講談社学術文庫作品一覧

石の宗教
石の宗教
著:五来 重
講談社学術文庫
日本人は古来、石には神霊が籠ると信じてきた。庶民は自然石を拝み、石を積み、あるいは素朴に造型して、独自の多様な石造宗教文化を育んだ。仏教以前の祈りの時代から連綿と受け継がれてきた先祖たちの等身大の飾らない信心の遺産。路傍の石が体現する宗教感情と信仰を解き明かし、埋もれていた庶民信仰の深い歴史を掘り起こす。 積石、列石、地蔵石仏、石塔、石碑、磨崖仏、道祖神…… 庶民の祈り、心の遺産を読む 日本人は古来、石には神霊が籠ると信じてきた。庶民は自然石を拝み、石を積み、あるいは素朴に造型して、独自の多様な石造宗教文化を育んだ。仏教以前の祈りの時代から連綿と受け継がれてきた先祖たちの等身大の飾らない信心の遺産。路傍の石が体現する宗教感情と信仰を解き明かし、埋もれていた庶民信仰の深い歴史を掘り起こす。 名もない庶民は、記録文献にのるような歴史はのこさない。のこすとすれば石で造った石塔や石碑であり、また木で作った社祠、寺庵であり、そこにまつられた神や仏である。ことに石塔、石仏、石碑は雨の日も晴の日も路傍に立って、通る村人にほほえみかけ、見る人の心を和ませる。それは子孫に何ものこせなかった先祖たちの、心の遺産であろうとおもう。――<本書より>
電子あり
人類史のなかの定住革命
人類史のなかの定住革命
著:西田 正規
講談社学術文庫
霊長類が長い進化史を通じて採用してきた遊動生活。不快なものには近寄らない、危険であれば逃げてゆくという基本戦略を、人類は約1万年前に放棄する。ヨーロッパ・西アジアや日本列島で、定住化・社会化はなぜ起きたのか。栽培の結果として定住生活を捉える通説はむしろ逆ではないのか。生態人類学の立場から人類史の「革命」の動機とプロセスを緻密に分析する。(講談社学術文庫) 数百万年の遊動生活から定住への革命的転換。不快なものには近寄らない、危険であれば逃げてゆくと、いう基本戦略を棄て、定住化・社会化へと方向転換した人類。そのプロセスとは? 通説を覆す画期的論考。
電子あり
シャルルマーニュ伝説 中世の騎士ロマンス
シャルルマーニュ伝説 中世の騎士ロマンス
著:トマス・ブルフィンチ,訳:市場 泰男
講談社学術文庫
シャルルマーニュと「十二勇士」の物語 中世騎士伝説の世界的名作 8世紀、勃興するサラセン勢力はやがてフランク侵入を企てる。キリスト教世界の守護者として異教徒との戦いに乗り出すシャルルマーニュ。旗下のオルランド(ロラン)、リナルドなど十二勇士の活躍はいかに? 魔法使いに翻弄され妖精に助けられながら、名馬・名剣と共に戦う騎士たちの冒険。中世に伝えられた数々の伝説をまとめたブルフィンチの名作。
顔の文化誌
顔の文化誌
著:村澤 博人
講談社学術文庫
顔隠しの文化、正面顔文化とは? 独特の美意識のルーツは? 「顔」から読み解く日本文化論 顔に対する美意識は、その時代の社会や文化によって規定されてきた。顔の歴史は社会・文化の歴史でもある。どのような顔が美とされ、なぜそれが選ばれたのか。感情を面(おもて)に表さない「顔隠しの文化」、横顔よりも正面顔や背面の美を意識する「正面顔文化」はどのように生まれたのか。文献を丹念に考証し、実験も交えながら、顔を通して日本文化の新しい見方を提示する画期的論考。 眉を抜いて眉を描いていた女性たちや貴族の男性たちは、結果としては身分の表現でもあったが、それぞれの社会から眉によるコミュニケーション=感情の表出が禁じられた人々であったと言える。このような化粧風俗は、近隣の民族に見出せない。(中略)眉の存在に対してかなり過敏に感じる風土があったように思える。この過敏さは、つぎに述べる顔隠し、あるいは昭和の半ば過ぎまで残っていた感情を面に出すことを嫌った現代日本人の美意識にも通じる内容を含む。――<本書より>
お雇い外国人 明治日本の脇役たち
お雇い外国人 明治日本の脇役たち
著:梅渓 昇
講談社学術文庫
