講談社学術文庫作品一覧

中世ヨーロッパの歴史
講談社学術文庫
ヨーロッパとは何か。その成立にキリスト教が果たした役割とは――。ケルト的なるもの、ローマ的なるものに加えゲルマン的、東方的、ノルマン的、イスラム的等々、多様な要素を混和してヨーロッパは形成された。地中海古代世界を脱けだし、森林と原野の内陸部に繰り広げられたヨーロッパ世界創造のドラマを「中世人」の視点で鮮やかに描く中世通史。
8世紀?15世紀の壮大なドラマ
地中海古代世界を脱けだし 森林と原野の内陸ヨーロッパへ
ヨーロッパとは何か。その成立にキリスト教が果たした役割とは――。ケルト的なるもの、ローマ的なるものに加えゲルマン的、東方的、ノルマン的、イスラム的等々、多様な要素を混和してヨーロッパは形成された。地中海古代世界を脱けだし、森林と原野の内陸部に繰り広げられたヨーロッパ世界創造のドラマを「中世人」の視点で鮮やかに描く中世通史。

仏教の倫理思想
講談社学術文庫
孤独を恐れず、高い志をもち、なにものにも、とらわれるな!
仏教が興って二千五百年余。この間、仏教は大乗と小乗とに分かれ、大きな差異も生じたが、仏教のもつ高度な倫理性が、両者に共通するテーマであることに変わりはない。本書では、無執著に徹せよと説く『スッタニパータ』『金剛般若波羅蜜経』、高邁な志を抱けと教える『法華経』という三つの代表的仏典に即して、仏教の核をなす倫理思想を解き明かす。

年表で読む二十世紀思想史
講談社学術文庫
1883――1995
人間と出来事が絡まり合う百年
細部探求者が照らし出す思想の通路
一八八三年マルクスの死から一九九五年ドゥルーズの自死に至る約百年間の事件・人物の記録。批評家としてのフユトニストたらんとした著者が注目する事柄の数々。細部にこだわり、人と人、人と事件との出会い方に探求の目を向けるとき、これまで気づかれなかった文化的関連・思想的通路が開けてくる。二十世紀思想を特徴づける人・事の相互関係を読む。
普通の人々には、事物や事件は、ただそれだけのものであり、彼らは聞いたり見たりしてもすぐに忘却していくだろう。要するに、書き割りにすぎないもの、単にそれだけのものでしかない。しかし細部探求者にとっては、事件や事物は、あるいは過去の人間関係などは、「単にそれだけのもの」ではない。それはいわば霊気を吹き込まれたもの、つまり生きものなのである。――<今村仁司氏「解説」より>

近世日本の名匠
講談社学術文庫
永徳、等伯、織部、光悦……
日本独自の美を創り出した巨匠たち
生活のすみずみにまで美が溢れる日本の文化。斬新で質の高い装飾性、「用」の充足に卓越した工芸品。
日本独自の美はどのようにして創出されていったのか。清冽なリリシズムと画面に気魄が漲る名作を残した等伯、豪快で絢爛、活力に満ちた壮大な絵を描いた永徳など近世日本を代表する造形家たちの業績と魅力を、意匠家という著者独自の視点から捉え直す注目の論文集。
本書は、近世日本の造形分野に顕著な業蹟を築いた、狩野永徳・長谷川等伯・千利休・古田織部・本阿彌光悦・俵屋宗達・尾形光琳・緒方乾山に関して、嘗て記述した拙稿のなかから新たに選び、編輯した。本書の人物たちは、「用」の画人として卓越し、工藝分野の秀でた意匠家であり、世に彼らを呼び慣わしている「画家」「美術家」「藝術家」などの呼称よりも、古風ではあっても、現代に叶う「名匠」の語を讃称として献じる所以である。――<本書「まえがき」より>

学問のすゝめ
講談社学術文庫
天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず。近代日本を代表する思想家が説く、国民の精神革命。自由平等・独立自尊の理念を掲げ、西洋的「実学」を奨励する不朽の書に、より多くの読者が親しむことを企図し、本書は流麗な文語調の原文に長年の研究成果を結実させた丁寧な語釈・解説を付した。国際社会の中の日本、日本人のあり方を考えるうえで、いまなお重要な指針を示す現代人必読の一冊である。(講談社学術文庫)
天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず。近代日本を代表する思想家が本書を通してめざした国民の精神革命。自由平等・独立自尊の思想、実学の奨励を平易な文章で説く不朽の名著に丁寧な語釈・解説を付す。

