講談社学術文庫作品一覧

増鏡(上)
増鏡(上)
訳:井上 宗雄
講談社学術文庫
『増鏡』の成立は南北朝時代に入ってからと思われるが、その内容は、鎌倉時代の宮廷・貴族の歴史を、また、皇室と北条氏との争いを物語風に記述したものである。鎌倉時代の宮廷・貴族の生活には、まだまだ王朝風の優雅さが広く行きわたって残っているが、その雰囲気を生き生きと語っているのが『増鏡』である。その意味で、根強く生き残った王朝精神、王朝文化を余すところなく描ききった王朝文学掉尾(とうび)の名作といえるであろう。(全3巻)
人生をいかに生きるか(下)
人生をいかに生きるか(下)
著:林 語堂,訳:阪本 勝,装丁:甲賀 友章
講談社学術文庫
キリスト教の牧師の子として生まれ、聖職者たらんとした林語堂は、やがて神を棄て、ひとり異教徒として中国の伝統にたちもどる。その近代キリスト教文明への批判は、かえって多くの西洋人の共感と感動をひきおこした。下巻では、われわれの生活と自然と教養のことごとくを説いて、花を語り、茶を語り、食物を語り、文章道を論じ、芸術を論じる。それらを通じ、読者は絢爛たる中国文化の精髄にふれ、人生の醍醐味を覚えるだろう。
人生をいかに生きるか(上)
人生をいかに生きるか(上)
著:林 語堂,訳:阪本 勝,装丁:甲賀 友章
講談社学術文庫
人生の目的とはなにか。それは人生をいかに楽しく生きるかにある。ものごとはどこで考えるべきか。それは腸で考えるべきである。中国の生みだした世界的ジャーナリスト、林語堂の手になる本書は、世事生活の万端を語りつくし、人生と生活の妙味を浮きぼりにした名著であり、林語堂の名を不朽のものにした世界的ベストセラーである。軽妙かつ斬新な語り口のなかに、読者は、おのれの人生を生きる考え方を発見することができる。(全2巻)
日本語のしゃれ
日本語のしゃれ
著:鈴木 棠三
講談社学術文庫
日本人はどこから来たか
日本人はどこから来たか
著:斎藤 忠,装丁:粟津 潔
講談社学術文庫
(この本は)日本の最も古い文化である旧石器時代の文化の存在を確認するに至った経過を述べつつ、さらに、日本人の祖先が、どんな人々であったかの映像を追ってみた。また、縄文時代・弥生時代の人々の生活を考え、邪馬台国の問題にも触れた。次いで統一国家の成立を考え、古墳時代の文化を説いた。この時代の文化として、文字の使用の問題を述べ、最近発見された埼玉県稲荷山古墳発見の鉄剣の銘文にも触れた。(著者「まえがき」より)
講孟箚記(上)
講孟箚記(上)
著:吉田 松陰,その他:近藤 啓吾
講談社学術文庫
下田渡海に失敗した松陰は、江戸より護送後直ちに野山獄に投ぜられた。本書は、再び世に出る見込みなき獄に起居し、同囚のために講義した「孟子」の前半。「吾(われ)の魯侯(ろこう)に遇(あ)はざるは天なり」において彼は「時に遇ふも遇はぬも、皆天に任せて顧みず。我に在りては道を明らかにし義を正しうし、言ふべきを言ひ為すべきを為すのみ」と。孟子のことばに拠り、それを越えて、自己現下の問題としてこれを考える、正に松陰ならではの気概の書である。
近世日本国民史 明治維新と江戸幕府(4)
近世日本国民史 明治維新と江戸幕府(4)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
慶応三年十月十四日、徳川慶喜が将軍職辞職、政権返上以来、十二月九日の皇政復古の大号令渙発を経て、翌正月三日の鳥羽、伏見の開戦までは、いわゆる維新史の絶頂というべく、実にその刻一刻、瞬一瞬、我も人も手に汗を握る場面の連続劇であった。この間三ヵ月、我々は今あらためて、いかに個人が歴史の流域を左右するか、はた偶発・突発の事件が、いかに歴史の流勢に大なる関係を持つかを識るにおいて思い半ばに過ぎるであろう。
電子あり
中国古代の文化
中国古代の文化
著:白川 静
講談社学術文庫
日本の古代を知るためには、東アジア古代文化の源流をなす中国の古代について、その全体を展望しうる構図が、まず確立されねばならない。本書は、かかる問題意識の上に、中国の古代を、文化・民俗・社会・政治・思想の5部に分ち、その諸問題を明らかにせんとする、画期的な作業の第1部である。中国古代学の泰斗による、この比較文化論的な試みより、われわれはいま、東アジア的古代世界の全く新しい姿をここに見ることができる。