明治時代、日本の招きにより、近代化の指導者として大勢の欧米人が渡来した。その国籍は英、米、独、仏等にわたり、活躍の場も政治、法制、軍事、外交、経済、産業、教育、学術と多岐にわたった。日本での呼称そのままに、自らをYATOIと称する彼らが果たした役割はいかなるものであったか。日本繁栄の礎を築いた「お雇い外国人」の功績をさぐる。 政治、法制、軍事、外交、経済、教育…… あらゆる分野で近代日本の建設に貢献した外国人指導者たち 明治時代、日本の招きにより、近代化の指導者として大勢の欧米人が渡来した。その国籍は英、米、独、仏等にわたり、活躍の場も政治、法制、軍事、外交、経済、産業、教育、学術と多岐にわたった。日本での呼称そのままに、自らをYATOIと称する彼らが果たした役割はいかなるものであったか。日本繁栄の礎を築いた「お雇い外国人」の功績をさぐる。
電子あり
バロック音楽名曲鑑賞事典
バロック音楽名曲鑑賞事典
著:礒山 雅
講談社学術文庫
生きる喜びが溢れる豊かな生のドラマ、バロック音楽。新しく誕生したオペラ、心の奥底まで響く宗教音楽、多彩に奏で歌う協奏曲、宮廷を輝かせる典雅な調べ。カッチーニ、モンテヴェルディ、シュッツやクープラン、ヴィヴァルディ、ヘンデル、バッハ等の作品から隠れた名曲、感動の演奏を厳選。西洋音楽史研究の第一人者が古楽の沃野から選んだ名曲100曲の魅力をあまさず語る。 千変万化、百花繚乱 バロック名曲100選 生きる喜びが溢れる豊かな生のドラマ、バロック音楽。新しく誕生したオペラ、心の奥底まで響く宗教音楽、多彩に奏で歌う協奏曲、宮廷を輝かせる典雅な調べ。カッチーニ、モンテヴェルディ、シュッツやクープラン、ヴィヴァルディ、ヘンデル、バッハ等の作品から隠れた名曲、感動の演奏を厳選。西洋音楽史研究の第一人者が古楽の沃野から選んだ名曲100曲の魅力をあまさず語る。 私が無人島に持っていきたい曲は、モンテヴェルディの《聖母マリアの夕べの祈り》である。《マタイ受難曲》ではないのですか、とよくいわれるが、さすがの《マタイ》も《ヴェスプロ》の前では色褪せる、というのがかねてからの実感である。中世以来連綿と続いてきた、「マリア崇敬」の芸術――その頂点が美術ではラファエロの聖母像にあるとすれば、音楽では、間違いなくこの作品にあると思う。――<本書「モンテヴェルディ 《聖母マリアの夕べの祈り》」より>
電子あり
文明の十字路=中央アジアの歴史
文明の十字路=中央アジアの歴史
著:岩村 忍
講談社学術文庫
ヨーロッパ、インド、中国、中東の文明圏の彼方で、生き抜いてきた遊牧民たちの領域が中央アジアである。絹と黄金を運んだ悠久の交易路シルクロード。多くの民族と文化の邂逅と衝突。アレクサンドロス大王とチンギス・ハーンの侵攻……。仏教・ゾロアスター教・マニ教・ネストリウス派そしてイスラムもこの地を経由した。中央アジアの雄大な歴史をコンパクトにまとめた入門書。(講談社学術文庫) 東西の文明交流の担い手=遊牧民族の3千年。東から絹を西から黄金を運んだシルクロード。世界の屋根に分断された東西トルキスタン。草原の遊牧民とオアシス農耕民との対立と共存を軸に、雄大な歴史を描く。
電子あり
日本後紀(下)
日本後紀(下)
著:森田 悌
講談社学術文庫
漢文編年体の官撰の国史 全40巻の現代語訳 桓武・平城・嵯峨・淳和、4代の天皇の時代を描く史書『日本後紀』は平安時代理解に欠かせぬ重要文献である。天皇の詔勅、公卿の任官、矢継ぎ早に下される施策や法令、くわえて、海外との交流、諸国の動静、庶民の様子などさまざまな行政記録や出来事が満載されている。また、人物の伝記やその人物の評価、和歌も多く収める。漢文体で書かれた官撰の史書、待望の口語訳、全巻完結。
科学とオカルト
科学とオカルト
著:池田 清彦
講談社学術文庫