大和万葉旅行
講談社学術文庫
大和三山、飛鳥川、宮跡、寺跡、陵墓――
神と神をまつる者とが織りなす文学の場へ
香具山・畝傍山・耳成山の大和三山や飛鳥川に代表される大和の古山川。そこには「国のまほろば」と謳われ、古代史や日本神話の舞台となったこの地に生きた万葉びとの息吹を感じることができる。本書は「青山に日照る国原」に生まれ育ち、万葉研究に生涯を捧げた著者が、民俗学の視点から大和の風土をとらえ、万葉歌の世界を追究する古典文学紀行である。
大和三山は、ながめるところどころ、四季、時間、晴雨それぞれによって種々な趣をあらわす山だ。その趣を心に感じてながめるよろこびこそ、大和の万葉旅行特有のものである。さすがに1000年の風雪に生きてあたらしく、美しい。「大和三山が美しい。それはどの様な歴史の設計図をもつてしても、要約の出来ぬ美しさの様に見える」(小林秀雄)と書いてあるが、三山の美しさを語るとなると、もはやどんなことばも追いつかないのである。――<本書「青山に日照る国原」より>

近代日本「美学」の誕生
講談社学術文庫
美術とは?文学とは?
西欧人文学から巣立つ自前の芸術論の近代
フェノロサ『美術真説』と坪内逍遙『小説神髄』によって基礎を打ち立てられた日本の美学。岡倉天心は理念を実践的に展開し、森鴎外はハルトマンを武器に学問としての有効性を定着させる。明治以降、西欧から導入された美学はどのように咀嚼され、固有の美意識をどのように反映させてきたのか。絵画・彫刻・文学・音楽における芸術思想の流れを追う。

幕末遣欧使節団
講談社学術文庫
攘夷の嵐が吹き荒れる幕末。先に欧米に約した開市開港の実施延期を要請するため、幕府はヨーロッパに使節団を派遣した。文久二年、総勢三十八名のサムライたちは、西洋事情調査の命をも受けて、仏・英・蘭・露など六ヵ国を歴訪。一年にも及ぶ苦難と感動に満ちたこの旅を、彼らの日記や覚書、現地の新聞・雑誌の記事等をもとに、立体的に復元する。(講談社学術文庫)
38人のサムライ達の苦難と感動に満ちた旅文久2年、開港延期交渉の命を受け、欧州6ヵ国を歴訪した幕府の使節団。その一年余の旅を、日記や現地の新聞・雑誌等の記事をもとに立体的に復元、追体験する。

聖書の読み方
講談社学術文庫
世界でもっとも多く読まれている書物であるにもかかわらず、ともすれば日本人には敬遠されがちな聖書。しかし、そこには意味深いメッセージが随所に秘められている。律法と福音、処女降誕、キリストの復活……。これらの真の意味は何か。「北森神学」で知られる著者が、聖書そのものに即して伝授する読み解くためのコツの数々。聖書初学者必読の書。(講談社学術文庫)
わかりづらい聖書を読み解く「コツ」を伝授。聖書には多くのメッセージが秘められている。聖書に基づくケイス・スタディにより、その読み方を具体的かつ根元的なかたちで提示。聖書の魅力を浮き彫りにする。

バロック音楽
講談社学術文庫
モンテヴェルディからバッハまで
実り豊かな古楽の花園
名曲の数々、音楽の花園、実り豊かなバロックの世界。装飾的で即興性を重視、ドラマの原理が支配する宇宙。モンテヴェルディのオペラ、ヴィヴァルディのソナタ、クープランのクラヴサン曲、バッハのカンタータ。華やかな宮廷舞曲や多様な世俗器楽や厳かな宗教音楽。音楽ファンを虜(とりこ)にするバロック音楽とはどんなものか。その特徴と魅力をあまさず綴る古楽への本格的な案内書。
最近バロック音楽がひろく聞かれるようになりましたものの、まだ後期バロック音楽に偏している気味が強いようです。初期や中期バロックの作品、またフランスやイギリスの作品、さらに中世やルネサンス期の音楽も、もっともっと聞かれてよいはずです。ひろく、しかも実り豊かな古楽の花園に分け入り、未知の音楽の喜びを見いだされるために、この本が少しでもお役に立つことができれば、執筆者としてこれに過ぎる喜びはありません。――<本書「はじめに」より>

