典箴言集である。
万葉集講話
講談社学術文庫
碩学が平易明解にかたる万葉の歌のこころ。大著「万葉集注釈」の業績を礎として特に若人のために書かれた教養的入門書。おおらかな万葉人の心情に分け入り、作家の基幹となるべき万葉精神の核心を説く。

ふるさとの生活
講談社学術文庫
著者は若き日の小学教師の経験を通し、ふるさとに関する知識や理解を深めることが子どもの人間形成にとっていかに大切であるかを生涯にわたって主張した。本書は日本人の生活の歴史を子どもたちに伝えるため、戦中戦後の約10年間、日本各地を歩きながら村の成り立ちや暮らし、古い習俗や子どもを中心とした年中行事等を丹念に掘りおこして、これを詳細にまとめた貴重な記録である。民俗調査のありかたを教示して話題を呼んだ好著。

国是三論
講談社学術文庫
公共性と通商の観点から新たな国家や社会のあり方を模索した稀代の思想家・横井小楠。動乱の幕末にあって、時代を超えた学殖と見識により、開明的な実学思想から公議政体論を主張、明治新政府形成の推進力の一助を担った。本書の「国是三論」は、経世済民、殖産興業、通商交易等による民富論的富国策を謳った小楠の代表作で、彼の学問と思想の全てを投入、総括したものである。他に井上毅、元田永孚と交わした「沼山対話」や「沼山閑話」等も収録した。簡潔な現代語訳も整い、小楠の人と思想を知る上に必読の書。

仏教信仰の原点
講談社学術文庫
日本人の宗教信仰の核心をなしているものは何か。本書は、奈良時代の遊離魂信仰、平安時代の鎮魂儀礼、鎌倉時代の成仏・往生思想の3つの観点から、これを歴史的に考察した。庶民の生活実感の中に深くしみこんでいる信仰、即ち祟り信仰に対して、その祟りを排除するために行われた空海の加持祈祷の儀礼をはじめ、親鸞・道元等の仏教思想との葛藤は、今日も本質的に変わっていないと説く。仏教信仰の原点を問い直した最新の意欲作。

日本のことばとこころ
講談社学術文庫
人間にとって、ことばとは何なのか、民族にとって、言語とは何なのか。われわれ日本人は、はるかな遠い昔から一言語・一民族・一国家という、世界でも稀な言語圏を形成してきた。その日本語の内に秘めている日本のこころとは何なのか。40余年間、外国人に日本語を教えてきた経験から、母国語を内面から支え、動かしているもの──日本語を日本語としてまとめあげていく潜在的思考──のパタンを丹念に彫り上げた新生面の言語論。

般若心経講話
講談社学術文庫
数多くの仏教のお経のなかで、『般若心経』ほど人々に親しまれているものはない。わずか262字のこのお経のなかに、無限の真理と哲学があふれているからである。透明な自己になりきるとき、心で読むとき、はじめて心経はその真の意味を表わしてくれるのだ。本書は、不安の時代に生き、心のよりどころを求める現代人のために、単に『般若心経』の字句の解釈に捉われることなく、そのこころを明らかにしようと試みたものである。

俳句入門三十三講
講談社学術文庫
「ホトトギス」を源流とする「雲母」に育った龍太は、父蛇笏の写実的俳句を継ぎながら、その作品は近代俳句の正嫡ともいうべく、勢いがよく魅力的で、しかも広がりと深さを持つ。本書は、「雲母」の例会の実作指導のなかから選りすぐった俳論・俳話で、いずれも文学の根源に触れるおもしろさがあり、読者はいながらにして句会の現場に立ち会うような、しかもその語り口から著者の人柄にも触れることができる、好個の入門書といえよう。