ニュートンもケプラーも錬金術師だった。客観性を謳う科学の登場は、たかだか数百年前のことである。近代産業社会が、オカルト理論に公共性を要請した時、秘術は「近代科学」として生まれ変わった。「万能の学=科学」と現代オカルトは、原理への欲望とコントロール願望に取り憑かれ、どこまで行くのだろうか。社会と科学とオカルトの三者の関係を探究し、科学の本質と限界に迫る。(講談社学術文庫) 科学の本質と歴史を裏側からあぶりだす! 社会、科学、オカルト。この3つにはどんな関係があるのか? 客観的な科学の登場は、たかだか数百年前のことである。科学史の視点から、科学の本質を探る論考。
電子あり
絵で見るパリモードの歴史 エレガンスの千年
絵で見るパリモードの歴史 エレガンスの千年
著:アルベール・ロビダ,訳:北澤 真木
講談社学術文庫
美への欲望と世相と服飾 パリファッション 1000年の歩み 女性のお洒落への憧れはいつの時代も変わらない。パリはガリアの時代からファッションのメッカであった。すけすけのドレス、雲を衝く角飾り、釣鐘状のスカート。突飛な風体や豪奢な装いで流行の先端を闊歩する女たち。聖職者の譴責も国王の禁止令も無視し、贅を尽くす。美へのあくなき欲望と時代の世相が織りなす服飾の歴史、パリの貴婦人たちのエレガンス、千年の軌跡を追う。 すでにパリは、ヨーロッパにおけるモードのメッカであり、モードのトレンドを牛耳っていたのである。当然のことながら、情報の発信源であるパリやこれにつづくブルゴーニュの宮廷には、豪華さを競う美女が犇き合っていた。発掘された勘定書に添付された明細からも、彼女らがいかに莫大な金をお洒落のためにつぎこんでいたかがよく分かる。年代記作者らによれば、その蕩尽ぶりには、当時の人びとも目を回したという。――<本書「序文」より>
東京大学の歴史 大学制度の先駆け
東京大学の歴史 大学制度の先駆け
著:寺崎 昌男
講談社学術文庫
新学年はなぜ4月? 総長の選出法、教員の停年制、「優良可」方式の成績評価…… 東大に見る、日本の大学制度の歴史 新学年はなぜ4月に始まるのか? 成績評価が優・良・可方式なのはなぜ? 教員の停年制の開始は? 今日では当然のごとく思われている諸制度は、いつ始まったのか。大学のさまざまな慣行や制度、東大内部の事件と見えながら、近代日本の大学制度史と不可分の出来事等を、東大の歴史の内に追い、併せて大学を取り巻く今日的な課題について考察する。
神と仏の間
神と仏の間
著:和歌森 太郎
講談社学術文庫
お地蔵さんとは何者なのか? なぜ幕末に「えゝじゃないか」が大流行したのか? 歴史学+民俗学で、日本人の複雑な宗教意識を読み解く 自然神から祖先信仰へ。神代と記紀神話の成立。仏教と民間信仰の融合。山岳信仰と修験道の展開。古代日本の神概念から神仏習合を経て形成された、この風土に特殊な精神文化の諸相である。お地蔵さんとは何者なのか。なぜ幕末に「えゝじゃないか」が大流行したのか。歴史学に民俗学を重ね合わせて、日本人の複雑な宗教意識を解読する。 日本人の宗教意識や、その実践表現としての宗教儀礼の特質をかえりみようとする場合、神や仏を除いては決して満足なことがわからない。それは神社神道の神、寺院仏教での仏にたいするかかわり方だけではない。それらの埒外にある民間信仰ないし民俗宗教のうちでも、神と仏の両者はともに重みをもってきている。きわめて日常的な生活の中にしみついている神と仏との在り方から、日本人の宗教意識・宗教儀礼の特質をさぐらなければならない。――<本文より>
法哲学入門
法哲学入門
著:長尾 龍一
講談社学術文庫
知の愛である哲学が非常識の世界に属するのに対し法学は常識の世界に属する。両者の出合うところ人間存在の根源的問題が立ち上がる。世界を支配する理性が社会において自然法として現れ、個人の内にも浸透し秩序を齎(もたら)すという順接的関係が疑われるところに生まれる諸問題。正義の根拠、人間性と社会秩序、法と実力など、法哲学の論点を易しく解説。 正義の根拠とは? 法の拘束力とは? 法学と哲学の逆説的関係から生まれる根本問題に挑戦 知の愛である哲学が非常識の世界に属するのに対し法学は常識の世界に属する。