講談社学術文庫作品一覧

神と自然の景観論
神と自然の景観論
著:野本 寛一
講談社学術文庫
日本人はどこに神を感じ 何に祈るのか 日本人は何に神聖感を抱きいかなる景観の中に神を見たのか。噴火する山、揺らぐ大地、暴れる水は畏怖の対象であり、岬・先島は常世への通路、磐座(いわくら)は神霊の核であった。また洞窟・淵・滝・立神などの自然地形に秘められた神意、松・杉・椎・タブなどの巨樹に蔵された侵すべからざる威力。全国各地の聖地の条件を探り、それにまつわる民俗を紹介する。
「分ける」こと「わかる」こと
「分ける」こと「わかる」こと
著:坂本 賢三
講談社学術文庫
分類――認識と理解のために人間が営む大いなる知的作業 「わかる」ために人間が行なう「分ける」という行為。分類の仕方はまた認識の仕方を決定づける。天と地、三材、四大、五行……世界認識のために引かれる分節線は細分化を通して原理に到り、折り返しなされる再構成の作業が「理解」を導く。古代ギリシャ・東洋の思想から近代哲学・科学まで分類の方法と論理を渉猟し、「わかる」ことの人間的真相に迫る。 教訓その1 分類は認識や行動のために人間がつくった枠組であって、存在そのものの区別ではない。 教訓その2 分類をつくる際には、必ず、「その他」や「雑」の項目をおいておくことが有用である。 教訓その3 「わかる」とは、その分類体系がわかるということであり、「わかり合う」とは、相互に相手の分類の仕方がわかり合うことである。 ――<本書より>
戦国期の室町幕府
戦国期の室町幕府
著:今谷 明
講談社学術文庫
土一揆の勃発、足軽・町衆の台頭―― 戦乱の京都、民衆たちは歴史の表舞台に登場した 民衆が歴史の表舞台に登場し、日本文化の伝統が形成された戦国時代の京都。その実像とはどのようなものか。本書は山門と五山の争い、幕府財政、警察制度、徳政一揆等を素材に政治経済都市としての中世末期の京都を概観、応仁の乱後の自治都市成立までを精緻な論証に基づいて活写する。中世史研究に一石を投じ高い評価を得た幻の名著、待望の文庫化。
電子あり
東亰時代
東亰時代
著:小木 新造
講談社学術文庫
江戸文化の面影を色濃く残す明治初期の東京 東京は、天下の総城下町から、一挙に近代国家の首都へと移行したのではない。その過渡期は明治前半期であり、東京が「東亰(とうけい)」とも呼ばれた時代であった。それは、文明開化の時流に取り残された江戸根生いの民が、江戸文化の名残を引きずりつつ生きた時代でもある。江戸から東京へと変貌していく過程を生きた、市井の民の生活実態を浮き彫りにする。
道元「小参・法語・普勧坐禅儀」
道元「小参・法語・普勧坐禅儀」
著:大谷 哲夫
講談社学術文庫
『永平広緑』巻八全編収録 坐禅の心構えと慈愛あふれる懇切な説法 永平寺で坐禅を組む前に必ず唱える「普勧坐禅儀」。坐禅の真髄とは何か。その心構えと作法も懇切に説く。結夏(けつげ)・解夏(かいげ)・冬至・除夜の修行と時節の折り目に、累代の祖師たちの言行を踏まえ、仏道を語る「小参」。古則公案や逸話を交え、仏法の大事を説く「法語」。真剣勝負に生きた道元の思想を漢文体の名文で綴った『永平広録』巻八の全訳注。禅とは何かを解き明かす。
江戸の博物学者たち
江戸の博物学者たち
著:杉本 つとむ
講談社学術文庫
日常生活と直結した学問 本草学の系譜と消長 本草学は、動・植物学、鉱物学等にわたる壮大な学問であり、ほぼ博物学に相当する。中国渡来のこの学問は、江戸期に日本独自の本草学を創成し、小野蘭山、畔田翠山により、その研究は頂点へと達した。明治期、本草学は欧米流学問の奔流に呑み込まれていくが、その成果は生物学、民俗学、方言学等に継承された。学問史に異彩を放つ日本本草学の消長。 狩猟民ではない農耕と魚撈(ぎょろう)の日本人はおのずと自然を友として、自然を人類のうちなる物類と認識したのである。五穀豊穣というように、物類の中核が草木であれば、自然を対象とする研究に草(そう)を本(もと)とする本草学の名が与えられ、卓越した詩人と求道者によって本草学が創造されていったのも当然のことといえよう。……人民の厚生を念じた日本の本草学者、それをとりまく社会・学芸・文化を時代とのかかわりで記述してみた。――<本書「本草学とは何か」より>