名詩鑑賞 中原中也
名詩鑑賞 中原中也
著・編:中村 稔,装丁:菊池 薫
講談社学術文庫
(中也の詩における)青春の挫折感、社会からの疎外感、脱落感、けなげな姿勢、知的遊戯でない真の意味の「うた」、……そういうものは、すべての青春にとって無縁ではありえません。このような詩を生んだものは、中原中也という詩人の、稀にみる無垢な、傷つきやすい魂でした。この無垢な魂の真率な生活の記録が、くめどもつきぬ悲しみとなり、嘆きとなり、また、祈りとなって今日私達に残されているのです。(この本の「まえがき」から)
江戸語の辞典
江戸語の辞典
編:前田 勇
講談社学術文庫
江戸語とは、江戸という都市の住民に日常使用されていたことばを指し、つまり近世後期の代表的な日本語を意味する。本書は、そのような江戸語に関する最高の辞典である。近世語研究の第一人者が、生涯の全研究成果と精魂を傾けた、一大労作であり、語彙の数・用例の量・出典の範囲・説明の的確さには定評がある。稽滑本・人情本などの読解に、また歌舞伎・古典落語鑑賞の手引きに、近世日本文化を理解するためには必携の辞典である。
近世日本国民史 明治維新と江戸幕府(3)
近世日本国民史 明治維新と江戸幕府(3)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
慶応三年十月十三日、将軍慶喜は各派の重臣を二条城に召集、徳川二百六十余年間にわたる政権を朝廷に返上せんとの決意を告白。これを諮問。実に同じ日、薩・長・芸三藩士、岩倉具視の手により討幕密勅の消息を承領。かかる歴史的緊迫の折しも、維新回天の鴻業に己の総てを賭した先覚者坂本龍馬・中岡慎太郎の両雄、近江屋新助方二階にて刺客に襲われ、その尊き鮮血を大改革の祭壇にく。報に接し、岩倉潸然涙を流して痛嘆すという。
電子あり
平家物語(二)
平家物語(二)
その他:杉本 圭三郎
講談社学術文庫
院庁と山門の紛争は、天台座主明雲の流罪へと発展したが、大衆は憤激して奪還してしまう。やがて鹿ヶ谷の謀議は行綱の密告によって露見し、主謀者成親や西光はたちまち処断される。激怒する清盛と、これを諌める重盛、そのあざやかな対比のなかで、栄華の座のゆるぎはじめた平家一門は権勢の維持をはかって、反平家の企てにくみした俊寛らを鬼界ケ島に流すが、対立、抗争は寺院の内部にも起り、時代全体の末期的様相が語られる。
とりかへばや物語(4) 冬の巻
とりかへばや物語(4) 冬の巻
訳:桑原 博史
講談社学術文庫
平安末期成立の『とりかへばや』は、女性的な気質の兄君と男めいた気性の妹君とが、それぞれ女装男装して、華やかな宮廷生活に悲劇喜劇の渦をまきおこす物語。第4冊冬の巻は、妹の演じていた右大将に落ち着き得た兄は、吉野山の宮の姫君を正妻として多くの女性にかしずかれる理想的生活を獲得し、兄の演じていた尚侍に落ち着くことのできた妹は、帝に愛されて東宮を生み、中宮として幸福な身の上となる結末を記した最終巻。(全4巻)
古今和歌集(一)
古今和歌集(一)
その他:久曽神 昇
講談社学術文庫
『古今集』は、国文学史上、殊に和歌史上における最重要作品の一である。『万葉集』および『新古今集』と共に三大歌集と称さる。万葉の素朴直感的表現より、古今の優美情趣的表現となり、更に新古今の妖艶幽玄的表現に進展するのである。以来数百年の間、専ら『古今集』が歌の最高規準と尊ばれ、すべての歌が諳誦せられ、片言隻句も金科玉条と仰がれて来た所以を探り、素朴直感的表現にとどまらず、その真髄を闡明(せんめい)したいものである。
徒然草(一)
徒然草(一)
その他:三木 紀人
講談社学術文庫
『徒然草』は鎌倉末期の草庵歌人兼好の随筆。全244の章段から成る。その中には、人生論あり、都鄙の珍しい逸話あり、古きよき時代をしのばせる故実への考証あり、多彩をきわめる。作品世界は兼好の心の動きのままに展開されるが、随所に鋭い批評眼が光り、みずみずしい情感が流れる。成立後しばらくは埋もれていたが近世以後、無数の読者に迎えられ、日本の代表的古典として評価される。本巻は第46段までを扱う。(全4冊)