古代朝鮮と日本文化
講談社学術文庫
本書は、日本独自の文化といわれる神社・神宮の中に、高麗(こま)神社、百済(くだら)神社、新羅(しらぎ)神社など、古代朝鮮三国の名を負った神社が日本各地に散在するのに注目した著者が以来、十数年の歳月にわたり、それらの由来を明かすべく、文献や地名などを手がかりに実地踏査したものをまとめたものである。新羅において祀った祖神廟(そしんびょう)を神社・神宮の原形とみるなど、日本の神々のふるさとを遙か古代朝鮮に見いだした、著者ならではの労作といえよう。
工場日記
講談社学術文庫
労働体験を生存の考察に深めた形而上的日記工場労働者の内側に身を置き,隷属と屈辱に耐え,人間の根源的不幸の「悲惨」を嘗め尽すヴェイユ.頭痛と疲労の中で綴られた魂の呻きにも似た苦痛と怒りの証言.
古典の知恵袋
講談社学術文庫
時代を超えて生きる東西の処世の知恵に学ぶ東西の著名な説話・寓話文学の古典的作例の中から『イソップ寓話集』を始め,クニッゲの『交際術』や鴎外の『知恵袋』など,処世術についての代表的な書物を紹介
お雇い外人の見た近代日本
講談社学術文庫
近代技術移植の先駆者英人技師の日本見聞録漸く封建制から脱皮した明治新政権は欧米先進国を範として近代国家を目指した.本書はその新政府お雇い外国人技師が見た,近代日本創立に伴う苦闘の記録である.

復興期の精神
講談社学術文庫
大胆なレトリックと弁証法を駆使して、ヨーロッパの文芸復興期を生きたダンテ、レオナルドら22人の巨人の軌跡を追求した特異なルネッサンス論。衰亡した文化の復活の秘密を探る論理の展開は、執拗かつ独創的で、読む者の意表をつき、現実の変革のためには必死の抵抗以外に道はないと説く著者の批判精神は、鋭くそして重い。ルネッサンスを語りながら、戦時下の日本の現実の姿を浮彫りにし、「転形期にいかに生きるか」を示唆した名著。
中国故事物語
講談社学術文庫
中国の故事はいかにして生まれたのか…!?本書は『論語』や『十八史略』など古典や史書の原典をもとに「管鮑の交わり」「邯鄲の夢」といった馴染み深い故事の謂れを平易な物語で紹介した興味尽きない好著

アメリカ哲学
講談社学術文庫
本書のねらいは、アメリカの哲学をプラグマティズムを中心として見てゆくことにある。哲学を哲学専門家の手からとり戻し、今日の社会に生きるさまざまな人々の生き方・見方・考え方の反省としての哲学が新しく創られねばならないという観点に立って、著者はプラグマティズムの起源から構造や思想家を縦横に論じていく。アメリカの哲学、プラグマティズムの全体像についての単なる学術的解説にとどまらない真に独創性豊かな哲学書。

シェイクスピア劇の名台詞
講談社学術文庫
シェイクスピアが語りかけているものは何か。彼の遺した作品を愛・史劇・悲劇に分類し、その核心の立体的解明を試みたのが本書構成の要訣である。即ち各台詞の冒頭で有名な一節を読み、次に場面、状況を理解し、改めて台詞全体を味読する。かくて台詞がもつ劇中での意味を訊ね、シェイクスピアの思想にまで鑑賞を進め、更に原文の熟読によって、台詞がいかにダイナミックで、かつ繊細な魅力に満ちているかがおのずから体得できる。
日本近代化の思想
講談社学術文庫
近代化の過程で捨象された反骨の論理を照射日本の近代化は,幕末に胎動したさまざまな可能性を切り落としながら進められた.近代化と伝統,自由の観念,ナショナリズムの問題などを思想の諸相にわたり考究
朝鮮史譚
講談社学術文庫
豊かな伝統と文化を生んだ朝鮮民族の歴史.『三韓昔がたり』に続く幻の名著として名高い本書は,高麗・李朝の一千年の朝鮮の歴史を,確かな史眼と熱情に裏付けられた十七の挿話を通して平易に語りかける.

科学的発見のパターン
講談社学術文庫
本書は、物理理論が形成される際の推論の動き、物理学における法則命題の機能などを中心に、ニュートン・ケプラー・ガリレイなどの理論発見の史実を跡づけ、新たな科学理論が創成されるパターンを解明しようとするものである。物理学・科学史を土台として、それらの個別的知識にとどまらず、哲学的綜合を目ざした著者は、本書の全般にわたって仮説をいかに発見するかを分かりやすく検証する。新鮮な視覚で科学哲学の地平を拓いた名著。