バタイユ
バタイユ
著:湯浅 博雄
講談社学術文庫
消尽、非知、内的体験 過剰な出来事に貫かれる人間の原初のありようとは? 独特な思想家バタイユ。「消尽」「純粋な贈与」「エロティシズム的欲望」「至高な価値」――彼が提示する概念はすべて彼自身によって深く生きられたことである。パリ国立図書館に勤務、ニーチェ、ヘーゲルなどを学び、非知という考え、共同性の思想へと練られてゆく道筋はどのようなものなのか。表象による認識の限界を越えようとする思考の運動に迫る。
清国文明記
清国文明記
著:宇野 哲人
講談社学術文庫
儒教精神が息づく清朝末期の中国を歩く 清王朝末期、儒教精神と伝統が息づく古き佳き中国。漢学の泰斗が、少壮時、留学先から両親に手紙を綴る。対聯(ついれん)、飛鳥技(ひちょうぎ)、辻々の物売りなど庶民の生活の様子や迎春の準備、上元節、打鬼(タークイ)などの四時の行事も紹介。また、雍和宮、十三陵、万里の長城といった名勝や曲阜(きょくふ)、長安、蘇州などの儒教ゆかりの史蹟・陵墓を歴訪。漢文調の流麗な名文で辛亥革命直前の中国が髣髴と甦る。 【曲阜聖廟】 廟庭の中央に杏壇がある。孔夫子道を説き給いし処と称す。……歩して東階より上る。大成殿は輪焉たり奐焉たり、荘厳典雅を極む。楣間に扁額あり、題して生民未有と云う。鞠躬如として堂に上れば、見よ正面には聖人在せり。王冠を戴き袞龍の御衣を着して端座し給い、眉目の間には無限の仁愛を表わし、口には笑みを含み、循々として教えを垂れ給うが如し。――<本書「山東紀行」より>
中世ヨーロッパの歴史
中世ヨーロッパの歴史
著:堀越 孝一
講談社学術文庫
ヨーロッパとは何か。その成立にキリスト教が果たした役割とは――。ケルト的なるもの、ローマ的なるものに加えゲルマン的、東方的、ノルマン的、イスラム的等々、多様な要素を混和してヨーロッパは形成された。地中海古代世界を脱けだし、森林と原野の内陸部に繰り広げられたヨーロッパ世界創造のドラマを「中世人」の視点で鮮やかに描く中世通史。 8世紀?15世紀の壮大なドラマ 地中海古代世界を脱けだし 森林と原野の内陸ヨーロッパへ ヨーロッパとは何か。その成立にキリスト教が果たした役割とは――。ケルト的なるもの、ローマ的なるものに加えゲルマン的、東方的、ノルマン的、イスラム的等々、多様な要素を混和してヨーロッパは形成された。地中海古代世界を脱けだし、森林と原野の内陸部に繰り広げられたヨーロッパ世界創造のドラマを「中世人」の視点で鮮やかに描く中世通史。
電子あり
仏教の倫理思想
仏教の倫理思想
著:宮元 啓一
講談社学術文庫
孤独を恐れず、高い志をもち、なにものにも、とらわれるな! 仏教が興って二千五百年余。この間、仏教は大乗と小乗とに分かれ、大きな差異も生じたが、仏教のもつ高度な倫理性が、両者に共通するテーマであることに変わりはない。本書では、無執著に徹せよと説く『スッタニパータ』『金剛般若波羅蜜経』、高邁な志を抱けと教える『法華経』という三つの代表的仏典に即して、仏教の核をなす倫理思想を解き明かす。
年表で読む二十世紀思想史
年表で読む二十世紀思想史
著:矢代 梓
講談社学術文庫