近世日本国民史 明治維新と江戸幕府(2)
近世日本国民史 明治維新と江戸幕府(2)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
慶応三年五、六月は、維新回天史上、最も重要な時期であった。上には四賢候が、将軍慶喜・摂政二条齊敬らと会同、評定を重ね、下には薩藩を中心として、一方には長藩の主戦論者がしきりに挙兵を迫り、他方には土藩の平和解決論者が藩を引き入れようと工作。中にあって、坂本龍馬・中岡慎太郎の徒は藩・長・土の間に従横の手腕を揮い、天下の大勢は、あたかも水盤に水を盛るが如く、いずれへ傾いても覆水の虞を蔵していたのだった。
電子あり
伊勢物語(下)
伊勢物語(下)
訳:阿部 俊子
講談社学術文庫
この天福本「伊勢物語」は家集でも日記でもない歌物語である。が、百に余る歌物語を書き並べる時、それらを綴り合わせる一筋の糸を、ある男の生涯の流れに求めた。したがって上巻には青年期の純情な一途の思慕と流浪のロマンがあった。下巻としておさめた所に見られるのは、人生経験からにじむ思いやりの中で屈折する熱い情と、年月の中で衰えて行く生命の滅びの歌の哀感である。生きる日をかさねるにつれて長く読者の共感を誘うと思う。
純粋理性批判(4)
純粋理性批判(4)
著:I・カント,訳:天野 貞祐,装丁:山崎 登,その他:蟹江 征治
講談社学術文庫
「神」の存在を証明せんとする「実体論的証明」「宇宙論的証明」「自然神学的証明」のいずれにおいても、神の存在は証明しえないとするカントの先験的神学は、ひとつの論理的体系をみごとに結実させている。※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。 第三巻に引き続き、最高存在体すなわち「神」の現存在について純粋理性はどのように推論すべきかが論じられる。「神」の存在を証明せんとする「実体論的証明」「宇宙論的証明」「自然神学的証明」のいずれにおいても、神の存在は証明しえないとするカントの先験的神学は、ひとつの論理的体系をみごとに結実させている。体系的統一と論理的形式性を徹底的に追求したカントの純粋哲学の世界は、先験的方法論をもって完結する。(全四巻)※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、iPadでの閲読を推奨します。
電子あり
近世日本国民史 明治維新と江戸幕府(1)
近世日本国民史 明治維新と江戸幕府(1)
著:徳富 蘇峰
講談社学術文庫
慶応二年七月将軍家茂薨去。十二月孝明天皇崩御、翌三年明治天皇十六歳で即位。時に慶喜十五代将軍職を継ぐや、狂瀾を既倒に廻らさんと、仏国公使ロッシュの進言を容れ、倒幕派の巨頭薩摩藩と対峙、日本の政権は儼乎として幕府に存在する事実を示威せんとす。既に洛北に幽蟄せる岩倉具視は入洛の公許を得、幕薩対立激化を促し、幕を滅ぼす者は幕、の策に暗躍。かくて朝幕両党の天王山、兵庫開港を廻る討幕前夜の暗闘は続く。 慶応二年七月将軍家茂薨去。十二月孝明天皇崩御、翌三年明治天皇の数え年十六歳で即位。時に慶喜十五代将軍職を継ぐや、狂瀾を既倒に廻らさんと、仏国公使ロッシュの進言を容れ、倒幕派の巨頭薩摩藩と対峙、日本の政権は儼乎として幕府に存在する事実を示威せんとす。既に洛北に幽蟄せる岩倉具視は入洛の公許を得、幕薩対立激化を促し、幕を滅ぼす者は幕、の策に暗躍。かくて朝幕両党の天王山、兵庫開港を廻る討幕前夜の暗闘は続く。
電子あり
伊勢物語(上)
伊勢物語(上)
訳:阿部 俊子
講談社学術文庫
「伊勢」は、時世が藤原北家の権力確立に流動している中で没落して行く貴族の一人の男が、誇高く男の純情を歌った愛の歌物語である。地域的にも対人的にも彼は多面的行動的である。情(こころ)は繊細で悲哀にみちていても、待ち耐え忍ぶ女の想(おもい)とは異質である。又彼は造形された人物でなく実在のきらめく歌人である。が、顔や肉体や生活を持たない。虚実の間に形像から開放され抽象されている。「伊勢」が愛好されるのはこの辺に秘密があるようである。