両者の出合うところ人間存在の根源的問題が立ち上がる。世界を支配する理性が社会において自然法として現れ、個人の内にも浸透し秩序を齎(もたら)すという順接的関係が疑われるところに生まれる諸問題。正義の根拠、人間性と社会秩序、法と実力など、法哲学の論点を易しく解説。 A:赤信号だ。渡るのはよせ。 B:いや轢かれて死ぬのは俺だ。放っておいてくれ。 ここでAが何と答えても、それは倫理学・法哲学上の1つの立場といいうる。例えば「ああそうか、じゃ勝手に死ね」「馬鹿をいえ、轢いた運転手やら、後続車やら、みんな大迷惑だ」「死ぬのはお前の勝手だが、法律を破るのはお前の勝手じゃないよ」「生命あっての物種じゃないか」 このように、私たちは、日常生活においても、もろもろの法哲学的問題に取り巻かれて暮らしている。――<本書より>
電子あり
古典ギリシア
古典ギリシア
著:高津 春繁
講談社学術文庫
ギリシア文化を育んだ風土、民族、その言語、生活…… 古代ギリシアの全体像に迫る 遥かな時空を超えて今なお人を魅了し続ける古代ギリシア文化は、いかなる条件のもとに生まれたか。山と海とに画された風土、多様な民族とその言語、市井の民の生活のありよう等の特質を考察するとともに、その比類ない精神がいかに形成され、それが思想、文芸、科学等々にいかに反映されているかを探る。古代ギリシアの全体像を知る好適のガイド。
電子あり
復元 安土城
復元 安土城
著:内藤 昌
講談社学術文庫
カラー口絵8頁 図版満載 戦国の終焉と新時代の到来を告げる造形に、 天才信長はどんな夢を託したのか? 天正7(1579)年。琵琶湖畔、安土の山に峻峭な天主が完成する。黄金の瓦、黒漆の壁、朱の八角円堂。和様、唐様、南蛮風を統合した造形美が、新しい時代の到来を告げる。戦国の世の終焉と平安楽土の現出を託した天才・都市プランナー信長はどんな町作りを実現したのか? 広範な史資料の渉猟と発掘調査の結果をもって、日本初の近世都市の驚くべき全貌を明らかにする。 安土城天主は、軍事を第一機能とする旧来の常識からは遠く離れた存在であった。(略)理想郷志向の「城」の歴史相において、この安土城を「天下を正す」シンボルとなし、総見寺で天道思想にもとづく庶民信仰をおこす。くわえて「楽市・楽座」の施策をもって城下の繁栄を図り、なおかつ周辺には外濠をうがって外敵からの安全性を住民に保障し、その「正義」をより具体的に天下に顕示したわけである。――<本文より>
『資本論』を読む
『資本論』を読む
著:伊藤 誠
講談社学術文庫
経済学の最高の古典ともいえる『資本論』は、夥しい人々に読み継がれ、世界を大きく動かしてきた。マルクスは当時の社会の現状と人々の生活を見据え、資本主義経済の原理とその運動を体系的に分析した。本書では、厖大かつ難解な叙述の続くこの名著の講読を長年行ってきた著者が、エッセンスとなる章句を選び出し、懇切な解説を施し、その魅力と豊かな内容を引き出す。(講談社学術文庫) 資本主義市場経済原理を分析した名著を読む経済学のバイブル的書物『資本論』。マルクスは当時の人々の生活を見据え、資本主義経済の仕組みを分析。その厖大で難解な名著のエッセンスを引き出し、解説する
電子あり
ビゴーが見た明治ニッポン
ビゴーが見た明治ニッポン
著:清水 勲
講談社学術文庫
1882年に来日し、17年間の滞在生活をおくったフランス人画家ビゴーは、その卓越した描写力で、写真や活字では記録し得なかった日本人の本質を鋭く描きとった。明治政府を皮肉る痛烈な諷刺画のほか、西洋文化にとびついた人々の滑稽な姿、日本的風習にあふれた庶民の生活、日本軍に従軍して描いた戦争報道画など、100点の作品を通して、近代化する日本の活況を明らかにする。(講談社学術文庫) 文明開化に揺れる人々 フランス人画家が赤裸々に描く当時の生活 1882年に来日し、17年間の滞在生活をおくったフランス人画家ビゴーは、その卓越した描写力で、写真や活字では記録し得なかった日本人の本質を鋭く描きとった。