1883――1995 人間と出来事が絡まり合う百年 細部探求者が照らし出す思想の通路 一八八三年マルクスの死から一九九五年ドゥルーズの自死に至る約百年間の事件・人物の記録。批評家としてのフユトニストたらんとした著者が注目する事柄の数々。細部にこだわり、人と人、人と事件との出会い方に探求の目を向けるとき、これまで気づかれなかった文化的関連・思想的通路が開けてくる。二十世紀思想を特徴づける人・事の相互関係を読む。 普通の人々には、事物や事件は、ただそれだけのものであり、彼らは聞いたり見たりしてもすぐに忘却していくだろう。要するに、書き割りにすぎないもの、単にそれだけのものでしかない。しかし細部探求者にとっては、事件や事物は、あるいは過去の人間関係などは、「単にそれだけのもの」ではない。それはいわば霊気を吹き込まれたもの、つまり生きものなのである。――<今村仁司氏「解説」より>
近世日本の名匠
近世日本の名匠
著:水尾 比呂志
講談社学術文庫
永徳、等伯、織部、光悦…… 日本独自の美を創り出した巨匠たち 生活のすみずみにまで美が溢れる日本の文化。斬新で質の高い装飾性、「用」の充足に卓越した工芸品。 日本独自の美はどのようにして創出されていったのか。清冽なリリシズムと画面に気魄が漲る名作を残した等伯、豪快で絢爛、活力に満ちた壮大な絵を描いた永徳など近世日本を代表する造形家たちの業績と魅力を、意匠家という著者独自の視点から捉え直す注目の論文集。 本書は、近世日本の造形分野に顕著な業蹟を築いた、狩野永徳・長谷川等伯・千利休・古田織部・本阿彌光悦・俵屋宗達・尾形光琳・緒方乾山に関して、嘗て記述した拙稿のなかから新たに選び、編輯した。本書の人物たちは、「用」の画人として卓越し、工藝分野の秀でた意匠家であり、世に彼らを呼び慣わしている「画家」「美術家」「藝術家」などの呼称よりも、古風ではあっても、現代に叶う「名匠」の語を讃称として献じる所以である。――<本書「まえがき」より>
学問のすゝめ
学問のすゝめ
著:福沢 諭吉,その他:伊藤 正雄
講談社学術文庫
天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず。近代日本を代表する思想家が説く、国民の精神革命。自由平等・独立自尊の理念を掲げ、西洋的「実学」を奨励する不朽の書に、より多くの読者が親しむことを企図し、本書は流麗な文語調の原文に長年の研究成果を結実させた丁寧な語釈・解説を付した。国際社会の中の日本、日本人のあり方を考えるうえで、いまなお重要な指針を示す現代人必読の一冊である。(講談社学術文庫) 天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず。近代日本を代表する思想家が本書を通してめざした国民の精神革命。自由平等・独立自尊の思想、実学の奨励を平易な文章で説く不朽の名著に丁寧な語釈・解説を付す。
電子あり
大和万葉旅行
大和万葉旅行
著:堀内 民一
講談社学術文庫
大和三山、飛鳥川、宮跡、寺跡、陵墓―― 神と神をまつる者とが織りなす文学の場へ 香具山・畝傍山・耳成山の大和三山や飛鳥川に代表される大和の古山川。そこには「国のまほろば」と謳われ、古代史や日本神話の舞台となったこの地に生きた万葉びとの息吹を感じることができる。本書は「青山に日照る国原」に生まれ育ち、万葉研究に生涯を捧げた著者が、民俗学の視点から大和の風土をとらえ、万葉歌の世界を追究する古典文学紀行である。 大和三山は、ながめるところどころ、四季、時間、晴雨それぞれによって種々な趣をあらわす山だ。その趣を心に感じてながめるよろこびこそ、大和の万葉旅行特有のものである。さすがに1000年の風雪に生きてあたらしく、美しい。「大和三山が美しい。それはどの様な歴史の設計図をもつてしても、要約の出来ぬ美しさの様に見える」(小林秀雄)と書いてあるが、三山の美しさを語るとなると、もはやどんなことばも追いつかないのである。――<本書「青山に日照る国原」より>
近代日本「美学」の誕生
近代日本「美学」の誕生
著:神林 恒道
講談社学術文庫