近世の日本と朝鮮
講談社学術文庫
日朝間がもっとも幸福だった時代
2000年に及ぶ日本と朝鮮との交流の中で、江戸時代に両国の平和がもっとも保たれ、友好的たり得たのはなぜか。文禄・慶長の役で断たれた日朝関係修復交渉の基本に、家康がおいた「和好」の精神、国交再開後12回も来朝した朝鮮通信使、銀の路の核をなした対馬藩の倭館貿易……。東アジアの国際関係を視野に入れつつ、鎖国下の日朝関係を捉え直す。

エゾの歴史
講談社学術文庫
大陸と壮大な交易を展開した北方の民
北の地に繰り広げられたもう一つの「日本史」
北樺太から黒竜江を遡りアジア大陸へ。北方の民はかつて大陸と壮大な交易を展開していた。エゾとは、エミシとは何者なのか――。日の本・唐子・渡党。記録の間に垣間見える彼らの姿を浮かび上がらせ、そしてついには東北・北海道へと北上拡大する「日本」に組み込まれてゆく過程を活写する。北の地に繰り広げられた、もうひとつの「日本史」の探究。

江戸の懐古
講談社学術文庫
奠都50年、大正の新聞に連載
去りゆく江戸、消えゆく江戸
名文で綴る江戸物語
奠都50年を記念して、大正6年、新聞に連載。江戸城の誕生、北条氏と上杉氏の攻防、家康の入城、江戸市街の形成、その繁栄など江戸の沿革を叙述。また、隅田川の都鳥、将門の首塚など興味深い逸話も盛り込み、粋で独特の情趣漂う江戸の情景が走馬灯のように巡る。漢文調・講談調の格調高い彩り豊かな名文で綴られ、去りゆく江戸、消えゆく江戸の様子が髣髴(ほうふつ)と蘇る。
本書は大正6年の2月1日から11月12日まで、報知新聞に連載された文章を1冊にまとめたものである。現代の読者には難しい漢文調の言い回しも多いが、ふりがなを頼りに、時々声を出して読んでみてほしい。読み慣れてくると、江戸という空間が目の前に拡がり、まるで講談を聞いているかのような錯覚に陥る。歴史的読み物を使っていると思われる箇所が多々あり、だいぶ著者の想像力がふくらんでいる。が、だからこそ面白いのである。――<本書「監修者まえがき」より>

マルクス・アウレリウス「自省録」
講談社学術文庫
2世紀後半ローマ皇帝となったマルクス・アウレリウスはまたストア派の哲学者でもあった。万有は神的理性(ロゴス)に統率されるという合理的存在論に与する精神構造を持つ一方で、文章全体に漂う硬質の無常観はどこから来るのか。自身の心に向かって思念し、心内の軋み・分裂・矛盾をごまかすことなく真摯に生きた哲人皇帝の魂の声。碩学による待望の新訳。(講談社学術文庫)
哲人ローマ皇帝マルクスの内なる魂の独白。AD161年即位の皇帝はストア派の哲学者でもあった。合理的存在論に与する一方で憂愁の色を帯びる無常観はどこから来るのか。哲人皇帝の心の軋みに耳を澄ます

大和物語(下)
講談社学術文庫
初の文庫版
「あはれ」の情感が漂う
歌で綴る説話集
歌にまつわる小さな物語の章段からなる『大和物語』は、前篇の宮廷歌語りから、後篇は口碑・伝説が中心となる。生田川伝承、猿沢の池の采女入水譚、安積山伝説など時代の運命に流れゆく人間のはかないさだめや憂愁、また、男と女の悲しい巡り合いが哀切に語られてゆく。全篇で実在の人物が100人余登場し、遍照の出家と放浪に終わる、「あはれ」に満ちた説話集の名作の全訳注。