明治政府を皮肉る痛烈な諷刺画のほか、西洋文化にとびついた人々の滑稽な姿、日本的風習にあふれた庶民の生活、日本軍に従軍して描いた戦争報道画など、100点の作品を通して、近代化する日本の活況を明らかにする。 ビゴーの絵は何故、現代の日本人を惹きつけるのだろうか。大佛次郎氏は、父祖の時代に生み出されたものが故に郷愁を誘うのだ、と述べた。私は、ビゴーが「日本的なもの」を追求して描いたからだと思っている。それは日本人にとって己が描かれたと妙に合点がいくのである。そしてもう1つ、彼が諷刺する日本の未来像がまさに当たっているという、歴史への洞察力に感心するからではないか。――<本書「はしがき」より>
電子あり
死の人類学
死の人類学
著:内堀 基光,著:山下 晋司
講談社学術文庫
至上の超越者「死」に対し、解決を図る人間の文化的営み 至上の超越者である「死」を、人間はどのように文化の中に組み込んできたのだろうか。神秘としての死は語りの対象となり、さまざまなイコンのうちに視覚化され、儀礼的演技の中で操作されるようになる。儀礼と社会構造との関係、霊魂やあの世観念の内容など、ボルネオ、スラウェシの事例をもとに、個別文化を超えたところにある人類の共通項・普遍項を導き出す。 我々がここで試みようとする死の人類学は、この超越者に対する人間の態度を描こうとするものである。死を死として語ることはうとましい。しかし、だからこそ、死に対する態度のなかに人間の生の営為の狡智が隠されているともいえるのだ。その意味で、ここに展開することは死の人類学であるとともに、すぐれて生の人類学でもある。――<本文より>
漢字の起源
漢字の起源
著:藤堂 明保
講談社学術文庫
すべての文字には、意味がある。 世にも不思議な文字=漢字は、どうやって誕生したのか? 象形・指事・会意・形声。文字の造り方の四つの原則。漢字は表意文字ではなく、「表語文字」である。例えば、工・攻・扛・江・肛・空は、すべて「貫通」の意を持つ。古代神話、卜占の甲骨文字、謎の羌族、南方言語との関係などを探り、漢字誕生の背景となった文化を探究し、150以上の漢字について、その起源と成立を図解。漢字と漢字文化をわかりやすく解説した漢字学入門書。 紀元100年に、許慎(キョシン)という後漢の篤学の士が『説文(セツモン)』という字典を著わした。この書は中国での最初の字典であると同時に、漢字の成り立ち方を、六種の原則(六書(リクショ)という)に分けて説明した点で、不朽の功績を残したものである。今日では「文字」という熟語にして呼んでいるが、古人は「文」と「字」とを区別していた。許慎先生の説明によると、さまざまな事物を、まるで「もよう」を描くように書き上げたのが「文」であって、文とはつまり紋(もよう)のことである。象形文字や指事文字がそれである。これに対して、すでに出来上がった「文」(もよう・もじ)を組み合わせて、第2次的に増補したのが「字」である。ものが増しふえることを、孳乳(ジニュウ)というが、あたかも動物が子を産み孫をふやすように、しだいに増加していったのがこの「字」であって、それは孳(ふえる)や滋(ふえる)と同じ意味であるという。――<本文より>
中国古代書簡集
中国古代書簡集
著:佐藤 武敏
講談社学術文庫
司馬遷の烈々たる心情、李陵と蘇武の厚い友情、棄てられた妻の怨み…… 人の心を打つ名書簡 隠忍苟活(こうかつ)、糞土の中に幽せられ、而も辞せざる所以は私心尽くさざるところあるを恨む――宮刑という辱めを受けてまで生き続ける理由を手紙にこう記し、『史記』にかける思いを述べた司馬遷。他に、獄中にある政治家の無実の訴え、単身赴任の夫と妻の愛情に満ちた往復書簡など、2000年の時を経ても変わらぬ人の世の営みが映し出された34篇の名書簡を収載。現代語訳と解説を付す。 <本書の主な内容> ●大国にはさまれた小国の立場 ●賄賂の自粛について ●名将の弁明 ●獄中からの訴え ●宮刑の恥辱に堪えて『史記』を著した心情 ●謀反に対するいさめ ●子への遺書