美術とは?文学とは? 西欧人文学から巣立つ自前の芸術論の近代 フェノロサ『美術真説』と坪内逍遙『小説神髄』によって基礎を打ち立てられた日本の美学。岡倉天心は理念を実践的に展開し、森鴎外はハルトマンを武器に学問としての有効性を定着させる。明治以降、西欧から導入された美学はどのように咀嚼され、固有の美意識をどのように反映させてきたのか。絵画・彫刻・文学・音楽における芸術思想の流れを追う。
幕末遣欧使節団
幕末遣欧使節団
著:宮永 孝
講談社学術文庫
攘夷の嵐が吹き荒れる幕末。先に欧米に約した開市開港の実施延期を要請するため、幕府はヨーロッパに使節団を派遣した。文久二年、総勢三十八名のサムライたちは、西洋事情調査の命をも受けて、仏・英・蘭・露など六ヵ国を歴訪。一年にも及ぶ苦難と感動に満ちたこの旅を、彼らの日記や覚書、現地の新聞・雑誌の記事等をもとに、立体的に復元する。(講談社学術文庫) 38人のサムライ達の苦難と感動に満ちた旅文久2年、開港延期交渉の命を受け、欧州6ヵ国を歴訪した幕府の使節団。その一年余の旅を、日記や現地の新聞・雑誌等の記事をもとに立体的に復元、追体験する。
電子あり
聖書の読み方
聖書の読み方
著:北森 嘉蔵
講談社学術文庫
世界でもっとも多く読まれている書物であるにもかかわらず、ともすれば日本人には敬遠されがちな聖書。しかし、そこには意味深いメッセージが随所に秘められている。律法と福音、処女降誕、キリストの復活……。これらの真の意味は何か。「北森神学」で知られる著者が、聖書そのものに即して伝授する読み解くためのコツの数々。聖書初学者必読の書。(講談社学術文庫) わかりづらい聖書を読み解く「コツ」を伝授。聖書には多くのメッセージが秘められている。聖書に基づくケイス・スタディにより、その読み方を具体的かつ根元的なかたちで提示。聖書の魅力を浮き彫りにする。
電子あり
バロック音楽
バロック音楽
著:皆川 達夫
講談社学術文庫
モンテヴェルディからバッハまで 実り豊かな古楽の花園 名曲の数々、音楽の花園、実り豊かなバロックの世界。装飾的で即興性を重視、ドラマの原理が支配する宇宙。モンテヴェルディのオペラ、ヴィヴァルディのソナタ、クープランのクラヴサン曲、バッハのカンタータ。華やかな宮廷舞曲や多様な世俗器楽や厳かな宗教音楽。音楽ファンを虜(とりこ)にするバロック音楽とはどんなものか。その特徴と魅力をあまさず綴る古楽への本格的な案内書。 最近バロック音楽がひろく聞かれるようになりましたものの、まだ後期バロック音楽に偏している気味が強いようです。初期や中期バロックの作品、またフランスやイギリスの作品、さらに中世やルネサンス期の音楽も、もっともっと聞かれてよいはずです。ひろく、しかも実り豊かな古楽の花園に分け入り、未知の音楽の喜びを見いだされるために、この本が少しでもお役に立つことができれば、執筆者としてこれに過ぎる喜びはありません。――<本書「はじめに」より>
電子あり
近世の日本と朝鮮
近世の日本と朝鮮
著:三宅 英利
講談社学術文庫
日朝間がもっとも幸福だった時代 2000年に及ぶ日本と朝鮮との交流の中で、江戸時代に両国の平和がもっとも保たれ、友好的たり得たのはなぜか。文禄・慶長の役で断たれた日朝関係修復交渉の基本に、家康がおいた「和好」の精神、国交再開後12回も来朝した朝鮮通信使、銀の路の核をなした対馬藩の倭館貿易……。東アジアの国際関係を視野に入れつつ、鎖国下の日朝関係を捉え直す。
エゾの歴史
エゾの歴史
著:海保 嶺夫
講談社学術文庫
大陸と壮大な交易を展開した北方の民 北の地に繰り広げられたもう一つの「日本史」 北樺太から黒竜江を遡りアジア大陸へ。北方の民はかつて大陸と壮大な交易を展開していた。エゾとは、エミシとは何者なのか――。日の本・唐子・渡党。記録の間に垣間見える彼らの姿を浮かび上がらせ、そしてついには東北・北海道へと北上拡大する「日本」に組み込まれてゆく過程を活写する。北の地に繰り広げられた、もうひとつの「日本史」の探究。