大和物語(上)
講談社学術文庫
初の文庫版
貴族社会の噂話とエピソード
歌で綴る雅びの世界
「あはれ」の情感が色濃く漂う歌物語、『大和物語』は、10世紀後半に成立、173の章段からなる佳作である。王朝人の間に流伝した噂話や歌にまつわる逸話を集め、『源氏物語』『枕草子』『大鏡』等にも影響を与えた。失意と不遇、宇多天皇の退位・出家から話は始まり、としこや監(げん)の命婦(みょうぶ)など当時のスター的女性の歌が続き、宮廷を中心に悲しくも美しい魂の交流が語られてゆく。
『大和物語』は、通常173段から成る歌語り集である。宇多天皇のご退位、仏道修行に始まり、良峯宗貞(遍照)の出家と放浪に終わっている。その間に、上は天皇・皇族・貴族から僧侶、庶民、さらに女性では皇后・内親王から宮廷女房、遊女にまで及ぶといった各層の人物がちりばめられている。それらには主として失意と不遇の人生の中に、悲しくも美しい魂の交流がみられ、はかり知れない「あはれ」の情感が漂っている。――<本書「まえがき」より>

婚姻覚書
講談社学術文庫
女性民俗学者ならではの目で捉えた日本人の婚姻をめぐる習俗
日本の女性は、どのような婚姻のしかたをしてきたか。若者宿と娘宿、通婚圏、婚姻の諸様式と婚舎のあり方、嫁入りとその祭祀、主婦権など、女性が村や家という組織のなかで経験してきた婚姻の形態と生態を、広範なフィールド・ワークに基づいて精緻に分析。女性民俗学者ならではの視点で、日本の婚姻をめぐる習俗とそれにまつわる文化の本質を探る。
過去の人たちの生活ぶりを、いちがいに、にべもなく罵倒する非科学的な態度を警戒しよう。……善悪を云々する前に、厳粛な生活の事実として味わってみよう。1人の若者が、1人の娘が、幸福な青春時代をすごし、よい結婚生活に入るためにも、むかしはむかしなりの社会のきまりをもたなくてはならなかったということを村の婚姻が教えてくれる。――<本書「若い仲間」より)

楔形文字入門
講談社学術文庫
ハンムラピ法典やアマルナ文書を読む
古代文字が語るオリエントの社会と思想
エンテメナの碑文、ハンムラピ法典、アマルナ文書。古代オリエントの社会と思想を現代に伝える楔形文字は、どんな構成を持ち、どうやって解読されたのか――。3000年にわたりメソポタミア全域で使用された古代文字の世界を、斯界の泰斗が平易にそして深く紹介。本書は、興味深い解読史と丁寧な言語学的概説で高い評価を得る、最良の楔形文字入門である。

シュンペーター
講談社学術文庫
「市場主義」による経済構造改革を主張する人々に好んで引用されるシュンペーター。「企業者精神」「イノヴェーション」「創造的破壊」などの概念はどのような文脈で理解されるべきなのか。ウィーンで学び、大蔵大臣・銀行頭取などを歴任、破産の憂き目に遭いながら、独創的理論を打ち立てケインズと並び称された20世紀経済学の天才の思想と生涯を追う。(講談社学術文庫)
二十世紀経済学の天才と謳われた孤高の学者。ケインズと並び称され独創的理論を立てたシュンペーター。イノベーション・企業者精神・創造的破壊などが与えた影響は? 学派を作らなかった研究者の思想と生涯。

子守り唄の誕生
講談社学術文庫
子守りの「ネエヤ」とは誰か
五木の子守唄をめぐる近代の精神史
寝させ唄でも遊ばせ唄でもない、日本独特の子守り唄。甘やかな郷愁とは対極の暗さを漂わせる一群の守り子唄はどこから来たのか。年端もいかぬ子守り少女たちのモノローグ。おどま盆ぎり盆ぎり、と口ずさまれる背景はいかなるものか。五木の子守唄として採集された70余りの詞章を検討し、近代化の過程で忘れられていった精神史の風景を掘り起こす。
どうやら日本に固有と思われる、ある一群の子守り唄が存在する。子守り唄にもいくつかの種類がある。寝させ唄、遊ばせ唄、そして、子守り娘の唄である。この第三の、子守りの少女らの自己慰安のモノローグともいうべき子守り唄は、じつは欧米には存在しない。そこには「赤とんぼ」のネエヤがいなかったからだ。――<本書より>